それ逝け!ユメ先輩(偽) 作:ポンコツ太郎
ところでこれ曇らせタグが必要なんじゃ?
「いやあ、ちょっと乱暴だったかな……」
ノノミちゃんが自称強盗の片割れ、おっきい方の子をダウンさせた後、私はちっちゃい方の子を相手していた。積もった砂を投げて目を潰したのはいいけど、格闘がおざなりだね。腕を掴んで投げれば、窓を破って校舎裏の自転車置き場に飛んでいっちゃった。や、やりすぎたかも。
ともかく吹っ飛ばしたところまで行ってみれば、観念したのか大人しくしている覆面の子。それを取れば、犬耳のついた顔が出てくる。だいぶ幼く見えるけど……でも会話を聞いた限りはこっちの子の方が計画してるんだよね。いやあ、人は見かけによらないね。
「えーっと。君、名前は確か……」
「サンドウルフパイジ」
「嘘だよね?」
名前を聞いたら絶対今考えただろう全く聞いたことのない横文字が飛び出してきた。なんじゃそりゃ。
「………………シロコ。砂狼シロコ」
「うん。シロコちゃんっていうんだね。おじさん、あんまり強盗はよくないと思うなぁ」
「むう……」
不満げに視線を落とすシロコちゃん。そんな顔してもダメなものはダメだよ。
「それで?強い人にしか従わない、だっけ?」
「……ん」
「じゃ、付いてきて」
「……監禁してボコボコに」
「いや、しないよ……」
言うことを聞いてもらおう。暗にそう言うと、ビクッと肩を震わせそう言うシロコちゃん。別に乱暴するつもりはないんだけどね……まあ、あんまり説得力はないかも知れないけど。
「はくちゅん!」
「ヹっ」
連行しようと手をつかむと、寒かったのかくしゃみを一つ。……鼻水が飛んできたんだけど。うへぇ。そんな薄着じゃそうなるだろうけどさ……とりあえず鼻をかませて、自分のマフラーをかけておく。
「……はい」
「?」
「これ、巻いておきな〜」
「………うん」
思いのほか素直に言うことを聞いてくれた。首にしっかりと巻かれたマフラーを見て、とりあえずこれで良しと、手を握り校舎内へと向かう。
「……あったかい」
「あっ、ホシノ先輩!もう1人は……」
「確保してきたよ〜、ほれ」
「……ん」
校舎に入れば、学園祭事務局の前にノノミちゃんともう一人の子の姿が見える。二人はこっちを見ると、安堵したような表情を浮かべる。……ノノミちゃんはともかく、君は違うんじゃ……?
「良かったよ、捕まって。ここで確保しないと何しだすか分かんないからね」
「ん!!!!」
「あいてててて」
覆面の子がそういえば、シロコちゃんにポカポカと殴られている。仲良いね君たち。
と、そんなことよりも。2人に服を見繕ってあげないとね。1人は薄布一枚、もう1人は血まみれ。一体どうしてそうなってるのかは分からないけど、見ているこっちが寒いしね。
「とりあえず、その教室に服があるだろうから、シロコちゃん──この子にそれを着せてあげて。おじさんは……この子とお話ししないといけないからさ」
「う」
「うぇ、せ、先輩」
「頼んだよ〜」
ただ、その前にこの子から話を聞く必要があるけど。
2人を事務局の中に押し込みながら、もう1人の方を見る。左腕がなく、乾いた血まみれの服を着ているその子。確か、アホ毛って呼ばれていたような。……なんで?
上体を起こして、覆面越しにこちらを見ているその子は私と2人になるなりその身を縮こまらせた。君もか。まあ無理もないかもしれない。
「いや、ちょっと聞きたいことがあってね。……その制服、うちのなんだけどさ……君、何者?」
最初から疑問に思っていた。それはこの子が着ている服。血まみれで汚れているそれは、うちの──アビドスの制服だ。……今更戻って来た子なのか、それとも勝手に使っているだけなのか。どちらにせよ、確かめないといけない。
「うぐ……えーっと、そのぉ……それを確かめにきたと言うか……」
聞けば言いにくそうに言い淀む覆面の子。バツが悪そうに指で覆面をいじりながら、よく分からないことを言う。
でもその姿を見て、私は言い得ぬ嫌な予感がした。その顔を見てはいけない気がして──でも、見なきゃいけない気がして。
「……ふーん?まあ、とりあえずその覆面を…」
「ちょっと待って!取る……自分で取るよ」
とにかく顔を見てやろうと私が覆面を取ろうとすると、観念したかのように自分で覆面をとり始めた。長い髪をしまっていたようで、外すと同時にぼさぼさのそれが──
「…………え」
──それを見た瞬間、時が止まったような気がした。音が一切聞こえなくなって、心臓が跳ねるような、体が芯から冷えるような感覚。目の前の光景を、自分の目を、信じることができなかった。嫌な予感が、最悪の形で当たったんだ。
長い青緑の髪も、目の色も、鼻も耳も口も──かつて見たあの人そのもので。でも、おかしいじゃないか。だって、だってあの人は……
意味が分からない。視界が揺らぐ。指が震えて、唇が震えて……ようやく絞り出したのは、ただの一言。
「ユメ、先輩?」
会えるかもとは思っていた。会ってしまえば、後戻りできないだろうとも。
「…………え」
ピンク髪の子が固まる。今の今まで懐疑的だったその表情が驚愕に染まって、震える唇を必死に結んでいる…………どうやら、この子がそうらしい。大当たりとみるか、それとも大外れとみるか。顔を見た限りでは、分からない。
「ユメ、先輩?」
「違うよ」
ユメ先輩──この身体の持ち主の名前を呼ばれる。期待と、恐怖と、疑念が混ざった声。でも自分はすぐに否定の言葉を口に出していた。ここで頷くのは冒涜だろう。それだけは否定しないといけないし、黙っていた分だけ言いにくくなる。だから、すぐに言った。
「……う、嘘、ですよ。ウソですよね、先輩。いつもみたいに、私を揶揄ってるんでしょ?あ、あれだって」
「……嘘じゃない。まず、私は君のことを知らない」
「……っ」
苦し紛れ。目の前の光景を、誰とも知らない奴が入っているのを認めたくないのか、そんなことを言ってくる。それを否定すれば、今にも泣きだしてしまいそうに顔を歪ませて。
ああ、この子はきっとこの身体の子と親しかったんだろう。全く嫌になる。ここに来たのは早計だったのかもしれない。これ以上見ていられず、思わず目をそらしてしまう。
「もしかして……せ、せんぱ……記憶が……」
……ああ、いいなその嘘。記憶がなくなってしまったと言うだけでいい。この場を上手く収められそうな、拗れることも少なそうな良い案だ。いっそそういう設定で通した方が都合が良い………………
「…………違うよ、そういうことじゃない」
口を開いて、閉じて。そしてもう一度開いて、でも出てきたのはやはり否定の言葉だった。それを通せるほど、自分の肝は太くない。……それに、この子にその嘘はついてはいけないと、なけなしの良心が言った気がしたから。
「え……ご、ごめんなさい。やっぱり怒ってるんですよね。私が、私があの時っ」
「君も……分かってるんだろ」
「え?」
呆けた声を出すピンク髪の子。どうやら無意識でそうしているらしい。頭のどこかで、本当は分かっているんだろうに。それが自分には、あまりにも残酷なものに見えた。
「だって……
さっきからずっと、銃口向けっぱなしじゃないか」
「…ぁ……」
最初にこっちの顔を見た時からずっと……震えながら、でも確実に。ショットガンの口がこちらを向いていて、引き金に指がかかっている。彼女は気づいているんだ。今目の前にいる梔子ユメが本物ではないと、とっくに。
言われて、右手の方を見て。構えていることに気づいたピンク髪の子の顔に浮かぶのは困惑、恐怖、そして…………色の違う双眼が爛々と輝き、こちらを射抜いてくる。そして低く、かすれた声で。
「じゃあ……じゃあ、誰だよ…………?」
「……………………」
どうせもう終わりだ。ここまで来たんなら、覚悟を決めるしかない。
「偽物かな───っ!?」
瞬間、破裂音とともに体に衝撃が走って、視界がぐるりと回る。どうやら撃たれたらしいと、そう気づくのに数秒かかった。……なら、なんで生きてるんだ?そう疑問に思ったのもつかの間、今度は襟元を掴みかかってくる。こちらを睨みつつ揺さぶってくる。
「ふざけんな!ふざけるなよ!!」
「ごめん」
謝罪の言葉を口にすれば、彼女の顔が歪む。仇を見るような、もしくは縋るような顔。
「っ...!どうして!!」
「分からない」
どうして自分だったのだろうか。全く見当がつかない。
「どうやって!!!」
「分からない。……気づいたら、こうなってた」
どうやって入ったのだろうか。それも知らない。
「なんでっ!!…………なんで……?」
「…………」
なんで。なんでユメ先輩本人じゃないのか。襟をつかむ力を弱めて、俯きながら言うこの子を見て、何も言えなかった。何も分からなかった。
「返して……返してよ。ユメ先輩を……返してよ……」
「できるなら、そうしてるよ……」
「っ……うぁ……うあああああ!!」
そのまま、ピンク髪の子は決壊してしまった。顔をうつ向かせて叫んでいる。周りは嫌に静かで、ただこの子の慟哭だけが校舎に響いていた。
何て声をかければいいのか、自分には分からない。右腕を背中に回してさする。途中から心配そうに教室の扉から覗き見ている2人に目配せして、邪魔をしないように頼む。そんなことしかできない。来ない方がよかったのか、嘘をついた方がよかったのか。何も分からなかった。
酷く風が冷たくて、心まで凍ってしまったようで。周りは嫌に静かで、ただこの子の慟哭だけが校舎に響いていて。
それをただ聞くことしかできなくて……しかしそれも聞こえづらくなっていく。耳鳴りが鳴っていた。しかも目が震えて、だんだんと視界がぼやけてくる。
なんでいきなり、と考えて、そういえば撃たれたんだったかと思い至る。でも、こんな時間差で──いや、空腹のせいか──それとも、血でも足りないのか──
「……ぁ……?」
「……!────、──────!」
瞼が重くなって、息が荒くなって……そのまま、目を閉じて……
「……う」
次に目を開けると、知らない天井。外はもう暗くなっていて、暗い室内に月明かりが窓から差し込んでいた。はて、どうしてこんなところに。……って、そうだまずい、まだ説明しきれてない!
「あの子は」
がばりと起き上がってみれば、それと一緒に布団がはだける。制服が綺麗になっていて、右腕には点滴が刺さっていた。誰かがやってくれたのだろうか。
「じゃない、とにかく」
「起きた?」
「うわあ!!…………えっと、はい」
いきなりした声に驚いて横を見てみれば、椅子にピンク髪の子が座っていた。気配がしなかったような……ともかく落ち着いたようで、会話することは出来るはず。警戒は解かれていないだろうけど。
「ああ、ここは保健室だよ。君は多分貧血と、栄養失調」
「そ、そっか。……あ、シロコは?」
「あっち」
言われた方を見れば、別のベッドでシロコが眠っていた。今度は寒くなさそうだ。少し安心する。……なんでマフラーを巻いたまま寝てるんだ。
「…………」
「…………」
「……夢じゃ、ないんだよね」
「うん。申し訳ないけど、私は梔子ユメじゃない、偽者だよ。分かるだろうけど」
「……そう、だね。ユメ先輩は、そんな目つきじゃない。声だって低いし」
沈黙の後、改めてそう言えば苦い顔をしてそう呟くピンク髪の子。やっぱり、親しい人には分かってしまうようだ。そんな質のお芝居では、どうせすぐにばれてしまってただろう。
「気がついたら砂漠の廃ビルに居て、この子に入ってたんだ。どうしてとかどうやってとかは、分からない。後はビルに落ちてたこれを頼りになんとかここまで来たっていう感じで…シロコに助けられてだけどね」
「……学生証」
ポケットに入れていたそれを渡すと、懐かしむような、それでいて訝しむような瞳で、プリントされた写真をじっと見つめている。そしてしばらくそうした後、再びこちらを見てくる。言葉を待っている。そんな気がした。
「私がこれからどうなるかは、君に決めて欲しい」
「……私に?」
「うん、君に従うよ。勝手に身体を借りてるわけだし、行く当てもないし。……どんなものでも、私は従う」
「……なんで?」
「そりゃ、君がこの身体の……ユメ先輩の親しい人だから。本人に聞けない以上、君に決めてもらうしかないでしょ」
「いや、そうじゃない。……なんで、そこまでするの?死にに来たわけではないでしょ?」
なんで、と言われると難しい。言われた通り、自分は死にに来たわけじゃない。でも……
「……私は、この身体に元の持ち主がいるって知ってのうのうと生きれるほど図太くない。だから…………まあ結局は、自分のためだよ」
そう言えば、ピンク髪の子はジト目で返してくる。しょうがないじゃないか。罪悪感があるのはそうだけど、誰だって悩み事は少なく生きていたいものだし、清算は早い方がいいだろう。
「……分かった。本当は、すぐにでもユメ先輩から出て行ってもらいたいけど……無理なんだよね」
「多分ね」
「じゃあ……アビドスに入って。それで…………どうして君がユメ先輩に入ったのか──誰がそうしたのか、それを突き止めるのを手伝って」
それは自分にとっても望んでいた、1番知りたい重要なこと。なんで自分が、どうして、どうやってこの身体に入ったのか。
「分かった、約束する。必ず突き止めるよ」
自分はそれに、直ぐに頷いて返した。それが乗り移った者の義務だと思ったし、もとよりそれを突き止めなければ、自分は真っ当には生きることができないんだから。
こうして、2人の間で奇妙な──本当に奇妙な協力関係が始まった。蘇った死体の謎を追う、歪で捻じれた関係が。
ひ、評価が赤で染まってる……こんなガバ文章がもらっていい量じゃないよ……ほんっとうにありがとうございます
頑張ってみましたが、期待に沿えなかったら申し訳ございませぬ……
ということで山場?を追えたので一応今後の予定をば。(続けばだけど)
本編前、もとい元カノがちらつく編を思いつく限りやってアビドス1,2章やって海行ってエデンのスポット参戦やって最終編やって……という感じです。フツウ!
曇らせは最終編まであんまないかもしれません。許して……
ユメ先輩本人は公式が蘇生してくれるならそれでいいんですがしてくれない場合我が道を行って素っ頓狂な方法で蘇生するかもしれません。
稚拙な文章ですが、今後もよろしくしてくださると幸いでございます
……ニセモンの名前どーしよ……
どっちがお好き?
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