誤字報告感謝です……めちゃくちゃ間違えてました。頑張って減らします
会議が終わり、やって来たのはエンジニア部。手の甲で数回ノックすれば入っていいよと返事が返ってくる
「失礼するよ」
「いらっしゃい。数日ぶりだね、リッカさん」
中に入ると機械の粉塵で顔を汚したウタハが出迎えてくれる
「……好きなことに熱中するのはいいが、少しは身嗜みにも気を使え。花の女子高生だろう」
「おや、んっ……すまないね」
ハンカチで顔を拭う
ほんっと顔が良いな。男装でもさせてみたい。つくづくキヴォトスは顔面偏差値が高すぎる
「妙に静かだと思えば……他の子達はどうした?」
「ちょうど皆出張ってるよ。何か用事でも?」
「いや、何となく気になっただけだ」
とにかく、ここに来た用事を済ませることにしよう
「頼んでた物を受け取りに来たが……」
「もちろん出来てるよ。ドアの隣に置いてある」
示された方へ向かい手に取る
「特急で作ってもらって申し訳ない」
「その代わりお金は弾んでもらったし、ロマンもたっぷり詰め込めた。いい仕事だったよ」
ウタハは言葉に違わず満足そうな笑みを浮かべている。嘘や御世辞のたぐいではなさそうだ
「それなら良かった」
「今後ともエンジニア部を御贔屓に」
「機会があればな」
手早く動作確認をすませる。重さも丁度良く、手によく馴染み、神秘との親和性も問題なし
「…………うん、充分。流石マイスター」
「それは良かったが……キヴォトスで
まぁ、銃社会のキヴォトスじゃあ殆ど使わないような代物だしな。不思議に思うのも当然か
バッグに収めてにっこりと笑う
「———後輩との大喧嘩」
それを聞いたウタハはバカ笑いしていた
—————————————
それから大体数時間後の昼過ぎ。柴関ラーメンの裏口でカチャカチャとなってた音が止まった
「あ”ー終わったー!」
「お、大丈夫だったのかい?」
「ああ大将!何とか解除できたよ」
柴関の大将がお冷を持って来てくれた。コップを持ち上げ、一気に飲み干せば、乾いた喉に潤いが戻りほてった体が冷やされる
「暑っついねー!水が美味しい!」
「いやーまさかウチに爆弾が仕掛けられてるとは思わなかった。ありがとよ」
火薬を取り除いた爆弾の一つを上に放り投げキャッチして握りつぶす
「複雑な機構じゃなかったのが救いだったね。下手すれば触った時点でボン‼︎……なんてこともあったわけだし」
「そりゃあ怖いな!気づいてくれて助かった。お礼と言っては何だが、今から一杯、無料にしとくよ」
「お!嬉しいな。食べるしかなくなった」
濡れタオルで頭と顔をごしごしと拭き、ヘアゴムで髪を大雑把にまとめる
「大将。今、店に客はいるかい?」
「ああ、この間アビドスの子達と一緒に食べてた子達が居るよ」
「便利屋か。それなら一緒に食べることにしよう」
濡れタオルを畳み、工具と一緒にバッグの中へ入れる
——そういえばこのバッグ、容量どうなってんだ?妹ちゃんから貰ったやつだが、外見に見合わないぐらい入るんだけど……どうせ考えても無駄か
柴関へ入り、中の一角へ近づく
「久しぶりだね、便利屋」
「あら!?えー……リッカさん!」
「お、名前知ってたのか。カヨコから聞いたのかな」
ボタンを何度も押し込み混乱しているハルカから手早くボタンを取り、頭にポンポンと手を置く
「爆弾は無力化してあるよ」
「!……ごめん、助かった」
カヨコが頭を下げようとするが手を振って止める
「別にいい……が、アル社長でよかったかな?もうちょい部下の指導はしといてくれ。アビドスで数少ない憩いの場の一つが吹き飛ぶところだったぞ」
「うう……申し訳ないわ……」
アルは声どころか体すら小さく見えるほど意気消沈して縮こまっている……この子、本当にアルトロー目指してるんだよな?
こら、ムツキ。アルをつんつんするのはやめたげて
「リッカちゃん、何のラーメンにする」
「大将……醤油に煮卵で」
前回は塩だったからな、どうせなら別のにしよう
「…………アビドスの子達は大丈夫なのかい?」
「んー、私もこの前柴関に来た日以降会ってないからどうにも」
大将は善良な大人だ。アビドスの生徒達をよく見て気遣っている。ならば知っているだろうか
「……大将」
「なんだい」
「2年前のホシノはどんな様子だった?」
私の真剣な表情を見たのか大将は少し考えてから話す
「2年前かぁ…あの時のホシノちゃんはなぁ……随分とピリピリしてたな。珍しくここに来た時に、腹いっぱい飯を食わせたら涙ぐみながら食ってたよ」
「……そうか」
あんの馬鹿……大事な思いでも、自分が押し潰されたらしょうがないだろうに
……同じ状況になったら私も似たようなことしそうだ。だから何も言えないんだよ。ホシノの拠り所になれない自分に嫌気がさす
「はぁ……つくづく嫌になるねぇ」
息を吐くと同時に、ふと意識の端へ何かが引っ掛かる
—————妙に喉が渇く
暑さじゃない。身体中の水分が消えたように血の気が引く
第六感のような何かが伝えてくる
全身の産毛が総立つ。首裏がピリピリと痛む
どこだ
近くに何か気配は感じない
地下……も違う、なら……上!
「リッカ?どうしたの?」
カヨコが何かを言っている。耳に入らない
「全員———
瞬間、何かが
———伏せろ!!」
「———いっっっったいなぁ!!全員無事か!?」
瓦礫が上に吹き飛ばされる。中から出て来た5人は擦り傷はあるものの致命的な怪我は負っていない
「無事だけど、大将は!?」
「カヨコか!抱き抱えたから問題ない!気は失ってるが」
あーあー大将のもふもふに砂埃がついちゃってる
——ってか柴関は……見事なまでにぶっ壊れてる
「せっかく爆弾止めたのに……ケホッ…煙い」
「ゴホッゴホッ……うわぁ、建物なくなっちゃったよ?」
「これは一体……」
「うあぁ………あわわわ、どういうことよ!?」
地面の砂を払い、大将を寝かせる。気を失ってる以外に心配なところはない
「アル様!風紀委員が来てますぅ!!」
「えっ!?ど、どうしましょう!!」
「タイミングが良すぎる……ゲヘナの迫撃砲でも持ち出したの?わざわざ、私たちに?」
確かバッグの中に火薬火薬……あった。爆弾を無力化した時のやつは無事だったか。危ねぇー
厳重に包んだ火薬の包装を引っ剥がし、爆弾の箱に戻す
「カヨコ、悪いがもう一個
「……なに」
「ここで風紀委員と一緒に戦うって依頼、受けてくれない?責任は私が取るけど」
アッハッハ、すっごい嫌そうな顔してる。でも残念、絶対受けてもらう
「……一応聞くけど報酬は?」
「即決できるのは二つ。一つは便利屋の口座、凍結してるでしょ?それの解除、それともう一つは……アル社長!!」
「へ!?何かしら」
「便利屋は柴関に恩があるよな?」
「え、えぇ。勿論あるけど……」
ちょっとずるいが、アルなら絶対に乗ってくる手だ
「自分たちを追う治安維持組織に、大恩ある方が攻撃された。だったらその恩に報いるために、今まで逃げて来た相手へ真っ向から戦う。これって……とってもカッコよくないかい?」
「……そうね!とってもかっこいいわ!」
「ありゃ〜……社長止まんないよ、カヨコちゃん」
「社長……」
「アル様!カッコいいです!!」
「柴関のお店と、大将のために!それじゃあ行くわよ便利屋68!!」
「よしっ!それじゃあ一発お返しだ」
爆弾を一つ、風紀委員の上に投げる。爆発する機構は取り除いてあるので、自動拳銃で撃ち抜く
ハルカお手製の爆弾が風紀委員の真上で炸裂した
「開戦だー!」
吹っ飛ばしてやるわオラァ!