可愛い連邦生徒会長の姉として!   作:siyu

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書きたいことを好きなように書いてたらこんなことになっちゃった


回顧

皆が出て行ってから数時間、チンピラが攻めてくることもなく、無事に帰ってきた先生たちを見てほっと、一息つく

 

「ただいま~」

「お帰り、皆。コーヒーを淹れたけど、喉は乾いてないか」

”この香りはコーヒーだったんだね。じゃあ…一杯頼むよ”

「ミルクと砂糖はどうする?」

”ブラックで”

「私はどっちも多めで頼むよ~」

 

順番にみんなの希望を聞いていく。楽な戦いだったとはいえ、今までの疲労も馬鹿にならず、常に頭のどこかでは張り詰めていたであろう精神。

 

それを一度ほぐし、休んでもらおうとそれなりに奮発した豆を使った。昔取った杵柄とはいえ、素人が淹れたものが口に合うか心配だったが…よかった、彼らのお眼鏡には叶ったようである

 

『美味しい!』と目の前で言われるのは悪い気分ではない。それに、飲んでいるうちにみんなの表情の険も少しずつとれてきた。狙いは大成功である

 

「何はともあれ、火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きました。これで一息つけそうです」

「これでやっと重要な問題に集中できる」

「うん!そこは、先生のおかげ!これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!」

 

そう言って笑うセリカの顔は最初のような敵愾心は見当たらない。一緒にアジトを潰しに行って仲を深めたようだ

 

「ありがとう先生!この恩は一生忘れないから!」

 

屈託なく笑うその笑顔は何にも代えがたいものだが――

 

”――借金って?”

「…あ、わわっ!…えっとそれは……」

 

その一言で、空気が変わる

 

「いいんじゃない。セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

「かといってわざわざ話すようなことでもないでしょ!」

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」

「ホシノ先輩の言うとおりだよセリカ。先生は信頼していいと思う」

「そ、そりゃそうだけど、先生だって部外者だし!」

「確かに先生がパパっと解決できるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人はせんせいしかいないじゃーん?」

 

そう言ってはいるが、ホシノ自身も先生を信用しきったわけではない。助けてくれるのなら御の字、仮におかしな行動をされても近くにいるほうが対処しやすい。そういった意味も含めたうえでの正論。

 

生来、彼女はそういう性格だった。しかし、皆が論理で感情を押さえつけられる訳ではない

 

「悩みを打ち明けてみたら、何か解決策が見つかるかもよ~?それとも何かほかにいい方法でもあるのかなー、セリカちゃん」

「で、でもさっき来たばっかの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことあった!?この学校の問題に今更大人が首を突っ込んで来るなんて…私は認めない!!」

 

セリカはドアを勢いよく開け、飛び出していく。現実として、アビドスの問題を解決するための最も近道はシャーレに助けを求め、救援が来た今の状況だ。頭では理解をしている。

 

しかし、今までアビドスを維持してきたのは自分たちだという自負が邪魔をする。感情を制御する術を身に着けていない子供特有の、絶対に譲れない意地(プライド)

 

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見てきます」

 

ノノミがセリカを追い、消えていく。部屋に流れ始める気まずい空気の中、その空気を無視し、おいて行かれたマグカップを回収する。あんな状態でも中身は残さず飲み切っているのはご両親の指導の賜物だろうか。

 

今気づいたような視線と共に、残った面々がこちらに顔を向ける

 

「あの子、私のこと完全に忘れてなかったか…?」

「正直、私も途中から頭の中でリッカさんのこと抜けてたよー…先生にアビドスの問題を伝えなかったのは、なんで?」

 

そこは2年前と変わらない『暁のホルス』としての鋭い眼光がこちらを覗く

 

「…改めて自己紹介したときに言ったはずだ。私は、今のアビドスにとって部外者。部外者がここ(アビドス)の弱みを勝手にいうわけにはいかないだろう。ましてや…今の状況を詳しく知らないまま我が物顔で伝える、厚顔無恥になった覚えはないよ」

「…あなたなら、昔の古巣の状況ぐらい調べてるでしょう…」

 

おや、口調が戻っている。小声だったためか、周りの皆には届かなかったようだが

 

「えーと、簡単に説明すると…この学校、借金があるんだー。ありふれた話だけどね~。でも問題はその金額で…9億ぐらいあるんだよねー」

「……9億6235万、です」

「うへぇ、また増えてるよ……」

 

知っていたとはいえ苦虫を噛み潰すような顔をしてしまう。まさに途方もない数字。前世の一般的な社会人男性の生涯年収が3億手前ほど。3人の人生を使い潰しても尚足りない、本来学生が負うような桁ではない額。

 

「これはアビドス、いえ、私達対策委員会が返済しなくてはならない金額です――これが返済出来ないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります」

 

部屋に残る全員が沈痛な顔をする

 

「ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く……ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨て去ってしまいました」

「そして、私達だけが残った」

 

感情の乗らない、ただ事実のみを語るシロコ。

湧き上がる悔恨の気持ちが、顔に出ないうちに胸の中で押し潰す。

この学校が()()なったのは私のせいではなく、私一人で解決できる問題でも無い。全て私のせいだと、悲壮面をするのはこの子達にとって、侮辱だから

 

「学校が廃校の危機になったのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、全てこの借金が原因です……借金をする事になった理由は――」

 

そうしてアヤネが語って聞かせたのは数十年前のアビドス校。

始まりは、学区郊外の砂漠で砂嵐が起きた事だった。

それもただの砂嵐ではない、想像を絶する規模の砂嵐。学区の至るところが砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも尚、砂が溜まり続けてしまう程の。

その自然災害を克服する為に、アビドス校は多額の資金を投入せざるを得なかった。

しかし、土地だけが広い片田舎の学校に、巨額の融資を許す銀行は中々見つからず、時間も惜しいと四方八方に手を広げ、結果――。

 

「結局、見つかったのは悪徳金融業者」

「……はい、最初の内は、すぐに返済できる算段だったと思います――ただ、砂嵐はその後も毎年更に巨大な規模で発生し、その対処に追われてしまい、結局アビドスの半分以上は砂漠に呑まれ、その度に借金も、その……」

“膨れ上がって、今の金額になった、という訳だね”

「はい……私達の力だけでは、毎月の利息を返済するだけで精一杯でして、弾薬も補給品も、底をついてしまっていました」

「セリカがあそこまで神経質になっているのは、これまで大人の誰も、この問題にまともに向き合わなかったから……話を聞いてくれたのは先生、あなたが初めて」

“…そっか“

「まぁ、それだけのよくある話だよ」

 

ホシノはある種の諦観とともに息を吐く

 

「……もし、もしさ。先生達がこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金の事は気にしなくていいからね。話を聞いてくれただけでもありがたいしさ」

「そうだね。先生もリッカさんも、もう充分力になってくれた。これ以上は迷惑をかけれない」

“いや──“

 

でもーーそう言われたとしても先生が諦めるはずがない。あの子が選び託した、人の為に容易に自分を使える…使えてしまうこの人が、目の前の困っている生徒を見捨てることは万に一つもあり得ない

 

“見捨てるはずがないよ。私も、対策委員会の一人として共に頑張る事にする”

「えっ……それって……」

“一緒に頑張ろうね、皆”

「……ッ! はい! よろしくお願いします、先生!」

「へぇ、先生も変わり者だね。こんな面倒な事に自分から首を突っ込むなんて」

“だって私はシャーレの先生だからね”

 

先生は気づいているのだろうか。当たり前のようにしている行為が誰でもできるようなことでは無いことを。その無償の愛(アガペー)に耐えられる人ばかりでは無いことを

 

先生がこちらを向く

 

“ごめんねリッカ、勝手に決めちゃって”

 

つい苦笑が漏れる。そんな事を気にする必要は無いのに

 

「もとより、アビドスにはできる限りの援助をするつもりだった。気にしなくて良い」

“そっか。もともとここに所属してたんだったね、それならちょうど良かったね”

 

先生の言葉に答えたのち、アビドス面々の方を向いて礼をする

 

「ああ、それじゃあ…先生共々これから宜しく頼む」

 

___________

 

 

はたと気づけば、既に夜が随分と更けていた。

 

明日に備え、銃の手入れなど、遭難していた数日間では出来なかったことを消化していたら、こんな時間になってしまった。

 

散らばった用具をざっと片付け、毛布にくるまり、横になる。この時間からわざわざ使えるホテルを探すのも面倒だと、昼のうちに掃除した空き部屋を一部屋使わせてもらっている

 

照明として使っていたランタンを消し、目を閉じる。

 

視覚が使えなくなったことにより他の感覚が鋭敏になるが、砂漠である外からは虫の声一つ聞こえない

 

 

自然と、自身の脈の音が大きくなる

 

 

ドク、ドクと規則的な音と振動は、扉を叩くノックにも似ている

 

 

鼓動を感じながら意識が遠のき、夢の中へと消えていく。

 

 

ノック、ノックと記憶の扉が叩かれる。

 

 

脳には一片たりとも残っていない、けれど魂にこびり付いている記憶。

 

 

ノック

 

 

青いはずのキヴォトスの空が赤く染まっている。

 

 

ノック、ノック

 

 

サンクトゥムタワーが根本から折れ、悲鳴を掻き消すように、音と衝撃を周りに撒き散らす。

 

 

ノック、ノック、ノック

 

 

先生は何処に行ってしまったのだ、違う、先生は目の前で死んだ。頭を吹き飛ばされ、生きている可能性が絶無な程に損壊していた。

 

 

ノック、ノック、ノック、ノック

 

 

記憶の扉が叩かれて、叩かれて、強制的に開かれる

 

 

先生と絆を結んだ生徒は、殆どが、虚になるか、先生の復讐を果たしに消え、行方も知らない

 

 

ノック、ノック、ノック、ノック、ノック

 

 

僅かの例外である生徒達も疲弊し次々に倒れていった。生死は不明だがすでにこの世にはいないだろう

 

 

ノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノック

 

 

黒服達ですら、先生が消えた混乱の対処に追われ、目の前でキヴォトスを蹂躙するナニカに消し飛ばされた。

 

ノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノック

 

 

空に浮かんでいたヘイローがガラス細工のように割れて、宙へと溶けるように消えていく。キヴォトスが死んだことをまざまざと見せつけられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノック(助けて)ノック(助けて)ノック(助けて)ノック(助けて)ノック(助けて)ノック(助けて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この夢を見るたびに心に刻み込まれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノックノック、ノック、ノック、ノック、ノック、ノック

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数えきれない過去(ぎせい)の上に、私は生きている

 

 

 

 

 

 

 




主人公ちゃんがやってきたのは何回かループする前のキヴォトスです。ループ前の記憶自体は持ってはいませんが、たまに見る悪夢がループ前の、滅んだキヴォトスなのは想定しています。というか連邦生徒会長=妹ちゃんに直接聞いたので知っています。そこから覚悟ガンギマリになりました
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