百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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ついに戦いが始まろうとしています。
茜達は嫌というほど戦争というものを知るでしょう。


第3話 広がるセンカ

 茜達は、どこまでも続く土の道を歩いていた。

 道端には可憐な野花が咲き乱れ、遠くにはなだらかな丘が連なっている。

 穏やかな旅路のはずだった。

 だが、胸の奥には鉛のような重さが沈んでいる。

 

 ガルバ帝国の侵攻という噂は、最早噂ではない。

 帝国工作員達が国境を越え、幾つかの村や駐屯地が既に略奪されたという。

 その知らせが茜達の心に暗い影を落としていた。

 

 茜は不安げに空を見上げた。

 青く澄んだ空は、何も変わらない。

 だが、その下の世界は、確実に変わってしまっている。

 モリスは、そんな茜の様子に気づいたのだろうと、静かに言った。

「心配ない。儂らが守ってやろう」

「ありがとうございます、モリスさん」

 その言葉は、茜の胸に温かい光を灯した。

 茜は、モリスの頼もしい背中を見つめた。

 モリスは、茜にとって力強い存在で、モリスの言葉は、茜の心を励ました。

 

 その時だった。

 次のカーブの向こうから、悲鳴が聞こえてきた。

 悲鳴は震え、恐怖に満ちていた。

 茜達は、互いに顔を見合わせた。

 

「な、何かあったみたいですね」

 茜の声が震える。

 次の瞬間、カーブを曲がって一人のエルフの若者が飛び出してきた。

 彼は、全身泥まみれで、息を切らしている。

 その若者は、茜達の姿を認めると、安堵の表情を浮かべた。

「頼む、助けてくれ!」

 若者は、必死の形相で茜達に駆け寄ってきた。

「ど、どうしたんですか? そんなに慌てて」

 茜は若者の様子に驚き、声をかけた。

「じ、実は……」

 若者は、ようやく息を整え、震える声で語り始めた。

 リースと名乗った若者は、この近くの農場で働いていたという。

 彼は、兵士達に雇われ、キャラバンを護衛していた。

「私達は、この先にある村に向かっていたんです。そこに、ガルバ帝国の兵士達が現れて……」

 リースの声が途切れ途切れになる。

「何が起きたんですか?」

「帝国軍に襲われたんです……」

 茜は、静かに尋ねた。

 リースは、目を閉じ、当時の光景を思い出した。

 突然、茂みの中から現れた帝国軍の兵士達。

 彼らは、まるで獣のように、容赦なく襲いかかってきた。

 兵士達は、次々と倒れていく。

 リースは、その光景に恐怖し、ただ只管に逃げ出した。

「私は……怖くて、何もできなくて……」

 リースの目から、涙が零れ落ちる。

「大丈夫ですよ」

 茜は、そっとリースの肩に手を置いた。

 その温かさが、リースの心を少しだけ癒してくれた。

「よかった、あなた達に会えて……」

 リースは、安心したように息をついた。

 

 茜達は、リースと共に襲撃現場へと向かった。

 道の先に進むと、見るも無惨な光景が広がっていた。

 一台の荷馬車が、ひっくり返っている。

 木製の車輪は壊れ、積まれていた荷物は散乱していた。

 その周りには、鎧を身に着けた死体がいくつも転がっている。

 茜は、その光景に言葉を失った。

 そして、その残骸を漁る影があった。

 ガルバ帝国の兵士達だ。

 彼らは、死体のポケットを探り、荷物の中から貴重品を探し出している。

 

「同じ人間同士なのに、どうしてこんな事をしてるんですか?」

 茜は、胸が締め付けられるような思いで、その光景を見ていた。

 モリスは、そんな茜の様子を見て、静かに言った。

「戦争というのは、そういうものじゃ」

 モリスの言葉は、茜の心を突き刺した。

 戦争……それは、人間が人間を傷つけ、奪い合う行為。

 茜は、その恐ろしさを、初めて目の当たりにした。

 茜は、帝国軍兵士の鎧に目をやった。

 そこには、見慣れない聖印が記されていた。

 どうやらここ、アルカディアの光の神「ソルクシス」の聖印らしい。

 茜は、ただ、見ている事しかできず、自分の無力さを痛感した。

 

「私……何かしないと」

 茜の心に、強い決意が芽生えた。

 このまま、ガルバ帝国の侵攻を黙って見ているわけにはいかない。

 村を守り、そして、この世界を守る。

 茜は、そのために、できる事をしようと誓った。

 

「皆さん。この先の村へ行きましょう」

「うむ」

「「ああ」」

 茜の声は、決意に満ちていた。

 モリス、トーマ、リリーベルは、茜の決意を認め、静かに頷いた。

 

 三人は再び歩き出し、リリーベルは空を飛んだ。

 その足取りは、先程とは違い、確固たるものだった。

 茜は、胸に秘めた決意を燃やし、一歩ずつ前に進んでいく。

 行く手には、困難が待ち受けているだろう。

 だが、茜は一人ではない。

 この世界の人々と共に、茜は戦う事を決意した。




戦争を描いた漫画やゲームはいくらでもあるのですが、
児童書作家がこれを見たら、恐怖で××するかもしれませんね。
次回は目的地の村へ向かいます。
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