可愛い連邦生徒会長の姉として!   作:siyu

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ウェズン

 

 

 

 

“ただいま~”

 

「あ”〜〜疲れたー!」

 

2人揃ってシャーレのソファーに勢い良く座る。色々ありすぎて疲れた。

手持ちのバッグを部屋の端にぽいぽいと放り投げながら聞く

 

「先生ー。紅茶飲む?」

 

“砂糖マシマシでおねがい……”

 

目元を指で揉みながら答える先生には疲れが溜まっているのが見て取れる。苦笑いしながら別室に備え付けられたキッチンへ向かい、面倒くさいのでパックで手早く淹れた紅茶片手に机へ戻り、思わず呆れ笑う

 

「ソファーで寝落ちは体が痛くなるぞー」

 

先生の頭を引っ掴み、膝に乗せる

 

微かに体臭と混ざった杜松(ジュニパーベリー)の香水がふわりと香る。その匂いへの不快感は無く、安心感を抱く

 

深く眠る先生のおでこに、軽く唇を落とす。軽いリップ音と、女子の私より少し高い体温

 

「おやすみ先生。せめて今は、良い夢を」

 

 

 

 

 

…………あ~~~、顔が熱い。

 

そう呟いて顔を冷やす姿を見るのは、シッテムの箱(契約の箱)に住む彼女だけであったそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「膝枕………には今更ツッコミませんが、ずいぶん楽しそうですね?」

 

世間話のように言うリンは、紅茶の甘さに顔を顰める。ようやく帰宅したと連絡を受け取ってすぐにやってきた矢先に出された紅茶は、残念ながら好みの甘さではなかった。が、飲めはするので淹れ直すかという提案は断る

 

「わかるのか?そういうの」

 

「分かりますよ。何年一緒にいると思ってるんですか」

 

「中学の途中からだから……4、5年ぐらいか?そうだねぇ……楽しそうか。楽しいんだろうね。今の私は」

 

リッカは先生へ、愛しい相手を見るように目を細めている。親が子に向けるような、少女が人形に向けるような、親愛の色を纏う目。その上で少しの負の感情も混じるその複雑な色の視線に、数瞬ばかり目を奪われる

 

「ようやくなんだ。先生のお陰で、ようやくあの子と姉妹喧嘩が出来る」

 

そう答えるリッカの表情は全てが楽しいと世界に叫んでいるようで、その表情は連邦生徒会長によく似ている。

 

見た目と子供らしい表情のみが、この姉妹のよく似ている部分だと誰かが言っていたのを思い出す

 

「これ以上に嬉しいことがあるか」

 

リンに姉妹はいないため分からない。そして、

 

「あの人と喧嘩なんて考えたくもないです」

 

『連邦生徒会長は超人』。その言葉には偽りも誇張もない。ただひたすらに刷り込まれた()()

 

目の前の彼女は欠片の恐怖も見せず単なる姉妹として付き合っていたが。近すぎて見えていないのか、はたまたそんなモノ、気にしない豪胆だったのか

 

彼女であればどちらもあり得そうだ

 

「あの子の面倒見てもらってたお礼に、美味しいすき焼きのお店紹介してあげる。書類仕事で精神が死んだ時はよくお世話になる」

 

「奢りなら喜んで行きますよ………で、その喧嘩の内容、聞いても大丈夫なやつですか?」

 

リッカは奇妙なものを見たように片眉を動かす

 

リンは基本、個人間の問題については首を突っ込まない主義だ。滅多にない行動をした彼女は頭を押さえながら考える。何故目の前の彼女は問題ばかり持ってくるのかと

 

貴方たち二人(キヴォトストップの姉妹)が問題を起こせば次に責任取るの私なんですから、せめて概要だけでも知っておかせてください」

 

「………まあ、周りに被害が出るようなモノじゃない。単なるたった一つの賭けだ」

 

そこから聞いた話は、リンの頭を更に頭を痛くする内容だった

 

先生によってキヴォトスは救われる

 

救済を確実にするため、彼女は既に『目』とやらを使ったと言う。それに起因する不可逆の崩壊。肉体も、魂も、概念すらもキヴォトスへと溶け消える、エントロピーの増大

 

詰まるところ、その一方通行の道を歩む彼女を先生は助けられるのか

 

「あの子は出来るに、私は出来ないに賭けた(ベットした)………なんだその胡散臭いものを見るような目は。いくら私でも傷つくぞ」

 

リンは、超人を誰より近くで見続けて来た彼女は気づく。この姉妹は、やはりよく似ている。

 

「いや、なんというか………あなた、誰かに助けられるのを大人しく待つタチでは無いでしょう。物語のお姫様でもあるまいし」

 

「私は半端者だが灰かぶりのお姫様(シンデレラ)ぐらいには成れるかもだろう?」

 

———あまり、気付きたくはなかった

 

他人に最後を任せる、自己犠牲の他力本願

 

他人を信じきり、その程度なら出来るだろうと自身の目を疑わない自信

 

「グリム童話に武闘派のお姫様とは新しいですね」

 

リンはすん、と鼻を鳴らす

 

「この事、他の方々、特に先生には」

 

「秘密で頼む。そも、言っても誰も信じないさ」

 

「でしょうね」

 

あぁ、本当に————()()()が、そっくりだ

 

 

 

 

 

 

「で、話逸らしまくった手前申し訳ないが本題は?」

 

タブレットを手際よく操作し、データを引き出すその姿はデキる秘書そのもの。てか確か視力は別に悪くないはずだが、メガネかけてるのなんでだ?妹ちゃんの趣味か?

 

「まず、今から数時間前。キヴォトス全土で季節外れの大雪が起きました。レッドウィンターは年中雪なのでいつも通り反乱が起きてましたが」

 

「うん」

 

天候変えた影響、キヴォトス全域まで広がったのか。迷惑かけた所をリストアップしてもらい謝罪行脚に行く予定を、脳のメモ帳に記入する

 

「そのせいでこの先一週間ほど大雨の異常気象が続くと先ほどクロノススクールが報道しました」

 

「………うん」

 

「そしてアビドスで超高濃度エネルギー体が観測された結果、負荷で観測機がぶっ壊れました。全てが一斉に」

 

「うっわぁ………全部私のせいだな。(部下)から色々聞かれたら責任は私にぶん投げといてくれ」

 

「もうしてあります」

 

「仕事がお早いこと」

 

()()()()の無茶をよく処理していたので」

 

さて、誰のことでしょう

 

「その『目』とやらを使ってこのレベルの事をしたのは分かりましたが、観測機の得たデータをトリニティのスパコンで解析しても解析不能とだけ出ました。あなたも大概化け物じみてますね」

 

「マコトにも言ったが、私はただの人間だ」

 

「キヴォトス全土の天候を変える個人に畏怖を覚えるのは当然の話でしょう」

 

「……まぁ、そりゃそうか」

 

硬くつるりとした義眼に触れる。粘膜や痛覚なんざある訳もない人工の目は、生来の物と変わらず鮮明な視界を脳に映す

 

青い海の世界で受けた、超人の啓示

 

『神を倒す為に、心まで神に成り下がる必要はありません。貴方は貴方()のまま、神を御してみなさい』

 

嬉しかった。忠誠を誓った君主()からの命。光栄だった。他人にどう思われようが勝手だが、そこは譲れない。我ながら変な精神状態になったものだ

 

リンは呆れたように息を漏らす

 

「思い出に浸れるなら()()人間ですね。先ほどの言葉は撤回しましょうか」

 

「…………怒ってる?」

 

「当たり前でしょうが」

 

「……ごめん」

 

「思っても無い事を言われても更にむかつくだけですよ」

 

()

 

「……アビドスについての書類はあるか?」

 

「話逸らしましたね」

 

うるせぇやい

 

「で、何でですか?」

 

「あそこ私の土地になったから所有者更新しておこうかと」

 

「珍しい事もあるものですね。あなたもようやく自領地持つ気になったんですか」

 

「保有するだけで統治する気はない。そもそも人がいないしな。私が卒業したら連邦生徒会に帰属させる」

 

「横暴………でもそれがまかり通るのがあなたですものね。あだ名が、歩く治外法権なだけあります」

 

「何そのクッッッソダサいあだ名。私知らない」

 

「聞こえるように言う馬鹿はいなかったようで安心です。アビドスの書類は無いので、モモカにでも連絡して資料送ってもらってください」

 

「ん、了解」

 

目の前に積まれた書類にサインを書いて、着実にその山を削っていく。私もリンも、書類を片付けながら話す程度の器用さはある。ふと気になった事を聞く

 

「リン。AI、人工知能。それら機械が自我を持ち、一体の個として成り立つ。そんな事があると思うか?」

 

「あり得ません」

 

キヴォトスでも有数の知能を使いその地位へ上り詰めた彼女は、断定する。どこまで行っても機械はヒト足り得ない。アリス(AL-1S)のように神秘が関わる場合は別なのかもしれんが

 

「少なくとも、0(推論)1(探索)を積み重ねるELIZA(最初の人工知能)の系譜には不可能でしょう。どれだけ学習を重ねても出来て思考の数歩手前、『判断』程度が限界です」

 

「人も所詮思考ではなく連続した判断を下し続けているだけ、なんて言ってしまえばそれまでだがね」

 

「それは人間を安く見過ぎです。そんな簡単に人を作れるのならとうに出来ていますよ。———でも、もし人を、もしくは人すら超越した存在を創るとするなら、その手段は人間(完成品)の脳を模倣(コピー)するか………神の奇跡ぐらいでしょうね」

 

「神、神ねぇ………やっぱりそこに辿り着くのか」

 

「神はお嫌いですか」

 

「嫌いでも好きでもない。神とやらが本当にいて、かつ目の前にいるなら一発ぐらいは殴りたいが」

 

「それを世間一般では嫌いというのでは?」

 

じゃあ嫌い、と目をしょぼしょぼさせつつ考える。先生ほどとは言わずとも疲れが溜まっている。脳が働かせる為に切実に甘い物が食べたい、が手元にない。代わりにポーチから取り出したソレの電源を入れ、口に運ぶ

 

「一応聞いておきますが、なんですかそれ」

 

「甘いものが無い時の口慰み用に作ってみた電子タバコだ。初めて吸う」

 

「未成年喫煙でヴァルキューレ呼びましょうか?」

 

「ニコチンとかタールが入ってるならまだしも、単なるフレーバーを規制する法はキヴォトス*1にはない。そしてシャーレ内は禁煙でもない」

 

「ここで煙草を吸うと誰も想定していないからでしょうに。そんな事で法の知識使う暇があるなら一つでも多く書類を片付けて下さい」

 

「きびしー。とりあえず書類終わったから追加ちょうだうぉっそれはおおすぎ………私の座高ぐらいあるんだけど。机傷ついてない?」

 

「気にするところそこであってます?あなた方が不在中に運んだ書類が一部屋埋め尽くすほどあるので、下手すれば週単位で徹夜ですよ」

 

「うへぇ、流石に死にそ………すき焼き予約しておくか。リンも食べる?」

 

「ご馳走になります」

 

肺の底にたまる億劫(おっくう)な気分ごと電子タバコの煙を吐き出す。オゾン発生器が設置しているためか、冷たいミントの香りはすぐさま掻き消える

 

……うん。

 

「あんまり美味しくないな。残念だ」

 

「それを私が聞いてどうしろと。やめればいいじゃないですか。気が散ります」

 

「ははっ、やだね〜……まあ、味はともかく吸って吐くを繰り返すのはなかなか楽しい。リンもやる?これ一個しかないから間接キスになるけど」

 

「いやですそういう事は連邦生徒会長としてください私は絶対にしません殴りますよ撃ちますよ」

 

「ひどーい」

 

 

 

ポツポツと優しく降っていたはずの雨は、いつの間にかザァザァと強く窓を叩き始める

 

人工的なミントの香りが、ザラリと舌を撫でる。特段美味い訳でも、吸って何かある訳でもないが、思考は止められる

 

タバコは世界最古の嗜好品で、神聖な供物と聞いた事がある

 

———神よ、少しばかりその御力をお貸しください

 

「………なんてのは都合が良過ぎるか」

 

紡いだ煙は、淡く(はかな)く、空虚に溶けて。

近づいてくる雨音からは、未だ逃れられそうもない

 

*1
現実ではバチバチに犯罪なので良い子は吸わないようにしましょう





完☆結


理由としては2つ。
これ以上は蛇足になりそうなのと、私の執筆力では行き詰まりそうだという事です

今読んでいる小説に文体が左右されたり、処女作がゆえの足りない語彙力、構成力と深夜テンションの発想を捏ねて作られた拙い作品では御座います。

それでもそんな拙作を読んで下さった方、お気に入り登録して下さった方、わざわざ感想を記入して下さった方、何故か毎回ここ好きをして下さった方、あまつさえ評価して下さった方々、全員に感謝申し上げます

ではまたどこかで会えたら嬉しく存じます。ここまでのご閲覧、ありがとうございました

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