今回は新たな仲間と一緒に冒険者を助けに行きます。
別れたアエルスドロ達に代わり、茜はモリス、トーマ、リリーベルを仲間にした。
彼らはガルバ帝国が侵略したブルーメボーデン王国から来た冒険者で、
ならず者をしていたらしい。
もっとも、冒険者もならず者のような存在だが……。
「それじゃあ、まずはどこに行きますか?」
「うーん、と言ってもなぁ……。とりあえず、困ってる奴を助けるのがいいんじゃないか?」
「それもそうですね」
困っている人と言っても、誰がどう困っているのか、茜には目星がつかなかった。
そのため、とりあえずうろうろして、困っている人を探す事にした。
その頃……。
「勇気の姫騎士、エルメリア・アモリエール!」
「力の姫騎士、コノハ・エヴェルノート!」
「知恵の姫騎士、リーネア・マリナス」
三人の貴族らしき少女が、村人を虐げるオークを退治すべく名乗りを上げた。
刀を持っているゴシックドレスの少女、ローブを着た斧を持っている少女、
スーツを身に着けたメイスを持っている少女。
彼女達はフェーン王国の騎士団に所属している見習い騎士である。
まだまだ騎士としては未熟なので、一切の罠を仕掛けずに正面から挑んだ。
エルメリアは刀を構え、鋭い眼差しでオークを睨んだ。
「ここで立ち止まるわけにはいかない! 斬りつける!」
「たぁぁぁぁぁぁっ!」
エルメリアの一撃は的確で、オークに確かな傷を刻む。
続いてコノハが斧を振りかざし、一気に畳みかける。
オークはよろめき、地面に崩れ落ちた。
その間にリーネアが冷静に呪文を詠唱し、オークに向けて魔法を放つ。
煌めく光が直撃し、オークを大きく後退させた。
エルメリアは再び刀を振るい、オークに傷を負わせる。
コノハも斧で追撃して、少しずつオークの力を削っていく。
そしてリーネアが再び魔法の光を放ち、オークは耐え切れずその場に崩れ落ちた。
しかし、安堵する暇もなく、ボスオークが現れた。
巨大な体躯と凄まじい威圧感に、場の空気が一変する。
エルメリアは迅速に動き、オークを狙う。
「この隙を作る!」
エルメリアは意気込んで刀を振るうも、深手を負わせるには至らない。
続くコノハの斧は力を込められたが、ボスオークは棍棒を振り下ろして攻撃する。
だが、その隙を突いてリーネアが攻撃魔法を放つ。
魔法の光はボスオークを貫き、その巨体を揺らす。
「これで終わりだ!」
リーネアの声と共に、ボスオークは地に崩れ落ちた。
ボスオークが倒れたので、残ったオークはどこかに逃げていった。
その頃、茜達は、慌てている町の人と偶然出会った。
「大変です! 姫騎士を名乗る三人組が、隣の村でオークに襲われてるそうです!」
「えっ、オークに!?」
オークは戦う事と弱いものいじめが大好きな魔族で、特に女性を積極的に襲うという。
もしも襲われたら、力がなければ間違いなくオークにボコボコにされるだろう。
「今、助けに行きます!」
「待て、アカネ!」
「一人で挑むのは危険じゃ!」
「オレもついていくぞ!」
茜がその村のある方向に走り出し、モリス達は急いで彼女を追いかけていった。
そして四人が村に向かうと、何故かオークが殲滅されていた。
「一体、何があったんだ?」
モリスが警戒しながら、ゆっくりと村の中へと足を踏み入れた。
トーマも魔力を高め、いつでも魔法を放てるように準備している。
リリーベルはナイフを手に、静かに茜の後ろに控えていた。
すると、ゴシックドレスの少女、ローブを着た少女、スーツ姿の少女が現れた。
三人ははボロボロになりながらも、誇らしげな表情を浮かべていた。
「私達がこの村を守ったんだ!」
エルメリアが自信に満ちた声で宣言した。
しかし、彼女達の姿は、勝利を収めたばかりとは思えないほど痛々しい。
「大丈夫ですか!?」
「待て、アカネ。どうやら、もう一つ危険なオークが残っておるようじゃ」
茜は駆け寄って治そうとしたが、モリスが彼女を制した。
モリスの視線の先には、先程倒されたはずのボスオークが、再び立ち上がろうとしていた。
「くそ……まだこんな力が残っていたなんて」
コノハが悔しそうに歯を食いしばる。
エルメリアも刀を構え直すが、その手は小刻みに震えていた。
リーネアも魔力を絞り出そうとするが、もう力は残っていなかった。
「もう……ダメだ」
エルメリアが力なく呟いた。
その時、茜が静かに前に進み出た。
「ここは私達が引き受けます!」
そう言って、茜は鞭を構えた。
茜の背後には、モリスとトーマ、そしてリリーベルが立っている。
「誰だ、お前達!?」
「旅の冒険者です」
エルメリアが驚いて叫ぶと、茜は優しく微笑んで応えた。
茜の言葉に、エルメリアは戸惑いながらも、その瞳に希望の光が宿るのを感じた。
再び立ち上がったボスオークが咆哮し、棍棒を振り下ろしてきた。
その一撃は、大地を揺るがすほどの威力だ。
しかし、茜はそれを冷静に見つめ、鞭を巧みに操る。
「モリス、トーマ!」
茜の号令に、モリスは聖なる力で剣を光らせ、トーマは炎の魔法を放った。
二人の攻撃はボスオークの動きを鈍らせる。
その隙を突き、茜は鞭をボスオークの足に巻きつけた。
「リリーベル!」
「任せろ!」
リリーベルは隠し持っていた毒を塗ったナイフを抜き、
茜が拘束したボスオークの足に突き刺した。
毒は瞬く間にボスオークの身体を巡り、その巨体をさらに弱らせる。
「なんて……なんて連携だ」
三人の姫騎士は、見事なチームプレイに言葉を失った。
そして、茜は渾身の力を込めて鞭を振り下ろした。
その一撃は、ボスオークの急所を正確に捉え、ボスオークは絶叫しながら崩れ落ちた。
茜達の活躍によって、村は今度こそ、安全になった。
三人の姫騎士は感謝の言葉を述べ、茜達に深々と頭を下げた。
「私達では、とても歯が立ちませんでした。本当にありがとうございました」
「いえいえ、これも冒険者のお仕事ですから」
茜は笑顔で答える。
その時、エルメリアは茜の持つ鞭に目を留めた。
「その鞭……もしかして、あなたが噂の冒険者、アカネさんですか?」
「え、わ、私は……」
エルメリアの言葉に、茜は驚いて目を丸くする。
「私、あなたを知ってます! 転売商人を倒したって!」
「わ、私じゃなくて……」
リーネアが興奮した様子で言った。
トーマとモリスは顔を見合わせ、苦笑いを浮かべている。
リリーベルは少し複雑な表情で、俯いた。
「あなた達の噂は、もう騎士団でも広まっています。私達はあなたを尊敬しています!」
コノハも目を輝かせて言うと、茜は照れながら頭を掻いた。
「あ、あの……私達はフェーン王国の騎士見習い、
勇気の姫騎士エルメリア、力の姫騎士コノハ、知恵の姫騎士リーネアです!」
「私達は……まだ未熟者です。もっと強くなって、いつかあなたのような立派な冒険者になりたいです!」
三人は一列に並び、改めて自己紹介をした。
エルメリアの言葉に、茜は胸が熱くなった。
「私も、あなた達からたくさんの勇気をもらいました。いつか、また会える事を願っています」
茜はそう言うと、三人の手を握り、優しく微笑んだ。
茜達が村を後にし、数日が経った。
「しかし、姫騎士か……。ああいうまっすぐな人を見ると、こちらも背筋が伸びるのじゃ」
「だけど、ちょっと危なっかしいよな。もっと慎重にならないと、いつか痛い目を見るぞ」
モリスがそう言って笑うと、トーマもそれに同意した。
リリーベルは何も言わなかった。
ただ静かに、茜の隣を歩いている。
「リリーベルさん、まだ、殺人事件の事で悩んでるんですか?」
茜の問いかけに、リリーベルはゆっくりと顔を上げた。
「……ああ。あの時、君達に止められなかったら、私はデリサルを殺してしまっていた」
リリーベルは悲しそうに目を伏せる。
「私は……何のために戦っているんだろうって、分からなくなる時がある。
本当に、私は正しい事をしたんだろうか」
茜はリリーベルの隣に立ち止まり、彼女の肩にそっと手を置いた。
「リリーベルさん。正義なんて、人によって違うんだと思います。
でも、あなたが民を思って行動した事は、間違いなく正しい事です。
方法は間違っていたかもしれないけど……」
茜は一度言葉を区切り、まっすぐな瞳でリリーベルを見つめた。
「だからこそ、これからは私と一緒に、正しい道を探しましょう。
人を傷つけない方法で、たくさんの人を助ける方法を」
茜の言葉に、リリーベルは少しだけ目を見開いた。
そして、リリーベルの心に巣食っていた闇が、少しずつ溶けていくのを感じた。
「ありがとう、アカネ」
リリーベルは涙をこぼしながら、微笑んだ。
彼女の心は、茜の優しさに触れて、少しずつ癒えていく。
茜の冒険は、ただ困難に立ち向かうだけではない。
それは、傷ついた魂を救う旅でもあった。
元々はピンチの冒険者を助ける予定でしたが、思ったより調子が良かったのでこうなりました。
次回は戦いの中に赴きます。