百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

茜達は風の精霊界からフェーン王国に戻るためにスカイドラゴンに乗った。
しかし、フェーン王国は悪魔で溢れ返っていた。
茜達は悪魔と戦ったが、ヒルダの姿は見当たらなかった。
すると、悪魔に襲われた少年からヒルダがフェーン城にいる事を知る。
しかし、フェーン城は変わり果て、中にいた人々は石化していた。
茜はフェーン王国を助けると誓うのだった。


第17話 闇のフェーン城

 ヒルダの闇の魔力で乗っ取られたフェーン城を、茜達は必死に探索していた。

 なるべく魔物に見つからないように、身を隠しながら進んでいく。

 

「grand espace transparent!」

 四人は魔物がいないであろう安全な場所に着く。

 茜は聖印を掲げて神聖語で呪文を唱え、自分以外の強靱さと意志を高めた。

「これで大丈夫ですね。さて、ヒルダを探しましょうか」

 ヒルダはフェーン城で何か腹黒く恐ろしい企みをしているに違いない。

 自分達はそれを阻止するために闇のフェーン城に乗り込んだのだから。

 

 10体のインプと2体のダークドッグを連れたデーモンが見回りをしている。

 茜とレイは見つかりそうになったが、

 アエルスドロとデリサルが彼女達を隠し、何とか悪魔に見つからずに済んだ。

 続いて、警戒している5体のダスキーグレイスの目をかいくぐって城を進む。

 

「中庭まで……」

 茜が荒れている中庭に言葉を失う。

 フェーン城の中庭には、空間から出てきた多くの悪魔による足跡が残されており、

 それらは館へと続いている。

 また、城の片隅には小さな礼拝堂がある。

「……とりあえず礼拝堂に行くか」

 この礼拝堂も、悪魔が支配しているに違いない。

 だが、行ってみなければ、ヒルダに繋がる手掛かりは得られない。

 そのため、茜達は警戒しながらも礼拝堂に入った。

 

 石造りのしっかりした礼拝堂には、扉がまだ残っている。

 奥にはテレポートのために使える印形が彫られており、

 その近くには、フェーン国王そっくりな石像があった。

 茜はフェーン国王に駆け寄り、その身体が冷たく固い事を確認する。

「そんな! 王様が石になってるなんて……」

「これもヒルダと悪魔の仕業だな。だが、君なら元に戻せるはずだ」

「私なら、元に……?」

 茜がそっと石化したフェーン国王に手をかざすと、彼女の手が淡く光り輝いた。

 その光は、まるで転生した時、子供の怪我を治した時のようなものだった。

 茜が目を閉じると、その光はフェーン国王を優しく包み込み、

 次の瞬間、身体に色とぬくもりが戻ってきた。

「おお! どうやら動けるようだ。娘よ、お主が儂を元に戻してくれたのか」

「はい、どうしてかは分かりませんが、私の力のおかげだそうです」

 石化から元に戻ったフェーン国王は茜に心から感謝する。

「それにしても、どうやら儂が石にされている間に、城では大変な事が起こっているようだな」

「はい、城だけでなく、外にも悪魔がたくさんいました。

 悪魔使いヒルダがこれら悪魔を召喚したそうです」

「なんと! これほどまでの悪魔がフェーン王国にいるとは……」

 茜がフェーン王国に悪魔が襲撃した事をフェーン国王に伝えると、

 フェーン王国は驚きを隠せなかった。

「この国の王としてヒルダを何とかしたいが、

 今の儂ではついていっても足手まといになるだけじゃ。

 最早、娘とその仲間だけが頼りだ。微力だが、力を貸してやろう」

 フェーン国王はそう言うと人数分のマジックウォーターを取り出しそれらを茜達に分け与えた。

 自分が戦えない以上、茜達を助けるしか道はないと思っただろう。

「ありがとうございます」

 茜達はフェーン国王から受け取ったマジックウォーターを飲み失っていた魔力を全て回復する。

 同時に、悪魔との戦いで淀んでいた気分がすっきりした。

 

 四人は礼拝堂を後にして、館に向かった。

 館の中には空間から出てきた三体のレイスが、

 臣下の五体のスペクターと共に、地上をどう支配したものか会議を行っている。

 これは悪魔ではないが、悪魔の影響でアンデッド化したものだろう。

 奥には階段があり、ここを昇ればヒルダがいる場所に着けそうだ。

 彼らが会議している間に茜達はこっそり階段を昇ろうとするが、

 悪魔の力で知覚が強化されたレイスとスペクターが四人の道を塞ぐ。

「くっ……! やるしか、ないみたいですね……!」

 茜達は武器を構え、アンデッドの群れを迎え撃った。

 

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは杖を振りかざし、スペクターに冷気の魔法を放って動きを遅くする。

 茜は前進し、聖印を握り締めるとスペクターとレイスを追い払おうとする。

 しかし、スペクターとレイスは茜の力に抵抗したため効果はなかった。

「せいっ!」

 デリサルは銀の武器を構えてレイスを突き刺し、大きなダメージを与える。

 アエルスドロもまたフレイムタンを起動しレイスに攻撃を行うが、2回目の攻撃は回避される。

「ラ・ロタ・ド・イグニ!」

 レイはさらに強力な魔法、ファイアーボールをレイスに向けて放つ。

 レイスはその攻撃を避ける事ができず、大きなダメージを受ける。

「cadre sacre!」

 茜は杖を振り、レイスに神聖な炎を放って攻撃する。

 しかし、レイスは生命力を吸収する攻撃を行い、デリサルはその攻撃によって倒れてしまう。

 アエルスドロは再びレイスに攻撃を行うが、かわされた。

「くそ、デリサルめ……!」

「デリサルは私が回復します、皆さんは攻撃を!」

「了解! ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは杖から氷の魔法を放ち、茜は全員に回復魔法をかけデリサルは立ち上がる。

「ふぅっ、助かったぜ」

「不死なる者よ、我が前から立ち去れ!」

 茜は聖印を握るとそれが光り輝き、

 スペクターは消滅してレイスは抵抗できず茜の前から逃げ出す。

 デリサルは逃げているレイスをレイピアで突こうとするがかわされる。

 アエルスドロは逃げているレイスに炎の剣でとどめを刺し、

 レイが炎の魔法を使ってレイスを一掃した。

 

「これで、私達を邪魔するものはいませんね」

 レイスを一掃し、茜達を邪魔するものは少なくとも周りにはいなくなった。

 あとは階段を上がって、ヒルダを探すのみ。

 悪魔によって世界を絶望させようとする彼女の野望は、阻止しなければならない。

 茜、アエルスドロ、レイ、デリサルは自分の武器をぐっと握り締めた。

 そして、茜はアエルスドロ達の方を向いてこう言った。

「皆さん、ここまで私に付き合ってくれてありがとうございました。

 異世界から転生してきた私であっても、優しく接してくれました。

 これからも、私についてきて、一緒に冒険してくれますか?」

「当然だ。そのために私は、君を助けたんだからな」

「冒険者ってのは仲間を裏切っちゃダメだよ。たとえ、相手を出し抜いてでもね」

「……それ、ちょっと矛盾してるが……まあ、信じてくれよ」

 アエルスドロ、レイ、デリサルの表情に裏表はない。

 三人とも人間ではないのに、人間(身体はホムンクルス)の茜に友好的である。

 それだけで茜は、心の底から安心した。

 

「……本当にありがとうございました。……ここで立ち止まってはいられません。

 この階段を昇って、ヒルダの野望を、阻止しましょう……!」

 

 そして、茜達は一歩一歩、階段を昇った。

 ヒルダを倒し、彼女の野望を阻止し、全てを終わらせるために。

 四人の冒険者は、前へ進んでいった。

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