それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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評価感想誤字報告此処好感謝感激雨霰。ハイパー難産でした。四割くらいモンハンのせいでもあります()

ということで風紀委員回前編でございます。そう、前編。一話にまとめるのは無理でした。許して……


風紀とは、横乳を出すことと見つけたり

「う……」

 

 額に小石が当たって、陸八魔アルの意識は覚醒した。ゆっくり目を開くが、先の衝撃のせいか視界はぼやけている。かといって耳に意識を向けても、こちらも耳鳴りで使い物にならない。ならばと節々の痛む体を起こせば、随分と開放的な店内が見えて……店内かこれ?中も外もないじゃないこれ。アルは困惑した。

 

 しかしそんなことをしている暇もない。まずは仲間の無事を確認しなければと、アルは周りを見回す。どうやら社員たちは無事のようで、不思議なほどピンピンしているハルカに(あわあわしているが)、ぶーぶー言いながらも大した傷を負っていないムツキ。カヨコは意識が飛んでいたようだったが、それでもすぐに回復していた。柴大将もかすり傷で済んだようで、ムツキが肩を貸し安全圏まで送っていく。

 

 では彼女は?アルはひょんなことから同じ席に座ることになった一応敵の姿を探す。今日の憔悴っぷりが意外だったのもあるが、食事を共にした人を見捨てる選択肢はアルにはなかった。先日のことを言われると弱いが、それでも助けられるものは助けるのだ。

 

 さて、問題の彼女ことウツホはすぐに見つかった。というか下を向けばすぐそこにいたのである。微動だにしなかったため分からなかっただけだったのだ。ウツホは焦げ折れた割り箸を持ったまま、虚ろな目で天に向かって呟いた。

 

「……ラーメン……」

 

 宗教用語みたいに言うなと思ったが、口には出さないでおいた。失意は痛いほどわかったからだ。誰だって目の前の好物が爆発で吹き飛べばこうもなろう。

 

「一体誰が…………あれって」

「も、もしかして私が仕掛けた爆弾が……すみませんすみません!」

「え?」

 

 カヨコが遠くで何かを見つけたが、ウツホはハルカの文字通りの爆弾発言に気を取られていた。容疑者が目の前にいるということになるのだから仕方ないというもの。そうでなくとも原因の五割ほどは彼女なのである。ウツホは仇敵を見る目でハルカを見つめた。

 

「勘弁してくれない?」

「す、すみません!切腹します!!」

「ち、違うわ!ハルカは起爆スイッチを押してない!これは誓う!」

「…………」

 

 爆破するつもりではあったということでは?とウツホは訝しんだが、うろたえようから起爆したのは便利屋でないと感じたのと、そうなら真犯人を逃すわけにはいかないという考えから、追求は後にすることにした。ちょうど同時、ムツキが戻ってくる。

 

「大将の避難はバッチリ。そっちはどう?なんか分かった?」

「店に爆弾が仕掛けてあったのも原因だけど……多分、外部からの衝撃が原因だね。……十中八九、犯人はアレ」

 

 ムツキの問いに、カヨコが町の方を指さしながら答える。皆の視線がそちらへと向いた。

 

「……なんだアレ?」

 

 その先には、大きな黒い影がこちらへと近づいてくる光景。陽炎のせいで見えづらいが、数は便利屋たちの何十倍にもなる。それはゆっくり、ゆっくりとその影を濃くし、こちらへと迫っていた。険しい顔をしたカヨコが二の句を継ぐ。

 

「……ゲヘナ風紀委員会」

「な、何ですってー!?」

 

 便利屋の顔が引きつる。社長は白目をむくほどに驚いていた程。しかしウツホだけはただ困惑していた。ゲヘナの治安維持機関が何故ここにいるのか分からないといった具合である。

 

「は?なんで今、ここに?」

「私たちを捕まえに来たんでしょ。一応指名手配されてるしね~」

「……それにしては違和感がある。風紀委員会が自治区をまたいで活動するのも珍しいし……」

 

 普通に考えるなら、やんちゃな自校の生徒を捕縛しに来たのだろう。しかし便利屋からすると、そこまで躍起になって追われるほどの悪事はまだしていないため、いささか疑問が残るのだ。しかもここはアビドス、他校のテリトリーである。カヨコは瓦礫の後ろで指を口に添え考え込んだ。他の三人も、自分の銃をいつでも撃てるよう調整している。

 

「と、とりあえずみんなに連絡を……ああ、ちょうど来た。もしもし?」

『あ、ウツホ先輩、どこにいますか!?その……柴関ラーメンが爆破されてしまったんですが……』

「ちょうど店内でラーメン食おうとしてたところだったよ」

『え!?そ、そうだったんですか』

 

 ちょうど震える端末に耳を近づければ、聞きなれた後輩の声。「だった」と含みを持たせて言う彼女に、アヤネは気まずさを覚え言葉に詰まる。一口も食べられなかったラーメンを思い出し、ウツホはため息を出した。

 

「……まあともかく。ゲヘナの風紀委員が目の前にずらりと並んでるんだけどさ、なんか連絡とか来てない?」

『ゲヘナの、ですか?一体どうして……いえ、活動許可の連絡は来ていません』

「だってさ」

「わざわざそれをすっ飛ばしてまで私たちを捕まえに来る理由が……?……いや、まさか……」

 

 身をひそめ相手の出方をうかがう便利屋を尻目に、既に輪郭がくっきり見えるほどの位置まで近づいてきていた風紀委員の方へと近づいていく。大将に怪我をさせた犯人であろう輩に協力してやる義理はないと、対策委員の皆が来るまでの時間稼ぎのつもりで彼女らの前へと出る。がしかし。

 

『それと……その、ホシノ先輩とは連絡しましたか?』

「……」

 

 そう、焦りがにじみ出た声で言われてしまえば、嫌な予感が頭をよぎるものである。さっきまでネガティブな想像をしていたので、なおさら。大したことじゃない、そうだろう、そう言ってくれと苦悶の顔でウツホが答える。

 

「………………電話番号忘れたとか?」

『違います!さっきからずっとかけてるんですけど、一切応答がなくて……』

 

 ──アイツやりやがった。

 

 こんな重大な時に連絡がつかないということは余程のことなのだろう。そう、余程の。例えば誰かと密会していたりとか。ほんの一瞬また誘拐かと考えたが、アレに限ってそんなことは無いだろうと思い直す。自分の考えた推理を裏付けるようなことが起こってウツホの胃のキリキリが加速していた。バイアスがかかっていると思っても、こういうものは止められないのだ。

 

 そして、それを待つような風紀委員会でもない。先頭の二人のうちのツインテールの生徒が、道路の真ん中に突っ立っているウツホに話しかける。

 

「おい、そこの奴。公務の邪魔だ、どけ」

「イオリ、我々は」

「…………あ?ああ、すいません。ところで皆さんはどちら様?」

「それ、あんたに関係あるのか?」

 

 問題が一度に押し寄せてきて、彼女はうんざりだった。出かかる左手を腰に引っ込めて、引きつっていた口を開く。

 

「はい。私はアビドス廃校対策委員会の梔子ウツホと言います。あちらの店を爆破したのはテメーら様の命令でしょうか?」

「廃校対策……?生徒会じゃないのか?話がしたいって言うなら」

「イオリ黙っててください、本当に。ゲヘナ風紀委員会、火宮チナツと申します。今回はこちらの不手際で街に必要以上に危害を加えてしまったことをお詫びいたします……ですが、こちらも『便利屋68』を捕縛するという公務の一環としてアビドスまで来ていることを留意いただければと」

 

 詫びる気はあっても、止まる気はない。仕事なのだ、さもありなん。しかしそれならば、もう一つの事実について説明してもらわなければならないと、ウツホはチナツに対し答える。

 

「生徒会は機能停止状態なので、我々廃校対策委員会が代理をしています。分かりづらくてすみません。そちらの事情については理解できましたが……確認したところ活動許可申請が来ていないようでしてね」

「……?そんなはずは……委員長から承認を貰い申請を出──」

「その件については、私から説明させていただきます」

 

 隙が見えたところで、横から誰かが口を挟んだ。肉声ではなく、電話越しのようなノイズの混じったもの。ウツホは一種の手ごたえと、同時に面倒くささを感じた。

 

 上司であろう奴を引きずり出したはいいが、正直こういうのは苦手なのだ。しかも声の主はなんとも場慣れしていそうな落ち着きが感じ取れた。となると、今回の責任を問うのも苦労するだろう。うんざりである。最近うんざりすることばかりだ。

 

『こんにちは、梔子ウツホさん。私はゲヘナ風紀委員会所属の行政官、天雨アコと申します』

 

「──は?」

 

 

 

 だから、ホログラムに投影された姿を見て声を失ったのは、仕方なかったとも言える。……だって相手の格好がおかしいんだもの。顔が引きつった。

 

 短めのスカートはまだ良い。キヴォトスではどいつもこいつも馬鹿みたいな短さのスカートを履いているため、もはや気にならないからだ。

 

 しかし首に着いたカウベルと、はみ出した横乳はどう考えてもおかしかった。およそ見たことのない様子のおかしいヤツがそこにいたのだ。しかし彼女だって風紀委員なはず、何故そんな破廉恥な格好をしているのか。実は他の風紀委員も分かっていないし、腐れ縁のカヨコも分かっていなかった。

 

 

 とにかく、その姿はインパクトがあった。初見では誰もが二度見するような恰好だった。だから仕方がないのだ、ウツホがキレたのは。

 

「何だその恰好……ふざけてるのか?」

『え?』

「そらなんだ?もしかしてアレか?どうせ田舎の零細学校なんだからまともな所じゃないだろうって?どうせ抵抗できないから煽ってやろうとか…!それくらい許されると思ったんだろ……?」

『いえ、服装にそんな意図は』

「言い訳なんてもう分かってんだよ! どうせ無法地帯だろうなんて考えで……白昼堂々侵略行為しようってんだろ!!」

『ええ!?』

 

 ウツホはアコのことを「自分たちのことを舐め腐って侵略ついでに煽っている奴」だと考えた。流石にそんなことは無いのだが、傷心の気分転換に入った飯屋を食事直前に爆破され、同級生はいかにも怪しいタイミングで連絡が取れず、そして人を小馬鹿にしたような態度をした爆破の犯人の親玉がバカみたいな恰好をしていたため、怒りが噴出しても仕方ないと言える。多分。暴言を吐きそうだったが、ガワが女子だったので思いとどまれた。

 

 これにはアコも困惑した。まあキレられるだろうなと考えていたら斜め上の怒り方をされたのだ、驚きが漏れるのも当然だろう。本人の視点では。一応、本当に煽りの意図はない。アコにとっては普通の普段着だった。

 

「アコはいつもあんな恰好だよ」

「は?」

『「あんな」って何ですか!?』

 

 と、そこにカヨコが入って来る。一応の目標が現れた風紀委員は、しかし微妙な雰囲気のせいで硬直したままだった。

 

「……噓でしょ?」

「仕事してる時も普段も、私たちを追ってくるときもあの格好。煽りの意図はないよ」

『そうです、誤解です!!これはファッションですから!!そんな意図はありませんから!!』

 

 じゃあ普通にアレ着てんのかよ。痴女なの?疑わしげな眼でウツホはカヨコを見つめれば、頷きが返ってきた。遠い目と共に。まるで私らには救えぬものだとでも言いたげに。場を静寂が包んだ。

 

 

と・に・か・く!……こちらの申請が届いていないということは、何らかの不手際があったということでしょう。その件については謝罪いたします。しかし、我々はあくまでそちらの校則違反者達を捕縛しに来たのです。どうか、協力をしていただけないでしょうか?』

 

 気まずさが飽和したところで、アコが仕切りなおした。とりあえずと服装云々は横に置き、ウツホへと語りかける。それに居住まいを正した他の風紀委員も、今度は確りと銃口を二人へと向けていた。

 

「よく言う。私らは口実でしょ。申請の話も嘘」

『あらあら、いくら勝ち目がないからと、言いがかりはいけませんよ』

「言いがかりなんかじゃない。わざわざこんなところまで大勢連れて私たちを追いかけてくるなんて、はっきり言って非効率的で、いつものやり方とは程遠い。だからこれは、あんたの独断行為。でしょ?」

 

 時間があれば、鬼形カヨコはこちらの思惑に気づく。だから有無を言わさず迅速に制圧する必要があったのだが、その場にアビドス生がいたのがアコの計算外だった。そのせいで余計な時間を消費してしまったのだ。

 

「アビドスに足を運んだ理由は、ちょうど今世間を騒がす人がそこにいるから。アコ、あんたの目的はシャーレ。先生が目的なんでしょ?それなら、この大所帯にも説明がつく」

 

 内心奥噛みしつつも冷静を装っていたアコだが、ここまで当てられてしまえば眉間にしわを寄せざるを得ない。隠していた苦い表情を前面に出し、アコはため息をついて見せた。

 

『言い訳は無駄なようですね。はあ、貴方がいるとやりづらいです。ええ、確かに今回の風紀委員の遠征は、先生との接触が大目的です』

 

 便利屋は口実で、申請は出していない。風紀委員長を通さないとできないそれは、独断で動くためにはどうしても出来ないことだからだ。後は他の委員をまとめてアビドスまで赴き、便利屋をダシにして先生にも付いて来てもらう、というのが算段だった。

 

『ティーパーティーがシャーレに対する報告書を所有しているという情報を聞いたのが始まりでした。そこで初めて、私もチナツが書いた報告書を確認したのです』

「確認するのが遅くないですか……?」

「いつもの事じゃん、忙しいんだし」

『それによれば、連邦生徒会長の残した超法規的な部活の顧問を、大人が担当している……何をどう考えても怪しいと思いませんか?エデン条約に及ぼす影響も計り知れません』

 

 傍から見るのなら、先生という人物は相当な脅威に映る。学校にほぼ無制限に干渉することができるのだから。もちろん、実際に話せばそういう人物でないのは分かるだろうが、そう上手くいくわけもない。アコのそれはもっともな危惧だった。

 

『ですから、条約が締結されるまでは、私たち風紀委員の庇護下へ先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、居合わせた不良生徒を処理した上で。……アビドスの皆さんの苦労はお察しいたしますが、どうかご協力いただけないでしょうか?』

 

「(銃を向けて言うことかい)」

 

 もっともな危惧ではあるが、しかし手段が最悪であった。要らぬ反感を買うのは良い政治とは言えない。あくまで強硬という体を崩さない風紀委員に、ウツホは目を細めて口を開く。

 

「だってさ。どうする、みんな?」

 

 今の今までスピーカーモードにして通話状態のままにしていたスマホに語り掛ければ、後ろの方から声が返って来る。どうやら間に合ったようだ。

 

「そんなの認めるわけないでしょ、バッカじゃないの!」

「そうです!先生も便利屋も渡すわけにはいきません!」

「ん!」

『……あら、聞いていたのですね。話が早くて助かります』

 

 後ろを向けば、セリカ、ノノミ、シロコ、そして先生が。ホシノは不在だが、これで廃校対策委員会も集まった。アコは驚きはしたが、目標が自分から来てくれたため、優位は変わらないと思い直す。

 

『……アビドス廃校対策委員会の奥空アヤネです。先ほどのお話ですが……貴方たちのしていることは、明確な自治権侵害です。何にせよ認めるわけにはいきません。便利屋の処遇も、私たちで決めさせていただきます!』

『……そうですか。先生、貴方はどうでしょうか?』

「“ごめんね、今ゲヘナに行くことは出来ない。アビドスの子たちが困ってるからね。便利屋に関しても、アヤネと同じかな”」

 

 アビドス側からの、そして先生側からの拒否。アコはゆっくりと瞬きをして、敵を見つめた。緊張が高まる。誰もが引き金に触れていた。

 

『残念です。どうやら戦力行使が必要なようで。……風紀委員、攻撃開始』

 

不毛な戦いが始まる。

 

 




キャラが増えると私の脳みそは死にます。優秀な誰かのと変えてとは言わないから、外付けの装置が欲しい……
変なところがあればそれとなく教えていただけると助かります。ガバがない自信がないので。
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