さて、こういったものを俗に言う転生というのだったか。私は既に朧気となり始めている前世の記憶を掘り起こす。
この世界に生れ落ちてから十数年、なぜかサブカル系の記憶はいまだに覚えている。自分がどんな生活をしていたのかなどのほうがぼんやりしているにもかかわらず。
というか思い出そうとすると残業・納期・過労の三単語が頭の中を舞うので思い出さないようにしている方が正しいかもしれないけど。
私って前世そんなに限界(直球)オタクだったのか?いやまあ、この世界についての記憶がある分に越したことはないけどさ。
さてさて皆さんお気づきの通り私は転生者だ。んでここは『ブルーアーカイブ』、その世界らしい。…なんで転生したんだろうね?神様とやらに会った覚えもないし。前世の記憶を思い出したときはそりゃもう嬉しかったからいいケド。
生まれ変わったときあんなに喜んだのはクソ会社から逃げれたのも理由の一つだとしたら前世の私は随分と不憫である。死因は過労死であろう、南無南無。
ちなみに見た目は水色のストレートロングにピンクのインナーカラーの膝ぐらいまである髪を腰のあたりで一つにまとめてる。目の色は水色、右目は後天的な理由で黒目になったので見た目上はオッドアイである。身長は170cmぐらい。胸は…妹よりはあるから!
そう!私には妹がいるのである!可愛い妹が!さて質問、水色でピンクのインナーカラーが入ったストレートロングで目が水色、そして胸がちょーっと控えめな女の子と言え「今何か失礼なこと考えませんでした?」
「いや?まさかそんなこと考えるはずがないだろう?愛しき妹にして、我らが
そう、私はまさかの連邦生徒会長の姉として生まれたのである!カワイイ!!
「その少し控えめな胸もチャームポイントのひと「やっぱり考えてるじゃないですか!」…なんださっきから、考えてたりしゃべってる最中にかぶせてきて」
「貴方が黙ったかと思えばおかしなことを考えたり話したりするからでしょう‼」
いや別に前世基準で考えれば十分にあるんだよ?ただ周りにあまりにもデカい方々がごまんといるから相対的に小さく見えるだけで。
「…またアホみたいなこと考えてませんか」
ああ!その呆れたような目もカワイイ!この目だけでQOLが爆上がりする音が聞こえる‼
と、まぁさすがにこれ以上は本気で呆れられるので自制しておく。普段ならまだしも今の状況だとね。
空気を変えるために一つ咳払いをする。
「さて、脳の溶けたアホみたいな会話はこれぐらいにして」
あ、アホみたいなのは自覚あったんですねという言葉は無視だ無視。
「行ける準備は整った?」
彼女も私の空気が変わったのを感じてか顔が引き締まる。
「ええ、もう何時でも行けます」
「そうか…君が去った後はさっき話したとおりにしよう」
彼女は、今しがた私が視線を向けた薄ぼんやりと発光する列車を背に首肯する。正直な話、この子は私に何も言わず失踪すると考えていた。原作でもそうだったように。そろそろ失踪する時期かなと考えていた時に急に呼ばれて驚いたものである。
その考えを読んだように口を開く。
「私のしていることはなるべく秘匿されるべきことですが、全く知らせないのもそれはそれで面倒が起きるでしょう、なのであなたにぐらいは伝えておこうかと」
まあ、それはそうだろう。実際、誰にも伝えなかったからこそ、原作では結構な大惨事になったのだから。それとは別に合理だけで考えられるとお姉ちゃんは少し寂しいなーと思っていたら。
「それと…今生の別れというわけではないですがしばらく会えなくなるのでお別れの挨拶をしようと思いました」
うわっ可愛っナニコレ恥ずかしいのか真顔で伝えようとしてるけどこらえきれずほっぺが赤くなってとこまで含めて可愛い。思わず全力ハグしそうになったが我慢、今の私は真面目モードだ。
「たしかに君のしていることはほとんどの人が知らない。知りようがない。誰にも言えず褒められず箱庭を守るためだけに一人頑張っている。だからこそ、私はきみを知って、褒めて、肯定しようとも」
私は彼女に近づき抱擁し、頭を優しく撫でる。この子には何も、それこそ前世を含めた精神年齢ですら敵わないけれど、それでも私はこの子の姉だ。優しく守る義務がある。
「私は君が大好きだ、君が守ろうとしているこの世界が大好きだ。だから、止められはしないけれど精一杯応援しよう。しばらく会えなくなろうとも何時までも帰りを待って居よう。だから…気を付けて行ってらっしゃい。」
ただ本心を声とする。肩に乗せている頭が小さく震え、すすり泣きにも満たない声が聞こえてくる。無理もない。何度も人生を繰り返していても、それは箱庭の中だけの話だ。その箱庭が滅ぶのを、自身の間違いを何度も目にしてきた。その弱音も包み隠すように優しく撫で続ける。
数分ほど経っただろうか。彼女は泣き止み、既に抱擁は解かれている。目元に残る涙を親指でふき取る。今から彼女は先生に会いに行くのだ。身だしなみはキチンとしておかねば。
「だいじょぶかい?」
「はい、落ち着きました」
彼女は列車に乗り込む。列車の光が強くなる。駆動音が大きくなる。
「先生に、よろしく頼むよ」
「わかりました、それでは行ってきます」
「うん」
言葉は少なくされどそれで十分というように微笑み、意外に軽い音とともに扉が閉じる。
瞬間、目の眩むほどの光が起き、再び目を開ければすでに目の前から消え、星の煌めきの一つとなっている。
列車の消えていった夜空を少し見つめ、くるりと踵を返す。
「そろそろ私もかえ、るとし、よ…」
何かとても不味いことに気が付いた脳を一時停止し、落ち着いて周りを見渡して現状確認をする。
今いる場所は広大な砂漠にポツンとある少し古くなった無人駅、恐らくはアロナの教室と同じ、少し位相のずれた世界。私個人でくる方法は知らない。ここにこれたのは今しがた出発したあの子のおかげ。今出発したから帰り方も聞けない。つまり?
ワタシカエレナイ?
これは青い青春。子供が大人の力を借り困難に立ち向かう物語。その滅びを良しとしない者たちのお話。そのお話に本来出てこない異分子の混じった本来とは少し違った物語。異分子たる彼女はハッピーエンドを求め今日も紡ぐ。
――――可愛い連邦生徒会長の姉として
主人公の名前が出なかった…次回には出します(考えておきます)。