艦娘になった少年〜呉鎮守府の転生者〜 作:照明担当
新しく時雨を鎮守府に迎えてから一週間
遂に大規模作戦の日となった
あれから一週間の間、演習を何度も行い、練度を上げた
「皆、頑張ってくれよ」
司令官が出発前の私達に声を掛ける
「もちろんです。司令官、必ず成功させます!」
吹雪が威勢よく返す
「大丈夫だよ。提督」
「由良にお任せください!」
由良と時雨もそれに続く
そして、
「すぐに終わらせて、無事に帰ってきてあげるわ」
自分もしっかりと意気込みを伝える
もちろんだが、誰か一人欠けて帰ってくるなんてことは絶対に無いようにする
そんなことが起きたら、この司令官は私達を責めず自分を責め続けるだろう
そうなったら司令官に二度と顔向けなんてできない
全員の準備が整い、遂に大海原へと進み出す
「…頼むから…無事に帰ってきてくれよ」
四人が出発し、静かになったら鎮守府で、提督は小さく呟いた
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鎮守府が見えなくなり、しばらく経つ
もう少しで合流地点だろう
一度今回の私達の動きを整理する
まず、別の鎮守府の空母『翔鶴』と『瑞鶴』…五航戦と呼ばれる二人と合流する
その後は作戦海域で、作戦開始の連絡を待ち、作戦が始まったらひたすらに二人を護衛する
仕事数自体は少ないが、どれくらいの深海棲艦が現れるかは分からないし、艦娘道具派が動くかもしれない
そう考えるとかなり、緊張してしまう
まあ、実際に敵の本隊を叩く部隊の方が緊張感は高いだろうが
景色が変わらない海を進んでいくと前に人影が見えてきた
弓道着を着て、肩には飛行甲板があり、大きな弓を持った艦娘
彼女らこそ、五航戦の二人だ
「五航戦の方々が見えてきましたね」
吹雪がそう言ったタイミングでちょうどあちらも気づきこちらに手を振ってくる
「五航戦の瑞鶴さんと翔鶴さんで会ってるかな?」
近づいたあと時雨が、最初に話しかける
「そうよ。私が瑞鶴でこっちが翔鶴姉」
「よろしくお願いしますね」
二人が自己紹介をし、私達もそれに応える
「この水雷戦隊の旗艦をしている由良です。今回はよろしくお願いします」
「吹雪です。全力でお守りします!」
「僕は時雨だよ。よろしくね」
「霞よ。深海棲艦は一匹たりとも近寄らせないわ」
全員の自己紹介が終わり、由良が旗艦を翔鶴に譲った
空に目を持つ空母の方が正確な指揮が執れるからだ
その後は作戦海域に侵入し、作戦開始の連絡を待つ
初の大規模作戦ということで、緊張を感じる
しかし、それと同時に初めての本格的な戦いに興奮している自分もいる
作戦海域に侵入してから数十分、遂に大規模作戦が開始された
「全航空隊、発艦始め!」
「目標敵艦隊、攻撃隊発艦始め!」
翔鶴と瑞鶴の威勢良い声が海に響き、それと同時に遠くで両者の主力艦隊がぶつかり合う音が聞こえてくる
二人が攻撃隊を発艦させてしばらくすると、翔鶴が
「敵艦隊接近中!戦力は駆逐艦四隻、軽巡一隻、重巡一隻」
と、こちらに敵の接近を報告する
その報告を受け、すぐに私達は二人から離れ、迎撃に向かう
「狙って…砲撃します!てーぇ!」
先頭にいる由良が、敵艦隊の前を走る駆逐艦…駆逐イ級に砲撃する
その砲撃は見事に命中し、イ級は速度を落としていく
撃沈とまではいかなかったが、イ級は駆逐艦の武器である走力を失った
「私もいきます!当たってー!!」
由良に続き吹雪も砲撃する
吹雪の放った弾は駆逐艦達の少し後ろにいた軽巡ホ級に命中したが、こちらは装甲で受け止められてしまう
二人が、砲撃している間に私と時雨は後ろで様子を伺っていた重巡リ級に近づく
重巡相手じゃ、砲撃では倒せないが駆逐艦には戦艦さえも沈める必殺技がある
うまく当たれば相手が重巡でも沈められる
「魚雷を発射するよ!」
まずは時雨が戦艦すら破壊する魚雷で攻撃する
しかし、リ級はすぐに避けて反撃とばかりに砲撃したが、急にリ級の背後が爆発し、リ級は煙に巻かれ姿が見えなくなる
こっそりと放っていた魚雷が命中したのだ
私は内心では喜びつつも、油断なく構える
魚雷は三発放ったが、軌道的に一発しか当たっていないだろう
もしかしたら、耐えているかもしれない
「霞、来るよ!」
時雨がそう叫んだとき、煙から砲撃が飛んできた
咄嗟に体を横に倒し、避けたが時雨が言っていなかったら当たっていた
時雨に感謝の気持ちを伝える暇もなく、次弾が飛んでくる
今度もしっかり避け、煙の方を見るとそこには所々損傷しつつも健在なリ級の姿があった
しかもそのリ級は赤い煙のようなものを纏っていた
それは転生前の記憶に思い当たるものがある
普通の深海棲艦よりも遥かに強力になるeliteクラス
そのeliteである重巡が、目の前で不気味に笑っていた