百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

43 / 76
~前回までのあらすじ~

茜達はフェーン王国で冒険を続けていた。
しかし運が悪く、レイが提案した「運が良くなるツアー」に参加する事になった。
ツアーでは縁起の良い食べ物を食べたり、幸運のお守りを作ったり、
運が良くなるという動物と触れ合ったりした。
最後は運を試す実験を行い、茜とアエルスドロは成功したがデリサルは失敗した。
それでも、運が良くなったと確信した彼らは、再び冒険を再開するのだった。


第8話 彼女のヒミツ

 レイにより運が良くなるツアーが行われ、

 少なくともデリサル以外の三人の中では運が良くなった気がした。

 これで冒険もスムーズに進む事ができるだろう。

 茜達がスキップしながらフェーン王国を後にして、

 次の目的地である風の砦に進もうとした時、事件は起こった。

 

「おや、こんなところでお会いできるとは……」

 黒いローブを身に纏った女性が、姿を現す。

 ローブの下から服や顔は良く見えないが、茜には、その女性がヒルダだという事が分かった。

「あ、あなたは……ヒルダさん!」

 茜はスキップを止めて、ローブ姿のヒルダを睨みつける。

 レイも杖を構えて、臨戦態勢を取っていた。

「その様子だと、あなた達は無駄な事をしたようですね。冒険者なら冒険するのが普通ですよ」

「ヒルダ、あんたの野望はそこまでだよ。……これはあんたの魂に言ってるのさ」

「……ヒルダさんの魂!?」

 その瞬間、茜はヒルダが何者なのかを理解した。

 今のヒルダの姿は本来の彼女のものではなく、他人の姿である事を。

 茜はホムンクルスの身体の自分や腐敗教団の四神官とヒルダを照らし合わせる。

「そう、私は禁断の秘術で魂を本体にしたのです。

 おかげで肉体が滅んでも、他人の肉体に宿る事で不老不死になれました。

 残すは、人々の絶望を力にするのみ!

 それでは冒険者よ、私からのプレゼントを受け取ってください」

 そう言ってヒルダは魔導書を開き、呪文を唱える。

 そして、ヒルダはテレポートで姿を消した。

 

「待て、ヒルダ!」

 アエルスドロが慌てて後を追いかけようとすると、

 二体のサイクロプスが黒煙と共に姿を現し、四人を取り囲む。

 どうやら、ヒルダが召喚した魔物のようだ。

「逃がすつもりはないみたいです。倒しますよ! cadre sacre!」

 茜は呪文を唱えて、聖なる炎をサイクロプスの巨体に放った。

 聖なる炎はサイクロプスの皮膚に焼きつき、苦痛の叫びが上がる。

「炎の剣よ、我に力を!」

 アエルスドロは茜の隣に駆け寄り、フレイム・タンに炎を纏わせた。

 サイクロプスに向かって剣を振り下ろしたが、不運にも剣は空を切った。

 しかし、アエルスドロは諦めずにもう一度剣を振り上げ、サイクロプスの腹に深く刺し、

 そこからサイクロプスの身体が燃える。

 運が良くなるツアーの効果で、少なくとも命中率が上がったようだ。

「ド・フェル・ラ・ホル・ラ・ロタ・デ・ハンズ!」

 レイは少し離れた場所から、魔法の杖を振り、

 地面に油を撒いてサイクロプスの足元を滑りやすくする。

 サイクロプスは油に気づかずに踏み込み、足が滑って、サイクロプスは大きく転んだ。

 デリサルはレイピアを持って忍び寄り、影からサイクロプスを狙った。

 サイクロプスの隙を突いてレイピアはサイクロプスの背中に深く刺さり、致命的な傷を与えた。

 デリサルは素早く後退し、次の機会を待った。

グオオオオオオ!

 サイクロプスは怒りと痛みに震え、一匹はアエルスドロに向かって巨大な棍棒を振り下ろした。

 棍棒はアエルスドロの肩にぶつかり、骨を折り、アエルスドロは悲鳴を上げる。

 サイクロプスはもう一度棍棒を振り上げ、アエルスドロは必死に身をよじった。

 棍棒はアエルスドロの頭を掠め、アエルスドロは一命を取り留めた。

「大丈夫ですか?」

「痛いな……だが、サイクロプスは容赦しないみたいだ」

 もう一匹のサイクロプスは立ち上がろうとしたが、油に足を滑らせる。

 レイに向かって棍棒を振ったが、攻撃は当たらない。

「mot de guerison!」

 茜はアエルスドロの傷を癒すためスタッフ・オヴ・フォー・ゴッドを持って癒しの光を送った。

 アエルスドロの傷が回復し、茜は再びサイクロプスに聖なる炎を放って焼いた。

 

「ぐっ……私は、負けられない……!」

 アエルスドロは痛みに耐えながら、フレイム・タンを握りしめた。

 サイクロプスに向かって走り寄り、剣を振り回す。

グガアアアアアアアアアアアア!

 サイクロプスは剣の切れ味と炎の熱に苦しみ、アエルスドロはサイクロプスから離れた。

「ド・イグニ・ラ・ナチュ・デ・ポク!」

 レイは呪文を唱えて、サイクロプスに強力な魔法を放つ。

 火の矢がサイクロプスに突き刺さって爆発し、サイクロプスは火傷を負った。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 続けてレイは呪文を唱えて冷たい光を放ち、光はサイクロプスの体を凍らせて動きを鈍らせる。

 デリサルはサイクロプスの背後に回り込み、

 レイピアを持ってサイクロプスの首に刺した後、サイクロプスから離れた。

 瀕死のサイクロプスの一匹はデリサルに棍棒を振り下ろし、そのままサイクロプスは倒れた。

 もう一匹はアエルスドロに棍棒を振り、アエルスドロを戦闘不能にした。

「これで終わりです! cadre sacre!」

 そして、茜が聖なる炎で残りのサイクロプスを焼き払った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……。何とか倒したみたいだね……」

 アエルスドロが戦闘不能、デリサルが瀕死になりながらも何とか四人はサイクロプスを退けた。

「ヒルダさん、今度は一体何を企んでるんでしょうか?

 ほら、アエルスドロさん、元気を出してください」

 そう言って茜は倒れているアエルスドロにヒールポーションを飲ませ、体力を回復させる。

 顔色はまだ悪いが、まだ戦闘不能にはなっていなかった。

 運が良くなるツアーの効果で、辛うじて意識は保っているらしい。

 その後、茜は生命保護の神性伝導で傷ついたアエルスドロとデリサルを癒した。

「うぅ、今のは何だったんだ……」

「こうなったら、全てを話すしかないみたいだね。

 ヒルダとあたいは、同じ師匠に学んだ姉妹弟子だったんだよ」

 レイは茜達に、ヒルダについて話し始めた。

 

 レイとヒルダは元々、魔法大国ベルクエスト王国出身だった。

 二人は同時期にベルクエスト魔導師ギルドの所長、ハリエットに弟子入りし、

 彼女のもとで様々な魔法を学んだ。

 そのうち、レイは元素術を学び、ヒルダは死霊術を学んだ。

 ヒルダは元々身体が弱く不老不死に憧れており、自分自身の手で不老不死を実現させたかった。

 

 そんな時、彼女は魂が本体になれば不老不死になれる事を知った。

 そしてマジック・ジャーという魔法を改良し、

 自分の肉体から離脱して魂そのものを本体にして他人の身体に宿り、

 擬似的な不老不死を再現したのである。

 だがヒルダは魔導師としてはまだ未熟だったため、魂のバランスを崩してしまう。

 そしてヒルダは悪魔とも繋がり、他人の身体を奪って人々の絶望を求めるようになったらしい。

 

「こうなったのも、あたいのせいだ。最後まで力を貸してやるよ」

「もちろん、俺も手伝うさ。次のエレメントを探しに行こう」

「そうですね、次は風のエレメントがある風の砦ですね……」

 

 茜達は風のエレメントがあるという、風の砦に向かった。

 だが四人はそこで、意外なものを見るのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。