「……カップラーメンとリッカさんって似合わないね〜」
「
深夜に仕事をした時、食事が面倒でカップラーメン食べたりそもそも食事しなかったりするとリンが鬼の形相で駆け込んで、ちゃんとしたご飯を口に突っ込まれたから否が応でも健康になった
「私のことより、資料を見てくれ。分かりやすいよう色分けしてある」
“リッカ、箸で指さない”
「んー…」
ラーメンを啜る……しょっぱい。舌がヒリヒリする。切実に白湯が飲みたい。柴関のようにしっかり下処理されたラーメンならともかく、インスタントの方は味が濃すぎる
「どーゆーコト!!何でアビドス自治区が私たち名義じゃなくなってるの!?」
「そんなっ……」
一枚目の紙。それにはアビドス高等学校が所有しているアビドス自治区が赤く色塗りされていた。本来広大な土地が赤色になるはずが、アビドスに元々あった物と照らし合わせた書類上の赤い場所は、既にこの学校とその周辺のみになっている
だが本題は2枚目にのっている
「次の紙。アヤネ、めくってみろ」
「は、はい……えっ!?」
「これって……」
「はい……現在のアビドス自治区の所有者、それは……カイザーコンストラクション……そう書かれています」
その瞬間、確かに一度、空気が凍った
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「カイザーコンストラクション……カイザーコーポレーションの系列ですか……っ!アビドスの自治区を、カイザーが所有している……!?」
「……柴関ラーメンも?」
「……はい。大将はそのことを知っていて、ずいぶん前から退去命令も出ていたとか。先ほど病院に行く最中、聞きました」
部屋の空気がさらに重くなる。空気が糊のようにへばりついて息が詰まる
カイザーがアビドスの開発を進める場合、退去命令を完遂する必要がある。元々黒い噂の絶えない会社だ。住民が退去し切ったと書類を偽装するぐらいならいくらでもやるだろう
アコが違法にならないと言った理由がこれだ。少なくともアコの手元にある書類上では、人のいないカイザーの土地だったのだから
「ど、どれぐらい残ってるのよ!」
「……すでに砂漠になってしまった、本来のアビドス校本館と、その周辺数千万の荒れ地。そしてまだ砂漠化が進んでない、市内の建物や土地まで……所有権がまだ渡ってないのは、今は本館として使っているこの校舎と、周辺の一部の地域だけでした……」
「で、ですが、どうしてこんなことに?学校の自治区の土地を取引だなんて、普通できるはずが……いったい誰が、こんなことを……」
「学校の資産の議決権は、生徒会にある。それが可能なのは普通に考えて、その学校の生徒会だけ」
「……はい、その通りです。取引の主体は、アビドスの前生徒会でした。2年前、最後の生徒会長が卒業してから取り引きは行われていません」
「何やってるのよ生徒会の奴らは!カイザーコーポレーションなんかに学校の土地を売るなんて!!」
「こんな大事にずっと私達は気付かないまま……」
「それぞれの学校の自治区は学校のもの、あまりにも当たり前すぎて……借金ばかりに気を取られて気付くことが出来ませんでした……私がもっと早く気付いていれば……」
「……ううん、それはアヤネちゃんが気にする事じゃないよ、これはアヤネちゃん……というよりおじさんですら入学する前の事なんだから」
「……ホシノ先輩、何か知ってるの?」
「あ、そうです!ホシノ先輩も、アビドスの生徒会でしたよね?」
「それに……最後の生徒会の、副会長だったと聞きました」
「……うへ〜、まあそんなこともあったねぇ。2年も前のことだし、そもそも私もその辺の生徒会の先輩とは関わりが無くってさ〜。私が生徒会に入った頃には、もう生徒会の人たちはほとんど辞めちゃってたから」
「そ、それならリッカさんは!?ホシノ先輩より年上なんでしょ、何か知らないの!?」
「私は途中編入で来たから、入った時期も在歴期間もホシノの方が早いし長いぞ。そもそも私が来た頃にはもう前生徒会の人は居なくなってたし、引継ぎ用の書類なんて立派なものは何も無かった。教職員も、授業なんてのもな」
「丁度砂漠化を避けようとして移転を繰り返してた時期だったから前生徒会の書類関係はもう砂の中だったしねぇ……そもそも最後の生徒会って言ったって、リッカさんを除けば新任の生徒会長と私の2人だけだったし」
食べ終わったカップラーメンをゴミ箱に放り投げる。ご馳走様でした
「あの時は無鉄砲バカな
「……?ホシノ先輩が真面目なバカって何かの間違いじゃ無いの?こんなだるんだるんなのに」
「いや?2年前のホシノはだいぶ雰囲気違ったな。最初は生徒会長を私から守るためかずっと牽制されてた。一月もしたら一緒に遊んでくれるようになったが、あの時のホシノは可愛かったぞ。呑気な親猫を守る仔猫みたいで」
「ヘっ!?えっちょっリッカさん!?」
「例えば……私達に唆されて水着を着て砂丘をひたすら掘りまくったり、ぎりぎり残ってたクレーンゲームでお金溶かして私が昼飯奢ったり、他には——ヒェッ」
後ろから頭を掴まれ、背中に冷たい汗がつたう。後ろを見るとホルス•アイ状態のホシノがイイ笑顔でこちらを見ている。恥ずかしいのか顔が赤い。端的に言えば凄い色っぽい。でも流石に身の安全の方を優先
「………ホシノの膂力だとシャレにならないからやめて。謝るから」
「じゃあ余計なこと言わない?」
「ハイ」
「よし」
「ほっぺが赤くて可愛いよホシゲフッ——……腹はダメだってば………」
頭とお腹をを勢いよく殴られ、床に崩れ落ちる。吐きそ……
「楽しそうですね☆」
「えぇ……大丈夫なの?だいぶ痛そうな音したけど……あれ?え、ちょっと動かないんだけど!?」
眠い……ちょうど良いしちょっと寝よ……
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少しづつ意識が浮上する
暗い海底から噴き出た泡が、明るい水面へ向かうように、思考が鮮明になる
視界に飛び込んでくるのは、アビドスの砂漠とは程遠い大海原
地平線まで見ても土地は見当たらない
空には何かの鳥が列をなし、海には小魚が悠々と泳ぎ喰らわれる生存競争が起きている
風は緩やかで、時折りザザ……と波の音がする
私は、そんな海の少し上の宙に立つ
ここには私と、もう1人
「失踪の前日ぶりか、久しぶり。
「久しぶりです、リッカ」
私と瓜二つの愛しい妹がそこにいた
………………
…………
……
「久々の再会は嬉しいんだが……座る場所ってない?足場はあるのになぜか見えないせいで落ち着かない」
地面?を曲げた指で叩けばコンコン、と硬質な音がかえる。強度は大丈夫そうだが透明で全く見えないため恐怖心が煽られる
「神秘で構築された世界なので自分で作れますよ」
「なるほど?位相のズレた世界とはまた違うのか、便利だな。えー……よっ、と……おぉ、出来た」
現実より神秘の自由度がとても高い世界のようで、目の前にアンティーク調の木製椅子が現れる。対面に置いて座り、同じくアンティーク調の机と紅茶を創造する
紅茶に口をつけ、一息つく
「私が
「さてね。
前世の性別がどうだったか既に忘れた上特段興味も無く、今世でも私が女だという自覚は薄い
キヴォトスで生身の人は女性しかいないのもあり、性差に関してはとんと気にすることがなかった。気楽なものだ
「それを言うなら貴方の魂はもともと別世界のものですし、私は貴方の
「体の片割れを姉妹って意味でとらえるなら兎も角、元は結婚相手の意だろう……いやだよ実の妹が
精神上はともかく、血は繋がってるし私も妹ちゃんもも女性だ。なんで実の妹と百合の花を咲かせなきゃならんのだ。業が深すぎる
「それなら、体でも魂でも片割れとして成り立たないのですからどうしようもないでしょうに」
「そうでなくてもそれと同じ位、君が大事ってことだよ………面と向かって言うと流石に恥ずかしいなこれ。先生は似たようなことを言ってるのか。強心臓だな」
「ええそうですねぇ……先生が生徒相手に口説き一歩手前の言葉をぽんぽん言ってて何度脳破壊されそうになったことか……」
「そっちもなかなか大変そうだな……」
紅茶を飲み干し、ソーサーにおく
「さて、姉妹の会話は一旦後に回すとして……ここからは共犯者としての会話にしようか」