それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

35 / 37
涙の色 誰もかれもが同じ色


我らアビドス廃校対策委員会

「……う」

 

 目を開けると、知っている天井。どうやらここは保健室らしい。外はもう明るくなっていて、室内に日差しがが窓から差し込んでいる。眩しい。目を細めながら、体を起こす。

 それにしても、私はどうしてこんなところに。昨日はどうしたんだっけか。家に帰った後、準備をしたんだ。何の?……止めるための。……誰を?

 

「やばっ」

 

 記憶の糸をたどり、ホシノを止めようとしていたことを思い出した私の眠気は吹っ飛んだ。がばりと起き上がってみれば、それと一緒に布団がはだける。崩れた制服と服の焦げ跡、そして鈍い痛みが、昨日の戦闘が夢でないことを教えてくれた。

 

 きっとあの後、ホシノが私をここまで運んだのだろう。私は負けたんだ。そして、あの子は行ってしまった。最後の機会を逃してしまった。布団を掴む手の力が抜けていく。

 

「ん、起きた?」

「うわあ!!……シ、シロコ……」

 

 鳴き声に右を見ればシロコが、カロリーバーを頬張りながら椅子に座っていた。なんだか不満げな目をしている。凄く不満げな目を。……分かる、なんとなく分かるが。私は目を伏せた。

 

「えっと……」

「どうして私が怒ってるか、分かるよね先輩」

 

 シロコは身を乗り出して、私の手に触れた。きっと、咎めるような視線をしているだろう。顔を見る気になれず、視線を布団へと遊ばせる。ホシノを止められなかった不甲斐なさを隠すように、私は誤魔化した。

 

「……ドローンを勝手に使ったこと……」

「違う、私に抱き枕を使わせたこと」

「は?」

 

 ……聞き間違いか?聞き間違いだよな?今どうでもいい点で怒られた気がするけど、流石に私の耳がおかしいだけだよな?思わずシロコの方を見ると、悲しい顔をしていた。

 

「あと、私に何も言ってくれなかったこと」

「……うん」

 

 ……そりゃそうだよね。申し訳なくって、私はまた目を逸らす。誰かと一緒に……せめてシロコに手伝ってもらった方がいいのは明白だった。それでも一人で止めに行ったのは、私のエゴだ。どうしても、自分の力で止めたかったんだ。だから、シロコには怒る権利がある。

 

「罰として一時間は腕を使わせてもらう」

「え、いや、もっとあるでしょこう……あっコラ狭いって!やめんか!」

 

 どうしてそうなるんだ。やめんか、保健室のベッドは家のよりも狭いんだぞ。

 

「楽しそうだねぇ二人とも」

「楽しくないわァ!ホシノもこれ引きはがすの手伝──」

 

 何を言ってるんだと文句を言おうとして、私は声の主の方を見る。ピンク髪の生徒──そうだね小鳥遊ホシノだね。──が、横のベッドに座ってこちらに苦笑を向けていた。…………!?!?

 

「あホォ!!?」

「悪かったねアホで」

 

 違う!そうだけどそうじゃない!

 

 

 

 

「え、えっと。なんでまだここに?」

「……君に言われて、ちょっとね」

 

 攻防の末右腕を人質に取られてしまった私は、いやこんなどーでもいいことをしている場合ではないと*1ホシノに話しかける。実は幻とかなんじゃないかと思ったが、普通に頬がつまめるので実体だ。つまんだら変な顔をされたけど。

 

 黒服がホシノに自分と同じような提案をしており、おそらくホシノはアビドスの保護を対価にそれを受けようとしている、というのが私の推理だった。素人考えだけど、そう大きく外れてはいないだろうという自信はある。

 

 だからこそそれを止めようと、最後は学校に来るだろうことを予測して張り込み、言葉では止まらないだろうからと力づくで止める算段を必死に考え……そして私は負けた。なのにまだホシノがいるというのは、不思議な感じだ。私の言葉が届くなんて、正直思っていなかったわけだから。

 ……夢じゃないよね?確認するように頬を伸ばした。ホシノのを。変な顔をされた。

 

「ああまで食らいつかれるとは思ってなかったよ。そんなに寂しかった?」

「え゛。うーん……まあ、ほら、出来るならやらなくっちゃね」

「……そっか」

 

 昨日に比べ少し調子が戻ったらしいホシノはそう言った。どうやらあの時の独り言は聞かれていたらしい。恥ずかしい限りである。誤魔化した後ホシノの頬を弄り倒した。……おっ面白い顔、写真撮っちゃお──

 

「で」

「ひぃん!」

「私を除け者にしてまでイチャイチャしてたんだし……昨日の約束通りちゃんと話してくれるんだよね、二人とも」

「うへ……」

「はいっス……」

 

 手を肩に置き真横から見てくるおこモンティスシロコの圧はすごかった。ちびりそう。でもイチャイチャではねえよ。

 

「皆さん、いるんですか!?壁に穴が……!」

「あっアヤネちゃん助けて!」

「……ええ……?」

 

 ちょうど登校してきたアヤネちゃんが見たのは、間抜け面のホシノ、半べそかいた私、そしてそれにベッタリくっついてガン見するシロコだった。これが修羅場という奴だろうか、恐ろしいもんである。

 

 

 でも、良かった。

 


 

 

「それでは、廃校対策会議を始めたいと思うのですが……その前に、シロコ先輩が」

「ん」

「どうかしたの、シロコ先輩?保証金のことよりも重要なこと?」

「うん。ホシノ先輩たちが」

 

 少し時間が経過して、他の皆も登校して来たのち、私たちは昨日の金利つり上げの対策について話し合う……のをシロコが遮る。みんなの前で自白しないと駄目と言われた私たちは、なんとも気まずいものを抱えながら席に座っていた。

 

「そう言えば……二人とも服が汚れてますけど、何かあったんですか?」

「まあ、その……喧嘩したんだ、ちょっと。ね」

「え!?」

 

 続きを促すようにホシノを見れば、気まずそうな顔をして黙っていた……が、シロコにジト目で睨まれ続け十数秒、堪らなくなり観念したホシノは昨日の出来事について話し始めた。

 

「……先生にも言ったけれど。私はずっと、カイザーの……黒服っていうやつから勧誘を受けてたんだ。私の身柄を渡せば、アビドスの借金を半分負担してくれるって条件で」

「で、それに乗って昨日の夜退学届けを出しに来たホシノを止めるために喧嘩したってわけ」

「なっ、バッカじゃないの!?そんなの……生贄みたいなものじゃない!」

「……私たちのいない間にそんなことが……」

 

 寝耳に水だったみたいで、後輩達はどちらかというと困惑の方が勝っている感じだ。ただ一人、険しい顔のシロコを除いて。

 

 

「何かあることは知ってたけど……そう言う事だったんだね。ホシノ先輩は、自分を犠牲にして私たちを助けようとしてくれてたんだ」

「シロコちゃ──」

 

「でもそんなこと、私たちが望むと思う?」

 

 口調は静かだったけど、それでも激情を乗せた声色だった。怒りと、そして悲しみを。

 

「……でも、もうこれしかないよ。それに、私一人が行けば」

「もしそれで全部丸く収まるんだとしても、私はホシノ先輩を……他のみんなでも、犠牲にしてでもそうしたいなんて思わない」

 

 表情を歪めて、シロコはそう言った。ホシノの肩に手を置いて、そのままうずくまる。……その姿は、縋っているようにも見えた。

 

「みんながいなきゃ嫌だよ。一人も欠けちゃ駄目。私は、みんなと一緒がいい……」

「……シロコちゃん」

 

 シロコの吐露を聞いて、ホシノはぎこちない仕草で後輩を抱きしめた。寂しがりの狼の言葉は、随分と効いたようだ。

 

 

「ホシノ先輩」

 

 次はノノミちゃん。優しい表情で、諭すように続けた。

 

「先輩のおかげで、今のアビドスがあります。私はその苦労を全部知ってるわけじゃありません。けれど……もっと頼ってほしいんです。重荷を分けてほしいんです。先輩はもう一人じゃありませんよ。だって、私たちがついてますから!」

 

「ノノミちゃん……」

 

 少し照れ臭そうに、ノノミちゃんはそう言う。言葉を飲み込むホシノの口元が歪んだ。

 

「そうよ!もっと信じてくれてもいいじゃない!……まあ、私はそれで騙されてばっかだけど……」

「あはは……でも、私達だって弱いままじゃないんですよ、ホシノ先輩」

「セリカちゃん、アヤネちゃん……」

 

 セリカちゃんとアヤネちゃんも、力強く応える。芯の通った瞳だ。私には少し眩しかった。

 

「強い後輩達だよ、ほんと」

「……うん。うん……!

 

 目端から光るものを流しながら、ホシノは満面の笑みで頷いた。この子の純粋な笑みは初めて見たかもしれない。

 素敵な後輩を持ったね、ホシノちゃん。

 

 

 

 

「“えーっと……二人とも、それは……?”」

「罪と罰です……」

「そんな仰々しい言い方しないでも……」

 

 少し時間をおいて、会議が再開し。ちょうどいいタイミングで来た先生が、私たちにぶら下がったプラカードを見て困惑していた。「それはそれとして」という文言と共に説教を食らった私たちは、「私は独断専行をして委員会に迷惑を掛けました」と書かれたものをぶら下げることを強制されていたのだ。このまま市中を回ったら許してくれないだろうか。ダメ?そっか……

 

 とりあえず、先生にもあらすじを共有しておいた。すると、しばらく考え込んだのち、叱るでもなくただありがとうとごめんねを言われるのみ。何に対してなのかはなんとなくしか分からなかったけど、それはむしろこちらのセリフな気がする。不真面目な生徒ですまない。でも後悔はしてない。だから頼むみんな、その拳を下ろしてください。

 

「それにしても、昨日爆弾の設置場所を聞いて来たのはそう言う事だったんですね……」

「ごめんね、勝手に使っちゃって。壁も壊しちゃったし……」

「いえ、予想とは違いましたけど、役に立ってよかったです。それに、これくらいならすぐ直せるので大丈夫ですよ」

これくらいならすぐ直せるので大丈夫ですよ???

 

 そっか、あれくらいならすぐ直せるのか…………混乱してきたのでとりあえずはそういうものなのかなと思うことにしよう。私よりアヤネちゃんがいた方がよっぽど安泰だと思うよ、マジで。

 

 

 ということで、長い前振りを経て、ようやっとカイザーをどうにかするための会議が始まった。こっちだって学校の今後がかかっているのだ、潰す気で行かねば。

 

「でもなんにせよ奴らの狙いが分からないと。宝探しはまあ、ないとして」

「やっぱり土地……と言ってももう、学校とその周辺くらいしか残ってないけど……」

 

 まずはあちらの思惑からだ。宝探しをまともに受け取る気はもちろんない。ホシノは確定として、それなら卒業してからでも良いだろう。まだ何か目的があるはず。

 

 昨日金利をつり上げたのは、焦っているからと取ることもできる。……上からの催促とかだろうか。だとするとやっぱり、消去法で土地くらいしか無かった。アビドスって碌な物無いな……

 

「まあ、それくらいしかないよね。やっぱり昨日した金利の引き上げで返済できないようにして、そこを差し押さえる……とかかな?」

「“……少し違和感がある、と思う。調べたけれど、学校の明け渡しはその校の()()組織が行って、連邦生徒会にも書面を出すみたいなんだ。でも、それだとカイザーからすれば面倒なんじゃないかな。”」

「連邦生徒会も、こういうのには黙ってないということですか?でも今更な気がしますし、それにカイザーの好きな『あくまで合法』の範疇なんじゃ……」

 

 割と毒のある言い方をするノノミちゃんだが、実際キヴォトスの中心的存在である連邦生徒会の腰は重い。*2我ら田舎のアビドスはその恩恵を感じたことがあまりないし。

 

「“それはそうなんだけどね。でも、ここまでのカイザーの周到さからすると、まだ何かあると思うんだ。あまり公にしたくない感じもするし……面倒な手続きを飛ばす方法を計画していて、差し押さえはせめて予備策。そんな感じがして……だから──”」

「……!先生、もしかすると……ホシノ先輩を引き抜こうとしたのは、そういう意味……?」

「どういうこと、アヤネ?」

「……実は廃校対策委員会は、生徒会からの承認がされてないんです。つまり非公認組織で、突き詰めると私たちには権力はないということに……」

「は!?それどういうことよ!」

 

 先生は頷く。言いたいことをアヤネちゃんが察してしまったみたい。とんでもないなこの子。

 

 しかしそんなことを言っている場合でもない。つまり、私たちは勝手に学校の方針を決めているサークルみたいな感じということだ。今は生徒会最後のメンバーであるホシノがいるけれど……

 

「つまりホシノさえ抜き取ってしまえば、私たちは非公認組織。ほとんど幽霊みたいなもので……そしてアビドスは空の箱同然になるってこと……だよね?」

「はい。存在しないのと同じ……そういう解釈ができると思います。そしてそれなら、面倒な手続きをする必要はない……なぜなら、その学校はもう()()から」

「そんな……これだと連邦生徒会は、動いてくれないの?」

「持ち主のいない土地は、彼ら(連邦生徒会)の管轄なのでは……?」

「少なくとも、気づくのに時間がかかると思います。その間に不都合な証拠は消されてしまう可能性が高いです」

 

 公認組織の無い学校は学校ではないという事だ。学校ではないなら通っている生徒は不法侵入者と変わりないだとか、色々文句がつけれてしまうだろう。なんともいえない気分になる。

 それに、バレなければ犯罪じゃない、というやり口はブラックマーケットでも見た。同じようなことをしてくる可能性は高いだろう。ターゲットにされているホシノもこれらのことはさすがに初耳なようで、大きく目を見開いてうろたえている。

 

「……私、そんなことを見落として……」

「“ホシノが悪いわけじゃないよ。……悪いのは、それを悪用しようとする大人だ”」

 

 悲観に暮れるホシノを、先生が慰めた。……あの人の怒った顔を初めて見る。すごい覇気だ。でも、私も同じ気持ちだ。狡い手を使いやがって。

 

 

 ともかく、思惑は見えた。それを潰すなら、つまるところ対策委員会を公認組織にしてしまえばいい。とってもシンプルだ。でも……

 

「……でも、それだと借金の問題はそのまま」

「そう、ですね……」

 

 そう、そこが問題だ。金利が吊り上げられたままだと、たとえ対策委員会を公認組織にしても、結局お金が払えないということになってしまう。

 カイザー側に直談判しても、のらりくらりと追及を躱されてしまうだろう。明確明白な違法行為を突きつけでもしない限りは。……ちくしょう、変に突っかかるんじゃなかったよ。後悔しても遅いんだけどさ。

 

「この不正の記録を突き付けて説得する、とか?」

「脅しじゃない!いや、確かにそれくらいしかないかもしれないけど!」

「強盗で手に入れたものですし、そこを突かれると弱いような気も……」

「じゃあ、私たちはカイザーがポカするのを祈りながら待てってこと?納得いかない」

 

 集金記録をピラつかせてシロコが提案するが、アヤネちゃんの言う通り入手法を問い詰められると不味いだろう。さらに金利が増えるのはゴメンだ。

 しかしシロコの言う通り、あっちが勝手に失敗するのを待つのも得策とは言えない。どうにか誘発させたり出来るなら、話は別だけど……

 

「……待てよ」

 

 さっきの予想通りならば、カイザーはホシノがいなくなった後学校を奪りに来る、ということなはず。私たちがいる場合は排除しにかかるだろう。これを利用することができれば、なんとかなるかもしれない。けれど、これは……

 

 

「ウツホ」

 

 ホシノが、私のことを呼んだ。これで二度目だ。一度目と違うのは、芯の通った声で呼ばれた事。

 

 私と同じことを考えたのだろうか。ホシノの瞳は真っ直ぐで、すでに決意を固めているようだった。そうか……なら、私も覚悟を決めないと。

 

「……一つ、思いついたんだけど」

「ホント!?……って、すごい顔してるけど……」

 

 そりゃとんでもないこと言おうとしてるからね。頬を叩いて深呼吸をし、口を開いた。

 

「……ワザとホシノの身柄を渡してカイザーにアビドスを攻撃させて、その後反撃してホシノを救出する……っていう作戦」

「……いやダメでしょ!?どう考えても危険じゃない!」

「そうです!ワザとホシノ先輩を行かせるんですか!?」

「それしかないとは言いたくないけど、これならカイザー側に非をおっ被せることが出来るし、連邦生徒会も重い腰を上げると思う」

 

 セリカちゃんとアヤネちゃんは即座に否定する。当たり前だよね、自分らの長を囮にするということなんだから。しかも元々ホシノがやろうとしていたことだ、一度止めた事なら尚更だろう。

 シロコとノノミちゃんはだんまりだった。頭の中で考えているのか、呆れて物も言えないのか。

 

「“……ホシノは、どう思う?”」

「……うん」

 

 先生が、静かに尋ねた。ホシノは一度頷いた後、口を切る。

 

「私は大丈夫。むしろやらせて欲しい」

「で、でも!」

「もちろん自棄なんかじゃないよ。確かに危ない賭けだけど、勝機はある。……みんながいるから」

「ホシノ先輩……」

「私のことを信頼してくれたでしょ?だから私も、みんなの事を信じたい。みんなの事を頼りたいんだ。だから……

 

 私のことを助けて欲しい。そして、アビドスを……私たちの居場所を守るのを、手伝って欲しい。……ちょっと恥ずかしいね、たはは……」

 

 今の言葉は紛れもなく本音だろう。言い終わった後、ホシノは頬を赤らめて頬をかいた。締まらないけど、むしろそれが私達らしいのかも。

 

「……分かった、分かったわよ!やればいいんでしょ!」

「うう……曲げませんね、これは。ならせめて、万全の準備を」

「私達が失敗しなければいいだけの話。絶対に勝つ」

「そうです!今までの借りを全部返しちゃいましょう!」

 

 四人も一応納得してくれたみたいだ。やんややんやと、作戦の詳細を詰め始めている。早いね。でも必要不可欠なことだろう。準備しすぎるということは無い。最悪命を懸けることになるかもしれないわけだし。

 

 私が代わりになれればよかったんだけどね。ホシノが位置特定できるだろうし。……あれ、意外と行けるんじゃないか?いやしかし……

 

「私がやるから意味があるの」

「うっ。読心術……?」

「意外とわかりやすいよ?」

 

 ずいと近づいてくるホシノには、考えていることがバレているみたい。苦笑いで答える。

 

「……本当は、怖いんだ。みんなを疑ってるわけじゃ無いけど……次また失ってしまったら、今度こそ耐えられないと思うから」

 

 自分の心配をしろと言いたいけど……とてもよく分かる。失うことは怖い。なるべく自分の手元に置いて守りたいと思うのも仕方のないことだろう。けれど。

 

「大丈夫。アヤネちゃんが言ったように、私達は弱くないよ」

 

 母曰く、子供というのは知らぬ間に目を離した隙に階段一つ二つ分も成長していたりするらしい。自分ではあまりそんな感じはしなかったけれど、こうして後輩を見ていると、少しわかる気がする。

 

「……そうだよね、うん。分かってる。……よし!私も勇気を出さないとね。みんなを信じる!だから──」

 

 背筋を伸ばしむんと気合を入れたホシノは、こちらの方を向いて私にある物を差し出してきた。

 

「お願い。後輩を守ってあげて」

 

 それは、ホシノがいつも使っている盾。あまりまじまじと見たことはなかったけれど、所々に傷や凹みがあって、長く使われてきたことが伺える。

 これで何度も後輩たちのことを守ってきたんだ。小さな身体で大きなそれを持ち、多くを防いできた。それを一時的とはいえ預かるというのは、とても大事な意味を持つ。

 

 でも、受け取るのに躊躇はなかった。預けてくれるということは、そういうことなのだから。なんだか、ようやく一員になれた気がして。

 

 だから私はこう言うのだ。自信ありげに、笑みを携えて。

 

「任せて」

 

 

 

*1
「ん?」

*2
先生率いるシャーレは連邦生徒会でも例外らしい。……面倒くさそう。




次回は足舐めその他諸々です。多分短編集みたいになります。許して……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。