砂嵐の吹き荒ぶ場所、アビドス砂漠。人の営みの多くが風化していくこの砂漠に、僕は身を置いている。
日々の大半を孤独に過ごし、時たまにアビドス砂漠を発掘する者達を襲う。そうして遥か彼方まで続く砂と瓦礫の大地を眺めてきた。
美しいと思ったことはなかった。砂漠に残る風の跡にも、遥か彼方まで続く砂漠の更に先へと沈む真っ赤な太陽にも、なんの意味もないと思っていた。
でもあの日は、彼女と共に砂漠を進んだあの日だけは、遥か彼方まで敷き詰められた砂の一粒一粒がかけがえのないもののように思えた。ほんの少しだけ、美しいと思えた。
僕は彼女の事を愛していた。でも、僕と彼女は出会うべきでなかった。何度も何度も逢うべきではなかった。
でも、それでも、僕は彼女を愛している。
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擬音語ならアハハハッといった所だろうか、いつものように砂漠を眺めていると、廃墟群の方から鈴のような笑い声が聞こえてきた。
普段は(廃墟だから当然だが)誰もいない場所だ、確認をしておくべきか。僕は廃墟群へ向かった、そこで彼女と出会った。
「ここはこうして〜っと、ここは〜?」
廃墟群では、一人の少女が壁にスプレーを吹きかけていた。スプレーからはインクが出ている、絵を描いているのだろう。こちらには気づいていない様子だ。
「うー、あそこがああなっているからバランス的には・・・」
少女に近づく。水色の瞳をまっすぐに廃墟の壁に向けていて、自分の横の存在にも気づいていない。
「うんうん!良い感じ!このままラストも行っちゃえ!」
僕がこれまで見たどんな空よりも濃い青の瞳、どんな朝焼けも夕焼けも敵わないような赤い髪、彼女は自分が描いている絵と同じくらい鮮やかだ。
「よし!完成!今日のグラフィティも完璧だね!って、うわあああああ!」
少女は絵を描き終わり、画材であるスプレーをしまった後、僕を見つけて叫んだ。
「・・・えっと、失礼しましたー!」
少女が走り去って行く。少し話がしたかったけど、よく考えると僕はそもそも喋れないし待ってと言うこともできない。
少女は走り去ってしまったができることならもう一度会いたい。そう思って少女の発言を思い出していると閃いた。彼女は自分の描いた絵をグラフィティと言っていた、ということはあの絵は彼女の名前が描かれたものだ。
廃墟の壁に描かれた絵を見る、M・A・K・I。彼女の名前はマキらしい、少女だからマキちゃんと呼ぶべきか。
もう一度マキちゃんに会いたい。その一心で僕はずっと砂漠を見つめていた。
次の投稿は2〜3ヶ月後になると思います。