「────て事があったのさ、リン」
「姉妹揃って急に消え、ようやく見つかったかと思えばまた消え、気づけば先生にくっ付いてアビドスに、ですか……」
ギリギリギリギリ
「説明責任は果たしたし、このアイアンクローを離してくれると嬉しいな〜って……」
「ダメです」
プラーン
「私の分の仕事は問題ないよう終わらせていただろう。てか持ち上げてるせいで私の足地面に着いてないんだが」
「なおタチが悪いです」
ミチミチミチミチ
「アアァァァアァァアアァ待ってなんかミチミチ言ってる頭割れる!!」
「知りま、せん!!」
「アバババババガガガガガガガ────いってぇ!急に離さないで!腰打った!!」
恨みがましい目でリンを見つめるが無視される
「うごご……腰と頭が痛い……」
「自業自得でしょう。さ、遅れますよ。早く行きましょう」
「だぁれのせいだと……はぁ……」
腰を撫でながら会議室へトボトボ歩く
「リッカさん」
「なにさ」
小声でリンちゃんって呼んでやろうかと言うと、殺気のこもった目を返される。そんな嫌?
「先生が来た日に会ってからまた数日連絡が途絶えていましたが、何だったんですか」
「ミレニアムのエンジニア部にちょっとした依頼しに行ってたよ。会議が終わったら取りに行く」
「あそこですか……」
リンは苦い顔をする
「エンジニア部は品はいいんですがね……」
「そう、品はいいんだがねぇ……」
リンのようなタイプに頭のいいバカの行動の突飛さは苦手だろうな
試しにバイクの修理を頼めば、何故か走る時の熱で米が炊ける炊飯器を付けやがった。
エンジニア部に傘を忘れた時はソーラーパネルを付けて返しやがった。日傘ならともかく普通の傘だぞ。あいつらは傘の使い方を知らんのか
1番やばかったのはリンのメガネの補修を頼んだ時だ。まさか、着用者が見た人物の上にランダムな数字を映す機能をつけるとは思わなんだ。おかげで結構な一悶着が起こったぞ
「エンジニア部のアレはもはや病気か何かだろう。考えてもどうせ無駄だ」
同じ事を思い出したのか遠い目をしたリンが応える
「あの時は連邦生徒会長が暴走して大変でした……取り敢えず着きましたよ、会議室」
「了解」
ドアを叩き中へ入る。部屋はだいぶ小さく、数人が部屋の中央に鎮座する机を囲めばすぐに満杯になるほどの大きさだ
途端に涼しい風が身を包み、中にいた人物の1人が話しかけてくる
「キキキッ、久しぶりだなぁリッカ!」
「ああ、そちらも壮健そうで何よりだ。マコト」
マコトは何がおかしいのか大笑いしている
「まさかマコト本人が来てくれるとは」
「他でも無いお前の頼みだからな!勿論イブキの為に警戒体制は厳重にしているぞ。何重にもな!」
「あらぁ……」
イロハあたりにしわ寄せがありそうだな。あとで菓子折りでも持っていこう
「お越しいただきありがとうございます。
「ふむ、そちらは連邦生徒会首席行政官、七神リンか。良い出迎えだ」
言葉の上では丁寧だが視線がバッチバチだな。そりゃあこの2人はさっきのエンジニア部とは違う意味で相性が悪いだろうな。
妹ちゃんに心酔した事務処理特化の生真面目と野心マシマシの情報網特化の能天気アホだ。相容れられるわけがない。離れとこ
「岩永リッカさんでしょうか?」
「え?あぁ……生塩ノアか。初めましてだな」
「えぇ」
そこにいたのはノア。アルカイックスマイルで心の中が読めない。脳の回転の速さも相待って、食えない人物の一人だ
「御高名はかねがね。今回は会えて光栄です。今回は私が未熟の身ながらミレニアム代表を務めさせていただきます」
「セミナーの書記として十分に活躍しているのであれば力不足ということもあるまい。高名は……悪い噂でないといいが……」
ノアはくすくすと控えめに笑う
「大丈夫だと思いますよ。ところで会議はいつ始まります?」
「多分そろそろ……あ、来た」
扉からは全体的に黒い制服に身を包んだ羽川ハスミが焦りながら入ってくる。相変わらずデカい。どこがというわけでもなく、全体的にデカい。
確か179cmだったか?私より背が高いのはそうそういないから新鮮だ
「すいません遅れまし、は?」
「チッ。何故ここにいる、トリニティ!」
「当然呼ばれたからですが……は?」
うっわぁ死ぬほど空気悪くなってる。必要なことだったとはいえ面倒くさい
「あら?リッカさん、あの2人、ゲヘナとトリニティですよね?仲悪いですけど、互いが来るって言ってなかったんですか?」
「言ってたら両方来ないからな。黙ってた」
「イイ性格してますねー」
アルカイックスマイルが少し崩れ、愉快そうな感情が顔に浮かんでいる
「今回は仕方なくだ。ほら!そこの2人、会議始めるから座れ!」
「チッ」「……」
会議前から不穏な空気が漂う。あーやだやだ
「リン、頼んだ」
「分かりました。──では今からゲヘナ、トリニティ、ミレニアムの3校合同緊急会議を始めます」
全員で一礼をし、席につく
「ではまず初めに
「了解」
椅子から立ち上がり話し始める
「連邦生徒会長……長いのであの子と呼ばせてもらうが、今あの子が何処にいるかは知らない。あくまで私の認識ではな」
一呼吸おき、続ける
「予想はしているが、ここで言う必要もない。行き方も分からず此方からコンタクトは取れないからな。正直、お手上げだ」
「ふむ……仮にそれを真と置くとして、失踪は意図的なものか?それとも外的要因による突発的なものか?」
「意図的な方だ。私が知ったのは失踪する直前だった」
「では次だ。連邦生徒会長の目的は?」
来たか。こういう時のマコトは厄介極まりない。感情が表情に出ないよう、気を引き締める
「黙秘だ」
部屋の中にいる全員の表情が固くなる
「黙秘?知らないでもなく黙秘だと?」
「ああ」
「本気か?」
「当然だ。私は嘘がどうも下手らしいのでな。嘘をつけないなら全力で黙秘させてもらう。
不信感を抱くのは当然の事と思う。
それでも、その上でこの会議に出席したことを、せめてもの誠意として受け取ってくれると嬉しい」
言うと同時に頭を下げる。これに関しては完全に此方の都合のため、責任の取り方は相手に委ねられる。どんなことを言われても文句は言えない。
「……はぁ、いい。頭を上げろ、リッカ」
「……いいのか?マコト」
「お前がそう判断したのなら聞かん。代わりに今度イブキと遊べ。それで良いな、トリニティの」
「ええ、ゲヘナに指図されるのは非常に不愉快ですが構いません。
ツルギと模擬戦でもしてください。あなたの名前を聞いた途端臨戦体制に入ってしまい、落ち着けるのに時間がかかりました……」
ああ……急いで来たのはそのせいか……
「ミレニアムのはどうする?」
「あら、そうですね……では保留で。
リッカさんを知るお二人が了承したので私も詳しくは聞きません。ですが、連邦生徒会長の懐刀への貸しは流石に身に余ります」
「そうか」
取り敢えずとんでもないことを言われなくて良かった
「ともかく、これで連邦生徒会長の所在については、ひとまずの結論とします。次の議題に移りましょう」
さて、前哨戦は終わり。本題はここからだ