艦娘になった少年〜呉鎮守府の転生者〜 作:照明担当
普通の深海棲艦よりも遥かに強力になるeliteクラス
そのeliteである重巡が、目の前で不気味に笑っていた
その顔は悪魔と言っても過言ではない
相手の損傷は小破程度
お世辞にも練度が高くない私達では、厳しいといえる
さらに言えば由良達は駆逐艦と軽巡を相手していて、援護は望めない
つまり、時雨と私でこの薄気味悪い重巡リ級eliteを倒さないといけないのだ
「厳しい戦いになりそうね…」
「そうだね、でも勝つしかない」
その通りだ
私達が負ければ後ろの由良や翔鶴達が危ない
下がることは許されない戦い…勝てるか?という不安は大きい
でも、時雨が隣にいる
私は一人じゃない!
「いくよ!霞!」
そう言いながら砲撃した時雨を合図に命を賭けた戦いが始まった
「沈め!」
と、手始めに放った魚雷は全て避けられる
時雨も魚雷と砲撃を放っていたが、全く当たっていない
明らかに動きが良くなっている
しかし、リ級からは舐めているとしか思えない生温い攻撃しか飛んでこない
「私達を舐めるとはいい度胸じゃない!絶対にあんたを沈めてやるわ!」
「僕達を侮った報いはしっかり受けてもらうよ!」
さっきまでは連携が足りてなかった!
バラバラに撃ってもそれぞれ冷静に避けられるだけ
ならばタイミングを合わせる
「…喰らいなさい!」
そう言いリ級の正面から魚雷を放つ
重巡の正面なんて危険すぎるが、戦いの時点で危険なんだから大した違いはない
そしてその魚雷を避けようと移動した時、時雨の放った魚雷がリ級に直撃する
「学ばないね、さっきもこれで攻撃を受けていたってのに」
そう、先ほどと同じように不意打ちをしたのだ
不意打ちは見事に成功し、リ級は大爆発に巻き込まれる
普通のリ級ならこれで終わっていたかもしれない
だが相手はelite、油断なんてできない
「_________!!!」
ほら見ろ、リ級が声にならないような叫び声を上げ、煙から出てくる
体を纏う赤いオーラは一層強くなっているように感じる
ドォォォォォォォン
リ級はまるで早撃ちのように砲撃した
時雨が狙われて…軽く10mは吹き飛んだ
立ち上がろうとしておるが、おそらく大破しているだろう
その目からはまだ闘志を感じるが、大破している以上無茶はさせられない
「時雨!あんたは戻って他の人にこいつのこと伝えて!」
だから時雨は下がらせる
「でも…僕は…まだ…戦える…よ」
「そんなボロボロで言われても信じれないわよ!私が時間を稼ぐから撤退しなさい!秘書艦命令よ!」
時雨を沈めさせるわけには行かない
大丈夫、一発までは耐えれる
時雨が逃れれば、空母の艦載機の援護が来るかもしれない
「…分かったよ」
秘書艦権限を使われ若干不服そうだが、素直に下がる
時雨が完全に戦線から離脱したのを確認したら、リ級の方へ目を移す
リ級は未だ晴れていない煙の中に隠れていた
損傷が激しいのだろう
魚雷を一発か二発ぶち込めれば倒せる
問題は痛い目に遭わせれ、こちらを倒すべき敵と認識したリ級に攻撃できるかだ
時雨の航行速度はかなり遅くなっていた
援護はしばらくは来ない
でも、相手だって援護は来ていない
つまりお互いに孤独の戦いだ
煙が晴た途端に砲撃が飛んでくる
「危なっ!?」
慌てて回避したが、続くように大量の砲撃が飛んでくる
所謂火事場の馬鹿力というやつだろう
孤独な状態で、ボロボロで、相手は一撃でこちらを沈めてくる可能性がある奴
逆も同じなんだけどな
孤独で、被弾したら負けと死が確定する
だけどそれが面白い
昔からこういう逆境には燃えるんだ
ゲームでも現実でもな!
まず、牽制として砲撃を入れる
魚雷はやすやすと撃てない
なぜなら、残りが三発しかないからだ
あいつを倒すには二発は残したい
つまり一発しか外せない、猶予がない
しかし、砲撃すらも当たらないような相手で、かなりの至近距離でもないと魚雷を当てるのは至難の業だ
「焦れったいわね…」
なかなか、近づけないまま時間は経過するが、実際は多分そんな時間は経っていないんだろう
時間が経っていれば援軍が…そうか、勝つ必要なんてないんだった
焦って忘れていたが、私は一人じゃない
ならば魚雷を放てる!
リ級は絶対に魚雷に当たりたくないだろうから、大きく回避するはず
砲撃でもいい、何が当ててやって相手を焦らしたい
そうすれば回避しやすくなり、勝つ可能性も見える
「そうと決まれば、躊躇う必要なんてない!魚雷、いっけー!」
予想通り、リ級は魚雷相手に大きな回避行動を取り、隙が生まれた
そこを逃すほど甘くはない
引き金を引き、砲撃する
大した火力は出ないと思っていたが、その砲撃をうけたリ級は、大爆発を起こし、爆沈した
「終わった…の?」
その問いに応えるものはおらず、遠くから艦載機と戦闘の音が聞こえるのみ
………どうやら勝利したようだ
大爆発を何度も受けるなんて哀れなやつだ…
「戻らないと…」
新たな敵が現れる前に合流しなくては
それに大破していた時雨も心配だ
もう少し勝利の余韻に浸っていたかったがここは戦場、その少しが惜しい
急いで進路を変更し、艦隊に合流しにいく
よく考えればおかしいことがある
駆逐艦と軽巡が相手なのに、未だ戦闘している
いくらなんでも長すぎる
その不安は的中した…してしまった
空に明らかに艦娘のもではない艦載機が飛んでいたからだ
どうして問題は次から次にやってきて、休息を与えてくれないのか
溜息を一つ吐き、速度を上げる
演習で他の人より鍛えていた対空を見せる機会だ
そう思おう