「流石に真正面での突破は無理、なら」
風紀委員の数は数十人と、私達より圧倒的に多い。平面で仕掛ければ数の暴力で移動先を消される、がこの程度ならすでに何度も経験している
何度も弾に当たりかけ、射線を潰され、次第にこの敵だらけの戦場に慣れ、戦い方を学んで来た
「地面に降りずに走れば——いいって事でしょ!」
地面を踏み込み、体が宙を舞う
イオリとチナツ以外はほぼ風紀委員モブちゃん、雑兵だ。その肩を足場に蹴りつけ、銃撃しようと向き直った相手の銃さえ軌道を変えるために踏みつけて、ミニガンを持つ1人に接近。銃口がこちらに向いた瞬間、逆方向に切り返して射線を回避し、即座には切り返せないほんの寸毫の間に、背の後ろをとる
文字通りの零距離から発砲し、撃破。崩れ落ちる様には目もくれず、視線を巡らせて次に足場となる相手の位置を確認して飛び出す——跳躍の間は機動が制限される。空中には身を隠す遮蔽も無い。高く長くは飛ばず、照準されない程度に小刻みに風紀委員の上を駆け抜ける
「アハッ!」
「アハハハハハハハハハ!!」
「ちょっと!?カヨコ、あの人なんかだいぶ怖いのだけれど!熱でおかしくなったのかしら!?」
「社長、気にしたら負け。リッカが殆どのヘイトを買ってくれてる。こっちもちまちま倒していくよ」
「あははっ、すっごいすっごい!ぴょんぴょん飛んでる!」
「戸惑ってるアル様も素敵です!!!」
色々言われているが手際よく処理をしてくれているおかげでこっちもどんどん楽に削れる
「朝から会議!炎天下で爆弾解除!ようやく昼ご飯かと思えば目の前で店ごと吹っ飛ばされる!憂さ晴らしに付き合え!」
何度も跳べば風紀委員も慣れてくる。目は未だ追いつかないながらも、ある程度次の動きを予測し撃ってくる
跳躍の着地位置へ数十の銃口が向けられる……のを見ながら真下の地面に神秘の糸を数本射出
「いや別に、なるべく降りたくないだけで降りていいなら全然降りるぞ」
地面や数人のモブちゃんへ絡みついた糸を引っ張り、軌道を真下へ修正し着地。同時に足を振り抜き、不幸にも着地地点にいた1人の頭に、落下の速度を加味した一撃を叩きこんだ
ついでに呆気に取られたままの数人の頭へ銃に残った弾を撃ち込む。銃が弾切れし、カチカチとなった所でマガジンを抜き、神秘を込めて壁代わりにしてライフル弾を防ぐ
「危ないな、
弾を防いだ代償として鉄クズと化したマガジンをぶん投げるが銃で防がれる
「公務執行妨害だ。それと、あんたは誰だ」
「岩永リッカだ。以後お見知り置きを」
ポケットから新しいマガジンを取り出し挿入する。イオリも私もお互いに向けて銃を構えるが、同時に下ろす
「えっと……お久しぶりです」
「久しぶり、チナツ。先生がキヴォトスに来た時以来か」
チナツは気まずそうな表情で前へ出てくる
「えぇ、リッカさんはどうして
「先生がアビドスに来たからそれにくっついてな」
ありゃ、チナツが頭抱え出しちゃった
「じゃあ先生もいるんですか……?」
「いるぞ。多分そろそろ………噂をすれば影だな」
先生とホシノを除いたアビドス全員がやってくる。周りの惨状を見て驚いているようだ。
なるべく弾や爆発が周りの建物に当たらないように動いた為、道路を除いて被害は少ない。が道路はボッコボコになため、見た目は酷い事になっている
“リッカ?どういう事?”
「先生、2日ぶりだね」
アビドス校舎とここの距離を考えれば想像以上に早かったな。爆発を確認してからすぐに飛び出して来たんだろう
「あー!柴関が壊れてる——!!」
“えっ!?”
セリカが叫び、全員の視線がそちらへ向く。セリカは視線の多さに驚いたのか体をビクッと震わせるが大将の無事を確認したところで表情が緩む。また、先生は気絶している大将に大きな怪我がないのを見て、ひとまず安心した表情になる。
念の為弁明させてもらおう。これで怒られたらたまったもんじゃない
「一応言っとくと柴関は私のせいじゃ無いぞ。ゲヘナの迫撃砲が突っ込んできてな。どうせあのアホチチの仕業だ」
『だぁれがアホチチですか、このバカ!』
肩をすくめて話せば
「知るか。ヒナとのペアルックのためにサイズまで同じ服を着た結果横乳丸出しになったやつはアホチチでいいだろ、このアホチチ」
いや、ドレスも
『あなたまた言いましたね!今度ゲヘナに来た時は覚悟しておい──危ないですね!?何してくれてるんですか!!』
「もともとホログラムなんだから石なんて投げても当たらないだろ。気にするな。……チッ」
『貴方が言う事じゃないですよね!?それに舌打ちしましたよね、もう許しませんよ!!』
2人でやいのやいの騒ぐ
「アコちゃん……」
「アコ行政官……?」
風紀委員会の2人から、それぞれの感情が乗った声が聞こえる
“アコ……君の名前はアコ、でいいのかな?”
『え、えぇ……コホン、初めまして。アビドスの皆様、先生。私はゲヘナ学園所属の行政官、天雨アコと申します』
行政官、つまりゲヘナで高い権力を持つ人物であることが分かり、アビドスの警戒度が高くなる。その鋭い視線を認識しているのかどうか、アコは変わらず微笑む
『行政官ということは……風紀委員のNo.2……』
『あら、実際はそんな大したものではありません。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして……』
「本当にそうなら、そこの風紀委員たちがそんなに緊張するとは思えない」
周りの風紀委員たちは恐怖までは行かないものの、怯えに近い雰囲気になっている。ヒナに関わるとバカになるがこれでもゲヘナのNo.2なだけあり、部下の制御はしているようだ
『成程、素晴らしい洞察力です。確か……砂狼シロコさん、でしたか?では、先ほどまでの愚行は私の方から謝罪させていただきます』
「なっ、私は命令通りにやったんだけど!? アコちゃん!?」
『命令にまずは無差別に発砲せよなんて言葉が含まれてましたか?』
「い、いや……状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入……戦術の基本通りにって……」
『ましてや他の学園自治区の付近なのだから、きちんとその辺りは注意するのが当然でしょう?』
『……?』
……なんか、秘書に責任を押し付ける政治家感がすごいな
『私たちゲヘナの風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました。望ましく無い状況ではありますが……違法行為ではない。やむを得なかったということでご理解いただけますと幸いです』
「へぇ……確かにここはアビドスの自治区じゃないし、違法行為でもない。道理は通ってないけどね。だったら、
私は特定の自治区を持たない。でも、
『相変わらずズルみたいな権力ですね……』
「風紀委員を独断で動かせるそっちも大概だと思うが?」
「……あぁやっぱり。アコ」
カヨコが何かに気づいたように言う
『あら、何ですか?カヨコさん』
「貴方は
本日17時前に九州南部で大きな地震がありましたが大丈夫でしょうか。私の所も少し揺れましたが被害はありませんでした。余震に注意し、お過ごし下さい