それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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どうでもいい小話ですが、シロコは寝る時は基本ウツホの右腕に抱き着いてますが、夏は左腕に抱き着いています。ひんやりして気持ちいいんだとか。なおウツホ。

もっとどうでもいい小話ですが、朝霧スオウが本編で再登場した時がこの作品第二の終わりになると思います。怖すぎる。



この頃流行りのCalifornia Gurls()

 ふざけすぎた私たちは、案の定まとめてアヤネちゃんに説教された。正座がつらかったです。あれを長時間できるのは日本人くらいのものだ。いや、私も心は日本人だけどさ。

 

 そういうこともあり、現在アヤネちゃんのご機嫌取りも兼ねて柴関で昼食をとっているというわけである。昨日も来た気がするけど…まあ美味いもんはなんぼ食っても良いですからね。今日は味噌にしよう。

 

「いやー、悪かったよアヤネちゃん。奢ってあげるから怒らないでー、ね?」

「怒ってません……」

 

 頬を膨らませつつアヤネちゃんが言う。かわいい~。あっ睨まれた。反省している顔をしておく。

 

「はーい、お口拭きましょうねー♦︎」

「私は赤ちゃんじゃありませんっ」

 

 と言いながらもされるがままのアヤネちゃん。かわいい~。嘘っす許してくださいっすこの通りっす。

 

「……なんでも良いんだけどさ、なんでまたウチに来たの?」

「ラーメンの気分だったし……」

「昨日も食べてたわよね……?」

 

 セリカちゃんそれを言うのは野暮だよ。え?太るって?なんてことを言うんだセリカちゃん。ノノミちゃんが泣いちゃったじゃないか。ウソ泣きだけど。しかし若干の焦りが見えたので、どうやら葛藤している様子。食べた分だけ運動すればいいんだよという悪魔のささやきをしておく。

 

 ちなみに、柴大将に昨日のことがバレていたのか、今日は早く上がるように言われたそうな。優しいね。なおセリカちゃんは食い下がったそう。ええ?根性論が廃れゆく今の世の中には大分特異な子である。

 

「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」

「ふぁい」

「おじさんも海苔をあげよう」

「じゃあ煮卵」

「“私はメンマあげるね”」

「はい、あーん♠」

「んももも」

 

 シロコがチャーシュー、ホシノが海苔、私が煮卵、先生はメンマ、ノノミちゃんがシンプルに麺。口内がミニラーメンとなったアヤネちゃんがはふはふと突っ込まれたそれを頬張っていると、ガラガラと店の扉の開く音がして、生徒が一人入ってきた。

 

「あ…あのう……こ、ここで一番安いメニューって、おいくらですか?」

「いらっしゃいませ!一番安いのは……580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 観光客だろうか、珍しい。休日にはたまに来るらしいが、それでも私が見かけたことはなかった。見た感じ、ミレニアムでもトリニティでもない。と、ラーメンその子は一旦外へ出て行ってしまったが、その後すぐに人を連れて戻ってきた。どうやら友人を呼んでいたようだ。

 

 三人ほど追加で入って来たので、四人組ということになる。そのうちの二人には、一目でわかる大きさの角が生えていた。角といえば、ゲヘナ学園だろうか。他の三大校よりかは断然近いのだが、治安がアホのキヴォトスの中でもぶっちぎりで世紀末らしいという場所。怖すぎて一回も行ったことがない。湾に埋められたりしそう。

 

「国外脱出してきたのかな……」

「それにしたってアビドスには来ないんじゃない?」

 

 なんてこと言うんだ君。アビドスには死にかけの商店街とラーメン屋と遭難確率極高の広大な土地と砂嵐があるじゃないか。碌なものがラーメン屋しかない。圧倒的じゃないか我らが自治区は。

 

「いえ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なんです!虫けら以下ですみません……!」

「こら、ちょっと声デカいよ、ハルカ。周りに迷惑が……」

「そんな!お金がないのは罪じゃないよ!胸を張って!」

「へ……はい!?」

「お金は天下の回り物っていうでしょ!そもそもまだ学生だし!それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なの!」

 

 なんだかちょっとしたトラブルがあったようだが。どうにかなったらしい。セリカちゃんが立派に接客をしているさまを見守りつつ、レンゲにすくったラーメンをすする。後輩が頑張っている姿を見ながら食べるもやしは美味しかった。

 

 君もそう思うだろうと隣のホシノを見ると、こっちは四人組をなんだか怪しく見ているのが分かった。ウサミちゃん目怖っ、というほど露骨ではないが、なんとなく分かる。

 

 でも、その四人はただの苦学生って感じだし、ただの観光客の可能性が高いし……しかし平日に観光ってあれだし、観光に来たのにお金がないのはおかしいか……?……いやいや、なんでもかんでも疑ってかかるのは良くないと思います私。

 

「…………襲撃…………………雇う………全財産使…………………」

 

 敵か??敵なのか???隣の席に座った四人組の会話に聞き耳を立てていれば、怪しい会話が耳に入ってしまった。ホシノの目つきが三倍くらい細まった。シロコが訝しんだ。

 

 ……いやまだ分からない。彼女らは傭兵なのかもしれないが、だからと言ってアビドスの敵と決めつけるには早すぎる。ヘルメット団の裏に誰かがいることが明らかになって疑心暗鬼になるのは分かるけど、もう少し考えるべきだ。もしかしたら、そのヘルメット団達をボコしてくれたりするかもしれないじゃないか。*1

 

「…………リスクは…………ターゲット……………………アビドスは危険…………」

 

 敵だろ。絶対敵じゃん。アビドスって聞こえたし。これで敵じゃなかったらなんだっていうんだ。ホシノの目つきが五倍くらい細まった。シロコが心配しているので、お腹いっぱいなんじゃないかなと誤魔化しておく。……すごい早さでホシノのどんぶりをひったくっていった。卑しんぼめ……

 

 しかしコイツらどうしてくれようか──そんなことを考えていると、厨房からとんでもないデカさのラーメンをセリカちゃんが持ってきた。……で、デカすぎない?置いた時の音も凄いし。四人も驚いている様子。

 

「はい、お待たせいたしました!お熱いのでお気をつけて!」

「ひょえ、なにこれ!?ラーメン超大盛じゃん!」

「ざっと十人前はあるね……」

 

 天高くそびえたつそれは、十人前以上あるようにも見える。というか大将、よくこの量盛り付けられたな。脚立でも使ったのかしら……シロコが羨ましそうに見ている。今さっきホシノのを食べたやろがい。

 

「え、えっと…オーダーミスでは?こんなの食べるお金、ありませんよ……」

「いやいや、これで合ってますって!580円の柴関ラーメン並!ですよね、大将?」

「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。気にしないでくれ」

「大将もこう言ってるし遠慮しないで!それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」

 

 大分赤字だというに、こういうことをさらっとやる大将ってすごいよ、本当に。複雑な気分だけど……

 

「う、うわあ……」

「よくわかんないけどラッキー!いっただっきまーす!」

「……ふふふ。流石にこれは想定外だったけど、厚意に応えてありがたく頂かないとね」

 

 そう言って四人はラーメンをすすり始めた。わざわざ立ち上がっててっぺんの方からつまんでいっている。まあ上のが崩れてきたら怖いよね。口に運んだ四人の顔が喜色が浮かんでいく。

 

「お、おいしいですっ!」

「なかなかイケるじゃん!こんな辺ぴな場所なのにこのクオリティなんて!」

「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?」

「あれ……?隣の席の……」

 

 と、見守っていたノノミちゃんがヌッと割り込んでいく。そしてそのまま柴関ラーメンのアピールポイントを語り始めた。いいぞノノミちゃん、もっとやるんだ。対する四人組の一人も、相当美味しかったのかはしゃぎ気味で共感していた。なんだいなかなか分かってるじゃないか……

 

「その制服、ゲヘナ?遠くから来たんだね」

「ええ、ちょっと仕事でね。なかなか予定通りとはいかないけれど、それもまた一興よ」

「おお……」

「私、こういう光景を見たことがあります。一杯のラーメン、でしたっけ……」

「うへ、それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」

 

 ラーメンだと「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」になってしまう。馬鹿野郎するわけがないだろう柴関がそんなこと。かけそばの方は確か、出世して安定した後また食べに来るんだったか。そうなってくれると嬉しい。……あれこれ遠回しにアビドス襲撃の応援してることになるような。駄目だそんなこと。やっぱり出世しないでくれ。

 

「そこで私が狙いすました一撃を……」

「おお……!」

「社長、盛りすぎ……」

 

「ピンチになったその時、ビルの上から声が聞こえてきたんです!」*2

「ビルの上から通る声量って……す、すごいですね……」

「音響兵器って感じだね~」

 

 その後もみんなで談笑を続け、なんだかすっかり仲良くなってしまった私たち。先生も後方で微笑ましげにその光景を見ていた。途中で相手の方も察したような表情をしている子がいたが、とりあえず黙っておくことにしよう。推定無罪なので野暮なことは言わないのだ。まあ限りなく怪しいんだけどね。でも何とかなる気もする。こうして話している感じ、人当たりいい子たちだし。

 

「まあ、柴関を美味しいって言ってくれるってことは悪い人じゃないんじゃないかな」

「……」

「そんな顔しなくてもぉ……」

 

 疑っているのが隠しきれてないホシノにそう言ったら呆れ顔をされた。冗談じゃん。半分くらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリアすることができない────このゲームは。」

「せ、先輩……」

 

 その後アビドスに戻った私たちは、とりあえずセリカちゃんが帰って来るのを待ちながら、シロコの陰謀によりテイルズ・サガ・クロニクルをプレイさせられていた。同じ苦しみを味わってほしかったらしい。なんて奴だ。

 

 しかしシロコが悶絶したゲームは伊達ではなかった。かゆいところに手が届かない不便さと微妙にズレた初見殺し要素、頭にすっと入ってこないストーリーに翻弄された私は床に倒れた。アヤネちゃんも気分が悪くなったのか頭をおさえているし、先生は白くなってうなだれている。シロコは苦痛の記憶がフラッシュバックしたのか打ち上げられた魚みたいになっていた。アホ?

 

 ちなみにホシノとノノミちゃんは膝枕をすることで危機から身を守っていた。ズルいぞチクショウ。

 

「ただいまー……ってなに、どうしたの……?」

「来たね主役」

「え、なに?なんなの?シロコ先輩なんなの!?」

 

 セリカちゃんがバイトから帰って来るや否やぬ る りと背後に回ったシロコによって羽交い絞めにされ、私の座っていた場所に座らされる。どうやら真の狙いはセリカちゃんだったらしい。まあ勧めてきたのセリカちゃんらしいしね。強く生きて。

 

 

 

 

「アヤネちゃん、私……アヤネちゃんに会えて……良かっ……」

「セリカちゃーん!!」

 

 数時間後。スマホから手を離したセリカちゃんは、そう言い残すと塵となって消えた。というのは冗談だが、重大なダメージを負ったためガクッと倒れたまま動かなくなってしまった。しかしスマホの画面に映っているのはゲームクリアの文字。セリカちゃんはこの血のマラソンを立派に走り切ったのだ。シロコと二人でスタンディングオベーションをする。おめでとう。めでたいな。おめでとさん……

 

 

「!校舎より南15㎞地点付近で大規模な兵力を確認!」

「え。まさか、またヘルメット団?」

「ええ!?今日水曜日なのに!?」

 

 そうして偉業を讃えていると、どこからともなく現れた謎の勢力が水を差してきた。今日は水曜日だというのにわざわざ襲撃に来るということは、多分ヘルメット団ではないのだろう。というか十中八九あの四人組である。今日中に来るとは思わなんだ……いや、早い方がいいのか。

 

「違います!ヘルメット団ではありません!……傭兵です!おそらく、日雇いの傭兵!」

「へえー……結構高いはずなんだけどねえ」

「これ以上接近されるのは危険です!先生、出動命令を!」

「“よし。みんな、出動!あ、無理はしないでね……”」

 

 若干重い足取りで外へと出ていく。あな恐ろしやTSC。プレイ画面を見ていないホシノとノノミちゃんが頼りである。頼んだよホントに。

 

 

 

「あれ……ラーメン屋さんの……?」

「……ぐ、ぐぐっ……」

 

 そして校庭へと出た私たちを待っていたのは、案の定柴関で出会った四人組。とついでに傭兵。……どうやら私たちが標的であることに赤髪の子は気づいていなかったらしい、苦悶の表情をしている。すごい気まずい空間だ。

 

「なっ!誰かと思えばあんたたちだったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」

「あははは、その件はありがと。でもそれはそれ、これはこれってことで。こっちも仕事でさ」

「悪いけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」

 

 出来れば区別しないでほしかったと思うが、仕事ならばしょうがない。わけない。こっちの身にもなってほしいぞコンチクショウ。

 

「で、その仕事っていうのが便利屋だったんだ」

「もう!学生なら、ほかにもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」

「まともに働けー」

「ちょっ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!まともに働いてるし!それに肩書だってあるんだから!」

 

 そういうのは大人になってからすればいいじゃないと思ったが、この世界だと今更だった。子供が学校運営しているわけだし。

 

「私は社長!あっちが室長で、こっちが課長、そしてこの子が平社員!私たちが『便利屋68』よ!!」

「平社員……」

「は、はい!平社員です!すみません!」

「はあ……社長、ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ」

 

 と自分らを指さして自己紹介をする赤髪の子。平社員の子にもなんか役職あげなさいよ。組織名は「便利屋68」というらしい。…………なんか引っかかるぞ?

 

「どっかで聞いたことがあるような……」

「え、本当!?」

「嬉しそうだねえ……」

 

 赤髪の子はその言葉を聞くなり前の目って目を輝かせ始めた。もっと悪っぽい感じなら嬉しいんだけど……まあともかく。こめかみに人差し指を当てて思考する。「聞いた」というよりも「見た」だったような気がする。しかも最近、家で。どこで見たんだったか……あ。

 

「家に突っ込まれてたチラシで見た気がする!」

「……ああ、あれか……」

「え、あのダサいチラシ?」

「ムツキ!?あれは……ダサくはないでしょ!趣があるって言ってちょうだい!」

 

 背景が虹色。フォントは既存のもの。文字色が普通という点でゲルマニウムブレスレットのチラシよりもちゃんとしているが、はっきり言って五十歩百歩の代物。先日ポストに突っ込まれていたのを回収したが、一通り困惑した後ゴミ箱にポイしたチラシの事である。言いよどんでいたあたり、ひどさを自覚はしているらしい。深夜テンションで作ったのだろうか。

 

「律儀に名前も載せてあったっけ。確か社長の名前は……」

「な、名前は?」

「陸八魔……」

「陸八魔?」

 

「……ナイ?」

「アルわよ!!!」

 

 アルらしい。

 

 

*1
半分大正解

*2
???「ぶえっくしょい!」




原作だとその日のうちに襲撃かけたっぽいんですけど、それだとセリカが学校→バイト→学校という随分ハードなことをしていることになってしまうような……と思ったのでそのままにしておきました。もはや社畜を超えた何かになってるなこの子。まあええかぁ!

戦闘シーンを書くかどうかは決めかねております。でも多分はしょることになると思います。申し訳ない。

ということで今話が2024年最後の投稿です。半年間ありがとうございました。よいお年を!
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