艦娘になった少年〜呉鎮守府の転生者〜 作:照明担当
艦隊に近づくにつれ、こちらを攻撃してくる艦載機も多くなってくる
ほとんどが翔鶴と瑞鶴の艦載機に撃ち落とされているが、何機かはこちらにきてしまう
だが、それはしっかり私が撃ち落とす
艦載機の動きはあまり大したことなく、簡単に撃ち落とせるが如何せん数が多く、なかなか艦隊に近づけない
遠くを見れば由良達が艦載機と戦っている姿が見える
通信は届くかもしれない…妨害されてなければ
『こちら霞よ、聞こえてる?』
通信機に向かってそう言うと、暫くしてから雑音とともに由良の声が聞こえてくる
『霞ちゃん!?無事なの!?』
『大丈夫、リ級も倒したわ』
心配する由良に無事を伝える
良かった、久しぶりに人の声が聞けた気がする
…実際は数十分程度しか経ってないだろうけど
『リ級を!?すごいじゃない!でも今はそれどころじゃないから早く合流してほしい!』
由良がそう言うと通信が切れてしまった
あっちはかなりまずい状況なのかもしれない
艦載機が少なくなったタイミングで一気に速度を上げる
この際少しの被弾は仕方ない
小破までなら攻撃は受けれる…どうせ駆逐艦は大した耐久があるわけじゃないし、小破程度どうにでもなる
一気に速くなったことで、艦載機は追えず、爆弾一発が当たっただけで済んだ
その爆弾も当たりどころが良かったらしく、大した損傷はない
正し、二発残っていた魚雷は魚雷発射管が壊れたことで使えなくなった
これは仕方ない、必要経費ってことにしておこう
「皆、大丈夫?」
「なんとか!時雨ちゃんが動けないから霞ちゃんも対空に協力して!」
着くや早々吹雪からそんな事を言われる
「敵の空母は?」
「翔鶴さん達が相手してるから、倒してくれるまで持ちこたえるんだ」
大変そうな吹雪と由良に代わり、時雨が変わりに答える
その時雨は服がはだけ、艤装も完全に壊れていた
…艤装が壊れるのはまだいいが、服があそこまではだけるのは最悪だ…大破ってやつは
…次から次へとくる艦載機を撃ち落とす
訓練とシューティングゲームで鍛えた対空により、先程より格段に余裕ができていはいるが、ここに来る道中で使ってたこともありもうすぐで弾切れになる
ていうか、すでに吹雪は弾切れなのか空を睨むだけだし、由良もあまり撃っていない
このままだと弾切れでこっちが壊滅する
「敵の空母はまだ倒せないの!?」
護衛のために近づいていた翔鶴に聞く
「それが…見つけた空母ヲ級は撃沈しましたが、まだまだ大量の艦載機が来ていて、火力支援のために主力艦隊に向かわせていた艦載機を呼び戻しても、なかなか減らないんです」
そんな…ヲ級だけじゃないのか!?
まさかと思うが敵の空母は、ヲ級のeliteやflagship、もしかしたら姫、鬼級なのか!?
「ここは一度下がった方がいいんじゃない?」
これ以上戦っていたら確実に負ける
ならば撤退するしかない
主力にまわしていた艦載機をこっちに持ってきても主力艦隊が負けたと報告が来ない以上、戦況はこっちが有利だと思う
この正体不明の空母があっちにいく可能性はあるが、その時はあっちに頑張ってもらうしかない
こっちは頑張っても勝てなかったわけだし
「これ以上戦ってもジリ貧よ、沈む前に戻るべきよ!」
「………」
なぜ…黙るんだ?
完全に全員が弾切れを起こす前に逃げないと!
「それは…それは…」
今回の旗艦、翔鶴からは弱々しい声しか返ってこない
なにを渋っている?
「早く逃げ「それはできません!!」…!?」
泣きそうな顔ながら先程とは想像もできないほど力強い声が返ってきた
もしもこんな状況じゃなければ頼もしいのに…
「なんでよ!あんたは仲間が沈むかもしれないのに、撤退もできないの!?旗艦なんでしょ!?」
その声に熱くなってしまい、ほぼ怒鳴るような声で抗議する
「駄目です…!作戦成功まで帰ることは提督が禁止しています」
は?なんで禁止なんかしているんだ?自分の指揮下の艦娘が沈むかもしれないんだぞ?
………艦娘道具派…それか…
終わり…なのかな、旗艦が断ったら撤退はできない
………
『支援艦隊の旗艦は別のところの空母だ。だが、もし犠牲者が出そうなら"秘書艦の権限"を使って撤退してくれ』
頭の中で司令官が言っていたことを思い出す
そうだ、その手があった
思い立ったが吉日、すぐに通信機を使い、艦隊の皆に通信を繋ぐ
「…呉鎮守府秘書艦の権限を使用し、第三火力支援艦隊は一度離脱します」
その言葉を聞いた翔鶴はどこか安心した顔した
本人だってあの指示に従うのは不服なんだろう…それなのに怒鳴ったと考えると、少し悪くも思える
と、同時に艦載機を撃っていた砲からは弾がでなくなる
遂に弾切れをおこした
危なかった、もう少し遅れていたら弾切れのままこの艦隊の旗艦で主力の空母と戦場でしかも無防備なまま言い争っていた
少なくともこのとき、私は油断していた
その油断は命取りとなった
突然吹雪が叫ぶ
「ッ!艦載機です!」
その声を聞き砲を構え、砲を降ろす
弾がない
時雨から弾をもらっていた吹雪がやってきた艦載機を撃ち落とすが、足りない
圧倒的に対空要員が足りていない
翔鶴姉妹の艦載機も吹雪の対空も、空を埋め尽くすような大量の艦載機には無力だった
私達は一気に爆撃の雨に晒される
回避行動を取り、少しでも多くの爆撃を避ける
「時雨!」
まずい、時雨は早く動けない!爆撃機も迫っている!
時雨を助けるために咄嗟に思いついたのは時雨を押し出して無理矢理避けさせることだった
結果時雨は助かった
その代わり、私が爆撃を受けることになった
身体中に激痛が走り、視界が黒に染まる
最後まで頭に残っていたことは時雨を助けれて良かった、だった