邪魔するアンデッドを倒した茜達は、ついに闇フェーン城の最上階に辿り着く。
そこで彼らはヒルダと対峙し、フェーン王国を救うための戦いが始まる。
しかし、ヒルダは強大な力を持っており、茜達は苦戦を強いられる。
苦戦しながらも茜達はヒルダを倒し、闇フェーン城を彼女の脅威から解放する。
しかし、闇フェーン城は崩壊し始め、脱出しようとする中でヒルダは茜達を追い詰めるが、
茜の力でヒルダを完全に倒し、全てが終わるのだった。
「これで、本当に終わったんだな……」
「ああ……ヒルダは、倒したんだ……」
何度も形態を変えて茜達に襲い掛かり、絶望を与えようとしたヒルダは、
茜が放った大魔法によって完全に倒された。
茜達の大いなる戦いは終わったのだが、レイはすっきりしない表情をしていた。
「でも、失ったものはあまりにも大きい。城も人も、みんなヒルダと悪魔にやられてしまった」
フェーン王国を襲った悪魔との戦いで、フェーン王国は大きく疲弊した。
王国軍第一部隊が本気を出したのもあったが、首都はボロボロになり、
フェーン城までも闇の魔力に覆われてしまった。
最早、フェーン王国が戻る見込みは、ほとんどないだろうとレイは思った。
「ええ……確かに多くの人が倒れ、城もかなり崩れてしまいました。
でも、まだ諦めるのは早いです。転生者の力があれば、何とかできるかもしれません」
しかし、茜だけは希望を捨てていなかった。
何故なら、このパーティーで彼女だけが異世界から転生しており、
その特典で癒しと光の力を得ているためだ。
これさえあれば城が元に戻るかもしれないと、茜は思っていた。
「転生者の力……言われてみれば、すっかり忘れていたよ」
「異世界から来たものは特別な力を発揮すると言われていたけどね」
「そうだな……アカネ、とりあえず頑張れよ! 俺達も応援してるからな!」
アエルスドロ、レイ、デリサルは茜を応援する。
彼女の力に幾度となく助けられた三人は、今度は茜のために力を貸そうとした。
こんなに頼れる仲間がいるなら、茜もそれに応えなければならないと彼女は頷く。
(私は願います。悪魔とヒルダに荒らされたフェーン王国を、元に戻してください)
茜は両手を組むと、願いを強く祈った。
すると、フェーン城が光に包まれ、瓦礫で覆われた玉座の間から瓦礫が消え、
元の美しい玉座の間に戻っていく。
城の中の瓦礫も消え、フェーン城は元の美しい姿を取り戻した。
石化していた兵士やメイドも元に戻り、何が起こったのか分からず困惑する。
フェーン王国を襲っていた悪魔や各地の魔物も次々に元の世界に帰還し、
ひび割れた地面や荒れた花壇も、美しい風景を取り戻す。
それはここ、礼拝堂も例外ではなかった。
「ああ、城や石になってしまった人が元に戻っていく! みんな元通りです!」
茜の祈りは天に届き、荒れたフェーン王国はすっかり元通りになった。
四人は命が満ち溢れていくのを感じていき、
その証拠にたくさんの小鳥が歌を歌うように鳴いている。
転生者としての茜の力と、心優しい茜の思いが奇跡を起こしたのだ。
「あ、あは、は……」
エネルギーを使い過ぎたのか、茜はぺたりと座り込んでしまう。
そんな彼女を、アエルスドロは「お疲れ様」と労った。
「それじゃあ、帰りましょうか」
「アカネは私が背負っていく。……彼女の背中、温かいな」
悪しき者は滅び、茜の力によってフェーン王国は再び光を取り戻した。
その腕力で茜をおんぶしたアエルスドロは、彼女の背中のぬくもりを感じながら、
仲間達と共にフェーン城を後にするのだった。
それから、戦いを終えた四人の冒険者は、新たなる道を歩み始めた。
小さな足音が、石畳の廊下に響き渡る。
レイの目の前には厳かな木の扉が聳え立っている。
これが、フェーン魔導学校の入学試験の結果が発表される場所だ。
彼女は緊張で手が震えていた。
「レイ」
その人物がレイの名を呼ぶと、彼女は深呼吸をして扉を開けた。
部屋の中央には、長い白髪をなびかせる、鋭くも優しい目をした老魔導師が座っていた。
その目は、時間を超えた知識と優しさで満ちていた。
「よく来た、若き魔導師よ。君の試験結果を見せてくれ」
レイは、自分が書いた魔法についての論文を、一生懸命に背伸びをして老魔導師に差し出した。
老魔導師は論文を一読し、微笑んだ。
「素晴らしい。君の知識と情熱は、フェーン魔導学校の魔導師に相応しい。合格だ」
老魔導師がそう宣言すると、レイの心は喜びで満たされた。
彼女はこの瞬間を一生懸命に努力して迎えたのだ。
「……ありがとう、ございます」
レイは老魔導師にお礼を言い、ローブを受け取った。
そのローブは、星々が織りなす夜空のように美しく、魔法の力で煌めいていた。
レイは胸を躍らせながら学校の門をくぐった。
これから始まる学びの旅に、彼女の心はワクワクしていた。
――レイ――
さらなる魔導の神髄を学ぶため、フェーン魔導学校に入学する。
「……ここは平和になった。だが、私は悪を正す事しかできない。
ここの悪は正された、ならばもう、私が旅立つしかない……」
憂いを秘めた表情のダークエルフが、退屈そうな態度を取る。
そして、表情を変えないまま、海を渡っていくのだった。
――アエルスドロ――
この世の全ての悪を正すため、コルネリウス大陸に旅立つ。
「よし、これで大丈夫だな」
夜の帳が下り、街の灯りが一つまた一つと点灯していく中、
デリサルは新しい探偵事務所の看板を掲げた。
彼の事務所は古びた石造りの建物の一室にあり、薄暗い路地の奥深くにひっそりと佇んでいた。
「デリサル探偵事務所」と書かれた看板は、彼の目と同じくらい輝いていた。
デリサルは盗賊として数々の冒険をしてきたが、
今はその能力を生かして、真実を暴く仕事に着いた。
事務所の中には必要最低限の家具と、数々の事件を解決するための道具が整然と並んでいた。
デリサルはデスクに座り、最初の依頼を待った。
彼の鋭い感覚は街の裏に潜む謎や陰謀を感じ取り、それらを解き明かす準備ができていた。
突然、ドアがノックされ、一人の女性が入ってきた。
彼女は失くした宝石の行方を探しているらしい。
デリサルは微笑み、彼女を安心させるためにこう言った。
「ご安心ください、私が必ず見つけ出します」
新たな冒険の始まりを告げるように、事務所の灯りが明るくなった。
――デリサル――
盗賊をしながらも、表の顔として探偵事務所を開く。
そして……。
「みんな、違うところに行っちゃった。また、私は一人か……」
アエルスドロ、レイ、デリサルと別れた茜は、再び一人になってしまった。
皆にはそれぞれの道があるとはいえ、自分も傷を癒す事ができるとはいえ、
一人だけでは冒険が心許ない。
冒険者ギルドで、茜がぼんやりと屯していた時。
「冒険者になれるんだって!?」
「どんな依頼があるんだろう?」
「わたし、とっても楽しみ~!」
「ちょっと、まだ一人前じゃないんだよ!」
「そうそう、駆け出しだからね」
突然、ギルドの中で五つの声が聞こえてきた。
声色こそ変わっていたものの、その口調は茜には聞き覚えがあった。
「香太、千尋、文絵、太一、亜子!」
茜は声がした方を振り返る。
そこには、フェリドに殺された百夜孤児院の子供そっくりな五人の冒険者がいた。
成長した香太そっくりな少年の傍には、
成長した千尋、文絵、太一、亜子そっくりな少年少女がいた。
彼らは何故か、冒険者としてそれなりの武装をしていた。
「血を吸われて意識がなくなっちゃったけど、何故かここに来ちゃったんだよね~」
「なんでかは分からないけど、ぼく達、こんな格好になっちゃった!」
思わぬ再会に、茜は思わず駆け出す。
姿こそ変わってしまってはいたが、その魂は確かに、百夜孤児院の子供だった。
自分と同じ魂を感じる……茜はそれをしっかりと認め、笑顔でこう言った。
「みんな、一緒に来たんだね。私、凄く嬉しいよ」
「えっ、その声、もしかして……」
「そうだよ。私は百夜茜。あなた達と同じ、百夜孤児院の子供なんだ!」
「わぁ、茜ちゃん!」
「また会えたね、茜ちゃん!」
茜が彼らに素性を明かすと、冒険者は喜んで茜に抱き着いた。
百夜孤児院の子供と再会できて、茜は涙を流して喜んだ。
また彼らと一緒にカレーを食べる事ができる……その願いが叶ったのだ。
「みんな、冒険者っていうのは危険な職業なんだよ。
それでもなりたいって思ったら、私がしっかり教えてあげるからね」
百夜孤児院の子供達は全員実験体なので、
彼らもアルカディアに転生した以上、冒険者として優秀だと思っていた。
だが、今はまだ駆け出しなので、茜が面倒を見てやろうと思った。
立派に成長してほしいと願いながら。
――百夜茜――
転生した百夜香太、百夜千尋、百夜文絵、百夜太一、百夜亜子の「母親」となる。
彼らが一人前になるまで、茜は自分なりに冒険や勉強を教えてあげた。
地下都市サングィネムで、子供達にカレーを振る舞ってあげたように。
異世界から転生した少女と彼女の仲間は、
世界を絶望に落とそうとしたヒルダの野望を阻止し、フェーン王国に光が戻った。
平和に導いた四人の冒険者は、それぞれの道を歩んでいく。
しかし、彼らの冒険は、まだ終わっていない。
命尽きるか、人生に倦み果てるまで、物語が終わる事はないのだ。
もしも、三つ編みの茶髪に鎧を身に着けた少女がいたら、
それは癒しの力を持った心優しき冒険者である。
怪我をしたら彼女のところに行って治してもらうのがいいだろう。
続・百夜茜が理想郷に転生した件 完
「百夜茜が理想郷に転生した件」の第2部はこれでおしまいです。
この話は私が3DSのVCでプレイした「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」のオマージュで、
ラスボスのグフーの野望がしょっぱかったので、スケールを大きめにしました。
それでも茜の冒険がかけて、わたし的にはよかったと思っています。
茜の異世界転生ものは三部作の予定なので、楽しみに待っていてください。