激動の1日が終わり翌日、今日の天気は憎たらしいほどに雲ひとつない快晴である
“リッカ、おはよう”
「あぁ、おはよう先生」
先生のほうを見て気づく。顔色が明らかに良い。
にっこにこだ
「元気そうだが、体の調子は?」
なにしろ数日徹夜で書類仕事。数時間寝た後、砂漠でこれまた数日遭難。やってきたチンピラを退け、挙げ句の果てには30キロ先のアジトまで強襲を仕掛ける。どこの特殊部隊だと言いたくなるようなスケジューリング、常人にはきつい筈だが…
”沢山寝れたしね、元気だよ”
「…頑丈だねぇ」
いやホントに元気だな。原作でも思ったが先生の体が妙に丈夫なのは理由があるのだろうか。あれか?先生としての
先生が私を見て小首を傾げる。その姿は存外幼い
”…何やってるの?”
「これか?」
手元にあるパソコンを持ち上げる。ついでに今かけている眼鏡を外し、指に引っ掛け回す
「パソコンはシャーレの仕事。あまりセキュリティが高くないから重要度が低いものしかできないが、少しでもやっておかないと帰った後のデスマーチが酷くなるぞ。下手すればまた数徹だ」
”…うぇ、またユウカに怒られる…”
先生が顔を顰める。出発するまでの数日で既に何度か怒られているのか。早いな
「メガネのほうはまあ…趣味、気分だ。一応ブルーライトカットメガネだが、効果の科学的根拠はないそうだしな」
この情報を知ったときはそれなりに驚いた。それはもう、ひじきの鉄分はそこまで多くないことを知ったときと同じぐらいの驚きだった。
要はそんなにである。だって普段使わないし
「…で、何の用だい?」
”セリカのバイト先まで冷やかしに行かない?
「…学生の仲良しグループのテンションだな」
いや知らないけど。前世のこととか思い出すのめんどいから思い出してないし。うん、思い出すのが面倒なだけ。ホントだヨ?アハハ
「セリカのバイト先の名前は?」
”ん-とね、柴関ラーメンってトコ”
「ラーメン…行くか!」
ラーメンは大好物である。特に塩ラーメンにバターとこんがり焼いたベーコン、焦がしたネギとニンニク、最後にきくらげを乗せたやつが好き。
「セリカに止められたりしなかったのか?」
”止められたよ?だから行くんだよ?”
先生はその端正な容姿を悪戯好きな猫のように
にまーっと歪ませる
駄目と言われれば行きたくなる。
ーー人の不幸は蜜の味。
この世で数少ない、不変の真理である
_____
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンです!」
大きくも小さくも無い、地域に根差した店特有の広さを持つ店内に響き渡る溌剌とした声。前掛けを巻き、髪を三角巾できっちり纏めたセリカが笑顔を存分に振りまき、接客を行っている。この様な、居るだけで周りを明るくする人材は貴重だ
「6名でお願いしま〜す☆」
あ、顔が固まった
「来ちゃった!」
「あはは……セリカちゃん、頑張ってるね」
”どうも”
驚いただろう。バイトをしている事は勘づかれてもバイト先までは知られていないはずなのだから。
そこでセリカは先生を見やると、心当たりがあったのか怒った様子で「先生か……!」と呟く
「今回は先生は関係ないよー。セリカちゃんがバイトしてるのは知ってたし、このへんでバイトするならここかなーって」
それを聞くと、「ホシノ先輩だったか……」と、ガックシと肩を落とす
「おう、アビドスの生徒さんたちか? 少し話すのはいいけど、案内してやんな」
例の犬店主のお出ましだ。尻尾をもふりたい
案内されたのは奥の6人席。シロコとノノミ、どちらの隣に座るのか究極の2択を迫られている先生であるが、側から見てるだけだと面白い。
結局シロコの眼光に負け隣に座ることにしたようだ。
残ったノノミの横に座る。
「こうして話すのは初めてだな。よろしくノノミ…さん?」
「年下ですし呼び捨てでいいですよ!」
「じゃあノノミ、…時にセリカは何故ここをバイト先に選んだと思う?」
「…やっぱりバイトの制服がとっても可愛いからじゃないですか?」
ノノミは後ろを向き、セリカへ話しかける。
「その制服、似合ってて可愛いですよ★、セリカちゃん!」
「いやぁー、セリカちゃんってそっち系? ユニフォームでバイト先決めちゃうタイプ?」
「ち、違うって! 関係ないし! ここは行きつけのお店だったの!」
いじりがいのある子だ。
「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだね〜。どう? 1枚買わない、先生?」
“どうしょうか…値段によるかな…”
「シャーレの部屋は殺風景だからな…ボードにでも貼ればかなり華やかになるんじゃないか?先生どうする、金は半分出すぞ?」
「変な副業はやめてください…買おうとしないでください…2人とも…」
「バイトはいつから始めたの?」
「い、1週間ぐらい前から……」
「そうだったんですね☆ 時々姿を消していたのは、バイトだったという事ですか!」
「うぅ…も、もういいでしょ!注文は!」
弄りに耐えかねたのか、セリカは顔を真っ赤にして叫ぶ。
そういった反応が弄られる理由だと気づいているのだろうか
「え~、そこはほら、御注文はお決まりですか、でしょー? セリカちゃぁん、お客様には笑顔で親切に接しないと~!」
「あ、ぐっ、ぬ……ご、ご注文は、お決まりですか……!」
ホシノはニヤニヤと下から覗き込むように笑う。とっても良い笑顔で。
「私はねー、特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピング付きで!」
「私は、チャーシュー麵をお願いします!」
「塩ラーメンを一つ」
「えっと……そうですね、私は味噌ラーメンで」
頼みなれているのか、品書きを見ずに注文していく
先生と私は初めてなのでメニューを見ながら頼む
“リッカはどうする?”
「…塩だな。トッピングに味玉を1つ」
“じゃあ私も塩で”
頼めばすぐに出てくる出来立てのラーメン。まずは一口、麺を啜る。
風味豊かで小麦の香ばしい香り、程よいコシに食感がよく、のど越しよく頂ける。
スープは塩であっさりしているがパンチが効いている。飲んだ後の鼻に抜ける匂いが食欲をさらにそそる。麺と共に食べるとスープによく絡んでくる。これがまたなかなかどうして美味い。
味玉は味が染み込んでいて半熟。必要以上に熱を入れない、店長の技量の高さが伺える出来上がりとなっている。
値段も安く、愛されるのがよくわかるお店だ
結論•滅茶苦茶美味い
替え玉を一つ頼みながら考える
そういえばこの後ハルカに爆破されるんだよな……止めるか…