それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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評価がついてるぅ!色がついてるぅ!?ありがとうございます!
でも期待に添えるかは分かりません(保険)
感想もありがとうございます!
碌な返信ができないのは申し訳ない……



ピンクの悪魔がそこにいる

「寒ぅ……昨日より寒いよ……」

 

 まあとにかく学校へ向かおうと空き家から外に出てみれば、昨日よりも強い風が吹いている。寒い。スカートが短いせいで足に風がもろにあたるし、さらに制服の左腕部分がほぼノースリーブになってしまっているのでこちらも地獄である。まだ腹痛になっていないのは奇跡に近いだろう。世のスカート着用者、冬に強すぎじゃない?

 

「こうすれば寒くないよ」

 

 ぶるぶる震えながら歩いていると、そう言って反対側に回ってくるシロコ。要するに風よけだ。

 

「私が寒いんだけど……」

 

「ん」

 

「んじゃないわ」

 

 するとシロコがこれであったかいじゃろと言わんばかりに引っ付いてきた。ぷるぷる震えているので、この子も寒いようだ。まあそんな薄着じゃねぇ。……というか、結局風よけなのは変わらないのね……

 

「……歩きにくい……」

 

 にしても密着しているので歩きにくい。確かに密着部分はあったかいけど、反対側は風のせいで寒いし。傍から見たらおばあちゃんを介護する孫みたいな感じになってるんじゃなかろうか。

 そうしてしばらくとぼとぼと歩いていると、視界にひらひらと白いものが写り、首筋にひんやりした感触が──

 

「うおっ冷た!!」

 

「……雪」

 

「え?……本当だ。どうりでこんなに寒いわけだよ」

 

 雪が降ってきた。冬の代名詞である。砂まみれの所に降ってるのが可笑しいけど、それがどうにも幻想的に感じた。が、吹きすさぶ風ですぐに現実に戻される。とにかく寒い。風のせいで雪が体に当たる。こ、凍え死ぬ……

 

「うう……とりあえず急ごっか、止まってるともっと寒いし」

 

「うん」

 

 そう言って、シロコはきゅっとさっきより強くしがみついてくる。……風に当たらないように時々位置を変えながら。こんにゃろう、都合よく使いおってからに。そう思い寒さで縮こまりながら、急ぎ足で学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……蒸れる……」

 

 耳穴がないので覆面が変な形になり、側から見るとクマみたいな耳になっているシロコ。どうやらそのせいで蒸れて暑苦しいようだ。頭熱足寒である。逆……

 かたや自分は頑張って髪を覆面に押し込んでいる。痒っ。覆面を付けてる時と外している時で身体的特徴が変わった方が特定されないかなって思ってやったんだけど……今思えば、普通に切ればよかったかもしれない。それくらいなら、この身体の持ち主も許してくれるだろうし。……くれるよね?

 

 さて、自分たち2人は今アビドス高等学校の校門から校舎をのぞいているところだ。人に見られたら十中十怪しい奴だと思われるだろう。普通なら通報待ったなしだが、人がいなそうで助かった。……いやそういう問題ではない気がする。

 

「ねぇ〜やっぱりやめようよ学校を襲うなんてさ?ちゃんとお願いしたら少しくらいは食料くれるって!」

 

 そう、シロコが学校を襲うと言ってきかないのだ。や、野蛮人……食料とは別に用があるのでできれば争いたくはないんだけれども、なかなか折れてくれない。頑固ちゃんなのだ。

 

「ダメ。この世は弱肉強食」

 

「で、でもさぁ」

 

「そして私は私よりも強い人にしか従わない」

 

「へぇ」

 

「野性じゃんそれはもう」

 

 まるで空腹で気のたった狼。実際そうだけど。しかし正直この子の野性を舐めていた。まさかここまでやんちゃだとは。あの時警戒を解けたのってもしかして奇跡なのでは?

 

 というか、それってつまり自分はこの子に弱いと思われているということだろうか。いや全く否定はできないけど、面と向かって言われると悲しいものがある。しかしそんな舐められることしただろうか。したのは命乞いくらいだし。…………命乞いのせいだこれ!

 

「窓を見る限り、今のところは誰もいない。今のうちに中に入ろう」

 

「いやだから……へっくち!……はあ、分かったよ……ただし!見つからないように静かに、忍び込む感じでね!目的は食料だし、争わないに越したことはないんだから!」

 

「……むぅ。分かった」

 

 おそらく自分が何を言っても止めることはできないので、ここはどうにか妥協させる方向で行くしかない。スニーキングミッションを遂行するよう説得すれば不承不承ながら頷いてくれた。よし、これで目と目が合わない限りはポケモンバトルに発展することはないだろう。どうにか一触即発だけは避けることができそうだ。

 

 校庭は高校によくあるごく普通のものだったが、ところどころグラウンドのものとは質の違う砂が積もっている。さらにそこに雪が降っているので、なんとも不思議な光景だ。廃校と言われても納得する程度には寂しい感じがした。

 

「……それにしても静かだね。そもそもここ、ホントに生徒いるの?」

 

「この前は出入りしてる人がいたけど……」

 

「生徒は1人だけだね~、砂漠化でみんな離れて行っちゃって」

 

「なるほどねぇ……」

 

「……!?」

 

 一人かあ……じゃあ、この身体の子の知り合いはもういなくなってしまっているだろうか。いや、その一人が知り合いかもしれないし、まだ早計かもしれない。

 

「ん!ん!」

 

 ……もし会えたとして、どう話すべきか。なりきるのは不可能だし、正直に話すのがいいんだろうけど、信じてもらえるかは分からない。信じてくれても最悪殺されるかも。相手から見れば自分は死体を乗っ取ったクリーチャーなわけだし。……詰みでは?

 

「アホ毛!」

 

「アホ毛?」

 

「どうしたのシロコ。というか、やっぱそれで呼ぶ……の……」

 

 と、考え事をしているといきなり名前(?)を呼ばれる。何事かと、叫ぶシロコの方を向けば……向けば………………

 

「…………」

 

「…………」

 

 な、なんか一人増えてる。ピンク髪のポニーテールで、あったかそうな服を着ており、おまけに盾と銃らしきものを引っ提げている子。…………本物じゃないよね?エアガンとかだよね?趣味で持ってるだけで撃ってきたりしないよね?

 

「……えーと……どなたで……?」

 

「……ここの生徒だよ、よろしく~」

 

 なんてこった、唯一の生徒本人が来てしまった。非常〜にまずい。柔らかい笑顔を貼り付けたまま、じわりと距離を詰めてくる生徒の子。怖……

 い、いやまだだ。確かにどう見ても怪しい二人組だけどなんとか説得出来れば……無理だわ。連行待ったなしだろう。正直に食料くださいと言った方がまだ望みがある。

 

「……いつから見てました?」

 

「『うーん……蒸れる……』のあたりからかな」

 

 ほぼ最初じゃねえか!今までのやり取り、全部見られてたってこと?じゃあダメじゃん襲うとか物騒な話してたのも聞かれてるじゃん。……というか、全く気配を感じなかったんだけど?怖……

 

「腕と血……大丈夫?」

 

「……多分?」

 

 恐怖に慄いていると、そんなことを聞いてくるピンク髪の子。シロコはびびってか聞いてきてこなかったが、その反応が普通か。改めて大分奇妙奇天烈な格好だと思う。幽霊と間違われなかっただけ良かったと思おう。

 血はまあ、希望的観測をすれば血糊なので大丈夫だろう。腕は……うん、不便だ。

 

「…そっか。ところで……うちに、何か用かな?お二人さん」

 

 そう笑顔で訪ねてくるピンク髪の子。しかしそのセリフを言うと同時に圧が上がった気がした。ひええ。

 下手なことは言えない。失言するんじゃないぞとシロコに目で訴えれば、力強く頷き返してくる。よし、さすがに分かってるな。

 

「そのぉ……実は食料を「ん、襲撃に来た」おバカーーーッ!!

 

 全然そんなことはなかった。むしろやる気満々、ふんすと鼻息をふかしてすらいる。なんでそんなテンション高いの君?

 ピンク髪の子は「へぇ~ほぉ~やる気なんだふぅ~ん」という感じで笑顔なのにおっそろしいオーラを漂わせている。コワイ!

 

「あ゛ーもう!とりあえず校舎にGO!」

 

「お待ち〜」

 

 シロコの手をひっつかんで校舎に滑り込む。屋内の方が撹乱できて生存率が上がるはずという考えだ。……いや普通に悪手では?この学校の構造知らんし。

 

 しかし今更戻ることはできない。とにかく逃げねば。下駄箱を無視して2階へ、そのまま廊下をひた走る。

 

「ん!逃げる必要はない、迎撃するべき!」

 

「腹ペコで勝てるわけあるか!それになんか物騒なもん持ってたでしょうが!」

 

「私達の界隈では舐められたら終わりなの!だから離して!」

 

 おうそれ一体どこの界隈じゃ。ヤクザか何か?……この子なら割とやっていけそうだな、なんて失礼な考えがよぎった。しかしそれに自分を巻き込まないで欲しい。どちらかというと平穏に暮らしたい派なんだ。

 

 走っていれば廊下の端に着く。すぐに90度旋回、階段の前で上がるか下るか一瞬迷い、3階へ上がろうとする。

 

「逃がさ〜ん!」

 

「うおゎ!?」

 

 だがそれは階段の踊り場まで回り込んできたピンクっ子に阻まれた。さっきまで後ろにいたはずなのに。瞬間移動とか習得しているんだろうか。当の本人は手をシャカシャカさせて威嚇をしている。なんなんだその動きは。

 

「て、撤退!」

 

 どう見ても3階に上がるのは無理なので急遽進路を変更し、1階に降りる。というかもう大人しく帰った方が良い気がしてきた。どうするのシロコさんと言えば、勝負はここからと返って来る。不安すぎる。この状況で入れる保険ないものだろうか。

 

 しかし階段を下りきって1階に降りてみれば、ちょうど教室から見たことない子が出てくる所ではないか。????増えたんだけど?

 

「あ、ホシノ先……えっ、誰ですかその二人!?」

 

「強盗~、捕まえてノノミちゃん」

 

「ええ!?」

 

 しかも自分たちのように強盗に来たわけではなく*1、バッチリあちら側である。だ、騙したな……

 

「2人目いるじゃん!!」

 

「嘘つき!」

 

「嘘は言ってないもーん」

 

 ほんとにぃ?

 

「ええっと……えい!」

 

「おぼふ」

 

「ふっ!」

 

 しかしそんな邪念を抱いたせいかよそ見をしてしまったせいか、制圧のために突き出したであろう二人目の子の拳がもろ顔に刺さった。クリーンヒットである。前が見えねェ……

 

「あいっだぁ!」

 

 しかもその勢いで後ろにすっ転んで地面に頭を打ちつけてしまう。痛ぁい……力が抜けていく……

 

「す、すみません大丈夫ですか!?」

 

「……はい。多分……」

 

 挙句の果てに殴った本人に心配されてしまった。なんともみじめである。

 

 シロコはどうやら避けたみたいで、ピンク髪の子がそれを追って行くのが聞こえる。空腹でよくあそこまで動けるもんだ。自分はこのザマである。

 自分のことはいい、強く生きろ、シロコ。生きてアビドスから食べ物を掻っ攫ってゆくのだ。……いやさっさと捕まった方がいい気がしてきた。あれを野放しは普通に危険だ。別の所を襲いかねない。

 

 兎にも角にももう体が動かせないので、2人目の子がおろおろしながらたたずむのを見つつ、おとなしく入の字で寝っ転がっておくことにした。床は冷たかった。

 

 

*1
それはそれで困るけど




皆さんが見たいであろう部分は次回にやります。許して……

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