茜達は風のエレメントを求めて風の砦に入り、オニクスと戦う。
砦のボスであるロックゴーレムを倒したが、風のエレメントは見つからなかった。
茜達は風のエレメントがない事に失望するが、次の目的地である海の神殿に向かうのだった。
翌日、茜達は宿で朝食を終え、それぞれの時間を過ごしていた。
「風のエレメントは一体、どこにあるんでしょうか……」
ラファエルを探すべく風の砦に向かった茜達だったがラファエルの姿はなかった。
茜達は一旦フェーン王国に戻り、風のエレメントの情報を探す事にした。
「ラファエルは気まぐれだからね。どこにいるのかは、あたいでも分からないよ」
「レイさんでも……?」
「四大天使の事は、ね」
知識豊富なレイですら、ラファエルの行方は分からないらしい。
水のエレメントの場所は分かるが、このままでは風のエレメントが手に入らない。
「一体どこにラファ……」
「はぁ……はぁ……腕の立つ冒険者はいないか!? 大変なんだ!」
途方に暮れたその時、動転した様子の男が宿屋に転がり込んできた。
男の服には、あちこちに枝や葉っぱが貼りついている。
身なりからして、この男はフェーン王国の貴族だろう。
「ど、どうしたんですか!?」
「ぼ、僕はパーヴァル。旅の貴族だ」
「一体何があったのか、話してくれませんか」
「森で狩りをしていたらハゲタカのような怪物が襲ってきたんだ。
必死に逃げたけど追いかけられて、もうダメだと思った時に誰かがその怪物を攻撃したんだ。
その誰かの命も危ないかもしれないから、こうして君達に助けを求めたんだ」
どうやら、パーヴァルは怪物に襲われて命からがら逃げ出したらしい。
その怪物を攻撃した冒険者の安否も分からない以上、助けを求めてきたらしい。
レイはふと、その怪物が何なのかを思い出した。
「うーん、それってザルバードっていう魔物じゃないのかい?」
「ザルバード?」
「ハゲタカのような悪魔なんだ。
本来は魔界に暮らすけど、何か理由があって呼び出されたんだろうね。
まあ十中八九、犯人はあいつだと思うんだけどね」
ザルバードは魔界から召喚された悪魔であり、基本的に悪魔使いが召喚する。
なので犯人はレイには分かっていたが、パーヴァルには分からないため濁す。
「僕が君達に頼みたいのは、あの怪物を調査して、その脅威を森から取り除く事だ。
加えて、その過程で僕を助けた人に何か分かった事があったなら教えてほしい」
「で、報酬はいくらだ?」
「これだけの宝石を事前に半分、成功で残り半分、でどうだい?」
そう言ってパーヴァルは小袋をいくつか取り出し、宝石を机の上に撒いた。
これらの宝石は合わせて600ゼニーの価値を持ち、換金すれば一人頭200ゼニーずつになる。
きらきらと輝く宝石を前に、デリサルは大きく頭を縦に振った。
彼は高額報酬を見ると、すぐに依頼を受けたがる癖があるのだ。
「ありがとう、冒険者よ! じゃあ、森に案内するから一緒に来てくれ」
かくして今、茜達はパーヴァルの案内で木漏れ日が照らす森の中にいる。
周囲は日中でもやや薄暗く、多くの木々が視界を遮っているため、見通しがよいとは言い難い。
木々の騒めく音と、甲高い鳥の声が周囲に響く。
「……ん?」
デリサルが森を探索していると、件の怪物のものと思われる巨大な足跡を見つけた。
足跡は小川で途切れているが、その足跡を見ると、足跡の主は二体いた。
「鳥が二体……もしかして、つがいか?」
「うーん、だったら気を付けないといけないね」
四人が慎重に足跡を追っていると、森の中に大きな叫び声が繰り返し響いた。
「助けて!」
「助けて!」
「助けて!」
「パーヴァル、そっちにいるのかい!?」
「待ってください、レイさん!」
「そいつは、偽物だ!」
声の方に行こうとしたレイを、茜とデリサルが制止する。
その声は依頼主のパーヴァルとよく似ていて、
加えて、その響きはどれも同じであるように聞こえたからだ。
仲間に止められたレイは、はやる気持ちを抑える。
「もしかしたら、俺達を罠にかけるためかもしれないぜ。
行くとしても、警戒しながら行かなきゃいけない」
「……分かったよ」
いつもは自分がリードしていたが、今回はデリサルに助けられた。
レイは渋々、仲間と共に慎重に声のした方に向かった。
「こいつは……ウィンビスと、ゼクターかい?」
森の中ではエスペル種のウィンビスが傷つき、
意識を失って木にもたれかかる蟷螂のゼクターを前に必死に叫んでいた。
隣には彼らの荷物と思われる背負い袋とダブルセイバーと手裏剣が置かれている。
ウィンビスは倒れているゼクターと協力関係にあり、ゼクターを助けてほしいのだろう。
しかし、ゼクターは人を襲った例も少なくないため、茜は信用できなかった。
「とりあえず、これでも食べてください」
茜は、ウィンビスだけに1日分の保存食を渡した。
「美味しい! 名前!」
ウィンビスが保存食をあっという間に食べ終えると、ウィンビスは音を三回真似した。
どうやらこれが自分達の名前だと言いたいらしい。
人間の声帯でそのまま発音するのは困難だが、
無理に発音するならウィンビスはコツカチ、ゼクターはカゴツとなるだろう。
「通訳! 疑問、でかいの、狩る、お前達」
「巨大な怪物……ザルバードですか? はい、私達はザルバードを倒しに来ました」
「もちろん、お金のた……もごもご」
目的を言おうとするデリサルの口を、レイは慌てて押さえた。
カゴツは顎を打ち鳴らし、コツカチは「借りは返す」と言葉を発した。
コツカチの喉から乾いた音が漏れる。
どうやら、昨晩から何度も叫んで喉が枯れてしまったと伝えたいらしい。
定期的に助けを呼びつつ、寄ってくる獣を避けるために、
凶暴な魔物の声なども出していたのだろう。
カゴツも一命こそ取り留めたものの、傷は深くすぐに戦うのは難しい。
「うーん、私の周りは亜人ばかりですね。生前は吸血鬼、今の周りには虫と鳥」
「でも、奴らは魔族じゃない。魔族はゴブリンやコボルドだからな。
どんなに姿が違っても、私達は人族なんだ」
「人族……ええ、どんな姿でもヒト、ですよね」
獣人の女王と身体が入れ替わり、処刑されそうになった少女が、
「美味しいと感じる心はどんな種族でも同じ」と演説した事がある。
茜はそれを知らないが、亜人と共に冒険してきたため、
既に自分と同じヒトだと認識するようになったのだ。
そしてこの奇妙な冒険者達と共に休憩を終え、茜達はザルバードを探す事にした。
「ザルバードはこっちにいるみたいだね」
レイを先頭にし、単独行動はせず、六人でザルバードを探す。
しばらく六人が歩くと、森から洞窟に風景が変わる。
どうやらここがザルバードの巣のようで二体のザルバードが辺りを見渡している。
茜はじっとザルバードを観察すると、ザルバードの秘密を見破った。
「あそこに卵があります! あの卵が壊されたり、つがいのザルバードが倒されたりしたら、
捨て身の攻撃を仕掛けてきます!」
「……なら、一緒に倒すしかないみたいだね」
レイは身構えて、ザルバード達に戦いを挑んだ。
「たぁぁぁぁっ!」
アエルスドロは敵に向かって猛然と突進し、
フレイム・タンでザルバードに2回攻撃したが、どちらも外れてしまった。
ザルバードは反撃して鉤爪でアエルスドロを攻撃、
2回目の攻撃でアエルスドロに深い傷を負わせた。
「bress!」
「ラ・ロタ・ド・イグニ!」
もう一体のザルバードは戦場を横切って移動し、
茜は味方に祝福を与え、レイはザルバード達に火炎弾を放った。
ザルバード達は攻撃を避けたが、炎を浴びて火傷を負う。
デリサルは銀のレイピアを振るい、ザルバードに致命的な一撃を与えた。
「せい、やぁぁっ!」
アエルスドロは再びフレイム・タンでザルバードを攻撃する。
二体のザルバードは猛攻を仕掛け、デリサルとアエルスドロにダメージを与えた。
「arme spirituelle!」
「ド・イグニ・ラ・ナチュ・デ・ポク!」
茜は呪文を唱えて光り輝くメイスでザルバードを攻撃し、
レイは呪文を唱えて炎の光線を3本放った。
デリサルは再び警告のレイピアでザルバードに追撃する。
アエルスドロはロングボウに武器を切り替え、ザルバードに2発、矢を放った。
「boulon de guidage!」
「ド・ゲイト・デ・テラ・マ・ギ!」
二体のザルバードは激しい攻撃を続けたが、茜が放った光の矢がザルバードを倒し、
レイのマジック・ミサイルがもう一体のザルバードを倒した。
「流石!」
「やった!」
カゴツとコツカチは音を出しながら、ザルバードを倒した茜達を称賛する。
「ありがとうございます」
茜は同行した二人にお礼を言った。
アルカディアではたとえ亜人であっても、困っている人は放っておけない。
この身を粉にしようとも、誰かを助けたいという気持ちが強かった。
「君達はこれからどうするんだ?」
「休む」
「帰れ」
「分かった。私達は一旦、フェーン王国に帰って貴族に報告しよう」
「あのおか……もごもご」
アエルスドロはデリサルを制止しながら、仲間と共にフェーン王国に戻った。
そして茜は、宿屋でパーヴァルに冒険の内容を報告した。
「ザルバードを退治してくれて本当にありがとう。約束通り報酬は君達にあげよう」
そう言ってパーヴァルは四人に報酬のゼニーを渡した。
デリサルは我先に全て取ろうとするが、レイに止められて山分けする事になった。
このお金は生活費にもなるため、なるべく節約しようと茜は思った。
「さあ、休んだら水のエレメントを探しに行きましょう」
「水のエレメントは、水の神殿だね!」