百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

茜達は森の祠で魔物バレッテと戦い、苦戦しながらも倒す。
水辺を進み、仕掛けを解きながら祠を攻略し、毒キノコを避けて魔物の親玉を目指す。
最奥で黒いローブの魔導師と悪魔ヴィネとの激戦の末に勝利。
天使ウリエルが現れ、デリサルに土のエレメントを授ける。
茜達は冒険者ギルドに魔導師を突き出し、報酬を受け取るのだった。


第5話 熱きヤマ

 茜達は森の祠で土のエレメントを手に入れ、悪魔に立ち向かうための力を一つ得た。

 

「次の私達の目的は、炎の洞窟だな」

 ウリエルは消える間際、他にも天使がいるとデリサルに知らせてくれた。

 ミカエルは炎の洞窟に、ラファエルは風の砦に、ガブリエルは水の神殿にいると。

 ここから一番近いのは炎の洞窟なので、次の目的地は炎の洞窟になったわけだ。

「炎の洞窟って、何だか熱そうですよね」

「朱雀に会う時は、大変だったぞ」

「そういえばそうでした」

 アエルスドロは腐敗教団を止める力を得るべく、朱雀が眠る火山洞窟に向かった。

 そこは非常に熱かったらしく、アエルスドロは苦労していたらしい。

「だとしたら、準備は必要ですね。皆さん、お店に行って買い物をしましょう」

「あまり買い過ぎて予算オーバーするなよ」

 

 そんなわけで、四人は炎の洞窟に行くべく、フェーン王国の店で買い物をした。

 茜は良い防具を装備できるように腕力増強の腕輪を買い、アエルスドロは高品質の盾を買い、

 レイは空飛ぶ箒を買い、デリサルは警告のレイピアを買った。

 警告のレイピアは周囲に危険を知らせ、不意を打たれる事がない魔法の武器だ。

「これで敵に気づけるな。予算はちゃんと気を付けるからさ」

「流石だな。……では、食料の準備はできたか?」

「できてます」

 保存食は日数分、ちゃんと用意している事を確認する。

 あとは山を登って、炎の洞窟に行ってミカエルに会いに行くだけだ。

 だが、炎の洞窟はかなり熱いらしいので、その道中も危険だろう。

 もう一度確認した後、四人は炎の洞窟がある山に向かった。

 

 山を登ると、空にはたくさんの巨大なハエが飛び回っていた。

「うわっ、これってポイズンフライじゃないか。噛まれたら痛いねぇ」

 ポイズンフライとは、噛むと手足を痺れさせる神経毒を持ったハエだ。

「羽音がうるさいですね。何とか避けないと……」

「そうだねぇ。噛まれないように、服を使ってハエを避けないとね」

 茜とレイは工夫して、何とかポイズンフライの群れを避けた。

 アエルスドロは余裕で避けたが、デリサルはポイズンフライに噛まれていた。

「いて、いて、いててて」

「デリサルさん、大丈夫ですか? あぁ、結構怪我をしてますね」

「でも、ここで癒すのは早いから、ポイズンフライ地帯を早めに抜けなくちゃね!」

 

 四人は何とかポイズンフライ地帯を抜けたが、進んだ先の道は泥の沼があり非常に進みづらい。

 茜が泥の沼に足を踏みつけると、急に動けなくなる。

「ぐっ、足が重い……!」

「大丈夫かい、アカネ!?」

「ええ、ちょっと、重くて、動きにくいです……」

「どうしたんだ……うわっ!?」

 アエルスドロが茜を助けようとすると、彼もまた沼に飲まれてしまう。

 何とか、アエルスドロは先に進もうとするが、

 まるで錘でもついたかのように、四人の動きは重くなっていく。

 もちろん、レイとデリサルも、例外ではなかった。

「何とか、先に、進まなきゃ……」

「炎の洞窟で、ミカエルに、会うために……」

 幸い、周りに敵はいなかったので、四人は襲われずに済んだ。

 だが、炎の洞窟に続くはずなのに沼があるという事は、

 異変は確実に世界に及んでいるという事だ。

 四人は体力を消費しながらも、何とか歩きにくい道を歩き、山の頂上に到着した。

 

「誰だ、お前ら!」

 しかし、炎の洞窟へ行く先の道には、四人のドワーフが立っていた。

 ドワーフは武器は持っていなかったが、柄の悪そうな風貌だった。

「あ、あの、すみません、そこを……」

「ああん? 人間風情が、勝手にここを通る気か?」

「ひっ!」

 茜はドワーフを説得しようとしたがドワーフは聞き耳を持たず、

 いきなり拳を振りかぶって茜達に襲い掛かってきた。

「武器を抜くのはやめておきましょう」

「そ、そうだな」

 もし何か揉め事があったら大変なので、茜達は素手でドワーフを止める事にした。

 

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは呪文を唱えて、杖の先から冷気の矢を放った。

 チンピラは身体に凍りつく痛みを感じ、動きが鈍くなった。

「cadre sacre!」

「ぎゃぁぁぁぁっ!」

 茜は神の力を借りて、チンピラに炎を纏った光を降らせて追撃した。

 チンピラは火傷を負い、悲鳴を上げた。

 アエルスドロとデリサルは様子を見ていたが、

 チンピラ達が近づいてきたので、彼らを素手で迎え撃とうとする。

 チンピラは苦しみながらもアエルスドロに向かって走ったが、アエルスドロは素早くかわした。

 二人目のチンピラもアエルスドロに殴りかかったが、アエルスドロは盾で受け止めた。

 武器を抜いてはいけないが、盾を構えるのは問題にならないのだ。

「おらおら!」

「くたばりやがれ!」

 二人のチンピラがデリサルに襲い掛かり、胸や腕を殴りつける。

 デリサルは何とか痛みに耐えて、距離を取る。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは少し後退して、チンピラに再び冷気の矢を放った。

 チンピラはさらに凍えたが、まだ倒れなかった。

「cadre sacre!」

 茜はチンピラに炎を纏った光をもう一度降らせ、チンピラは焼けるような痛みに苦しむ。

 アエルスドロはチンピラを素手で殴り飛ばし、よろめかせる。

 デリサルはチンピラの顎目掛けて、素手で殴り返した。

 

「そこまでじゃ! 皆の者、引くがよい!」

「「「「すみませんでしたー!」」」」

 茜達がドワーフのチンピラと揉めていた時、

 立派な格好をしたドワーフが現れると、揉めていたチンピラ達は慌てて引き下がった。

 

「すまなかったのう、弟子達が暴れてしまって」

「弟子?」

 謝罪するドワーフに、茜はきょとんとする。

 どうやら襲い掛かってきた四人のチンピラは、このドワーフの弟子らしい。

「お主らにはこれをやるから、弟子達の粗相は許してくれ」

 そう言ってドワーフは、お詫びとして茜達に50Zを差し出した。

「して、お主らは一体何の用があるのじゃ?」

「実はかくかくしかじかで」

 茜はドワーフに共通語で事情を話した。

 

「ふむ、悪魔使いを止めるために四大天使の力を求めておるのか。

 それならば、儂が知っている情報を教えてやろう」

 ドワーフは頷くと、炎の洞窟の地図を見せる。

 そこには、大量のピン止めが突き刺さっていた。

「こことここ、それからここの、炎の気が消えておる。次に、この辺りに魔物が住み着いておる」

 ドワーフは真剣な顔で、ピン止めを次々に指差しながら語る。

「それでありながら、儂の弟子が突然、研究を妨害したのじゃ。一体何が起こったのか……」

 ふむ、とドワーフは顎に手を置いた。

「すまぬが、炎の洞窟の異変解決を手伝ってくれ。専門知識は不要じゃ、儂を護衛すればよい」

「分かりました。私達も、調査したいですしね」

 茜は二つ返事でドワーフの依頼を引き受けた。

「では、頼んだぞ。調査は翌日じゃ。それまで、儂の小屋で休んでいくとよい」

「はい、ありがとうございます」

 

 こうして、茜達はドワーフの小屋で一晩休む事になった。

 その小屋の中で、茜は一人思いふけっていた。

 

「ドワーフって、あんなに荒っぽくなるんですかね」

「あり得ないね。普通のドワーフじゃ、あんな事はしないよ」

 ドワーフと近い種族のモントゥのレイが呟く。

 義理堅い種族のドワーフがいきなり襲い掛かってくるのは、あり得ない。

 理由を考える茜とレイだったが、ふと、茜が何か閃いた。

「もしかしたら、あのドワーフ達、何かに操られているのかもしれません」

「操られてる? 立派なドワーフが止めたのに?」

「行動自体はヒャッハーするだけに留まる類のものです。

 もしこれも、ヒルダさんがやっているならば……」

「止めるしか、ないみたいだね」

 ヒルダは絶望のために世界各地で異変を起こしているだろう。

 もちろん、ここも例外ではないかもしれない。

 茜とレイは頷いた後、お互いに眠りにつくのだった。

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