この2人の感じってこんなものだったかな···
「烏間先生から渡されましたこの書類、新しくE組に来る生徒の個人情報が入っているとの事でしたが、一体どのようなものなのでしょう」
烏間先生から渡されたE組に転入してくるという本校舎の生徒の書類とのことですが、何が載っているのでしょうか。
___
「ふむふむ···南雲新くんですか」
端的に見れば普通の少年であるように見える。体格などで圧倒的に秀でている、という訳でもない。だが私には引っかかるものがある。もう少し読み進めてみるとしよう。
「どれどれ···おっと、彼のプロフィールが載ってますね。読んでおくとしておきましょう」
「身長は173cm、元バスケ部なのですか。そこでエースを張れる実力と···見た感じ学力にも問題ないようなのですが、何故彼がE組に来るようになったのでしょう」
しかし妙だ。彼はE組に来るような生徒には見えない。むしろ
「おや?椚ヶ丘の中での彼のことがまとめてありますね。これは読むしかありません!あんなことやこんなことが書かれてるやもしれません!」
私の生徒となるスキャンダルは見過ごせません!というものは置いておくとしよう。椚ヶ丘の中でなにかトラブルを起こしてE組に来ることになったのではないかと思わざるを得ない。
「これは···!」
その内容は輝かしい実績と同時に見せられる暴行の数々。彼が暴力沙汰を起こしたためにE組に落とされたと考えるべきなのだろうか。だがしかし、暴行を受けたと証言する生徒たちには暴行を証明できるほどの生傷が見当たらない。彼は嵌められた?そう考えると流れが自然になってくる。
「おや、彼は一時的に不登校になっているようですね。ヌルフフフ、手入れが楽しみになってきました」
何はともあれ彼は明日にも来るそうだ。彼に会うのも私は楽しみにしている。
___
「ねぇ渚、烏間先生からのメール見た?」
「え?あ、うん」
烏間先生から来たメールはもちろん僕も見た。そのメールによると、E組に本校舎からクラス移動になった生徒が新しく来るとの事だった。もう既にクラス分けがなされてるにも関わらず何故に今になってクラスが変わる人がいるのかという疑問は残ってはいるが、ここに来る人のことは気になってはいる。
「でもさ、大変だよねその人。本校舎から急転直下でここに来るわけでしょ?」
「まあ確かにね···」
椚ヶ丘での勉強についていけず、落ちこぼれてしまった人の集まり、通称「エンドのE組」様々な面で差別を受け、そのまま沈んでいってしまう。抜けることが出来ない、底なし沼のように。
「やっぱそうだよねー。あっ、殺せんせー来た」
茅野と話してるうちに殺せんせーが来た。それと同時にここにいるのはありえないであろう人物がそこにはいた。
「皆さん、おはようございます。皆さんも知ってのとおり、新しい仲間が増えます。さ、自己紹介を」
「はい。···ってなんでお前いるの?桃花さ···」
「「「「(いきなりそこから突っ込むのかよ!)」」」」
入った瞬間に発した一言目がこれだということにクラス全員がこと思ったことだろう。多分矢田さんと彼には何らかの関係があるんだと思う。積極的に触れようとは思わないけど。そこから矢田さんとの話が長引いたのはちょっとアレだったけど。
「さっきは取り乱してすみません。南雲新です。名前くらいは知ってると思ってます。まあ···仲良くしてくれると嬉しいです」
そう自己紹介した彼の顔は屈託のない笑顔だった。南雲新くん。椚ヶ丘でも強いとされる部活の1つ、男子バスケ部においてエースを任せられる逸材のはず。その彼がどうしてここに?
「あ、そうそう、俺この環境だろうと絶望する気はさらさらないんで、よろしくお願いしますね」
こいつ、痛いところを突きやがるなどと思った人もいると思う。それでも本当に彼なら絶望しないのではという確信があるんだと思う。
「って、痛い痛い!ちょっ、辞め、桃花」
なんか聞こえてほんとにそうなるのか?って不安も見えるけど···とりあえず、話しかけてみようかな。
「あだだ···いきなり意識沈めかけられるってどういうことだよ」
「え、えっと···南雲くん?」
なんか本校舎から来たとはいえ、僕らとさして変わらないような気がしてきた。
「あ、ごめん、えと···誰だっけ?俺人の名前覚えるの苦手でさ···」
意外なところだった。関わりが重要視されるチームスポーツでエースを張っていた南雲くんが人の名前を覚えるのが苦手という事実に驚いた。
「あ、僕は潮田渚。渚って呼んでくれると嬉しいな。よろしくね、南雲くん」
「潮田···潮田と···うん覚えた。って渚って呼んだ方がいいのか。よろしく、渚くん」
南雲くんはどことなく真面目さがあるように見えた。名前を覚えるのが苦手にしても覚えようとする努力が垣間見えると思う。E組を差別意識で見ない本校舎から来たとは思えないほどに。
南雲くんメモ①
人のことを覚えるのは苦手。
南雲くんメモ②
対人関係は生真面目。
「あ、そうそう、俺差別とかに興味無いからそっち方面は安心していいと思うよ?第一差別とかくだらないとしか思えないし」
南雲くんはそこそこ大きい声でそんなことを言った。マジかこいつと唖然とする人、それを聞いて進んで絡もうと決めたような顔をした人、ケッというようにガン無視を決めようとしたような人、様々だった。
その事を聞いた僕はまた彼に対して驚きを隠せなかった。この学校ではもはや当たり前となっているE組への差別に対して「興味無い」の一言で片付ける彼はもはやイレギュラーな存在なのではないかと思わざるを得なかった。
「南雲くん本当にそういうことに興味無いの?ここだとイレギュラーとしか思えないんだけど···」
E組差別をすることに興味無いと言うのはカルマくんとは別の怖さがある。というより、カルマくんと同じようなオーラがチラチラと感じられる。
「え?ないって言ってるじゃん。差別だのなんだのの前に自己研鑽をすることは当たり前じゃないかな?差別して勉強が怠慢になったりするくらいなら俺は差別をしないことにしてる。差別ばっかで成績落ちてった先輩を見てたこともあるからだけど」
「そうなんだね···」
差別などしなくても自己研鑽なんて出来る、という彼の言葉は重かった。本当に何故この学校にいるのかと不思議になるほどに。そして名前を覚えるのが苦手とは言ってくれたけど、先輩の話がここで出てくるあたり、人のことはしっかり見てるみたい。
南雲くんメモ③
E組に対する差別意識が皆無。
南雲くんメモ④
人のことはよく観察している。
「あ、桃花が呼んでるわ。話しかけてくれてあんがと、渚くん」
「え?あ、うん」
そう言って彼は自分の席から離れ、矢田さんたちの方へ向かっていった。覚えることは苦手でもコミュニケーション能力は悪くないみたいだ。
「お前いきなりああいうこと言うのすげーな。俺前原陽斗な」
「いきなり絡むなよ前原。俺は磯貝悠馬。よろしくな、南雲」
「ん。よろしく。名前呼びでいいか?」
そっちに向かってる時に前原くんたちが南雲くんに絡んでいったけど。でもすぐに話して自然と溶け込むというのは彼の1種の才能なのかと感じられる。
「ねえ渚、南雲くんと話してみてどうだった?」
「うーん、割と楽しそうな人だった」
「そっか、私も後で話しかけてこようかな?」
「いいと思う」
南雲新くん、どこか生真面目でどこかこの学校にいるのもおかしいと感じるところもあってどことなくポンコツっぽいところもある彼。殺せんせーとは別に彼を観察してみるのもいいかもしれない。
何気に椚ヶ丘中って明かされてない情報それなりにあるよね···
椚ヶ丘だと文武両道はわりと求めてきそうだとは思ってます