見開かれた目から覗く金と青のオッドアイは相変わらず綺麗で宝石のようだと場違いな感想を抱く。
「リッカ、さ…ん」
「リッカでいいと言ったんだけどねぇ…」
軽く嘆息をするが今はカタカタヘルメット団が先だ。
「……ホシノ、この人はーー」
”シャーレの先生だよ”
先生に気づき気を取り直したのか、むにゃむにゃしながら先生に挨拶する。
「先生? よろしくー」
「で、起きたとこ早速で悪いがカタカタヘルメット団の襲撃だ」
「…うぇ、昼寝も満足にできやしない…ヘルメット団めー」
事態に気づいたためか先生へと向いていた視線を窓の外へとやり、ふらふらと立ち上がり、ショットガンとシールドを取りに向かう。
「すぐに出るよ、先生のお陰で弾薬の補給は受けられそうだし、ある分だけ使い切る。今までの鬱憤を晴らすよ」
「はーい、皆で出撃です☆」
アビドス全員が愛銃を手に取り、その背をアヤネと先生と共に見送る。アヤネが困ったようにこちらを見る
「リッカさんはどうしましょう…」
”リッカは知られていない戦力だし、遊撃隊として立ち回ってもらうよ”
「了解した。ある程度の情報さえくれれば独立して動こう。なに、あの程度の輩に倒されるような鍛え方はしていない」
あの人数差ではちまちま狙撃で倒すのも効率が悪い。ホシノ以外は初対面なのもあり連携も難しい。アビドスの子たちの邪魔にならず、一気に倒すとなれば――
視線を上へと向ける
「屋上の鍵は借りても?」
_____
アビドス校舎の屋上は立ち入ることが少なく人手が足りないためか、随分と砂だらけだった。滑ってこけないようにしなければ。周りを見渡せば広大な砂漠と廃れた町らしきものが見える。ここはアビドスの子たちの大切な場所だ。赤の他人に奪わせてやるものか
左足はそのままに右足を後ろへやる。両手を前へつき腰を上げる。神秘を体に纏わせ、燐光がはじける。
一歩踏み込むごとに地面のコンクリートが割れ、加速する。体を宙になげ、その勢いのままカタカタヘルメット団の中へ飛び込めば、数人が下敷きとなり気絶する
銃撃の音が聞こえだす。さあ開戦だ
先生の下で戦うのは初めてだが普段よりも格段に楽だ。戦場の俯瞰図が脳内にリアルタイムで流れる。銃の残弾が感覚でわかる。反応速度も上がり勘が冴えわたる。神秘の扱いが無意識で処理される。ヘイローに干渉でもしているのだろうか
首をほんの少し傾ければ目の前で撃たれた弾が逸れる。その隙を突いて腕を掴み、相手が避けられない距離で拳銃の引き金を引く。
右から銃を撃たれるが、斜めにした腕に弾を当て、軌道をずらして対処。そのまま銃を手で跳ね上げ吹き飛ばす。一歩踏み込み間合いを詰め片足を払い、バランスが崩れたところで喉元を捉え、背中から真下に叩き落す
また一人倒れるが周りを囲まれた。数十の銃口がこちらを覗く。倒されはしないが避けられず、ある程度のダメージをもらう数。ならばどうするか
神秘を右手に集め、制御を手放す。同時に神秘が弾け閃光となる。目を閉じていた私と違い、周りの奴らは網膜が焼かれ、視界が塗りつぶされ、刹那立ち尽くす。
「神秘ってのは意外と不安定なんだ」
敵の下顎に銃口をピタリと合わせる
「だから、ある程度神秘を理解したキヴォトス人なら意志によって神秘を変質させられる」
打つと同時に後ろを向き、上段蹴り
「使用すれば銃の威力が底上げされ、使い方によっては距離減衰すら無効にできる。この通り、威力の低い自動拳銃ですら数発で君たちを気絶させられるように」
空になったマガジンに神秘を込めて力任せにぶん投げ、最後の1人の頭に当てて気絶させる
「ストラーイク」
雑兵を倒し、奥へと進む。指揮官らしき奴が目に入り幹部級であろう敵に囲まれる。神秘での目くらましは見せてしまったしどうしたものか。
「単独行動で敵の陣地に乗り込むとか何してんのさー」
「ホシノか。君こそ何でここ、に…」
声のした方向を見れば、盾を構え佇むホシノの後ろには重機でも通ったかのようにぽっかり空いた空間と、死屍累々とした景色。ハッキリ言って地獄のような光景である。流石キヴォトス最強格
「まあ、いいか…ホシノ、久しぶりの連携だ」
「んーじゃあとっとと終わらせようかー」
周りの奴らの注意がホシノに向いたところでさっきと同じ目くらまし。私一人だと使えないが今はホシノがいる。ホシノは盾を使い、目を閉じずに光に対処できる。目を閉じた幹部らにショットガンを放ち、陣形が崩れたところに私がつけ込み、あっけにとられた奴の顎を銃床で叩くことで、意識を飛ばす。
指揮官らしき相手のアサルトライフルが火を噴くが、焦りで狙いがぶれているのか簡単に避けられる。弾が切れリロードする隙をつき、10数メートルの間合いを神秘で強化した足の一歩で潰す。運動エネルギーをそのまま乗せた踵落としを食らわせれば、脳が揺れ動きを止める。
こいつらは烏合の衆だ。しっかり訓練したわけでもない集団は、頭を潰せば簡単に瓦解する。元々薄かった連携が皆無になり、単なる個々の集まりに堕ちる。数分もすれば制圧完了。傷一つ、千切れた髪一本無い完全試合である。
周りに動く人間の気配がすっかり消えると共に深呼吸をする。硝煙くさい
「さすがに少し疲れた…陣形が一直線に空いていたが、一人で突貫でもしたのか?危ないぞ」
「リッカさんに言われたくないねぇ、それと、これは先生の指示だよ。リッカを手伝ってあげてーってね」
つい苦笑が漏れる
「過保護な人だ」
「どうかなー。どっちかと言えばリッカさんが悪いと思うよー」
戦場に似つかわしくないのんきな会話をしていればシロコ、セリカ、ノノミが走ってこちらへやってくる。
「全員倒しちゃったんですか?」
「ん、皆綺麗に倒れてる。装備をはぎ取って売ればお金になるかも」
「…それはいいの?盗品になるし…いやでも今まで何度も襲撃されたしちょっとぐらい…」
ノノミが驚いたように手を口にやり、シロコが屈んで気絶したカタカタヘルメット団に手を伸ばして呟けば、セリカが頭を抱え悩みだす。愉快な子たちだ。端末を見やれば、険しい顔をしていたアヤネが、満面の笑みへと変わり、戦闘終了を告げる
『とりあえず皆さんお疲れ様です!敵の退却を確認しました!並びにカタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認。気絶したカタカタヘルメット団については先生が手配済みとのことで、これでしばらくはおとなしくなるはずです!』
「よーし、作戦終了。皆、先生、お疲れー。それじゃ、学校に戻ろっか―」