それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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こんなんでいいのか分かりませんが、アビドス編前最後の話でございます。
本当にこんなんでいいのか分かんないので、いつか手直しすると思います。許して…



小鳥遊ホシノの独白

 

 

「珍しいねぇ」

 

「そうかな」

 

 布団にくるまる私に、ウツホが作ったおかゆを口元に運んでくれる。鮭が入っていて、少ししょっぱかった。でも、とても美味しい。

 

 言葉を濁したけれど、珍しいと言えばそうなんだろう。私は久しぶりに風邪をひき、こうして看病をしてもらっている。どこかからもらってきたのだろうか。それとも、屋上で寝てばかりいるからかも。

 

 学校を休む旨を伝え、薬を飲んで大人しくしていると、モモトークに連絡が。部屋を片付けていないので来ないでほしいと渋ったのに、突撃されてしまった、という顛末。ついでに小言を言われた。いきなり来た君も悪いと思うな。ちょっとムカついたので、右腕を締め上げておいた。

 

「はい」

 

「……ん」

 

 部屋は静かなもので、スプーンが歯にあたる音が時々鳴るくらい。それも食べ終わってしまえば、いよいよ静かになってしまう。正直気まずい。

 

 ウツホとの距離感は、一年経った今でも正直分からないでいた。二人きりになるとあまり喋ることもないから。喋ると大抵は暗い雰囲気になって終わるのが原因かもしれない。

 

「とりあえず寝ちゃいな。それが一番でしょ」

 

「うん」

 

 ただ、当の本人はこの静寂をあまり気にしていない様子で。むしろ穏やかな顔をしている。それが何だか面白くない。

 

 でも言われた通り、寝るのが一番だ。寝れば喋らずに済むし。そう思った私は、ゆっくりと目を閉じていく。ぼやけた視界だと、まるで──

 

 ……良くない考えだ。布団に入るといつも、後ろ向きなことが頭をよぎる。病気の今は、なおさらに。ダメだと思うほど、頭に浮かんできてしまう。もうだめかもしれない。

 

「……ねえ」

 

「ん?」

 

 最初に君に会った時は、夢なんだと思った。吉夢か悪夢かはどちらでもよくて、ただ目の前に現れてくれたことを嬉しく思った。でも、君は否定した。そしてその言葉で、私は現実に戻された。

 

 夢のままでいさせてほしかったと我が儘を言ったら、君は怒るのだろうか。

 

「……ううん、なんでもない」

 

「ええ?」

 

「なんでもないから」

 

 そういえば、名前で呼んだことがない。呼んでもらったことも、ほとんどなかった気がする。そんなことに今更気づいた私は、ばつが悪くなって、もう一度目をつむる。

 

「じゃあ、しばらくしたら出てくからさ。なんかあったら呼んでね」

 

「…………うん」

 

 そういって、ウツホは部屋の外に行ってしまった。それに対して少しの安堵と、そして寂寥感。誤魔化すために、寝返りを打つ。

 しばらくそうしていれば少しずつ眠気が大きくなって、体が浮遊するような感覚が体を包んでいく。そのまま意識が遠のいていって、私は眠りについた。

 

 

 


 

 

 

 

「とぼけないで」

 

「ふむ……そう言われましても、私も何のことだかわからないのですよ」

 

 暗い部屋の中、私は黒服に銃を向けていた。いつでも撃てるよう、引き金に指をかけて。

 

 コイツは不気味なほどに多くのことを知っている。それを思えば梔子ウツホを──ユメ先輩を利用した悪趣味極まりない真似をした輩については、黒服に手がかりがあると考えていた。ともすればコイツだろうとも。

 

 結果はこのとおり、外れたわけだが。憎たらしい事に本当に何も知らないらしく、これ以上黒服への追及は無駄だと分かり、思わず舌打ちする。コイツは嘘だけはつかないと、何度かの会談を経て分かっているからだ。にしたって、何でも知ってる風なくせに、肝心な事は知らないのか。役に立たない奴だ。

 

「一応お聞きしますが、本人の身体なのですか?」

 

「……それは間違いないよ」

 

 どうやら、最初に思ったことは同じらしい。机の上に放り投げたのは、DNA検査の結果。集めたユメ先輩の髪と、回収したウツホのそれを鑑定してもらった結果が、ファイルにまとめてある。そして一番上の紙に、99%一致と出ていた。つまり本人だ。間違いはない。……科学上は、という文言が前につくが。

 

「重ねてお聞きしますが、ユメさんは……荼毘に付したのですよね?」

 

「間違いなくね」

 

 聞かれたくないことを聞かれ、自分の表情が固くなるのが分かる。綺麗な肌で、眠るように死んでいた先輩を引きずったのは私。先輩が炎に溶けていくのを、間近で見ていたのも私。間違えるわけがない。だから異常なんだ。今、この世にいる梔子ウツホは一体何者なのか。……先輩の身体なはずは、ない。わざわざ死体を蘇らせた奴がいるのなら──

 

「ふむ……なるほど。では、私も調べてみましょう。お困りのようですからね、対価も要りません」

 

「……そこまでしろとは言ってないけれど」

 

 調べてほしいと思わなかったわけではないが、それにしても聞き分けが良すぎる。協力的で、対価もいらないときた。どう考えても怪しい。グリップを握る手に汗が滲んだ。

 

「ああ、いえ。私としても今知りましたので。不確定要素は、なるだけ潰しておきたいわけですよ。クックック……」

 

 それを聞いて、失敗したことを悟った。こいつが知らない時点で、私の負けは確定していたのか。表情の読めないコイツが、しかしニヤついているのがわかる。要らぬエサを与えてしまったことに思わず奥歯をかんだ。

 

「……ふむ。納得いかないようですね。では一つだけ、お願いしたいことが。少し応えるかもしれませんがね……」

 

「……なに」

 

 後から要求されるんじゃないかと警戒するのがバレたのか。そう言って黒服が提示した対価は、悍ましいものだった。

 

 

 

 

 

「そういえば。こないだ心当たりがあるって言ってた奴、どうだった?」

 

 夏の暑い日。2人きりのグラウンドで戦闘訓練をした後に日陰で休んでいると、ウツホがそんなことを聞いてきた。その言葉を聞いた瞬間、体の内側が冷える感覚がする。さっきまで気温が高いことを嘆いていたはずなのに。

 

「……ああ、あれ。いや、外れだったよ。大外れ」

 

「……そっか」

 

 そう、おどけてみせながら言う。ウツホは少しがっかりしたような表情をしていた。……うまく誤魔化せているだろうか。声が上ずっていないだろうか。自分の顔はひどくないだろうか。……駄目だ、自信がない。きっと否だろう。

 

「もうわかんないよ、なんも」

 

「……」

 

 思わずこぼれたのは、諦めとも言える言葉。あれほど突き止めてやると思っていたのに、ウツホに手伝ってもらうと言ったのに。目の前にいるのが本当に偽物だと分かって、繋がるようで繋がらないと分かって、どうでも良くなってしまったのか。自分に反吐が出る。

 

 それもあってか、ろくな誤魔化しもせずに緊急用のフレアガンを渡してしまった。気づいて咄嗟に悪あがきをしたけれど、やっぱりうまくはいかない。むしろ逆効果で、何かあったことがバレバレだ。隠し事が多いことも。

 

 目の前の人が、味方だということは頭ではわかっている。しばしばアビドスを回って、調べてくれているのも知っている。それでも、まだ信用できないからって言い訳して、大事なことは話さないようにしていた。けれどいつか、私と同じ所までたどり着くはずだ。

 

 それが時間の問題なのは分かってる。それでも、向き合わなくちゃいけないのが、進まなくちゃいけないのが、私は嫌だった。どうしても、先延ばしにしてしまう。

 

「危険なことにかかわってるんじゃないだろうね?」

 

 そんな思いを知ってか知らずか、ウツホに肩をつかまれ、諭すようにそう言われる。そこには、純粋な心配の表情があった。やめて欲しい。お願いだから、そんな顔をしないで欲しい。思わず、目を背けてしまった。

 

「……そんなわけないじゃないですか」

 

 自分でもびっくりするくらいの、白々しい言葉。ましな返答もできないくらい、私は限界だった。

 

 目つきが違うのに、口調が違うのに、髪型が違うのに、仕草が違うのに。それでも重ねて見えるのは、私の気が狂っているからなのか。戻らぬ日々を、ユメ見ているからなのか。

 

 思えば、突き止めようとするのと同時に、期待していたんだろう。魔法でも使ったのだと、最後には戻ってきてくれるかもしれないと。私の過ちを清算する時が訪れることを、期待してたんだ。

 

 

 

 黒服の依頼は単純、墓を掘り起こすことだった。

 

 ざあと降る雨の中、レインコートにスコップを持って霊園に行き、雨で土埃が流され、綺麗に見えるそれを暴いて。壺の中身を見ればやはり、奪われた形跡はない。そこには変わらずユメ先輩がいた。減ってもいないはずだ。

 

 つまるところ梔子ウツホは、よく似たまがい物ということ。

 

 アイツはクローンだと当たりを付けていたようだが、それも間違いなようだ。でもそれを聞いた黒服は、むしろ面白くなってきたようだった。あの様子だと、私だけでなくウツホにも粉をかけるかもしれない。ふざけている。

 

「正直、振り出しかな」

 

 危険に晒しておきながら、それでも何も言わない。言えない。私が弱いからだ。言ってしまえば、ユメ先輩が本当に生き返らない気がして。まだ違うと、望みがあるんじゃないかと信じたかった。

 

 だからなのか。

 

「反魂でもできればいいのに」

 

「……無理でしょ」

 

「でもほら、今日からお盆じゃん」

 

 そう、ウツホはバカみたいなことを言う。しかも、無駄に最低限の理論武装はしてある。きっと私は、呆れた顔をしているだろう。……そしてそれに、少しの期待を、含ませているかも。

 

 言い出しっぺのくせにばつの悪そうな顔をするウツホを見て、なんだかおかしくなってしまった。でも、私と違って諦めてはいない。そんな顔だ。

 

 思えばひどい提案だ。もしかしたら、本当に悪霊なのか。それでもいいのかもしれない。呪ってくれた方が、私はうれしいから。もう少しだけ、どうにかしようと思えるから。

 

「……確かに。……試してみる?」

 

 ふと。私たちは、似ているのかもしれない。なんとなく、そう思った。

 

 

 


 

 

 

 いっぱいの抜け殻に囲まれて、私は目を覚ます。夢を見た気がするけど、でも覚えてないなら、思い出そうとしても仕方ないだろう。無駄だと割り切ってる。

 

 外を見れば、朝日が昇っている。久々に長く眠れた。まだ疲れはあるけど、体調も良くなったから良しとしよう。いざという時は学校で寝ればいいし。

 

 伏せてあった写真立てを、二つすくって、表面を撫でながらまじまじと見る。一つ目は、私とユメ先輩の写真。そしてもう一つは、入学式に撮った、私たち6人が写っている写真。……やっぱり似ている。

 

 しばらくそうした後、布団から降りる。仕舞っていたポスターを貼り直して、部屋の扉を開ける。当然ながら、ウツホは帰ってしまったらしい。

 

 冷蔵庫を開ければ、余っていた粥と書き置きがあった。『あっためて食べて』という文言が、シロコちゃんの絵と一緒に書かれている。あとでお礼を言っておこう。

 

 書かれた通りに電子レンジに料理を入れてボタンを押し、皿が回っている間にクローゼットから制服を取り出す。着替え終わるころにはレンジが暗転していた。取り出そうとして、熱さに手を引っ込める。布をもって今度こそ取り出した後、用意したスプーンですくって口に運んだ。やっぱりしょっぱい。でも。

 

 容器を流しに入れて、そのまま洗面台へ。準備をした後、カバンをもって玄関まで行く。ガラスから朝日が差し込んでいるのを尻目に見ながら、靴をヘラを使って履く。ドアを開けば、冷たい風が肌を撫でた。

 

「行ってきます」

 

 私は大丈夫だ。今日も頑張ろう。まだ、大丈夫。

 

 

 

 




先生のアンケート、もう少し離れると思っていたのですが意外と拮抗していたので、もう一回、今度は上位二つで頂上決戦をやらせていただきたく存じます。申し訳ない。……日和った?はい……

TS幼女上手くぶっ込めるかと言われたらそんな自信は全くないけど、でもぶっこみたいというのが私の所感です。

先生の性別!!

  • 男性
  • TS幼女
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