可愛い連邦生徒会長の姉として!   作:siyu

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独自設定の9割がこの話に詰まってます
考えないで下さい。感じて読んでください。この話は雰囲気で読む一話です
知ってる用語とかを総動員して一応自分なりに納得できる形で書きましたが、分からないなら頑張って解読してみてください
どうせ自己満小説なんではっちゃけました


胎動

 

 

 

黒服との会談からおよそ半日後。先生はホシノの救出に向かっている最中だろうか

 

常に現在地を修正した地図と照らし合わせ、時折見えるヘルメット団の基地には手榴弾を投げ込む。どれだけ動かしても痛む事のない体に、自作した金丹の効果をしみじみと感じつつ、黒服との対談から動かし続けた歩みを止める

 

その場に満ちるのは、息が苦しく感じるほど濃い神秘と、ビルが横倒しになったかのような巨体が地上へ這い出てくることによって起きた、体中を揺らす轟音。

天使のラッパ、ギャラルホルン、世界の終焉を告げる音、青春の終幕装置(デウスエクスマキナ)先生(神の子)を殺しかねない、彼女にとって最も厄介な相手

 

「……やぁやぁクソ蛇(ビナー)二年ぶり」

 

片方は、かつて自身を退けた仇敵が生きていたことに対する興奮と敵意を、片方はただの乗り越えるべき壁として無感情な視線を向ける。機械仕掛けの蛇は生き物らしく、肉の身を持ったヒトは機械のように、その身体を構成する素材と相反する視線を交差させながら神秘を燃やす

 

「お前が持っていったこの目と命。値段はないがキヴォトストップ(可愛い妹)の所有物だ。代価はそれなりに高くつくぞ」

 

ポーチから取り出した刀の鈍く光る刀身が、次の瞬間、甲高い叫喚を放って白熱する。本来白兵戦の用途で使われることのない武器。その腕の神経全てを凌辱して壊しかねない反動を押さえつけ、切っ先を大蛇へ向ける

 

「それと、ようやく後輩が救われようとしてるんだ。邪魔はさせんよ」

 

 

 

砂嵐が巻き上がる。音が鳴り響き大地を揺らす。その戦争じみた轟音はたった一つの戦いによるものだと予想できる人はいないだろう

 

外れた肩は、胴体を捻り腕を一回転させて無理やりはめる。軋む腕は神秘の糸で補強する。避け切れない衝撃は後ろに飛ぶ事で軽減し、落下は受け身をとって対処。大振りな攻撃に直撃するほど愚鈍でもなく、反撃に移れるほど蛮勇でもない

 

体格だけを見れば数十倍の差がある相手に、両者とも攻めあぐねていた

 

「攻撃範囲と威力は兎も角、威圧だけで言えば断然ホシノの方が怖いな………………おや、速くなった。怒ったか?言葉は理解してるのね」

 

格上相手であれば、ひたすら時間稼ぎをし、隙を見て渾身の一撃を叩き込む事で格上への勝利(ジャイアントキリング)を成功させた事はあるが、相手は機械で疲れが無いかつ尽きない神秘。素で倒せる相手ではない。

 

「何度か攻撃はしてるが……ホシノ以上に硬いのはどうしようか」

 

新たにポーチから取り出した銃の大きさは、自動拳銃とそう変わらない小型の物。だが大きさ以外、特にその形状は大きく違っていた。銃のクリップから伸びる、細く長い銅の柱2本がタングステンの弾を持ち上げ、見るものの視界を潰すアーク放電の激光を纏い始める。銃の反動、制御、照準その他全てを使用者一人でこなさせる悍馬(暴れ馬)

 

(ひとつ)(ふたつ)(みっつ)…………充填完了。発射」

 

地盤が割れ、砂が巻き上がり、あまりの威力に圧縮された空気が燃え、プラズマが発生する。その全てを神秘で覆い、弾の威力に上乗せして放つ。着弾より少し遅れて重低音の発砲音が、何もない砂漠に遠く響く

発生する灼熱と衝撃により銃身が損耗するため、使い捨て前提の小型簡易レールガン。既に鉄屑と化したそれを放り投げ、着弾した筈の場所へ目を細める

 

「…………やっぱり効いてないか」

 

刀に乗せた神秘と高周波振動によって装甲表面程度であれば水のように切れる。使い捨てかつ簡易版とはいえ、曲がりなりにもレールガンである以上威力は申し分ない。下手な砲撃よりよほど火力は優れていると断言できる

しかし、その2つを駆使したとしても、ビナーの自己復元能力を覆すことはない。その上、機械の体に起因する丈夫さと、『理解(ビナー)』の権能による知覚、制御能力で原子、素粒子レベルの反応を手中に収め、神秘が無制限に湧き出る源泉を持つ

 

弾切れしない刀、弾切れしようがないレールガンが数丁、あとはこの身一つで時間を稼ぐ。今はとにかく時間稼ぎに徹する

 

ビナーが放ったミサイルに乗りながら薄く息を吐く。集中するためではない。自分自身へのため息

 

「他人に頼らなきゃいけないのは、つくづく嫌になるね。ホント」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“リッカ……無事でいてくれ…………!”

 

先生はひたすら疾走していた。事の発端は数分前、ホシノを救出し『おかえり』と言わせた直後、シッテムの箱から警戒アラートが鳴った。それも最大級。

シッテムの箱に住む彼女が測定する神秘量は、今も指数関数的に増加し続ける

 

やがてレーダーが捉えた()()()に到着した時、彼らは思わず見惚れた

 

驟雨のごとく降る攻撃の数々を紙一重で躱す彼女に。

大蛇が放ったレーザーやミサイルが着弾するころには既に移動し終え、避けられないなら空中で迎撃。巻き起こる砂嵐は、刀から発された衝撃波が安全地帯を作り出す。単なる体当たり———といってもあの巨体でされれば脅威極まりない一撃となる———が当たることはない。振り抜かれた尾の上に立ち、刀の発する絶叫と共に傷跡を刻みつける。

 

紙一重で、綱渡り。一歩間違えれば再び死へと招かれかねない状況で、彼女は普段と変わらず疾駆する

その姿に、生徒を何よりも尊重する彼は思わず声を出す

 

”リッカ!!”

 

「―――――――ッ先生か!助かぁっぶなぁ!!」

 

視線がそれたのを見逃さず撃たれたレーザーを、背を逸らす事でギリギリ避け、そのまま数度のバク宙で立て直す。服の裾がチリチリと焦げる

 

そして、ビナーと因縁があるのは1人のみではない

 

「あの蛇………ユメ先輩の————!!」

 

「待て、ホシノ!!———————あーもうあんのバカ娘ぇ!!」

 

「ホシノ先輩、1人で行っちゃいましたね☆」

 

「てかなにあの大蛇!機械だし!」

 

「ん………アビドスの資料で見た事ある。たしか……ビナー?とか書いてあった気がする」

 

ホシノが一人で飛び出し、突貫する。全力で動くホシノを止められる人材はいないため、それなりに呑気なものである。

制止をあきらめ、先生への説明を優先する。といっても言う事はあまりない。ホシノが突貫した理由(ユメ先輩の仇)を軽く言い、最後に付け加える

 

「20………いや10分だけ持たせてくれ。それで倒せる」

 

”…………あのでかい化け物をか。嘘じゃないね?”

 

「もちろん。指切り千本でもしようか?」

 

“しなくても良いよ。生徒の望みだ。先生として、何とか持たせてみせよう”

 

「話が早くて助かる〜」

 

トントン、と肩を叩かれる

 

「リッカさんリッカさん」

 

「はいはいなんでしょ、ノノミさん」

 

「あのヘビ倒せれば、ホシノ先輩を手伝う事って出来ますか?」

 

「……………おや」

 

今更気づく。彼女たちはホシノに守られてる事に気づいてなかった訳じゃない。気づいても何も出来ないことを理解していたから、気づかないふりをしていただけだ

 

「………あの子は良い後輩を持ったね。泣きそ……歳かな」

 

ホシノがおじさんなら私はババアだし

 

『それはなんか違いません……?』

 

「ま、ホシノの助けになるのは私が保証しよう。存分に助けてあげてくれ。1人で背負おうとする先輩の横っ面を引っ叩く勢いでな」

 

「ん、言われなくても」

 

「頼りになるね。じゃ先生、頼んだよ」

 

攻撃の届かない後方へ下がり、瞬時に極限の集中まで潜る。思考補助、情報処理に特化した形態へと変質した神秘が、淡く不規則な文様を描き出す。体外に備えた、もう一つの脳。

 

普段より鋭敏になった耳が後ろから近づく足音を捉える。そこから推測できる体格は随分大きい

 

誰がいるかなんぞ見る必要もない。

 

「黒服、来たのか。…先生はどうだった?」

 

「ふむ…………『先生』に恥じない良い方でしたね。あれならば貴方が先生を信用するのも頷けます」

 

「当たり前だ。うちの妹が選んだ人だぞ。………そも、万が一相応しくなかったら初日で殺してる」

 

「……救えませんね」

 

「はは、救ってくれるつもりだったとは。驚きだ」

 

肩をすくめ答える。視線がずれ、先ほどポーチから取り出したそれに不思議そうな顔―――顔は見えないし、見えたとしてもぱっと見わからないだろうが、そんな雰囲気だった―――をする

 

「樫の木に生えたヤドリギの矢、意志の宿るナラの杖。ケルト魔術の一種ですか。確かにケルト魔術であれば、ビナーには有効でしょう」

 

ケルト魔術は大樹や霊樹、自然への信仰が魔術として形を成したもの。そのため、《セフィロトの樹》を起源とするデカグラマトンの預言者には相性がいい。だがこの程度で通用するなら、2年前彼女は死んでいない

 

「しかし、相手は機械仕掛けとはいえ、仮にも神の一角。貴方では相手取るのに出力不足では?」

 

「んー……私はね、神秘ってのが感覚として理解出来てない。元々持ってなかったモノだからか、神秘が私の一部って認識が薄いからか」

 

神秘による擬似的な声帯は、いくつかの言語が混じる独自の詠唱を紡ぐ。大体のことは出来るのが彼女の才だと知ってはいたが、まさか魔術編纂の才もあったのかと、無言のまま驚嘆する

 

「コレ!って断定できる状態が無いから、私の神秘は勝手に変化しやすいし、変化させやすい。だから同調なんてズルも出来るし、同調すれば私が使える神秘の総量も無制限に増やせる

ま、相手の100分の1しか出力が無くても、容量が相手の100倍あればおんなじ火力で無問題(もーまんたい)ってことー」

 

神秘の同調、その対象は人だけに限らない。対象が神秘を持っていれば基本何でも同調出来るし、外付け電池として使える

 

「その分の神秘は何処から持ってくるのです?濃度の高過ぎる神秘は万物融解液(アルカヘスト)と同じように万物を(ほど)きます。神に(とど)きうる量の神秘を一ヶ所に保管は不可能ですよ?」

 

「はっ、もっと自由に考えてみろ。神秘なんてそこらじゅうに有り余ってる。要は」

 

指を下へ向ける

 

ここ(キヴォトスそのもの)なら、神秘はいくらでもあるだろ?」

 

「————まさか!!」

 

神秘伝承の忘れ去られた外の世界では魔術はすでに廃れかけている

 

しかし、例外が存在する。神が実在し、神の力の切れ端片手に夜な夜な宴を繰り広げ、人ならざるヒトが(おど)るこの世界は、まさしく神秘の特異点。

(いにしえ)の力が(よみがえ)り、実現する場所だから

 

禹歩(うほ)*1によって土地に刻まれた式が、幾何学的な紋様と共に光る。彼女の妹によく似たヘイローが割れ、空へと溶けて消える。

 

ごうごうと神秘の風が吹く。余りの濃度ゆえ、触覚で感じ取れるまで物質化した神秘。その、荒れ狂う神秘の風が収斂されてまとまってゆく。地から、空へ。膨大な神秘がたった一つの塊へと、ビナー()ですら怯み、数瞬間動きを止める存在へと作り変わる

 

ビナーだけではない。その場にいた全員が一斉に振り向く。それほどの存在感

 

ヘアゴムがバチン!と音を立てて弾け飛ぶ。古来(こらい)より髪には神秘が、魔力が宿る。髪が、宙に浮かぶように広がる。空を足場にして一歩ずつ上がる。

 

頭上に浮かぶヘイローは見当たらない。否、あまりに大きすぎて()()と認識出来ないだけだ。今のリッカのヘイローはキヴォトスが持つ、空に浮かぶヘイローそのものであった

 

空から白い結晶がふわふわと降りてくる。黒服はその一つを手に取り、すぐに溶けたそれを見つめる

 

「リッカ、六花(リッカ)雪の結晶(リッカ)。なるほど、自身の名に類する世界へと作り替えましたか。その方が力を振るいやすいから」

 

その目に映るのは、晴天の砂漠にしんしんと降る淡雪(あわゆき)。本来あり得ない、神の奇跡と思える世界の景色。事実、それは一時的であっても神へと至った1人の生徒が起こした、文字通りの神の所業であった

 

ビナーの体にヤドリギが絡みつく。全長数十mの身体を縛るほどの長さと強靭さへ急成長したそれが、ビナー()を、(ビナー)を地へと堕とす

大道の劫火によりヤドリギが燃え切られるが、動く暇さえ与えず縛り直す

 

そしてもう一つ

 

杖にヤドリギがまとわりつき、一つの槍が顕現する。その槍の名は『ミストルティン』。元は、北欧神話にて主神オーディンの子・バルドルを殺したとされる同名のヤドリギの枝。無限に等しい神秘の補助によって、その完成度は神話上の原型(オリジナル)と遜色ないほどに仕上がっている

 

人相手には使えない、対神専用の奥の手

 

アツィルトの光がリッカの右横を通過する。余波で右腕が消し飛ぶが、その身は既に本体ではない。神秘が集まり形を成せばたちまち復元される

 

水面に映る月をどうしたとて、空に浮かぶ月がどうなるわけでも無い。今の彼女を殺すなら、キヴォトス全てを焼き尽くす必要がある

 

「————ホシノ、受け取れ!!」

 

「へっ?えっ!?ちょ、あぶな!」

 

言葉とは違い、槍は危なげなくキャッチされる。

彼女は叫ぶ。膨大な神秘により、その声は聞くもの全てを掌握するものへと変貌していた

 

「どうせ君は勝手に背負い続けるんだ!!」

 

「私の事も、ユメ先輩の事も、後輩も!!」

 

「だったら私も勝手に手伝わせてもらおう!!」

 

ホシノは、泣き笑いのような、迷子の子供がようやく親を見つけたような、くしゃりと歪ませた顔でうなづく

 

「それと先生!お膳立ては頼んだよ!」

 

“いまいち状況がわからないけれど……ホシノをアイツに届ければ良いんだね!?”

 

「そう!出来るか!?」

 

“お安い御用だよ!少なくとも、シャーレに帰ったら始まるデスマーチ(大量の書類仕事)に比べたら楽な仕事!”

 

「……私も手伝う!一緒に地獄を見るとしよう!」

 

後でやって来る仕事の多さに2人で苦笑し、共に相手を見据える。雪によって大気が冷え、吐く息が白く濁る。指の先からパキパキと凍り、崩れ落ちた矢先から修復される

 

「待たせたなぁ、ビナー。まずは小手調べ。一発、『手合わせ』願おうか」

 

言うが早いか、リッカは勢いよく『両手を合わせる』

 

『雷』転じて『神鳴り』と成り、その言葉遊び通りに世界が変わる。『神』が発した音の影響により、空気が割れ、膨大な熱を発し、莫大な電荷を動かす。光学センサーすら反応しない速度で襲う攻撃にビナーは一時的に動きを止めるり

 

「威力はまぁまぁ。ミカの隕石召喚よりちょい上ってとこか。私がその火力を出せるのを喜ぶべきか、()()までやってその程度なのを悲しむべきか分からんな」

 

フッと、鼻から息を漏らす。

 

「ま、これで分かった。お前は倒せない相手じゃない。神の座から引き摺り下ろす為に色々やったんだ」

 

一つ何かを間違えれば、そのまま奈落に堕ちる様な状況で、表情を取り繕うことに意識は裂けない。だから間違いなく無意識の状態で、彼女はニィと壮絶に笑う。神秘と感応し爛々と燃えるように輝く眼で、氷刃のような、狂気のような、冷たく鋭利な獰猛さを浮かべた顔で嗤う

 

「お前も私も、所詮は神の模倣品(イミテーション)だ。紛い物どうし、仲良くやり合おうか」

 

流した血で禊ぎは済んだ。いざや、いざや、神殺しの始まりだ

 

 

 

 

____________________

 

 

黒服は微動だにせず、目の前の景色を全て記録しようと見続けていた。その心中に浮かぶのは、驚嘆、悔恨、歯痒さ、それら全てを押しのけて余りあるほどの歓喜

 

「———あぁ全く、力業にも程がある!『大人のカード』の様な芸術的な緻密さなど欠片も無い!

暴力的なまでの稚拙さを押し通す事によって、先生(神の子)と同じご都合主義(メアリースー)を成し遂げましたか!!」

 

恐らくは、道教における『天仙』に近しいもの。自然(キヴォトス)と同化する事で、自然(キヴォトス)が持つ無限と等しきリソースを自由に使う。しかし、代償として自然と同化する事で自我が薄れ、個を失う

 

大海に墨を一滴落としたとて、墨が海をどうにか出来る訳でもない

———出来るわけがない、その筈だった

 

「しかし、今も変わらず個として成り立っている。それを可能にしているのが、()()()ですか!」

 

————おおかた、先生の持つ神秘の観測、定義を可能にする権能を所持者にも与える聖遺物か。起動の代価として記号(テクスト)を丸々一つ奪われる為、記号を2つ待ち合わせる彼女(リッカ)しか使用不可能。私達(ゲマトリア)が所持しても、利用価値が無い

 

「私達に奪われるリスクヘッジもしている、という事でしょうか。彼女(連邦生徒会長)もなかなかどうして姉想いですね」

 

そしてもう一つ

 

「それに、あの方法であれば正史の書き換えによるペナルティは受けない。うまく考えたものです」

 

 

彼女(リッカ)がやった事は単純だ。正史の書き換えをすればキヴォトスから拒絶される。なら、キヴォトス(この世界)と一つになれば良い。彼女が捧げる物は彼女が捧げられる物で、彼女が与えられる罰は彼女が与える罰だ

 

自身の体を神に捧げれば捧げた分の願いは叶い、自身が神であるが故に捧げられた肉体によって自己保存は継続される。キヴォトス全てを手中に収めた、神と同然の力

 

 

 

だからこそ今の彼女は美しい無価値だ

 

だからこそ今の彼女は強い無力だ

 

だからこそ今の彼女は万能だ無能だ

 

無意味で、無駄で、無意義で、無知で、無用の権化

 

世界の異物であるが故に、本来存在しえなかった故に1人では何も出来ず、誰かを足がかりにしなければ何もなせない。今は世界を惑わす自己矛盾によって成り立っているが、そんな不安定な状態が長く続く道理はない

神へと近づこうとしたイカロスが天から堕ちたように、神の怒りをかったバベルの塔により人の言語が別れたように、只人(ただびと)が神へと至るには余りにも乗り越えるべき壁が多い。

 

たとえ至ったとしてもその代償は体を蝕み続ける

 

「『大人のカード』より拙い分、随分と限定的で燃費が悪い。あれではエピローグ(完結)まで持つかどうかでしょう」

 

破滅の預言者(カッサンドラ)は、不吉に呟く

 

「偽善で欺瞞で傲慢で強欲」

 

2本の指をパキッと鳴らす。音が出たコンマ数瞬後、全ての光を飲み込み通すことのない黒の面が空間を侵食する。

 

「もはや演劇(アーカイブ)に縛られない彼女が、どのような物語を綴るのか。楽しませていただきましょうか」

 

彼の足音も姿も、そこにいた事実すらも消えると同時に、黒の面も灰となって消えるよりも先に、英雄の槍が巨龍の鉄色の躰を貫いた

 

 

*1
中国の古代の天子・禹王の歩みから生み出された、歩行した際に残る足跡を魔術の媒介とする技法





この話を書こうとした最初の問題が主人公の名前どうしようでした。
よって今世の名前を消して、代わりに凄い力手に入れたよ〜って形にしました。妹がキヴォトスの支配者なら、これぐらい良いかなって
因みに2話の最初でちょろっと書いた奥の手がこれです

道術+ケルト魔術+北欧神話VSセフィロトの樹とかいうトンチキ魔術バトルになりましたが後悔はしていない。書いてて楽しかった。
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