また新たな仲間が加入しますので、楽しみにしてください。
町で起こる殺人事件を調査するため、茜は探偵事務所に向かった。
「依頼しに来ました!」
「はい、どなたで……ってアカネ!?」
そう、その探偵事務所の所長は、茜と共に冒険したデリサルだった。
彼はヒルダを倒した後、持ち前の推理力を武器に、探偵事務所を立ち上げたのだ。
「ひ、久しぶりですね! え、ええと、ちょっと依頼がありまして」
「依頼か? よし、何の用だ?」
「実は、町で商人の身体の一部が次々に発見される事件が起こってるんです。
犯人の足取りは掴めないみたいで……どうか一緒に、犯人を捜してくれませんか?」
慌てて話す茜の依頼を聞いたデリサルは、ふむ、と顎を唸らせてから言った。
「よし……とりあえず、犯人を捕まえようじゃないか」
「そうですね……理由が何にせよ、捕まえなきゃいけませんね」
こうして、茜とデリサルは事件の調査をする事にした。
盗賊として活躍していたデリサルのおかげで、この事件に関する情報はかなり集まった。
以下が、デリサルが集めた事件の詳細である。
・商人の身体の一部を鑑定した結果、その大半が転売や値上がりをした商人だった。
・身体の一部が見つかる前は貧困で苦しむ人々がいたが、事件後はそれらが減ったという。
・恐らくは刃物を用いた、バラバラ殺人と思われる。
「うーん、人々の苦しみを解放するのはありがたいですけど、人殺しで解決するなんて……」
事件の詳細が分かった後、茜は唸り声を上げる。
いくら転売や値上げは茜としては困るとはいえ、
殺人事件を起こすのは流石に許せないと思った。
とはいえ、事件のおかげで人々は助かっているため、茜は複雑な気持ちになる。
「とにかく、俺達がやるべき事は、この事件の犯人を捜す事だ」
「そうですね! もう人殺しは見たくありません!」
デリサルがさらに情報収集をすると、犯人らしき人影が森の中に逃げているのに気付いた。
茜とデリサルは大急ぎでその人影を追いかけていく。
森の中は暗く、辺りは見えにくかったが、茜とデリサルは何とか人影を追いかけていった。
そして森の奥で、ついにその人影――ナイフを持った妖精を見つけた。
妖精の後ろでガサガサと何か音が聞こえたが、茜達は気付かなかった。
「見つけましたよ!」
毅然とした態度で茜とデリサルは妖精を見る。
しかし、妖精は二人の冒険者に見られながらも、冷静な態度を崩さなかった。
「貴様らも民を苦しめる者に味方するのか」
「違います! これ以上、殺人事件を起こしてはいけないって注意したんです!」
「俺は探偵として、事件は見過ごせないんでね。捕まってくれないかな?」
茜は妖精を説得して、何とか刃を納めさせようとした。
デリサルも探偵として彼女を穏便に逮捕しようとしたが、
いかにも頑迷な態度の妖精は聞く耳を持たなかった。
「貴様は民の敵だ! 今ここで、殺す!!」
妖精はナイフを構えて、茜とデリサルに襲い掛かってきた。
「ちょっと、やめてください!」
「ぐあぁぁぁっ!」
茜は襲ってきた妖精を何とか鞭で叩くが、妖精は毒を塗ったナイフでデリサルを突き刺す。
デリサルは悪魔の血を引くため毒に何とか抵抗したが、ナイフで刺されるとかなり痛い。
「personne legere en grosse pierre!」
茜は妖精を傷つけないために彼女にパラライズパースンをかけようとするが、
妖精はギリギリで魔法に抵抗する。
「そうは……いかんぞ、殺す!」
妖精は再び毒を塗ったナイフをデリサルに突き刺す。
デリサルは何とか毒に耐え、妖精にレイピアで反撃した。
茜は静かに周囲を見渡し、一歩踏み出すと、鞭を妖精に振り下ろした。
その一撃は正確に命中し、妖精は痛みで顔を歪めるがすぐにナイフをデリサルに突き刺し、
その刃はデリサルの身体を貫いた。
「ぐ、っ、ううっ……!」
デリサルは反撃を試みたが、毒により武器を振るう動きが乱れ、攻撃は空を切った。
「お願いだから、人殺しはやめてください!」
「民の敵は皆殺しだ!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」
茜は再び妖精に鞭を振るが、妖精は軽く身をかわし、ギリギリ当たらなかった。
妖精の反撃は容赦なく、ナイフは再びデリサルに突き刺さり、
強力な毒がデリサルを襲い、デリサルは倒れてしまう。
「とどめだ……民の敵め!」
デリサルに立ち上がる気力はない。
妖精が倒れているデリサルの心臓にナイフを突き立て、とどめを刺そうとした時。
「「やめろ(やめるのじゃ)、リリーベル!!」」
突然、草むらの中から竜と人間のハーフの聖騎士と、ハーフエルフの魔導師が現れた。
彼らに気づいた妖精は慌ててナイフを納め、戦意を失った。
「リリーベル?」
「あなた達、この妖精を知っているのですか?」
いきなり現れた二人の冒険者に茜とデリサルは驚く。
聖騎士と魔導師は頷き、茜とデリサルに事情を話した。
「実は隣のガルバ帝国が北の小国・ブルーメボーデン王国を軍事侵攻したみたいでな……
そのせいでこのフェーン王国でも物価が上昇しているようじゃ」
「商人もそれに乗るかのように無理な商売をしていて、国民は苦しむばかり。
そんな時にリリーベルが商人を狙って殺人事件を起こしたんだ」
フェーン王国で起きた殺人事件の犯人・リリーベルは、ただの極悪人ではない。
戦争という災いに苦しむ人々を救うための、彼女は非合法ながらも自分なりにやっているのだ。
「儂らは戦火のブルーメボーデン王国から命からがら逃げたのじゃが、
リリーベルの中には黒い感情が残っていた」
「そもそも、リリーベルはフェアリーの貴族だった。
それなのに、戦争を止めないブルーメボーデン王国とガルバ帝国に怒りを抱いて
殺人妖精になってしまったんだ」
「……すまなかった。私を逮捕してくれ」
聖騎士と魔導師が事情を話した後、リリーベルと呼ばれた妖精は素直に茜達に謝った。
自分を穏便に逮捕しようとした茜達を敵と認識し、殺そうとしてしまったのだから。
リリーベルの優し気な声に思わず躊躇う茜だがデリサルは毅然とした態度で手枷を取り出した。
「さあ、大人しくお縄につくんだ」
「ああ……」
リリーベルはデリサルが取り出した手枷を嵌め、茜達と共に森を後にするのだった。
「では、そろそろあなたの身柄を……」
「待った。罪滅ぼしのために私を冒険に連れて行ってくれ」
「えっ……いいんですか? リリーベルさんは殺人犯ですよ?」
デリサルと別れ、リリーベルを自警団に引き渡そうとした茜だったが、
リリーベルは彼女を止める。
きょとんとする茜に、聖騎士と魔導師が振り返ってこう言った。
「自己紹介を忘れていた。儂はドラコーンの聖騎士モリス」
「オレはハーフエルフの魔導師トーマ。モリスとリリーベルはオレの冒険者仲間だ」
「……そうだったんですね。構いませんよ」
彼らは全員、ガルバ帝国が侵攻したブルーメボーデン王国の民である。
リリーベルが殺人犯になってしまうほど苦しんでいる事に気付いた茜は、
このまま逮捕するわけにはいかないと判断した。
他の仲間も別れたためそろそろ冒険者仲間が欲しいとも思った茜は、笑顔で三人にこう言った。
「もちろんですよ。私と一緒に行きましょう。私が癒してあげますよ」
こうして、茜は戦火を生きたブルーメボーデン王国の冒険者を仲間にした。
新たな冒険を求めるため、そして彼らを本当の意味で救うため……。
相変わらず人外を仲間にしていますが、私の趣味なのでご了承ください。
次回は新たな四人パーティーで冒険します。