それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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しばらくは投稿も安定しそうと言ったやつは誰だァ!私です……
別に投稿するわけでもない別のやつかいていたら一週間無駄にしていました。アホ。


会話が連続する場面で改行しないようにしてみました。どうでしょう、見やすいでしょうか。思いついたのでやってみたけれど自分だとさっぱりわからんねん……


小鳥遊ホシノは来る

「ところで、先生はこの後どうするの?」

 

 ラーメンを食べた後アビドスの市街地を軽く案内して、日も傾くころ。いったん高校に帰った私たち。先生にはそのまま帰ってもらってもよかったのだが、なんだかまだ用があるみたいなのだ。

 

「“うん、そうだね…学校を回ってみてもいいかな?なるべく今のアビドスを知っておきたくて”」

「先生……」

 

 真剣な表情で、先生はそう言った。セリカちゃんにちょっかいかけているときは気持ち悪かったのに、しっかりする時は先生という感じがする。ちなみに、書類仕事が嫌なだけだったり?とからかってみたら目をそらされた。せ、先生……?嘘だよな?

 

「う~む、じゃあ案内が必要だねぇ……よし!副委員長よろしく!」

「私かい……」

 

 というわけで、私に仕事が回ってきた。面倒な仕事は投げてしまおうという考えが透けて見えますよ委員長。まあやるが。校内で遭難はないと思うが、億一を考えると怖いのだ。

 

「いやぁごめんね、おじさんはもう寝ないと明日に響いちゃうんだ」

「嘘ですよね?」

 

 とどまることを知らないおじさんムーブ。アヤネちゃんは訝しんだ。ただまあ、半分くらいは嘘ではない。ホシノにはパトロールという名の夜勤があるし。それに、どうせ立ち去った後私を通じて探りを入れたりするんだろう。なんか都合のいい人間爆弾みたいな使われ方をしている。私不服です。

 

「じゃあシロコ。悪いけど夕飯は先食べてて」

「むぅ」

 

 今日は遅くなることを伝えれば、シロコはアンニュイな表情で俯いてしまった。そんな顔しないでくれ、こっちも寂しくなっちゃうじゃないか。

 

 

 不機嫌が加速しませんようにと願いつつ、私らは解散した。校舎には先生と私の二人がぽつねんと。夕焼けが目にダイレクトインしてきて眩しい中、対策委員会の教室を後にする。

 

「じゃあ、行きましょうか」

「“うん、よろしく”」

 

 砂にまみれた学校を案内していく。このアビドスは実は別館らしく、本校舎は砂漠の方にあるらしい。ということを、前にホシノから聞いた。正直この大きさでも持て余しているというのに、本校舎は一体どれだけ大きかったのやら。

 

「とりあえず、今いるのが本館です。まあ、教室一個と保健室くらいしか使ってませんが」

「“ほとんど砂がないよね。よく掃除してたりするの?”」

「まめにしますね、ノノミちゃんが特に。あの子意外ときれい好きですから」

 

 まずは本館。主に教室があるが、まったく使っていない。まあ、生徒数が五人しかいないので仕方がないだろう。保健室はよく使う。私が。なので絆創膏の減りが早い。ちなみに、私の傷の治りは他の人より早いそう。それなら耐久力方面で強化して欲しかった気がしないでもないけど。

 

「ここが図書館ですね。結構色々ありますよ、漫画とかも。まあ古いやつなんですけどね」

「“おお……大地を踏みしめる奴もあるね”」

「ちょっと違うみたいですけどね。こっちはちゃんと完結してますよ」

 

 次に図書館。図書室ではなく図書館だ。金持ちめ!蔵書されているのは単純な小説、その他書籍、アビドスに関する資料の順で多い。一応漫画もあるのだ。その中の一作を取った先生は、私の言った完結の二文字に驚愕しているようだった。「これはジイちゃんの“流星群”!!?」といった感じだ。……違うか。

 

「ここが家庭科室ですね。たまにみんなで何かしら作ってます」

「“ウツホは料理する方?”」

「そーですね、簡素ですけど。ハンバーグやらナポリタンやらオムライスやら……」

「“……簡素?”」

 

 そして別館。と言っても音楽室とか化学室なんて使いっこないので、唯一使うことのある家庭科室に来た。調理器具が引き出しと下の収納の中に並べてある。何と中華鍋もあるのだ。いるか?まあ炒飯作ったことあるけどさ。あ、鋼鉄の七輪もここにしまってある。今秋にも猛威を振るうだろう。

 

 その後も体育館やら旧校舎やら売店やら、あっちへこっちへ行きながら案内をしていく。予め順序を決めておけばよかったと途中で気づいたが、先生曰く行き当たりばったりも楽しいとのことだった。無駄こそが美しさというやつか。もしくは、一秒でも書類仕事に戻るまでの時間を稼いでいるのか……この謎は謎のままにしておこう。

 

「それで最後に、ここがご存じ対策委員会の教室です。最近はここばかり使っているので、若干家具が置かれてますけど……」

「“あはは……そうだ、もう一ついいかい?借金の契約書とか見せて欲しくて。なるべく多くのことを知っておきたいんだ”」

「あ、はい。えーっと、確かこっちの引き出しに……」

 

 一通り案内をして教室に戻ってきたのち、先生は借金の状況を確認したいといい、私も契約書を探すことにする。いちいち別の場所に保管するのが面倒でこの部屋にしまっておいてあるのは幸いだった。あんまりよくないけど。襲撃をかける奴はいるが、盗みをしに来るやつはいないのだ。まあこんな田舎に金目のものは無いだろうけどさ。借金に関するもろもろのことが書かれた紙束をめくって、先生は苦い顔をしていた。債権者の欄に、カイザーという文字がつづってあった。

 

 

 

 

「“今日はありがとね。とても助かったよ。送りまでしてもらっちゃって”」

「いえいえ。それにまた遭難されても困りますし」

「“うぐ”」

 

 すっかり夜になった街中で、私は先生を駅まで送り届けていた。帰りは大丈夫だよ!と自信があるようだったが、夜だとまた勝手が違うということを先生は分かっていなさそうだったので、こうしてついてきたというわけだ。案の定3回ほど違うところで曲がろうとしていた。駄目じゃねえか。

 

「そう言えば、セリカちゃんももう上がりですかね」

「“本当?じゃあもう一回会いに行こうかな”」

「ええ……」

 

 柴関の近くを通り、ふと、セリカちゃんのバイトは終わっただろうかと考える。大分長い時間やっているが、本人曰くへっちゃららしい。自信ありげに言っていたので強がりかどうか微妙なところだが、約八時間勤務ってほとんど正社員とかじゃなかろうか。まだ高校一年生だよね?なんちゅうバイタリティ。

 

 そしてそれを聞くや否やからかいに行こうとする先生。流石にセリカちゃんもマジにキレるだろう。やめておきましょうよ、死にに行くのは。やんわり止めようとしていると、先生がおもむろにタブレットを取り出す。指揮に使っていた奴だ。随分と性能がいいらしく、「“この子のおかげで私はどうにかできてるんだ”」と言うほどである。……それでセリカちゃんの位置を割り出すとか言うんじゃないだろうな。

 

「“……ウツホ。一応聞いておきたいんだけど”」

「はい?」

「“セリカって、友達いっぱいいたりする?”」

「……なんですかその質問……」

 

 いきなり素っ頓狂な質問をする先生は、しかし非常に真剣な顔をしている。ふざけている場合じゃないと姿勢を正した私は、先生の指示に従って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。あたりも暗くなり、街灯や店の明かりが薄く道を照らす中、バイトが終わったセリカは、一人夜道を歩いていた。

 

「はあ〜……やっと終わった。目まぐるしい1日だったわ……」

 

 日中の出来事を思い出す。アビドスの皆が押しかけてきたのだ。騒がしいったらありゃしない。人が働いていると言うのに、先生がどうこうと……はっきり言って迷惑だろう。

 

「ホシノ先輩、昨日のことがあったからわざと先生達を連れてきたんだわ……!私がそう簡単に折れると思ったら大間違いなんだから!」

 

 ばらしたのはホシノとのことだったが、ウツホがあたふたしてよく分からないことを言っていたのを思い出し、セリカは「実はウツホ先輩が真犯人なのでは」と疑い始めていた。そうでなくとも何かしらかかわっているのは明白だろう。例えば、ウツホと話したのを聞かれていたり。

 

 ……まあそれはないか、とセリカは首を横に振った。バイトのことは柴関で会ったあの時にしか話してはいない。店内にホシノの姿は見えなかったし、店の窓は高いところにあるので外から見たというのも考えにくい。ウツホ先輩はあれで口が硬いし、やはり言った通りホシノ先輩が探り当てでもしたのだろう。それはそれであれだなと思いながら、セリカは思考を先生の事へと戻す。

 

 ……なお実際は店内にいずとも覗かずとも把握できる手段をホシノは持っているのだが。うわ。……まあ、それは置いておくとして。

 

「……まったく」

 

 とにかく、セリカは先生の事が気にくわない。どこまでも「いい人」に見えたからだ。これまで出会ってきた大人と違い、なかなか化けの皮は剥がれない。あるいは、あれが素なのか。そこまで考えて、おいしいといちいち言いながら麺を啜っていた先生が浮かんだ。

 口元が少し緩むのを感じて、セリカはそこで、既に自分が気を許しはじめているのに気づく。自分のことも先生の事も、セリカはすこぶる気にくわなかった。

 

「……あーもう!どうしろって…ん?」

 

 イラつきが足取りに現れるが、それを介さずにセリカは進む。が、途中で前に人がいるのに気づき、思わず足を止めた。

 

 顔を上げると、人影が三つほど立っている。考えるのに夢中だったからか、目の前に来るまで気づかなかったが──見たことのある影だった。それもつい昨日に。

 

「何よ、アンタ達。まだこの辺をうろついてたの?」

「あんなんじゃ終われないんでな!」

 

 現れたのは、カタカタヘルメット団。ザ・悪役といったポーズをしている。昨日基地を叩きのめしたばかりで、また動き出すにも時間がかかるはずだが。しかし実際、こうして目の前に立ち塞がっている。

 

「あんたらも好きね……」

「いや別に好きなわけではねえよ」

「でもちょうど良かった、虫の居所が悪かったの。二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやる…………!?」

 

 敵は目の前ばかりかと思っていたが、見回してみれば横にも後ろにも──詰まるところ囲まれていた。武器もやけに新しいものばかりで、重武装の団員もいる。そして特筆すべきは、遠巻きに鎮座する戦車と対空砲だろう。

 

「……まさか待ち伏せ!?戦車まで使って!?」

「過剰なくらいがちょうどいいっていうだろ!やっちまえ!」

 

 セリカ一人に対してこの戦力。アビドスの生徒は精鋭といえど、流石にこの量は単身では捌ききれるはずもなく。これはまずいと、セリカは後ずさりしてしまう。逃げようにも囲まれている。このままでは容易く刈り取られてしまうだろう。そして辺りを見回しても、使えそうなものはない。万事休すか──そうセリカが考えた時。

 

「伏せろーい!」

 

 叫び声。後ろから聞こえるその声に、しかし彼女は聞き覚えがあった。咄嗟に言う通りにしたその瞬間、セリカを囲っていたヘルメット団が轟音とともに吹っ飛んで行く。ついでにセリカも転がったが。

 

 煙が晴れない中、影が一つ。少しずつそれは濃くなっていき、セリカの前で止まった。

 

「よしよし、ナイススロー。セリカちゃんお元気?……半泣きだねぇ」

「ウツホ先輩!いや、ナイスだけどナイスじゃない!あと泣いてない!!」

「そうだねよしよし」

「撫でんなぁ!」

 

 正体はウツホ。先生に言われるがままセリカの元へ向かい、間一髪で間に合った形になる。セリカは仲間が来てくれたことに安堵しながらも、自身もふっとばされたことに対し文句を言う。軽くあしらわれたが。

 

「お前はアビドスの……影が薄い奴!

うっせーこの野郎!うちの子に何してくれとんねん!」

 

 ひどい言われように顔を引きつらせつつ、後輩を狙ったことに怒るウツホ。じゃあアヤネちゃんはどうなるんだという彼女の疑問はさておき。包囲は脱したが、戦力差は依然として開いたままだ。そこに現れるのが三人目。

 

「“セリカ、無事!?”」

「先生も!?ま、まさかストーキング……」

「“今回はたまたまだから!”」

「今回は?」

 

 イヤホン越しに先生の声が聞こえた。ウツホに置いて行かれたため、遅れて近くの建物に入り、通信機越しで話しているのだ。息が上がっているのを聞くに、相当頑張って走った様子。セリカは今日一日でここまで出会うなんてやはりストーキングかと疑うが、きっぱりと否定される。……今回はって何?前回は違うってこと?という疑問は無視された。納得がいかなかった。

 

「だが!二人に増えたところでどうってことはねえ!こっちにはクルセイダーとFlakがあるんだ!」

 

 ずらり、と並ぶヘルメット団と、その後ろに控える兵器群。指揮に強い先生と言えど、この戦力差には顔を苦くする。とはいえ、倒せないとは思っていない辺り、彼の能力も大概おかしいのだが。

 

「確かにヤバそうだけど……あ、そうだ。先生、二人だと何分稼げます?」

「“ごめん、少し難しいかも。4分行けるかどうかだね”」

「十二分なような……まあ、それなら大丈夫ですね」

 

 数は力。どれだけ強かろうと物量で押せばいつかは倒れるだろう。はっきり言っていまだ不利であるアビドスだが、ウツホは何かを思いついた様子だった。先生の言葉を聞いた彼女は、満足げに笑みを浮かべる。

 

「な、なに?何かあるの?逃げた方が良くない?」

「ちょうどいいじゃない、ここらで憂いは断っておこうよ」

 

 それは、全員倒すという宣言にも聞こえた。少なくとも昨日と同じだけの被害を出してやろうというのだから、ヘルメット団は耳を疑った。たった二人、怪しい大人を入れても三人で本来の半分以下の戦力なのだから。そんな言葉を聞いて、無茶を言うよと思いつつも銃を構えているあたり、セリカも腹に据えかねていたようだが。まあ、一人の所を狙われたのだから当然である。

 

 我に秘策ありといった顔でヘルメット団へと向き直るウツホ。人数差にも臆した様子のない顔に、ヘルメットさんは少なからず警戒の色を覚えた。ゆらりと手を伸ばし、そのまま彼女は──

 

「よいしょ」

 

 懐から信号拳銃を取り出し、空に向かって引き金を引いた。パシュっという音と共に、煙が上に登っていく。夜空ではよく映えた。

 

「仲間呼びかよ!!」

「私の基本戦略なもので」

 

 えへへ、という様子で頬を掻くウツホ。ダサいな、とヘルメット団は思った。ウツホも思った。セリカは少し呆れた様子。しかし実際有効な手段だ。今が夜で、それが望めないであろうことに目をつむれば。ウツホ以外はそう思っただろう。だからそこまで気にした様子もなく、そのままヘルメット団は攻撃を開始した。

 

「まあいい!さっさと攫っちまえばいい話だ!盾のチビもいないんだ、押せ押せでいけぇ!」

 

 攫う気だったのかと、セリカの顔が強張る。あのまま先輩たちが来てくれなければどうなっていたのかを考え、頬を汗が伝った。……すぐにチビ呼ばわりされた先輩を思って微妙な感情になったが。

 

 対空砲を避けつつ、セリカが前に出てきた何人かを撃ち抜きながら移動する。視界が悪いのに狂い無く当てるあたり、目の良さが有利に働いていた。ウツホは威力はあるが、やはり外しがちだ。

 

「“遮蔽物を使いながら後ろに下がっていく感じで行こう。ウツホに前に出てもらうことになるけど……大丈夫?”」

「気合で何とかします。後輩にみっともない所は見せられません!」

「何回も見たことあるような気がするんだけど」

「ノーカンにできない?」

「出来ないわよ!」

 

 ひぃん、という鳴き声は、しかし轟音でかき消される。いまだ軽い雰囲気の二人の合間を、戦車の主砲が通ったのだ。後ろから来る衝撃に耐えつつぎこちなく首を向ければ、砲身がこちらに向いている。ウツホが遮蔽物の車から飛び出した途端、撃ち込まれた砲弾によってそれが爆発し燃えだした。

 

「よそ見していいのかよ?」

「戦車を手に入れたからって急にいきりおってからに!」

 

 壁にする看板やら車やらが戦車の主砲で破壊されていく。逃げ回りつつも大したダメージを負っていないのは、先生の指揮のおかげか。と言っても、このまま逃げ続けるにはリスクがある。

 

 距離的に戦車には大したダメージを与えられない。かと言って近づこうにも、勢いづいたヘルメット団員と対空砲の脅威は決して無視できないものである。味方ごと撃たせるのは良い策かもしれないが、ヘルメット団の武装がそれをためらわせた。

 

「ちょっとなによあの盾!ズルくない!?」

「いや、うちの委員長も使ってるわけだし……ね!」

 

 三人程度しか装備している者はいないが、それでも攻撃を防がれるというのは脅威である。味方でいれば心強いのだが、敵にいると厄介極まりない。内心毒づきながら、ウツホはグレネードのピンを抜き、盾持ちの方へと放り投げる。轟音と共に光が走るが、派手さに反して大したダメージは入っていないようだった。ウツホが苦い顔をする。

 

「だぁくそっ、またグレネードかよ!」

「駄目か」

「“ウツホ、セリカ、回避に専念!flakが動くよ!”」

「げ、嘘」

「やば──」

 

 見れば、遠くで対空砲の装填が終わっているのが見えた。気が緩んでいたわけではないだろうが、攻撃にかまけて一瞬対応が遅れたのも事実。衝撃が体を襲い、吹っ飛ばされた後地面に叩きつけられる。鈍い痛みが走った。絆創膏で治るかなとどうでもいいことを考えながら、体勢を立て直す。壁やら柱やらを行ったり来たりし、続く砲撃を躱していく。余波は建物まで届き、近くの店のガラスを突き破った。

 

「市街地であんなもんぶっ放すんじゃないわよぉ!」

「支援してもらったんだ、使わなきゃ損だろ!」

「柴関に当たったらどうすんだーっ!」

「他の店の心配もしろや!」

 

 もっともなことを言うヘルメット団に、二人は確かにと思った。ウツホはともかく、セリカも大分柴関っ子である。ヘルメット団は引いた。

 

 ともかく、戦闘は膠着状態。どちらかと言えばアビドスが不利だが、ヘルメット団の数は少しずつ減っている。それでも、後方の兵器群がどうにかならなければ勝つのはヘルメット団になるだろう。いわゆるジリ貧だ。何か変化が欲しいと、先生は考えていた。

 

 

 そんな時。シッテムの箱が、夜風を切って一つの反応がこちらに迫っているのを捉えた。

 

 

「さっさと諦めてほしいんだがな」

「救援が来るまでは粘らせてほしくて……」

 

 梔子ウツホは、別にシロコやノノミ、アヤネが来るとは思っていない。それもそうだ、三人は今家にいるのだから。だから彼女は、残りの一人を待っている。呼べば来ると確信しているから。

 

「まだ言ってんのかそれ。二度も来てたまるかよ、何のために夜に動いたと思ってんだ」

 

 ヘルメット団からすれば、先生たちが偶々ここを通る事も予想外。それに続いて更に増援が来るとは思えなかった。そも、それを防ぐために夜に行動したのだ。しかし目の前にいる緑髪の生徒は、そうは思っていないらしい。

 

「そりゃあ大変だねぇ。でも悪いけど」

 

 二人の関係は複雑怪奇で、本人たちからしても微妙なものだと言える。それでも、知っている。一年過ごせば、たいていは分かるものだ。信じているのだ。

 

「小鳥遊ホシノは来るよ」

 

 それを信頼と言えるかは分からないが、信用と言うことは出来るだろう。

 

 

 

 

 その時、ヘルメット団の後ろで、爆発が起こった。薄暗かった視界が日の出程度に明るくなり、強風が彼女を襲う。

 腕で顔を覆いながら振り向けば、燃えながらガラリと崩れていく対空砲が見えた。嘘だろと、呆然とした様子でそれを見つめていれば、燃える鉄塊の中からゆらりと、影が一つこちらに近づいてくるのが見えた。

 徐々に輪郭が鮮明になり、姿があらわになっていく。ピンクの長髪、ショットガン、そしてシールド。

 アビドスの委員長、小鳥遊ホシノがそこにいた。

 

「ほぉら来たぁ!」

「マジかよ!?」

「ほ、ホシノ先輩……ホントに来た……寝てるもんだと」

「んやぁ、昼に寝すぎて目がさえちゃってね」

「ええ……」

 

 セリカは呆れたが、それで助かったんだからいいかと意識を切り替える。ウツホはどうせ嘘だろうなと思った。ちなみに正解である。ホシノは事が起こるまで真顔でずっと盗聴していた。はっきり言ってストーカーだった。

 

 しかしこれで、ヘルメット団をアビドスが挟撃している構図になった。ヘルメット団はどちらから相手にすべきかと、交互に見ながら固まっている。敵が動揺しているうちに残ったもう一つの兵器を無力化しようと、ウツホはセリカを引っ張りながら戦車に向かって走り出した。

 

「ちょっと!?」

「“ウツホ!”」

「ほい!セリカちゃん耳塞いで!」

 

 掛け声とともに、真上に投げたのはグレネード。ただし、直接攻撃するフラグではなく相手の視力聴力を制限する用途のスタングレネードだ。二人の後ろで光が弾け、多数のヘルメット団の視界と聴力を封じた。

 

 そのまま後ろの敵をなぎ倒したホシノとすれ違う。戦車のキャタピラを破壊するというおまけつきだ。片手間でやるとは、やはりとんでもないやつ。ウツホはそのまま戦車の側まで走り抜け、砲身に左腕を肘まで突っ込んだ。

 

「久々だね」

 

 笑みを浮かべて、ロケットパンチを飛ばす。かっ飛んだ拳によって内部機構がひしゃげ、主砲が機能不全に陥る。戦車は一瞬で鉄の箱へと変わった。同時にセリカがそれに登り、上のハッチをこじ開ける。勢いよく開けられたことに驚愕し見上げた中のヘルメット団は鬼の形相のセリカを見てしまった。

 

「……」

「……」

「……み、見逃してくれたり……」

「問答無用ぉぁーーっ!!」

「ウワーーッ!?」

 

 そして怒りの大乱射。命乞いむなしく、凶弾により中のヘルメット団は残らず意識を刈り取られ、そうしてクルセイダーは沈黙した。

 

 そこからはホシノの独壇場。シールドを振り回し相手の攻撃を防ぎ、足払いで盾持ちの体勢を崩し、顔に一発くらわせ意識を刈り取る。プロからすれば児戯に等しい。経験値の差が如実に出ていた。まあ盾はそんなブンブン振り回すものでもないのだが。理不尽な暴力を前に、二人四人と次々に倒れていく。昼にカチコミをかけた時よりも数段恐ろしい。

 

「ひとつ、言っておくけど」

 

 腰の引けた最後の一人にゆらりと近づくその様を、相手は忘れることは無いだろう。不機嫌な様子でショットガンを構え、引き金にかけた指を押し込んだ。

 

「私はチビじゃないから」

「そこかよ……」

 

 こうして、ヘルメット団の誘拐計画は失敗に終わった。燃える機械群の中歩くのが様になりすぎているホシノを見て、あいつ一人でよかったんじゃないかなと思ったウツホだった。

 

 




三人称って難しい。戦闘シーンも難しい。これでいいんでしょうか。マジで分からない。分からないことばっかじゃねえか!
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