それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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お待たせしました。お待たせしました……
エナドリ飲んで集中力あげてやろうと思ったら逆に執筆速度下がりました。なんで……?



檄!覆面水着団

 まずは先生に頼んで、設備のハッキングをしてもらう。オフラインがどうとかいうのも、直接つなげてしまえばなんてことないのだ。ぐはは。先生がタブレットを操作すれば、あっという間に銀行を掌握してしまった。タブレットが凄いのか、先生が凄いのか。まあ両方だろう。

 

 次に、内部の制圧をするために銀行内の電気を落としてもらう。中がガヤガヤしだしたその隙に突入し、あらかじめ割り出された位置に向かって発砲すれば、うめき声と一緒に倒れるような音が聞こえてきた。何回か繰り返して警備員を全滅させたことを確認した後、合図を出して停電状態を解除してもらう。強盗団のお披露目だ。

 

「全員その場に伏せなさい!持っている武器は捨てて!」

「言うことを聞かないと、痛い目に遭いますよ☠」

「あ、あはは……」

 

 さっきまでそんなつもりはなかったというのに、随分と様になった姿で銀行員を脅すセリカちゃんとノノミちゃん。割とノリノリだ。ヒフミちゃんも苦笑いをしながら怪しい動きをする奴を撃って脅している。……トリニティも意外と野蛮なのだろうか。

 

「ひ、非常事態発生!」

「こらこら、動くんじゃない」

「それに無駄だよ、警備システムは落としちゃったもんね」

 

 私も、近くで警報システムを作動させようとした輩を撃って黙らせる。伏せろ言うとるやろがい。システムを切っておいてもらって良かった、万が一があるといけないからね。

 

「ほら、さっさと伏せる!変な動きしたら無事は保証しないわよ!」

「み、皆さんお願いなのでじっとしててください……」

 

 しばらくすれば、みんなも制圧が完了したらしく、ほとんどの人が武器を置いて地面に伏せている。立っているのは私たちと記録を持ってこさせる奴一人くらいだ。

 

「よぉし、ここまでは計画通り!リーダーのファウストさん、次の指示を~!」

「え、ファウスト……って私ですか!?リーダー!?!?」

 

 どうやらヒフミちゃんは巻き込まれた挙句頭に担ぎ上げられてしまったようだ。ファウストってなんだか物騒な名前。可哀そう……私も加害者側だということを思い出した。すみませんでした。

 

 当の本人はそれはもう動揺していた。「ティーパーティーの名に泥を塗る羽目に……」と言うヒフミちゃん。顔が青くなっているのが紙袋越しに分かるくらいだった。

 

「はい!リーダーでボスです!ちなみに私は……覆面水着団のクリスティーナだお♧」

「ダ、ダサ……いつからそんな組織名になったのよ……」

「私はサンドウルフパイジ!」

「乗らなくていいから!それもおかしいし!」

「そしてあなたはブラックセロリ」

「なんでよ!!!」

 

 するとノノミちゃんとシロコも名乗り始める。ブラックセロリってなんだよ。いやサンドウルフパイジもだけど……というかノノミちゃん、アイドルのグループ名流用してるけどいいのかい……?

 何も銀行でまで漫才しなくても……とも思ったが、周りはその軽さに逆に恐怖したみたい。普通なら名前が変すぎて困惑が勝ると思うんだけど……私がおかしいわけではないよね?

 

 と、数人ほどじっとこちらを見つめるのが目に入る。……あれ便利屋じゃないかな?何でこんなところに?待ち伏せされたのか?*1と考えるが、どうやらそうではないらしい。ナイちゃんが驚いた顔をしているからだ。電話越しでも驚いていたし、割とポ……表情豊かなのかもしれない。あっ室長が手を振ってきた。バレテーラ。一応振り返しておこう。

 

「さあ、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の」

「分かりました!現金でも債権でも金塊でも差し上げます!」

「う、うん。じゃあ集金記録を」

「ど、どうぞ!これでもかというくらい詰めましたので、どうか命だけは!」

「……うーん……」

 

 気を取り直して周囲の警戒をしているうちに、シロコがお目当てのものをバッグに入れるよう指示をする。銀行員の手際は見事なもので、あっという間にバッグがパンパンになった。……シロコが微妙な表情をしている。なんかあったのだろうか。

 

『皆さん、計画ではそろそろタイムリミットです!』

「先輩!ブツは手に入った!?」

「あ、うん。一応……」

「よ~し、じゃあ逃げるよ!全員撤収!」

「アディオ~ス☆」

「え、ええっと……さようなら!」

 

 とにかく、取るもんとってさっさとお暇だ。ここまでで大体五分、初めてにしてはスムーズな方なのではないだろうか。最初の停電奇襲がうまくはまった。先生様様だ。……今更ながらこれ大丈夫なのだろうかと思った。犯罪っぽい犯罪をするのは今回が初めてである。とんでもないことをしたもんだ。

 

 

 

 

 

 その後、外に集まりつつあったマーケットガードを蹴散らしながら、事前に打ち合わせた撤退ルート通りに進んでいく。初めのうちは着いて来ていた敵も、何十回か角を曲がれば見えなくなっていた。ブラックマーケット出口、市街地の方まで来たところでいったん止まる。そろそろいいかと、みんなが覆面を脱ぎ始めた。

 

「はぁ、疲れた……」

「いやー大仕事だったね」

「スリル満点でした☆」

「“みんな、お疲れ様”」

 

 別ルートから離脱した先生がスポーツドリンクを持って合流。そのままみんなに渡し始める。美味い美味いとそれをあおるみんなの姿ははきらめいて見えた。ここだけ見れば青春真っ盛りの高校部活という感じだ。ここだけ見るなら……

 

 

「ところでシロコ先輩、覆面脱がないの?」

「もしかして……天職を感じちゃったってやつ?銀行強盗魂が遂に……」

「……先輩はアビドスに来て正解ね……他の所だったらもっとすごいことしてたかも……」

「そ、そうかな……えへへ」

「褒めてないと思うよ」

 

 早々に覆面を脱いだみんなと違い、シロコだけがいまだにそれを被っていた。どうやら指摘されるまで気づかなかったみたい。もしコレの記憶が戻って「私は銀行を襲うために生まれてきたんだ」とカミングアウトされても私驚かないよ。

 

「でシロコちゃん、集金記録はバッチリ持ってきた?」

「……う、うん。バッグの中に……」

 

 しかし、例の物を奪えたか聞くと何故か急に歯切れが悪くなるシロコ。まさか取り損ねたとか……?そう思いバッグの中を見るが、一番上にそれらしきものがある。なんだ、あるじゃないかと思ったが、その下にある大量の札束を見て納得した。金も奪っとるやんけ。

 

「あ、あれま!?カバンの中に札束が!」

「えええ!?先輩、現金も盗んじゃったの!?」

「“…シロコさん…”」

「いや、その……銀行員が勘違いして入れちゃって……」

 

 本当だろうか。この子ならついでに金もせびってそうなもんだけど……という冗談はともかく、本命が集金記録であることはカモフラージュ出来たのではないだろうか。そんなもの必要なの私たちくらいだろうし、正体ばれたらマズいし。そう考えれば、いい仕事をしてくれたんじゃなかろうか。多分。

 

「うへぇ、いったいどれだけあるのやら」

「えっと、一束100万だから……2000万」

「ほい、4000万」

「6000万……」

「8000万……!」

「「1億……!!」」

 

 五分で1億。いつかシロコが言った通りのことになった。ドラスティックベイビー……途端に札束が眩しく見えてきた。あと九回やれば借金が返せるということになる。やばーい。

 

「ほ、ホントに?やったぁ!早く運ぼう!」

『ちょっと待ってください!そのお金、本当に使うつもりですか!?』

「当たり前じゃん!借金返済に──」

「そんなことしたら本当に犯罪だよ、セリカちゃん!」

 

 セリカちゃんが嬉々として持って帰ろうとするのを止めるアヤネちゃん。本当も何もすでに犯罪な気がする……というのは置いておき、アヤネちゃんが言いたいのはまあ、納得できないということだろう。大事なことではある。

 

「で、でも!もともとは私たちが汗水たらして稼いだお金じゃん!それを使って何が悪いの!?」

「私もセリカちゃんの意見に賛成です。汚いお金だとしても、私たちが正しい使い方をすればいいと思います」

「“二人とも……”」

 

 私たちにしては珍しく、意見が対立した。この金を使うか使わないか。個人的には使ってほしくないが、重要な選択だろうし全会一致であるべきだと思う。どう説得しよう。

 

「まあまあ。んー……シロコちゃんはどう思う?」

「言うまでもない、二人が反対するだろうし」

「あれま」

「おお~、さすがシロコちゃん。私たちの事分かってるね」

 

 ホシノの問いへの答えを聞く限り、どうやらシロコは反対らしい。正直私は自分でも野蛮よりだと思うので、てっきりこの金を使うことに賛成していると思われてるかと思っていた。……ややこしい文章だ。まあ、シロコは結構私たちのことを分かってくれているということだ。私嬉しいわ。

 

「私たちに必要なのは書類であってお金じゃない。確かに、今回はいわくつきの金だからいいのかもしれないけど……もし次があったら?」

「う……」

「こんな方法ばっかりしてると次第に慣れちゃって、平気で同じことするようになっちゃう。もしかしたら、もっと酷いことにも手を出しちゃうかも。私は、みんなにそうなってほしくはないかな。それに、もしそうするくらいなら最初からノノミちゃんのゴールドカードに頼ってただろうしね」

「……そう、ですね。きちんとした方法で完済しないと、アビドスはアビドスではなくなってしまいますよね」

 

 人は一回目さえこなせば、あとはずるずると引きずられていくものだ。出来るならそんなことは無いようにしたいというのも先輩として当然の考えだろう。ホシノは噛みしめるようにそう言う。自分にも言い聞かせているのかも。

 

『……ウツホ先輩も、同じ考えですか?』

「私は……うーん、使ったら足がつきそうだなって。それに、リスクとリターンが釣り合ってないと思うな。1億は個人で考えたら確かに大金だけど、これを使ったところで借金はまだ8億強残ってるわけだし」

「なんか…夢がないわね…」

「ないものはないもの」

 

 自分の銀行から奪われたのと同じ金額がアビドスから渡されたら、そりゃ誰だって疑う。小出しにしても記番号でバレる。ロンダリングをしても多分感づかれる。あくどい企業と言われているくらいなら、それくらい造作もないだろう。今ならまだギリギリバレてない。はず。だからこれ以上の危険を背負いたくはない。みんなのためにもね。夢は誘蛾灯のごとし。

 

「ああもう、分かった、分かったわよ!みんな真面目なんだから!」

「うんうん。分かってくれてママ嬉しいわ!」

「うっさい!」

「あはは……でも、そうですね。私はアビドスのことは詳しく知りませんけど、コレはきっと災いの種みたいなものだと思いますし」

 

 というわけで、なんとか金は使わない方向へと固まった。なんとかなって良かった、先生も微笑んでいる。……説得手伝ってくれても良かったのでは?と言えば、「信じてたからね」と返ってきた。信頼が厚すぎる。私らが何をしたって言うんだ。

 

「そうですね……このバッグは、私が適当に処分するので──」

『!待ってください!何者かがこちらに接近してきています!』

 

 このまま平和に終わり……となりそうなところで、誰かが水を差してきた。考えられるのは追手だ。空気を読みなさい。すぐに戦闘に移行できるように銃に手を伸ばす。

 

「マーケットガード!?」

『いえ、敵意は無いようです。えっと……え、便利屋?』

「強請り!?」

「んー、とりあえず覆面!」

 

 しかし、想像していた輩とはだいぶ違うようだ。便利屋のみんながいたことは知っているけど、いったい何の用でこっちに来るのか。というかなんでついて来れたんだ、マーケットガードでも撒けたというのに。足速いのかな。

 

「ま、待ってー!!はぁ、はぁ……えっと、落ち着いて、敵じゃないから!」

 

 やって来たのは社長のナイ……そろそろくどいか。アルちゃんの一人だけだ。単独で来たことと言い分から、どうやら襲いに来たわけではないらしい。

 

「あの、大したことじゃないんだけど……銀行の襲撃、見せてもらったわ!ものの五分で銀行を攻略して撤収……すごい手際だったわ!すごいアウトローね!」

 

 ……え、褒められたの今?どういうことだろう。すごい目をきらめかせてるんだけれど。みんなも困惑していた。というか私たちの正体に全然気づいてないみたいなんだけど。仲間の子は教えてくれなかったのかい……?

 

「凄く衝撃的で……このご時世にあんな大胆なことできるなんて、えっと、感動的というか……勇気をもらったの!だからその、お礼を言いたくて……わ、私もあなたたちみたいに法律や規律に縛られない、本物のアウトローになりたいから!」

 

 なんだかよく分からないことを言いだした。琴線に触れたということだろうか。まずアウトローってなろうと思ってなるようなものでもないような……

 

「そういうことだから……名前を教えて!その、組織とかチーム名とかあるでしょ?正式な名称じゃなくてもいいから!今日の雄姿を私が心に深く刻んでおけるように!」

「……はい!おっしゃることはよーくわかりました!」

「ノっ……クリスティーナさん?」

「私たちは……人呼んで、覆面水着団!」

「わあっ……!ヤバい、超クール!かっこよすぎるわ!」

「ええ……」

 

 名前はさっき言ったような……と考えていれば、ノノミちゃんがそれに応える。何が分かったんだろう、私にはまだ分からないんですけど……そしてはっきり言ってトンチキな組織名に対しカッコいいというアルちゃん。君もそっち側(アバンギャルド)か……

 

「や~、本来はスクール水着が正装なんだけどねぇ。ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけだったんだ~」

「そうなんです!普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪を倒す正義の怪盗に変身するんです!」

 

 なんかバカみたいな設定を追加してきた。ノノミちゃんいいのかそれで。聞く限り変態だぞ。スク水着て町中を闊歩する奴なんかいてたまるか。*2一年生二人の呆れる声が聞こえてきたんだけど。

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に孤高に我が道の如く魔境を行く!ほら、なんか言う!」

「えっ。えーっと……たとえそれが、命を懸ける戦いであっても、私たちは一歩も引きません!それが、覆面水着団なのです!!」

「な、なんですってーー!?」

 

 若干適当に言った感が否めないが、それでも目をきらめかせてこちらを見てくるアルちゃん。最初に会った時は厄介極まりないとか思ってたのに、たった一日でここまでになるとは……

 

「……ねえ、そろそろ逃げようよ」

「そうですね。それではこの辺で!アディオ~ス☆」

「行こう!夕日に向かって!」

「夕日、まだですけど……」

 

 そろそろマーケットガードが追い付いてくるかもということで、言う事を言うだけ言った私たちは退散することにした。そそくさと走り去る私たちを、アルちゃんは手を振りながら見つめていた。最後まで正体に気づかなかったな。騙されやすさセリカちゃん並なのでは?と思い、そう言えばチラシが詐欺師のそれと同レベルだったことを思い出す。少し心配になった。

 

*1
相手も同じようなこと思っていたり

*2
いる




やっぱりいい感じにアレンジする方法が思いつきません。アビドス編って意外と必須イベ多い?
なぜエタった作品の多くがアビドス砂漠にうち捨てられているのかがなんとなく分かってきました。怖すぎ。
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