百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

冒険者の茜達は炎の洞窟で目覚め、朝食を取る。
四人は炎の洞窟を探索し、ドワーフの長と共に調査を行った。
炎の洞窟の奥にいたヒルダが悪魔・オクトデビルを召喚し、茜達と戦う。
オクトデビルを倒した後、天使ミカエルが現れ、アエルスドロに炎のエレメントを授ける。
その後、茜達はドワーフの長の転送装置でフェーン王国の宿に戻り、休息を取るのだった。


第7話 幸運シュギョウ

「炎の洞窟って、とっても熱かったです。火傷しちゃって、苦しくて……」

 フェーン王国の宿で、茜はそう呟いた。

 茜はホムンクルスの身体だが、熱はしっかり感じ取ったようだ。

 なので、炎の洞窟でアウナスから炎を食らった事を覚えている。

「お前は本当によく頑張った。アウナスもあのごろつきも強敵だったよ」

「アエルスドロさん……」

 ごろつきは操られていただけだったが、

 アウナスは炎の洞窟のボスというだけあってかなりの強敵だった。

 その強敵を皆で倒した事に、茜は達成感を抱いていた。

 生前は吸血鬼という強敵になすすべもなかった茜。

 しかし、今は仲間がいるため、その吸血鬼すらも、

 あっという間に倒せるだろうという自信が湧いていた。

 

「それにしても、私達って運が良くないですよね……」

 しかし、しばらくして、茜は溜息をつく。

 実際、こちらの攻撃が外れたり、相手の攻撃が上手く命中したりと、不運続きだ。

 このままでは命がいくらあっても足りないだろう。

「そんなに運が良くなりたいなら、あたいらで【運が良くなるツアー】をやってみないかい?」

「運が良くなるツアー?」

「その名の通り、あたいらを幸運にするツアーだよ。これに参加して、運を上げまくるのさ」

 キョトンとする茜に、レイがツアーの内容を具体的に話した。

 ……しかし、あまりにも長すぎたので省略した。

 

「なるほど。私達の運を良くして、冒険をすんなりこなすのが目的ですね」

「よく分かったね! 善は急げだ、準備をしたら行くよ!」

「何、運を良くする……のか? 信用ならないな」

「本当に運が良くなるのかは分からないが、やってみる価値はありそうだ」

 アエルスドロとデリサルは半信半疑だった。

 だが、最近の運が悪いのは事実であり、できれば運を良くしたいと思っていた。

 なので、二人はレイに乗るしかないのだった。

 

「まずは『笑う門には福来る』だ。どんな事があっても笑顔でいるんだよ」

「は、はいっ」

 宿を後にした一行は、まず、レイの助言で笑顔を保った。

 今は笑顔に満ち溢れた世界にいる茜は、自然と助言を聞いた。

 デリサルも、冒険をしたくてしたくてたまらず、笑顔になる。

 一方、アエルスドロは迫害を受けた歴史からまだぎこちない笑みを浮かべている。

「アエルスドロは笑顔が苦手みたいだねぇ。

 でも、無理して笑顔になる必要はない。あんたなりに、幸運を掴み取るんだよ」

「ありがとう、レイ」

 

 レイは時間をかけて、人数分の「幸運のお守り」を作った……それも、大きな。

 冒険には邪魔になりそうなお守りで、アエルスドロは怪訝な表情をする。

「こ、こんなので本当に運が良くなるのか?」

「まあ、遠出はしないから、魔物は出てこないよ」

 自信たっぷりにレイはそう言った。

 頭が良い彼女なら、このツアーもきっと成功するだろうと茜は思った。

 

 次に、四人が乗った馬車は、西へ100km程走っていく。

 目的地は、ダナン伯爵が治める街・リファールだ。

「リファールって?」

「フェーン王国の冒険者にとって人気スポットなんだよ」

 リファールは巨大な古代遺跡の上に作られており、

 現在でも街の至るところに小さなダンジョンが残っている。

 四人はフェーン王国の人気スポットに行き、

 そこで運が良くなる食べ物を食べて、運気を良くしようとするという。

「食べ物で本当に運が良くなるのか?」

「その理由を、みんなに知ってもらいたいんだよ」

 馬車の中でレイが指を立てて言う。

 一体どんな食べ物が来るのか……茜は、それがとても楽しみだった。

 生前はカレーばかり食べていたが、今はたくさんの食べ物を食べている。

 それだけで、茜はとても楽しみになってきた。

 

 こうして馬車は魔物の襲撃もなく無事リファールに到着した。

「うわぁ、冒険者がいっぱい!」

 冒険者の聖地というだけあって、街をたくさんの冒険者が歩いている。

 茜は思わず足を止めそうになるが、

 運を良くするためにこのツアーに出かけている事を思い出し、慌ててレイのところに戻る。

「そ、それで、どんなものを食べるんですか?」

「まずは、宿に行った方がいいね」

「宿か……とりあえず、探してみるか」

「とりあえずじゃねーよ。運が良くなるために、幸運の食事をするんだよ!」

 デリサルは、茜よりもわくわくしているようだ。

 果たしてどんな食べ物が来るのか……三人はいち早く、席に着いた。

 

 しばらくして、レイが注文した食べ物が届いた。

 茜はとんかつとケーキ、アエルスドロは納豆とウィンナー、

 レイはレンコンとちくわ、デリサルは昆布と赤飯だ。

「これは運が良くなる食べ物なんだよ」

 レイによれば、これらの食べ物は意味があるらしい。

 とんかつを一口食べた茜は、レイに答えを言った。

「これはとんかつだから『勝つ』ですよね。ケーキは『景気がいい』からですか?」

「よく分かったね!」

 茜の箸は進んでいる。

 縁起の良い食べ物は、よく味わって食べれば運が良くなるからだ。

「それじゃあアエルスドロ、納豆とウィンナーがどうして縁起のいい食べ物か、知ってるかい?」

「確か納豆は粘り強くなって、ウィンナーは西方語の『Winner』からか?」

「その通り。あたいが食べてるレンコンとちくわは、『よく前が見える』からさ。

 デリサル、昆布と赤飯が運を良くする理由、分かるかい?」

「赤飯は倭国じゃ昔から縁起が良いとされてる、昆布は……喜ぶから、か?」

「ま、そんな感じだね」

 

 そして、四人は運が良くなる食べ物を食べた後、さらに運を良くするため、

 ホワイトスネークを首に巻いたり、ホワイトタイガーの部屋を掃除したりした。

 いずれも運が良くなる動物だったが、茜は少々、怖がっていた。

「こ、こんな動物と触れ合うんですか? 危なそうですよ?」

「これも運が良くなるためなんだ。ウンも良くしないとね!」

「え、ウンって事は……」

「もちろん、アレだよ!」

いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 

 その後、四人は運が良くなったかを確かめるため、ある実験を行った。

 外れると痺れるもの、外れるとまずい飲み物、外れるとマスタード入り、

 外れるとコケオドシテナゲダン……。

 どれも全て、運で結果が決まるものだった。

 

「……やってみます!」

 茜が挑戦するのは、外れると痺れるもの。

 目を閉じ、精神を集中し、「これだ!」と思う方に……茜は、手をかけた。

 何も起こらなかった。

 すなわち、それは当たりを引き当てたという事になる。

「やりました! 運が良くなりましたね!」

 見事に当たりを引き当てたので、茜の運が良くなったのだ。

 レイの運が良くなるツアーは、少なくとも茜の中では成功したのだ。

 

 次にアエルスドロが挑戦するのは、外れるとまずい飲み物を飲むもの。

 アエルスドロは何も言わず、片方の飲み物を飲んだ。

「……美味い!」

 アエルスドロも当たりを引き当てた。

 彼の運もまた、ツアーのおかげで良くなったのだ。

「レイ、ありがとう。運が良くなったみたいだ」

「ふふふ、あたいが選んだだけはあるね!」

 

 次に、デリサルは外れるとマスタード入りのお菓子を食べるもの。

「よし、運が良くなったなら、選ぶのはこっちだ!」

 デリサルは素直に直感で、左の食べ物を食べた。

「……うっ!?」

 突然、デリサルが口を押さえる。

 何が起こったのか茜が慌てて様子を見るともう片方のお菓子から甘い匂いが漂う。

「あぁ~、そういう事だったんですね」

 

 最後にレイは、外れるとコケオドシテナゲダンが爆発する玉を見た。

 コケオドシテナゲダンは、音と煙と光だけを出す実害のない爆弾であり、

 今回は手に取るとそれが発動する仕掛けになっている。

 このツアーの主催者であるレイは、外れを引かない自信があった。

「そら!」

 レイが素早く玉を取ると、玉が眩く光り出した。

「えっ、レイさん、まさか……!」

 茜が心配すると、彼女が取っていた玉が爆発した。

 そして爆発すると同時に、レイを紙吹雪が包んだ。

「……どうやら不運がデリサルに移ったみたいだね」

「レイさんも、運が良くなったんですね!」

 

 こうして、レイ主催の運が良くなるツアーが成功して、メンバーは喜んだ。

 少なくとも、デリサル以外の中では、だが。

 

「さあ、運も良くなった事ですし、冒険を再開しましょう!」




このツアーは某テレビ番組の某企画を参考にしました。
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