百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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先週は投稿できずに申し訳ありませんでした。
今回は新たな仲間と一緒に冒険者を助けに行きます。


第2話 ならず者のサンカ

 別れたアエルスドロ達に代わり、茜はモリス、トーマ、リリーベルを仲間にした。

 彼らはガルバ帝国が侵略したブルーメボーデン王国から来た冒険者で、

 ならず者をしていたらしい。

 もっとも、冒険者もならず者のような存在だが……。

 

「それじゃあ、まずはどこに行きますか?」

「うーん、と言ってもなぁ……。とりあえず、困ってる奴を助けるのがいいんじゃないか?」

「それもそうですね」

 

 困っている人と言っても、誰がどう困っているのか、茜には目星がつかなかった。

 そのため、とりあえずうろうろして、困っている人を探す事にした。

 

 その頃……。

 

「勇気の姫騎士、エルメリア・アモリエール!」

「力の姫騎士、コノハ・エヴェルノート!」

「知恵の姫騎士、リーネア・マリナス」

 三人の貴族らしき少女が、村人を虐げるオークを退治すべく名乗りを上げた。

 刀を持っているゴシックドレスの少女、ローブを着た斧を持っている少女、

 スーツを身に着けたメイスを持っている少女。

 彼女達はフェーン王国の騎士団に所属している見習い騎士である。

 まだまだ騎士としては未熟なので、一切の罠を仕掛けずに正面から挑んだ。

 

 エルメリアは刀を構え、鋭い眼差しでオークを睨んだ。

「ここで立ち止まるわけにはいかない! 斬りつける!」

「たぁぁぁぁぁぁっ!」

 エルメリアの一撃は的確で、オークに確かな傷を刻む。

 続いてコノハが斧を振りかざし、一気に畳みかける。

 オークはよろめき、地面に崩れ落ちた。

 その間にリーネアが冷静に呪文を詠唱し、オークに向けて魔法を放つ。

 煌めく光が直撃し、オークを大きく後退させた。

 エルメリアは再び刀を振るい、オークに傷を負わせる。

 コノハも斧で追撃して、少しずつオークの力を削っていく。

 そしてリーネアが再び魔法の光を放ち、オークは耐え切れずその場に崩れ落ちた。

 

 しかし、安堵する暇もなく、ボスオークが現れた。

 巨大な体躯と凄まじい威圧感に、場の空気が一変する。

 エルメリアは迅速に動き、オークを狙う。

「この隙を作る!」

 エルメリアは意気込んで刀を振るうも、深手を負わせるには至らない。

 続くコノハの斧は力を込められたが、ボスオークは棍棒を振り下ろして攻撃する。

 だが、その隙を突いてリーネアが攻撃魔法を放つ。

 魔法の光はボスオークを貫き、その巨体を揺らす。

「これで終わりだ!」

 リーネアの声と共に、ボスオークは地に崩れ落ちた。

 ボスオークが倒れたので、残ったオークはどこかに逃げていった。

 

 その頃、茜達は、慌てている町の人と偶然出会った。

「大変です! 姫騎士を名乗る三人組が、隣の村でオークに襲われてるそうです!」

「えっ、オークに!?」

 オークは戦う事と弱いものいじめが大好きな魔族で、特に女性を積極的に襲うという。

 もしも襲われたら、力がなければ間違いなくオークにボコボコにされるだろう。

「今、助けに行きます!」

「待て、アカネ!」

「一人で挑むのは危険じゃ!」

「オレもついていくぞ!」

 茜がその村のある方向に走り出し、モリス達は急いで彼女を追いかけていった。

 そして四人が村に向かうと、何故かオークが殲滅されていた。

 

「一体、何があったんだ?」

 モリスが警戒しながら、ゆっくりと村の中へと足を踏み入れた。

 トーマも魔力を高め、いつでも魔法を放てるように準備している。

 リリーベルはナイフを手に、静かに茜の後ろに控えていた。

 すると、ゴシックドレスの少女、ローブを着た少女、スーツ姿の少女が現れた。

 三人ははボロボロになりながらも、誇らしげな表情を浮かべていた。

「私達がこの村を守ったんだ!」

 エルメリアが自信に満ちた声で宣言した。

 しかし、彼女達の姿は、勝利を収めたばかりとは思えないほど痛々しい。

「大丈夫ですか!?」

「待て、アカネ。どうやら、もう一つ危険なオークが残っておるようじゃ」

 茜は駆け寄って治そうとしたが、モリスが彼女を制した。

 モリスの視線の先には、先程倒されたはずのボスオークが、再び立ち上がろうとしていた。

「くそ……まだこんな力が残っていたなんて」

 コノハが悔しそうに歯を食いしばる。

 エルメリアも刀を構え直すが、その手は小刻みに震えていた。

 リーネアも魔力を絞り出そうとするが、もう力は残っていなかった。

「もう……ダメだ」

 エルメリアが力なく呟いた。

 その時、茜が静かに前に進み出た。

「ここは私達が引き受けます!」

 そう言って、茜は鞭を構えた。

 茜の背後には、モリスとトーマ、そしてリリーベルが立っている。

「誰だ、お前達!?」

「旅の冒険者です」

 エルメリアが驚いて叫ぶと、茜は優しく微笑んで応えた。

 茜の言葉に、エルメリアは戸惑いながらも、その瞳に希望の光が宿るのを感じた。

 再び立ち上がったボスオークが咆哮し、棍棒を振り下ろしてきた。

 その一撃は、大地を揺るがすほどの威力だ。

 しかし、茜はそれを冷静に見つめ、鞭を巧みに操る。

「モリス、トーマ!」

 茜の号令に、モリスは聖なる力で剣を光らせ、トーマは炎の魔法を放った。

 二人の攻撃はボスオークの動きを鈍らせる。

 その隙を突き、茜は鞭をボスオークの足に巻きつけた。

「リリーベル!」

「任せろ!」

 リリーベルは隠し持っていた毒を塗ったナイフを抜き、

 茜が拘束したボスオークの足に突き刺した。

 毒は瞬く間にボスオークの身体を巡り、その巨体をさらに弱らせる。

 

「なんて……なんて連携だ」

 三人の姫騎士は、見事なチームプレイに言葉を失った。

 

 そして、茜は渾身の力を込めて鞭を振り下ろした。

 その一撃は、ボスオークの急所を正確に捉え、ボスオークは絶叫しながら崩れ落ちた。

 茜達の活躍によって、村は今度こそ、安全になった。

 三人の姫騎士は感謝の言葉を述べ、茜達に深々と頭を下げた。

「私達では、とても歯が立ちませんでした。本当にありがとうございました」

「いえいえ、これも冒険者のお仕事ですから」

 茜は笑顔で答える。

 その時、エルメリアは茜の持つ鞭に目を留めた。

「その鞭……もしかして、あなたが噂の冒険者、アカネさんですか?」

「え、わ、私は……」

 エルメリアの言葉に、茜は驚いて目を丸くする。

「私、あなたを知ってます! 転売商人を倒したって!」

「わ、私じゃなくて……」

 リーネアが興奮した様子で言った。

 トーマとモリスは顔を見合わせ、苦笑いを浮かべている。

 リリーベルは少し複雑な表情で、俯いた。

「あなた達の噂は、もう騎士団でも広まっています。私達はあなたを尊敬しています!」

 コノハも目を輝かせて言うと、茜は照れながら頭を掻いた。

「あ、あの……私達はフェーン王国の騎士見習い、

 勇気の姫騎士エルメリア、力の姫騎士コノハ、知恵の姫騎士リーネアです!」

「私達は……まだ未熟者です。もっと強くなって、いつかあなたのような立派な冒険者になりたいです!」

 三人は一列に並び、改めて自己紹介をした。

 エルメリアの言葉に、茜は胸が熱くなった。

「私も、あなた達からたくさんの勇気をもらいました。いつか、また会える事を願っています」

 茜はそう言うと、三人の手を握り、優しく微笑んだ。

 

 茜達が村を後にし、数日が経った。

「しかし、姫騎士か……。ああいうまっすぐな人を見ると、こちらも背筋が伸びるのじゃ」

「だけど、ちょっと危なっかしいよな。もっと慎重にならないと、いつか痛い目を見るぞ」

 モリスがそう言って笑うと、トーマもそれに同意した。

 リリーベルは何も言わなかった。

 ただ静かに、茜の隣を歩いている。

「リリーベルさん、まだ、殺人事件の事で悩んでるんですか?」

 茜の問いかけに、リリーベルはゆっくりと顔を上げた。

「……ああ。あの時、君達に止められなかったら、私はデリサルを殺してしまっていた」

 リリーベルは悲しそうに目を伏せる。

「私は……何のために戦っているんだろうって、分からなくなる時がある。

 本当に、私は正しい事をしたんだろうか」

 茜はリリーベルの隣に立ち止まり、彼女の肩にそっと手を置いた。

「リリーベルさん。正義なんて、人によって違うんだと思います。

 でも、あなたが民を思って行動した事は、間違いなく正しい事です。

 方法は間違っていたかもしれないけど……」

 茜は一度言葉を区切り、まっすぐな瞳でリリーベルを見つめた。

「だからこそ、これからは私と一緒に、正しい道を探しましょう。

 人を傷つけない方法で、たくさんの人を助ける方法を」

 茜の言葉に、リリーベルは少しだけ目を見開いた。

 そして、リリーベルの心に巣食っていた闇が、少しずつ溶けていくのを感じた。

「ありがとう、アカネ」

 リリーベルは涙をこぼしながら、微笑んだ。

 彼女の心は、茜の優しさに触れて、少しずつ癒えていく。

 茜の冒険は、ただ困難に立ち向かうだけではない。

 それは、傷ついた魂を救う旅でもあった。




元々はピンチの冒険者を助ける予定でしたが、思ったより調子が良かったのでこうなりました。
次回は戦いの中に赴きます。
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