それ逝け!ユメ先輩(偽) 作:ポンコツ太郎
実はノノミちゃんの扱い方が一番よく分かっていません。どうしよ……
「というわけなんです!」
「どういうわけなんです?」
あっという間に7月。夏が本格的に始まるであろう今日この頃、ノノミちゃんが教室に入って来るや否やそんなことを言った。しかもむすっとしながらだ。珍しいと思いつつ、いきなり言われても分からないので、一緒に入ってきた二人の方を見るのだが、二人はなんだかばつが悪そうにしている。何やらかしたんだ君たち。
「学校の備品が色々と不足してしまっているので、買い物をって。今回は不足しているものが多いので、手伝ってほしいんです」
「ああ……」
なるほど、と合点がいく。このおんぼろ学校はいろんなところにガタが来ているので、結構な頻度で物が壊れたり不足したりする。予備を買うお金もないので、壊れていたり不足しているものに気づいた人が補充や修理、出来なくとも他の人に伝えることになっているのだが。なっているのだがである。
もしかしなくともこいつらサボりおったな。そうジト目で見るとシロコとホシノは冷や汗をかきながらふいとそっぽを向いた。ちなみに向きまで同じだ。親子みたいね。反省しろや。
それもあってどうやら一人で買いに行くには大変な量になってしまったようだ。そういうわけでさっきの発言ということだろう。二人を引っ張って行けば、とも考えたが、あまり真面目に買い物に付き合うビジョンが見えない。
「分かった、私が付いていくよ。ついでにおゆはんも買いたいしね」
「本当ですか?ありがとうございます!」
大分困っていたのか、そう言うとノノミちゃんの表情がぱっと明るくなる。そういえばノノミちゃんが補充していることが多い気がするので、ここは一杯手伝ってあげねば。
「ハンバーグがいい」
「おん?」
「ん……」
生意気を言うシロコは眼圧で黙ってもらう。反省しろ言うとるやろがい。
「うお……でっか……」
「D.U.地区のデパートはキヴォトス中でも一二を争う大きさですしね~」
というわけで、ノノミちゃんに連れられD.U.地区のデパートに二人で来たのだが……その迫力に思わず目を奪われていた。何といってもデカい。東京ドーム何個分だろうか。……冗談はともかく、これならキヴォトス有数のデパートというのもうなずける。売ってないものはないんじゃなかろうか。
ちなみに、残りの二人は学校でお留守番だ。お仕置きというのもあるが、最近襲撃を仕掛けてくるようになったヘルメット団が来ても対応できるようにするためでもある。週に一回は必ず来るので、無人にするのは少し心もとないしね。
でも、もしかしたら二人で戦闘訓練をしているかもしれない。ヘルメット団によって戦闘の機会が多くなったので、実力をつけるためにとホシノが案を出したのを機に、以降定期的にしているのだ。しごかれているシロコを想像して大変そうだなぁとか呑気なことを思う。まあ同じ量を自分がやるとすぐへばるんだけども。
閑話休題。買うものが多いのでもう一度確認しておこうと、出る前に皆で書いた買い物メモを取り出す。つらつらと買うものが書かれている横に、この場にいない二人のデフォルメ絵が鎮座している。シロコ作。これいる?と聞いたら「いる(鋼の意思)」と言われた。いるぅ?
「えーと……電池に蛍光灯、ティッシュとトイレットペーパー、救急キットに弾薬、インクとほうき、そしてついでにおゆはん……んー、売り場が結構バラバラだねえ」
「蛍光灯とインクと電池は電気屋、弾薬はミリタリーショップ、ほうきは100均、食材はスーパー、他はドラッグストアですね。それぞれ三階東、三階西、二階東、地下一階、一階西にあります。上の階から順に行きましょうか……先輩?」
改めてみても買うものが多く、店を探すだけでも大変そうで思わず苦い顔をしてしまうが、ノノミちゃんはどうやらそれらが売っている店の場所を覚えているらしい。行く順番までバッチリ決めているようだ、なんとも頼もしい。
「めっちゃ詳しいじゃん……すごぉ……」
「えへへ。これでも私、ショッピングが趣味なんです!このデパートの構造は熟知してますよ!」
胸を張ってそういうノノミちゃんはとっても誇らしげである。実際これほど大きな施設で店の場所を覚えているのはすごいことだろう。でもショッピングでデパートの構造を把握ってなんだか少しずれているような気がしないでもない。
「おお……弟子にしてください!」
「ふっふっふ……では、ショッピング師匠と呼んでください」
「ショッピング師匠……」
なんだかカウボーイハットを幻視した。というか、それはダサい名前の部類に入る気がするんですけど。もしかしてこの子もシロコよろしくネーミングセンスがあれなのだろうか。少し心配である。アヴァンギャルドは駄目だよ。
とにもかくにも、ノノミちゃんに従い上の階から順番に店を回っていくことにした。
「電池と蛍光灯はカゴに入れましたし、あとはインクだけですね」
「……そういえばプリンターの型番覚えてる?」
「あ。えっと……なんでしたっけ……」
電気屋では、プリンターに合うインクがどれか分からずあたふたしたり。私は一回適当に買ってきてやらかしたことがあるのだ。零細学校には4桁程度の出費もよろしくない。……さすがにそれはないか。
「……どうしました?」
「……」
「あら……」
ミリタリーショップでは弾薬を買いに行ったついでに私が防弾ベストを買ったり。ヘルメット団のせいで最近被弾が多いし痛いしで生傷が絶えないのだ。これで絆創膏の消費が減ればいいんだけど……*1
とりあえず着ていこうとチャックを開いて袖を通し、もう一度閉じようとするが結局上まで行かなかった。なんでぇ???一番大きいサイズを選んだのに……
「だ、ダンベル?」
「はい!店員さーんここにあるもの全部ください!」
「ええ?」
ついでにノノミちゃんが行きたがっていたスポーツ用品店にも顔を出す。何故かダンベルをいっぱい買っていた。こっからここまで全部くださいを間近で見るのは最初で最後だろう。ゴールドカードがきらめいていた。
というか、一体そんな量を何に使うのだろうか。まさか暴力沙汰じゃあるまいなと、ついつい物騒な想像をしてしまう。あな恐ろしや。
「そんなことしませんよ?」
「はいッ!」
……なんでバレたんだ、思ってること……
その後も100均、ドラッグストア、スーパーと順に回っていく。*2特に問題も発生せず、一通り買い終わるころには昼を少し過ぎていた。もちろん空腹だったので、私たちはフードコートで昼食をとってから帰ることにする。取った席の一番近くにあったハンバーガー屋のものを食べることにし、ノノミちゃんは照り焼きバーガー、私はダブルチーズバーガーのセットを頼み、それぞれに頬張る。とてもおいしいです。人間すきっ腹でジャンクフードを頬張っている時が一番幸せなのだ。
「いっぱい買っちゃいましたね」
「そーだねえ。……持って帰るのが大変だねぇ……」
「あはは……」
帰り道。重い荷物を持ちながら廃墟の街を二人で歩く。ようやっとここまで帰ってこれたが、何かしら運ぶのに便利なものを持っていくべきだったと反省する。車とかほしいよね。ちなみに、キヴォトスでは15歳以上から免許を取ることができるらしい。正直なところ、事故がちょっと怖い。
「今日は、ありがとうございました。わざわざ付き合ってもらってしまって」
「全然いいよ。いつもはノノミちゃんに任せっぱなしだしね。もうちょっと手伝うよう留守番親子にも言っておくからさ」
むしろいくらか私らに押し付けてしまってもいいんじゃないだろうか。そう言うとわたわたと慌てだす。可愛らしいもんだ。
「い、いえ良いんです!今日は楽しかったですし……それに、気もまぎれましたから」
「?」
楽しかった。そう言うノノミちゃんの顔には、しかし影が差していた。はて、何かあったのだろうか。気がまぎれたということは良くないことがあったのかもしれない。聞いていいことかどうかと悩んでいると、あちらの方から切り出してくれた。
「昨日、戻って来いって連絡があったんです」
「……それは」
つまりそれは、家の方からの連絡ということだろう。今朝珍しくノノミちゃんが怒っていたのは、そのせいでもあったのかもしれない。
アビドスは限界集落だし、はっきり言って住みにくい場所だ。それを親が心配しての事ならいいのだが、ノノミちゃんの表情を見るとそうとはあまり思えなかった。
「それで、話すうちに言い合いになってしまって……私は帰るつもりなんてないって言ったんですけど、そんなことしても無意味だって。『一度零れ落ちたものは元には戻らない』って、言われたんです。その原因を作ったのはあの人たちなのに……!」
「ノノミちゃん」
口を結んで手に力を籠めているのを、やんわりとなだめる。ひどい親だと内心思いつつ、それが顔に出ないように努める。
「君がそんな悩む必要はないよ」
「いえ、あるんです……見捨て出て行った親の代わりに、私はアビドスの復興を手伝って償わないといけないんですから。それに──」
……この子は良いとこのお嬢様だ。親の敷いたレールを突っぱねてアビドスに来たという過去を持っている。そこまでするわけは何なのか分からなかったけれど……
罪悪感。それで私たちに付き合っているのだとしたら、それはいたたまれない話だろう。親の代わりになんて考える必要はないのだ。そんなことでアビドスにこの子を縛り付けるわけにもいくまい。
「ん~……ノノミちゃん、アビドスは好き?」
「……はい。もちろんです」
「良かった。好きでもないのに付き合ってくれてるんだったらどうしようかと……」
「そんなことありません!ここでの出来事はみんな新鮮で楽しいですし……それに、仲間と呼べる人たちができましたから」
仲間と、そう言ってくれることに嬉しさを感じる。肩身が狭いであろうこの子の居場所になっているのなら良かった。でもなればこそだ。楽しいと、好きと感じてくれているところに要らぬ罪悪感で水を差す訳にはいかないだろう。
「ノノミちゃんはもうちょっと我が儘になってもいいんじゃない?」
「我が儘……ですか?」
「そう。誰かのためばっかじゃ疲れちゃうしね。少しは自分のことを優先してもばちは当たらないでしょう。義務感なんてなくってよろしい」
きっと今まで頑張ってきたんだろう、ならもう少しはっちゃけてもいいはずだ。シロコ……程されると困るけれど、あれがしたいの一つくらい私たちに言えるようになってほしい。
「……じゃあ」
「む」
「じゃあ、先輩は?」
……おっと、痛いところを突かれたかもしれない。これに関しては誤魔化すことにしよう。
「……私ィ?私は結構我が儘だと思うよ。ロケットパンチまだ諦めてないからね」
「ろ、ロケットパンチ」
「ほれ君も言ってみぃ!何かないか、やりたいこと!」
詰め寄って半ば強引に聞き出してみれば、戸惑いながらも考えているようだ。よしよし。しばらくすれば何か思い至ったのか、閃いたような顔をしている。
「うぇ、えーっと…………アイドル?」
「アイドル!いいんじゃあない?……アイドル?」
「はい。みんなでやってみたいなって」
「私もぉ?」
アイドル。アイドルか……なんだか思っていたのと違う気がする。皆でやるのか。私もやるのか。これ以上醜態をさらすのは勘弁してくださいと思いつつ、でもせっかくのお願いだしなとうんうん唸っていると、耐えきれなかったのか笑われてしまった。
「ふふっ、半分は冗談ですよ。……ありがとうございます、ウツホ先輩」
「……うん」
そういうノノミちゃんの顔は、さっきよりもずっと明るく見えた。少女かくあれかし。少しは気分を晴らせたようで良かった。幾分か軽くなった足取りで、私たちはアビドスへと帰って行く。
ちなみに、帰ったらホシノにジト目で見られた。主に防弾ベストを。しょうがないじゃんか、上がんないんだもん……
セリフと地の文の間って一行と二行どっちがいいんでしょう。教えてえらいひと……
先生の性別
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男性
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女性
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ムキムキマッチョマン
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TS幼女