それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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死人に口なし

 電車でギリギリ行けるところまで行けば、まばらに建った廃墟群が見える。そこからは徒歩だ。線路が先へずっと伸びているけど、いったいどこまで続いているのやら。案外砂漠の果てまで続いていたりして。

 

 そうして、私たちは捨てられた砂漠へと足を運ぶ。生命はなく、しばらく歩けばビル群すらなくなってしまった。そこにあるのは億を超えるだろう数の砂粒のみ。

 

 そんな辺境も辺境で、カイザーが企んでいることはなんなのだろうか。リゾート地でも作ってくれていたならいいが、絶対そんなことは無いし。足取りが重いのは気温のせいなのか、それとも。

 

 

 

「暑ーい!」

 

 ネクタイを緩めながらホシノがうだる。周囲を見れば、みんなも同じようにシャツ一枚になっていた。シロコだけはかたくなにマフラーを外そうとしないけど。見てるこっちが暑いので、流石にやめてほしいぞ。

 

 ちなみに先生は溶けかけている。冷たい水をくださいと呟きながら、手足をぶらぶらにして歩いていた。アゲハ蝶?

 

「でも、あんまり変わってないねぇ」

「ホシノ先輩、来たことがあるんですか?」

「生徒会として来て以来かな。その時は借金返済に使えそうな金目のものを探してて」

 

 歩きながら、懐かしむようにホシノが言った。こんなところに金目のものなんて埋まった金銀財宝くらいしか思い浮かばないが、昔のアビドスはそんなものまであったのだろうか。

 

「え、先輩も生徒会だったの?」

『確か、最後の生徒会の副会長だったとか……』

「と言っても名ばかりの生徒会だったけどね。私が入学した頃はもう生徒数も二桁でさ。教員もいなければ授業もないし、生徒会も私と生徒会長の2人だけだったし。……あの頃は二人してダメでねぇ。無鉄砲と馬鹿が揃ってめちゃくちゃって感じで」

「そこまで言わなくても……」

 

 ホシノは目を細める。穏やかに。普段なかなか自分の事を話さないホシノがこうまで饒舌になっているのを見ていると、なんだか終わりが近づいているようで。気温に反して、体内はうすら寒く感じた。

 

「……ホシノ先輩──」

「ちなみにもう少し進めばオアシスが!」

「えっ、ホント!?」

「まあ跡地だけどね」

「なんだぁ……」

「……昔は砂祭りなんてのもあったとか。他の学園からも人が集まるほどだったらしいよ」

 

 細めていた目が、違う色を帯びる。悲しみの色だった。

 

「あれ、ウツホ先輩は?所属してなかったの?」

「私は編入生だから、二年生からの人だよ」

「ほえー……よくアビドスに来ようと思ったわね」

「な、なんてこと言うんだセリカちゃん……」

 

 アビドス君の悪口はやめるんだ。まあもし進路希望調査にアビドスと書こうものなら大反対されるのは想像に難くないけどさ。

 

 というかセリカちゃんの発言、割とブーメランなんだけど、それは良いのか?私は訝しんだ。

 

 

『皆さん、前方に影を確認!……町のようにも、工場のようにも見えます……とにかく大きいようです!』

「なんでそんなものがこんなところに?」

「見間違いじゃなくて?」

『おそらくは……とにかく、肉眼で見えるところまで移動してみてください!』

 

 そう談話していると、アヤネちゃんが何かを発見したらしい。しかも大きなものだ。噂の大蛇とも違うらしく、私たちは警戒をしつつ歩を進める。しばらく歩くと、それが徐々にあらわになっていった。

 

 大きい、というのが最初の印象だ。アヤネちゃんの言う通り、町に見間違う程度には大きかった。しかしそう呼ぶには仰々しいもので、基地というのがぴったりな雰囲気をまとっている。

 

「なにこれ……」

「有刺鉄線が、数キロは続いてる……」

「……こんなところ、昔はなかった……」

「じゃあ、ここ二年でできたってこと?」

 

 十中八九ここが件の場所だろう。コソコソこんなものを建てているとなると、かなり怪しい。

 

『マークを確認しました!これは……』

「……『カイザーPMC』」

「じゃあ、ここが風紀委員長の言ってた所?」

 

 いよいよ核心に近づいて来たのかもしれない。アビドスの土地を奪い、何年もかけてまで進めてきたカイザーの計画が顔を出すのだろうか。何にせよ碌なものではないだろう。世界征服計画とか言われても驚かないぞ。

 

「……PMC。民間軍事会社の事です。訓練を受けた武力組織、それこそ軍隊のような。企業が不良や退学した生徒を雇っているという噂はありましたが……もしかして──!」

「な、なに!?何なの!?」

「まあ、バレるよね……」

 

 ノノミちゃんが言いかけたところで、けたたましい音が鳴る。それが警報と気づいた私たちが身構えていると、兵士と共に一人大柄なオートマタが近づいて来た。それが兵士たちの統率者だと一目でわかる程度には存在感がある。

 

「不審者がいると報告を聞いて来てみれば、これはこれは。アビドスの皆様方じゃないか。まさかこんなところまで来るとはな」

「……黒服といた奴」

「!」

 

 ホシノは確かに黒服と言った。つまり、アイツとカイザーはやはりグルということだ。強張る表情を制しつつ、オートマタの方を見つめる。一片の情報も聞き逃してはいけない。

 

「ゲマトリアが狙っていた副会長か……ふむ、いいアイデアが浮かんだ。便利屋やヘルメット団を使うよりも良さそうだ」

「……あなたたちは、誰ですか?」

「おや、私のことを知らんかね。アビドスの君たちならよく知っている相手だと思っていたが、まあいい」

 

 着ている暑そうなスーツを整えて、オートマタが発音する。

 

「私はカイザーコーポレーションの理事を務めている者だ。つまる所、君たちが借金をしている相手ということになるな」

「え、嘘っ!?」

「……ふむ。ここであったのも何かの縁だ。古くから続く借金についての話でもしようか、お客様?それを求めてきたのではないかね?」

 

 侵入してきた私たちに対して、理事は一見寛容にもそう言った。確かに、アビドスがわざわざ借金について直談判しに来た様にも見えるかもしてない。けれど、それがただのお話で終わらないであろうことはこの場の誰にも分かることだった。

 

「理事、ってことは。あなたがアビドスを騙して土地を搾取した張本人、ってことで良い?」

「そ、そうよ!ヘルメット団とか便利屋とかをけしかけてきたのもあんたってことでしょ!?」

「……まったく、ここまできて言うことがそれかね?口の利き方には気をつけた方がいい。ここはカイザーPMCが合法的に運営している場所で、君たちが不法侵入者だということを理解するべきだ」

「脅しつけて萎縮させるのが、あんたら流のお話?」

「おっと、失礼。そんな意図はなかったのだが。それに、事実は事実だろう?」

「……」

 

 シロコが切り込んだが、まるで効いていないという風に軽くあしらわれる。言う通り不法侵入は事実で何も言えない。軽く舌打ちをする。

 

「話を戻そう。土地の話だったな。ああ、確かに買ったとも。しかしそれは全て合意の上で、合法的なものだ。記録もしっかりとしてある。

 ……なんだ、君たちは生徒会の売ったこの土地で我々が何をしているか知りたいのか?いいとも、教えてやろう。いうなれば宝探しだ。このアビドス砂漠に眠っているというお宝をな」

 

 演説じみたしぐさで理事はそう言う。言うに事欠いて宝探しと来た。コイツは私らとまともに話す気なんてないのだろう、顔からは嘲りすら感じられる。

 

「んなこと信じられるかっての!」

「なら、この兵力は何?私たちの自治区を武力で制圧する気なんじゃないの?」

「……この基地には数百両の戦車、数百名の兵士、そして数百トンの爆薬や弾薬がある。それをたった五人しかいない学校のために用意しただと?馬鹿馬鹿しい。宝探しを妨害された時のためのものだ」

 

 鼻を鳴らしながら言い放ったその文言はもっともらしく聞こえる。おそらくはビナーへの対策なのかもしれないが、それでもその武力が私たちに向けられないという確信は持てない。

 

 そういった疑いを知ってか知らずか、理事は首を振って私たちに言って見せた。

 

「そんなものなくとも、君たち程度どうとでもなるのだよ。例えば、こういう風にな。……私だ……そうだ、進めろ」

「な、なに言って……」

「非常に残念なお知らせだ。どうやら、君らの学校の信用が落ちてしまったらしい」

 

 どこかに連絡をした後、わざとらしい演技をする。すると通信機越しに──アヤネちゃんのいるアビドス高校に電話がかかってきた。困惑しつつも受話器を取ったアヤネちゃんは、しかし次の瞬間声を荒げる。

 

「はい……え!?ちょ、ちょっと待ってください、急にどうして……」

「アヤネちゃん?」

「土地への不法侵入により、アビドスの信用ランクが下まで落ちてしまったようだ。それによって金利は3000%……来月の利子は9000万だな」

「は、はぁ!?」

「だが、これだけでは面白みに欠けるか……そうだな、借金に対する保証金ももらっておくとしよう。一週間以内にカイザーローンに三億円を預託してもらおうか。この利率でも返済ができることを証明してもらわねば」

「っ……!」

 

 横暴だ。そう抗議しようとしたが、しかしそれで状況が好転するとは思えない。敵の企みを暴くつもりが、逆に絶体絶命に突き落とされてしまったのだ。左腕が軋みをあげた。

 

『そんなお金、払えません……』

「なら、学校を諦めて去ればいい。必要なら転校の手続きも手伝ってやろう。もともと君らの借金ではない、学校のものだ。無理をして背負う必要はないだろう?」

「そ、そんなことできるわけないじゃないですか!」

「そうよ!私たちの学校なんだから、見捨てられるわけないでしょ!」

「アビドスは私たちの街で、私たちの故郷だから」

「ならどうするんだ?ほかに良い手でもあると?」

 

 それを言われるなり、みんな黙ってしまった。そんなもの、思いついていないのだ。それに、客観的に言えば理事の言い分の方に利があるだろう。

 

「……みんな、帰ろう」

「ホシノ先輩」

「ここで言い争っても意味ないよ、弄ばれるだけだ」

「……そうだね」

 

 しばらくの沈黙を経て、ホシノがそう言った。怒りと無力感を飲み込んだような表情で。

 

「ほう、副生徒会長。流石に君は賢そうだな。妹の方もよく分かっている」

 

 どうやら煽り足りないらしい。ホシノと二人で睨む。

 

「おや、知らないか?なら教えてやろう。君の姉は目先の謀略も解さぬ癖に出来もしない理想を掲げた大馬鹿者だったとな!」

 

 

「では、保証金と来月以降の借金についてはよろしく頼むよ、お客様。ふははははは!!」

 

 

 

 

 

 ほとんど喋ることも無く、私たちは学校へと返ってきた。教室に入るや否や、セリカちゃんが机に拳をたたきつける。鈍い音が室内に反響した。

 

「もうっ!!何なのよ一体!!」

「結局、カイザーの企みは分からなかった」

「宝探し、と言っていましたが……」

「十中八九でたらめよ、あんなの!」

「それよりも、借金が……利子が3000%にもなって、しかも一週間以内に三億円も用意しないといけないなんて……」

 

 再びの沈黙。さっきよりも重く苦しいもので。みんな一様に暗い顔をしている。シロコが口を開いた。

 

「……明日もう一度、PMCの施設に侵入してくる。なにが目的か掴んで見せる」

「し、シロコ先輩!?まずは借金をどうにかしないと!」

「……もう、まっとうなやり方じゃ返済は出来ない。別の方法を……それこそ、銀行強盗でもするしかない」

「だ、駄目です!そんなことをしたら、あの時お金を捨てた意味がありません!」

「でも、学校がなくなったら終わりなんだよ!?なりふり構ってられない!私は賛成!」

 

 結局私たちにどうにかできる問題ではなかったのかもしれない。不相応な重荷を背負ってしまったんだ。どうすればいいか考え込んでいると、横から声が聞こえた。

 

「はいはいストップ、そこまで!みんな頭から湯気が出てるよ」

 

 声の主はホシノだ。いつも通りのやる気がなさそうなものだったが、少し固いもので。なにより、表情がひどかった。……私のするべきことが決まった。

 

「うん、いい子だね。とりあえず今日はこの辺にしとこう。一旦頭を冷やして、明日改めて考えよう!あ、これ委員長命令ね」

「“……そうだね。みんな、とりあえず今日は帰ろう”」

 

 ホシノの言う通り、みんな冷静さを欠いている。時間をおいてもう一度話し合った方が良いだろう。最近こんなのばっかだが、仕方がない。しばらくすれば空も赤みがかっていき、みんな学校を後にしていく。

 

 

 

 少しアヤネちゃんと話した後、私もいったん帰ろうと荷物を取りに教室に戻れば、まだホシノとシロコ、先生がいた。

 

「シロコ、帰らないの?」

「ん。ホシノ先輩と話したいことがあるから」

「“私も”」

「え、二人しておじさんと?うへ、モテモテだね、照れちゃうかも。でも、今日は疲れたでしょ?大体どんな話かは分かってるから、また明日にしよう」

 

 のらりくらりと躱すのも難しくなってきたようだ。それとも、ホシノも考える時間が欲しいのか。……それはないなと思いなおす。むしろ逆なのかもしれない。

 

「……うん。分かった」

 

 シロコが不満げに頷いた。かたくなに教えてくれないことを悲しんでいるようにも見える。蚊帳の外にするのは申し訳ない。

 

 先生の方を向けば、私たちに目配せをしてくる。自分に任せてほしい、ということだろう。シロコがもう一度頷き、私たちは学校を後にした。今日は忙しくなるだろうし、先生に甘えてさっさと家に帰ることにしよう。

 

 




少しずつ頻度を戻していきたい所存ですので、よろしくお願いします。
これでまた期間が長い事空いたら低評価かましてお気に入り解除してもらっても構わないです(制約と誓約)
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