“あ、起きた”
「……先生の膝枕とは贅沢な経験だ。絶景絶景」
“変なこと言ってないで起きなさい”
起きる前に写真をパシャリ。ワカモ当たりに渡せば一度は話を聞いてくれるだろう。いい取り引き用の品が手に入った
“体調は大丈夫?今からアビドス砂漠に行くけど身体は持ちそう?”
「大丈夫だ。なんなら夢の中で良いことあったからいつもより元気なぐらい」
体からパキパキと小気味よい音が鳴る。今度整体にでも行こうか
“それなら良かった。他の子も準備してるから行こうか”
先生と廊下を歩く。そういえば一個言いそびれた事があったな
「先生、シッテムの箱貸してくれ。すぐ返す」
“?えーっと……はい、いいよ”
起動のパスを脳内で唱える
『……私は拒絶する、ジェリコの嘆きを。』
『……私は知る、七つの古則を。』
シッテムの箱は動かない。私は『先生』じゃないから当たり前か。構わず小声で話しかける
「柴関での事、ありがと」
シッテムの箱のライトが少しだけ点滅する。届いたようで何より
迫撃砲が着弾する直前、
プチリと電源を切り先生に渡す
“もういいの?”
「ああ、十分だ。それじゃ行こうか」
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アビドス砂漠を駄弁りながらざくざく歩くと明らかに周りから浮いている施設が目に入る
周りには警備が張り巡らされており、こちらを見るや否や攻撃して来た。本部に連絡が行く前に手早く倒す。が、どんどん補充される。無線機を持ったり怪しい動きをした奴は狙撃しているがいつまで持つかどうか分からない
「うへ~、結局何なのこいつら?」
「そんなに強くないけど邪魔っていうか……なんか今まで戦った奴らの中でも一際厄介って感じ……」
「統一化された軍みたいな奴らだ。めっちゃ戦いづらい」
一箇所潰してもすぐに増援が来る。補充のききやすい歩兵をいくら倒してもキリがない
「ある意味風紀委員より厄介……」
「何なのでしょうかこの方たちは……」
『施設に何らかのマークを発見しました!』
「ずいぶんと見覚えのある印だな」
「……カイザーPMC」
『っ!?・・・・はい、ホシノ先輩の仰る通りカイザーPMC……カイザー系列の民間軍事会社です』
「カイザー……コイツらもカイザーコーポレーションってこと!?」
“PMCってなると……
「ヘルメット団のようなチンピラとはレベルが違います、本当に組織化された……本当にプロの軍隊のようなものです!皆さんくれぐれも気をつけてください!」
アヤネが言った途端耳を劈くサイレンの音が鳴る。遮蔽物がない砂漠に遠く響き、人が直感的に危険だと判断するよう調節された音。全員が反射的に空を仰ぐ
「警報音!?」
「これ、何だか大事になりそうな予感なんだけど……」
「……この音はヘリ?」
「地面の揺れからして……戦車も来てる」
「歩兵も兵器も、無尽蔵に集まってくるぞ」
『大規模な兵力が接近中!装甲車以外にも戦車やヘリまで……!包囲が完成する前に離脱してください!まずは急いで、その場から脱出を!』
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「無理だったか……」
「うへぇ〜キリがないね〜……」
周りを武装したオートマタに囲まれる。もう少しで出れるという場所に潜まれていた。不注意だった
『皆…ん早………抜け…通…が……安定…』
「あ、切れた」
アヤネの通信が切れる。妨害電波でも飛ばされたのだろうか。アヤネのホログラムを出す機械をコツコツと叩くが、反応は返ってこない
やがて、いかにもな黒塗りの車がやってくる。その中からは、他のオートマタの様な武装をせず、恰幅の良い1人のオートマタが護衛に守られながら出てくる。自身の持つ権威を主張するための服装なのが見て取れる。端的に言えば趣味が悪い
それを傍目に神秘を少し弄り、光を調節して自分の姿を周りの景色と同化させる
「侵入者とは聞いていたが……アビドスだったとは」
「な、何よこいつ……」
「………」
「君達の襲撃によって出た被害……君達の学校の借金に加えても良いのだが、まぁ大して変わらないか。……フン、そちらは私の顔を知らないようだ。では自己紹介をしよう。私はカイザーコーポレーションの理事を務めている者だ………そして君達、アビドス高等学校が借金している相手でもある」
「!!」
「……嘘っ!?」
「アビドスが借金している相手……」
「では、古くから続くこの借金について話し合いでもするとしようか」
その圧力に皆が黙り込む。それを了承と受け取ったのかカイザーは口を開く
「まず、正確に紹介するとカイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ……それとカイザーPMCの代表取締役も務めている」
そこからはカイザーの独壇場だった。立場としてはこちらの方が圧倒的に低いため、しょうがないと言えばそれまでだが。
途中で、アビドスに宝物うんぬんかんぬんという話が出たが、別に
「……皆、帰ろう、これ以上言い争っても意味が無い」
「ほう、副生徒会長、流石に君は賢そうだな……あぁ思い出したよ、賢そうな君と一緒に居た全くもってバカな生徒会長をな」
「………」
「まったく、危険区域に侵入した結果片腕を無くすとは愚鈍極まる。……そう言えばもう1人居たな。あの忌々しいアイツが転校してくるとは思わなかったな——チッ、既に死んでいるというのに不快にさせおって……」
「あ”?」
「……シロコちゃん、転校してきた人ってリッカさんの事じゃないですか?」
「ん、多分そのはず。他に転校してきた来た人の記録はなかった。転校して行った人はいっぱいいたけど……はぁ……」
「自分で言って落ち込まないでよ〜」
「えっと……つまりどういうこと?死んだってなに?」
アビドスの面々がコショコショと小さい声で話すが、私はそれどころではなかった。
まさか……まさかまさかまさかだ!カイザーをさんざん、それはもうさんっっざんに痛めつけたってのにこんなデカい顔なんで出来るんだと思えば!
「私が死んだから好機だとでも思ったのか!あははははははははははは!!ああ!実に滑稽だな!!あははははは!!」
あ、神秘解けちゃった。急に現れた私へ反射的に銃口が向けられる
「……貴様!何故生きている!!全員、撃て!!」
号令がかかった瞬間、オートマタの持つ銃が全て爆発した。鉄屑と化した銃が砂にどさどさと落ち、カイザーや護衛の焦る声が砂埃の奥に聞こえる。
エンジニア部に作ってもらった道具の一つ、一定以上の衝撃に反応して爆発する針を銃身に突き刺しておいた。銃を撃とうと撃針が雷管を叩いた瞬間に針が爆発し銃を壊せる。人相手には火力不足だが今回は十分役立ってくれた
砂埃がはれ、カイザーはこちらを睨む。何が起こったかは分からずとも私が何かをしたことは理解できたようだ。い、息が続かん。笑いすぎてお腹つりそ…
いやはや、再会をそんなに
「嬉しいわけがあるか!何度も我が社に大損害を与えおって!!」
「失敬な。私がグレーだと判断した会社は全部平等にボコしている。お前の会社だけじゃないっ!」
全方位から敵味方問わずぶっ刺さる視線が違うそうじゃないと言われるが胸を張りつつ綺麗にスルー。心臓が強くないと生きていけない世界なもので
「そもそもお前は既に18歳を超えているだろう!というのに何故まだ卒業していない!?」
「寝てたら留年してた☆」
「バカか貴様は!?」
「ハッハッハ、騒ぐな騒ぐな。小物に見えるぞ。カイザー殿?そんな即座に感情を昂らせられるのは幼児か更年期の奴だけだろう。大人と自称するのなら感情の制御は出来るようになってくれ。トップがこんなだと部下も苦労するなぁ!!」
カイザーは憤死しそうなほど怒気に溢れている。機械が憤死なんて機能を持つのは疑問だが。だが、流石は大企業の重鎮。武装は既に解除させ、増援が来るのははもう少しかかる。少なくとも私をここで取り押さえることは出来ないことを理解しているようだ。
「話はこれで終わりか!?ならさっさとそいつを連れて帰れ!私は君たちと違って暇では無いのだ!」
「大人が子供を権力で縛ろうとするなんて、無粋にも程がある。次までには大人になっておけよ〜!!」
カイザーは部下を連れて撤収して行く。
「はー…はー…息が…おえ……笑い過ぎた。ゲホッ、コホッ……あー面白かった……じゃ、帰るか」
“分かったけど……後でお話があります”
「はーい先生」