それ逝け!ユメ先輩(偽) 作:ポンコツ太郎
今年中に最終編には行きたい。でも今回短めです。許して……
「あ、定時だ」と、傭兵の誰かがそう言った。便利屋68と戦い続けて数十分。校舎から五時のチャイムが流れた時のことである。……傭兵に定時とかあるんだ……つい固まってしまった私は、戦闘中にボーっとするのはまずいと便利屋の方を向きなおした。そしたら、便利屋も固まっていた。君らは知ってないとダメじゃない??いや、そんな顔されても私困ります……
さっきまでの喧騒はどこへやら、武器をしまってぞろぞろと帰り始める傭兵と目をぱちくりさせる便利屋を見て、なんだか気が抜けてしまった。あっ目の前の平社員の子と目が合った。どうしよう、すごい気まずいぞ。
そのまま蕎麦でも食べに行こうか、いやうどん、いやいやラーメンをと、夕食のことを話しながら去っていく雇われたち。ラーメンがいいと思うよ、というのはともかくとして。案の定便利屋の方も想定していなかったらしく、陸八魔ナイがわたわたしながら傭兵を引き留めようとしている。それに対して「でも報酬ケチられたし……」とぼやく傭兵たち。ケチったんだ……しばらくすれば、この場にはアビドスのみんなと便利屋のみになってしまった。
「こりゃヤバいね。まさかこんなにしぶといなんて……アルちゃんどうする?逃げる?」
「ぐっ……うぐぐ……おっ、覚えてなさい!アビドス!!」
「あはは!アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「うっさい!逃げ……じゃなくて!退却するわよ!」
さっきまでの威勢はどこへやら、まさに捨て台詞といった感じのものを吐いて、便利屋の四人は去って行った。もう来ないでね。社長の弾はなんでか時間差で爆発するし、室長は爆弾詰まったカバンをぶん投げれる強肩だし、課長のハンドガンは死ぬほどうるさいし、平社員は何発当てても倒れないくらいタフだし……面倒くさいことこの上なかった。先生の指揮があったから何とかなったようなものである。後ろを見れば、みんなも疲れたような顔をしている。
「困りましたね……あの人たちも、もしかするとヘルメット団に支援をしていた人の差し金だったり……?」
「ま、少しずつ調べるとしようよ。まずはその……便利屋66?っていうのから洗ってみないと」
「68ね」
「同じだよ、同じ」
同じではねえよ。
「陰になった街~で~」
というわけで、襲撃の翌日。今月分の借金を払う日だったので、アヤネちゃんに準備をお願いしつつ、私は代わりにお使いに行ってから学校へと足を運ぶ。……数日前まで比較的平和だったのに、スケジュールがギチギチだな。調査が進んでるから、いいことではあるんだけれども。先生様様である。
着けばちょうど集金が終わったのか、カイザーローンと横に書かれた車が一台校門から走り去って行った。わざわざ取りに来ずとも呼べばいいのに~と思い、どこに店があるのか知らないことに気づいた。ダメじゃん。
「……はあ、今月も何とか乗り切ったね~」
「完済まであとどれくらい?」
「えーと、309年返済なので、今までの分を入れると……」
「言わなくていいって、正確に言われるとさらにストレスたまるから……どーせ死ぬまで完済できないし」
「“う、うーん……”」
近づけば、若干疲れた様子のみんなが金額について話し合っていた。昨日からずっと疲れてるね…しょうがないことだけれども。かくいう私も目が若干死んでいる。
借金の返済額は毎月大体788万円。国規模で考えればはした金だろうが、六人ぽっちの私たちにとってはそうではない。ひぃんひぃん言いながら頑張って集めたのを涼しい顔して持っていかれるのは、やっぱり面白いもんではないのだ。いやそもそも借金自体が面白いものじゃないけど……
「ところで、カイザーローンはどうして現金でしか受け付けないんでしょうね?わざわざ輸送車まで手配して……」
「……」
「シロコ先輩、あれは襲っちゃダメ」
「…………うん、分かってる」
「ほんとかしら……」
「ん」
「んじゃないわよ」
じぃっと小さくなっていく車を見つめるシロコを、セリカちゃんが諌める。あの顔は「計画するだけならええやろ」の顔だ。よくないよ、やめようね。いつ実行に移すか分かったもんじゃないのでヒヤヒヤするのだ。切羽詰まったら普通にやりそうだし。
「まあまあ、それよりも目下の問題を解決するために動こうよ」
「そーいうこったね」
「あ、ウツホ先輩!どうでした?」
「バッチリ。アヤネちゃんの言ったことの裏がとれたよ」
「“何か調べてたんだね”」
「ふっふっふ……私をただの穀潰しだと思ったら大間違いですよ」
「“そんなこと思ってないよ……”」
ホントに思ってない?ホシノもそう思う?……あっ目が泳いだ。
「確証も得たので、兵器群のことについて報告したいのですが……ただ、その前に。昨日の襲撃の件について、分かったことを共有したいと思いまして」
「『便利屋67』の皆さんのことですね!」
「68よ、ノノミ先輩……」
とりあえず立ち話もアレということで、私たちはいつもの通りに教室に集まって会議の体で話を聞くことにする。どうやらアヤネちゃんは便利屋の事も調べておいてくれた様子。
それにしてもよく数字を間違えられる便利屋68である。陸八魔ナイも悲しんでいるぞ、ちゃんと覚えてあげなさい。
「あはは……えっと、『便利屋68』は、ゲヘナでかなり素行の悪い生徒たちとして知られているようでして。頼まれたことは何でもこなすサービス業者です。リーダーで自称社長の陸八魔アルさん、室長の……」
「……どうかした?」
「いえ。今朝絡まれたので……」
「ええ?」
遠い目をしているアヤネちゃんはどうやら、先生と登校中に室長の浅黄ムツキと出くわしたらしい。朝っぱらから災難である。ただ、襲ってはこなかったそう。昨日も公私は分けるとか言ってたけど、分けすぎじゃない?家訓か何かなのだろうか。
それにしたって随分と苦い顔をしている。まあ昨日ドンパチした奴がひょっこり現れてグイグイ来たら誰でもそうなるか。変な奴らに絡まれたもんである。なんというか、キャラが濃いのだ。毎日会ってたら胃もたれしそう。
「失礼しました。室長の浅黄ムツキさん、課長の鬼形カヨコさん、そして平社員の伊草ハルカさんの四人組で構成されています」
「本格的だねぇ」
「わー☆社長さんだったんですね!」
「いえ、さっきも言ったように自称でして……ただ、ゲヘナでは数々の問題行為を起こしていたようです。そんな危険な組織がアビドスを狙っているんですから、もっと気を引き締めないといけません!」
若干前のめりになりながら、拳を握ってそう主張するアヤネちゃん。つまるところ結構キレている。怖い。でも矛先が外に向くのはいいぞと思ったり思わなかったり。
「大分怒ってるわね、アヤネちゃん……」
「そんなアヤネに、これ」
「?これは……」
私がアヤネちゃんに気圧されていると、シロコが鞄を漁って一つの紙を取り出した。それは私もつい先日見たものだ。なかなか忘れられない強烈なものだし、便利屋にも関係しているし。
「“チラシだね。ウツホが言っていたもの?”」
「そうですね。このバカみたいに見にくいチラシは間違いないと思います。シロコ、取っておいてたの?」
「ううん。今日思いついて溜まりに溜まったポストを調べたら、ちょうどあったの」
「……ポストは毎日確認しようよ」
「ん」
「んじゃないよ」
この子もしかして一人だと生きていけないんじゃないかしら。ずぼらに育てた覚えはないんだけど……シロコの部屋がなんだかすごいことになっていそうなので、今度見に行った方がいいのかもしれない。
「でも、これで住所と電話番号が割れましたね」
「仕事の形式上しょうがないとはいえ、大分ザルだね……」
「襲う?」
「いえ、今日は皆さんに頼みたいことがありますので、それはまた今度ということで」
含みのある言い方をするアヤネちゃん。不気味なほど穏やかな笑みをしている。怖すぎる。
「むう…………そうだ」
「シロコ先輩?どうしたの?」
と、何か思いついたのかおもむろにスマホを取り出したシロコ。なかなかに悪い顔をしている。ネットで何かを調べた後、どこかに電話をかけ始めた。……どこかというか、まあ決まりきってるんだけどね……
「はい、こちら『便利屋68』です」
「うん、ちゃんとつながったね。おほん。今から一時間後事務所をぶち壊しに行くぜ。空崎ヒナです………」
「え?……えぇ!??な、なななな、何ですってーーっ!?!?」
ブツッ
「ん、完璧。少しすっきりした」
「ええ~~…………」
いろいろ言いたいことはある。あるけれど……あれで騙されるのか……
「……えっと、もう一つの方に行きますね。先日セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです。戦闘によって入手した兵器群の破片を分析した結果、現在は取引されていない型番だということが判明しました。」
「行きつけの古鉄屋さん、そっちにも結構詳しくてさ。今朝持って行って確認してもらったけど、間違いないって」
便利屋にちょっとした仕返しをした後、話題は本命であろう兵器群の話になった。戦車やら迫撃砲やらの部品をかき集めて調べるというなかなかな力技を使ったアヤネちゃんだったが、専門家のお墨付きが欲しいということなので、かねてよりお世話になっている古鉄屋に私が突撃取材をしてきたのが朝の出来事。店主さん、割とノリノリだったな。
「え。じゃあ、どうやって手に入れたのよ」
「……もしかして、裏取引とかでしょうか?」
「はい、そうです。キヴォトスで生産中止された型番を手に入れる方法は……ブラックマーケットしかないかと」
ブラックマーケット。噂程度には、私も聞いたことがある。何らかの理由で学校をあぶれた人が集まる無法地帯。治安はもちろん悪い。犯罪行為が横行しており、連邦生徒会も手を焼いているとか何とかかんとか。ちなみにwiki調べである。
「どうやら、件の便利屋68も何度か騒ぎを起こしているようです。私の予想が正しければ……今回の二つの出来事は、つながっている可能性が高いかと」
「なるほどぉ、じゃあ決まりだね。手がかり探してレッツラゴー!」
「いくら持っていけばいいでしょう……?」
「遠足じゃないからね?」
そういうわけで、早速ブラックマーケットまで赴くことになった。意外と広いらしいけど、何かしら見つかるだろうか。まあ、先生が何とかしてくれるだろう。この人が来てから事態が動き出したわけだし。……黒幕ってわけじゃないよね……?
「ところで、アヤネちゃん置いてっちゃってもいいの?便利屋がまた襲撃してこないとは限らないし……」
「そこは大丈夫です。いざとなったら校舎と一緒に沈みます」
「……ええ……?アヤネちゃん一体何したの?」
「この校舎の至る所に爆弾を設置しておきました。この端末で遠隔起動できます」
お、奥空さん……??
好きな小説が超久々に更新されて嬉しい今日この頃でございます。ひゃっほう。
実はなんですが、次話も多分遅れてしまうと思います。これも全部試験という奴が悪くて……
皆様にはまた待たせてしまうことになるかと思います。新年早々(?)申し訳ございません。