少しずつまた伸びてるのが嬉しいからですかね?
静岡行ってから最初の月曜。目の前では俺が一応お土産として買ってきた饅頭をもちゃもちゃ食べているタコがいる。そんなタコが発した最初の一言。
「そういえば、烏間先生が言っていましたが、また転校生が来るようですねえ」
転校生。律が来てからまだ1ヶ月ちょいなのだが、思ったよかとんとん拍子に来るな、という印象を持つ。一年しか期間がないから焦るのは当たり前ではあるのだが。
「ま、十中八九殺し屋だろうな」
陽斗の発言は尤もである。有数の進学校の椚ヶ丘で劣等生に当たるわざわざE組に来る変態というかマゾはいないだろう。
「律さんのときは少し甘くみて痛い目を見てしまいましたからね……次は油断しませんよ」
そう指をポキポキ鳴らすかのような仕草でまちかまえる様子だ。その骨を鳴らしてるような音はどこから出ているのか聞きたいところではあるが。
「ところで……律は何か知らないの?同じ転校生暗殺者だし」
誰もが思ったであろう疑問が原さんから飛んでくる。何気に原さんは刺さる言葉を飛ばしてくる。それはそうと、少しだけ知っているという含みを持ちながら話す律。
「本来なら私と『彼』は同時投入でした。私は遠距離射撃、彼は近接戦闘という形で。しかし……」
全員が律のしかし、という言葉に耳を疑った。何せ、律が放ったその言葉は……
「その命令はキャンセルになりました。理由は2つあり、1つは彼の調整に時間が想定外にかかったこと、もう1つは私が彼より圧倒的に劣っていたから」
「それで重要度が低い私から随時投入……という形になりました」
その言葉に絶句したというのが全員の総意であろう。何せ殺せんせーの指を消し飛ばした律が比較対象として大幅に劣っている、という事実が出されたのだから。
そんな話をしている最中、扉が開いた。ん?転校生が来たのかなと思ったのだが……
なんか白いぞ
まるで素顔を見せたくないかのように全身白装束。顔がわからないというのは怖いのだが。そうしてぬるっと入ってきた人間がやってきたことは……
「なぜ手品……」
どこからともなくハトを出してきた。意味がわからない。とはいえ、誰だよこいつという雰囲気からおもしろおじさんみたいな雰囲気に若干変わったのがみて取れる。
「驚かせてすまないね、転校生は私じゃないよ。私は保護者だから」
そう言って白いからシロと名乗った保護者。どことなくきな臭い雰囲気を感じる。で、肝心の殺せんせーといえば……
某有名RPGの経験値のアレみたくなってる。どうやら液状化というらしいが。
「ビビってんじゃねえよ殺せんせー!」
「奥の手の液状化まで使ってよー!」
「いや、ちょっ、律さんがおっかない話するもんですから……」
殺せんせーはビビリなのだろうか。そう思案してるうちにいつもの服に液状化体のまま入って行っていつの間にか元通りだ。
「初めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」
「初めまして殺せんせー。性格とかが特殊な子なんでね、私が直で紹介させてもらおうかと思いまして」
中坊なのにも関わらずなぜか保護者同伴の転校初日と考えるとよくわからない。それが性格なのか?とも言われるとわからないというのが現状である。にしてもこのシロってやつも何者なんだ?掴みどころのない感じはするしいい子そう、という言葉にも若干のラグがあったように見えるし。微妙な不快感を感じる。父親にも似てる不快感。改めて戦慄することになるのかもしれないとも。これも父経由でこうなってしまったのだろうが、軽薄そうな男は初見ではまず信用するな、と言うことまで学んでしまっている。
「では紹介します。おーいイトナ、入っておいでー」
なんでこっち向いてんなこと言ってるんだ。そう思った直後、真後ろでガッという音を鳴らしながら白髪の小柄な少年が入ってきた。俺も含めて全員がこう思っただろうが。『ドアから入れ!』と。
「俺は勝った……この教室の壁よりも強いことが証明された……」
それだけでいい、それだけでいいとぶつぶつ言ってるが、結論から言ってしまえばめんどくさそうなのがきやがった、である。若干リアクションに困るタイプではあるけど、それ以上に殺せんせーが笑顔でもなく真顔でもなくほんと中途半端な顔をしていることからもめんどくささが窺える。
「堀部イトナだ。名前で呼んであげてください」
ついでに少々過保護なのでしばらく見守るという宣言もしたシロ。何度も言うが一応中学生のはずだろ。保護者が平然と居座ると言うのもおかしい。何を企んでるんだあの男は。
「ねーイトナくん、ちょっと気になったんだけど今手ぶらで入ってきたよね。その土砂降りの雨だよ?なんで一滴たりとも濡れてないの?」
言われてみれば確かにとなる。傘持っていないならビチャビチャになっててもおかしくないはずである。
そう思案しているうちにイトナとやらはキョロキョロした末にカルマに対してこう言っていた。
「お前は多分このクラスで1番強い。だが俺より弱い。だから殺さないでおいてやる」
俺より強いやつだけ殺すと言いながら殺せんせーの方に歩みを進めていったイトナはこうも言い放った。
「だって俺たち、血を分けた兄弟なんだから」
あまりにも衝撃的な爆弾発言。クラス一斉に『兄弟ィ!?』と驚いた。もちろん自分もであるが。側から見たら全くの別種の存在であり、兄弟だなんてことはあり得ないはずだ。まさか触……いや、そんなわけないか。とこの考えをシャットしておいた。
イトナはと言うと放課後に殺しにくる、と言って一旦どこかへ消えてった。何しに来たんだ。
「先生、兄弟ってどう言うこと!?」
「タコと人で全然違うじゃん!」
そう詰められる殺せんせー。当然である。何せ突然兄弟が生えてきた状態なのだから。
「いやいや、私全く心当たりありません!先生、生まれも育ちも一人っ子ですから!」
そう言いつつ親にせがんだら気まずくなったとか言う面倒なエピソード混ぜてくるのもまた殺せんせーらしい。
____
時間変わって昼休み。いつものように桃花に引っ張られて飯を食べてる時。
「ねー、新って本当に殺せんせーとイトナくんって兄弟だと思うの?」
「まあどっちも嘘を言ってるふうには見えないし……」
率直な感想を言えば両方嘘を言ってるようには見えない、以上おしまい。ではある。そのケがあるわけでもないだろうが、側から見たら信用できるのは殺せんせーの言い分なのかもしれない。シロが苗字を晒していないことも含めて何か違和感がある。
「考えすぎだよ、新。甘いもの食べよ?」
「あー、うん食べる……」
そう言いつつも何やらシュバってきた殺せんせーにも分けてあげることに。……と思ったらめちゃくちゃ食べてるじゃねーかと突っ込みたくなった。
「殺せんせーって甘党だけどさ……イトナくんもやたら食べてない?」
「確かに……」
イトナも甘党なのだろうか。兄弟説が囁かれた以上、細かな部分さえも見られるようになってしまっている。悠馬と陽斗が表情読み取りにくいとか言ってるし。……で、グラビアを持ってくるなアホタコ。普通に不健全寄りじゃねえか。と言いつつもイトナと岡島も読んでるしギリ……いやよくねえわ。
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そんなこんなであっという間に放課後、どうやら机のリングみたくするらしい。まるで試合形式だ。
「普通の暗殺はもう飽きてるでしょ、殺せんせー。ここはルールを一つ……」
そう言ってシロが提案してきたものはリングの外に足をつけたら死刑、と言うもの。普通に考えたらこんなルール守るわけないだろうけど……
カルマは
「決めたルールは破ったら先生としての信用が落ちる、だから意外と効くんだよねこういうの」
と言うあたり、シロは殺せんせーのことをこの短期間で熟知してるのか?とも考える。
「受けましょう……ただしイトナくん、観客に危害を加えた場合も負けですよ」
殺せんせーがそう言った瞬間、シロは右手を上げ、振り下ろした。
その刹那の瞬間だった。殺せんせーの職種が切り落とされているのである。
「まじか……」
触手、悪い予感は当たるものであると感じられる。人が持っていいものじゃないだろうと思うが……それはそうと、触手対触手は見ものかもしれない。
イトナくんは割と好きだったりしましたね。
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