それ逝け!ユメ先輩(偽)   作:ポンコツ太郎

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案の定短い!


アビドスの(おかしな)新入生たち

 季節は移ろい暖かくなり、桜も芽吹く頃。世間的には入学の時期だ。うちことアビドス高等学校もその例に漏れず、校門前には入学式の看板が立っている。ずっと保健室に住んでいたのでとっくに入学しているような感覚だったが、正確には今日でようやく学生ということになる。手続きってめんどくさいね。

 

 だけど、大したこともあんまりなく、全員健康なまま今日を迎えることができたことは喜ぶべきことだろう。…………まあ「あんまり」なんだけど。ゼロではない。何個かあった訳だ、大したことが。

 

 

 一つ目は、シロコがついにやりやがったことである。なんでもアビドスには借金があるらしいのだ。しかも9億半くらい。聞いた時はぶったまげてイスから転げ落ちたのだが、それを聞いたシロコが外に飛び出していった。とてつもない嫌な予感がしながらも帰りを待っていると、なんと古鉄屋からネジやら薬莢やらの資材を強奪して帰ってきたのだ。ドヤ顔で。しかもトラックごと。何やっとんねん。私は再び転げ落ちた。腰が抜けたとも言う。

 

 砂狼シロコ容疑者(15)の供述によれば、「奪ったところに売って、また奪って売る。ん、永久機関の完成。なんとかベル賞は私のもの。これで借金もイチコロ」とのこと。この子一体何言ってるのかしら。そんな遊び方間違えたシミュレーションゲームみたいなことが出来るわけないだろう。よしんば返せたとしても借金以上に色々なものを失うわ。

 

 後から追いついてきた業者の人はカンカンだった。当たり前である。とにかく三人と一匹で何度も謝ることになった。やった本人はなぜダメかよく分かっていない様子。これは教育をしっかりしなければならない。いや本当にマジで。業者さんはアビドスの生徒だからということで、次はないぞと言いつつも許してくれた。なんとも懐が深い。出来ればご贔屓にさせていただきたいと思った。ちなみに、シロコが「次はバレないようにする」とか抜かしやがったので、左腕で拳骨を頭に入れておいた。シロコは悶えた。これが一つ目。

 

 

 二つ目は、ノノミちゃんに反抗期が来たことだ。いや、ずっときていたらしいが。実はいいとこのお嬢様だったらしく、今までアビドスにきてくれていたのは借金を代わりに返済したいと言ってホシノに突撃していたからというわけらしい。つまるところあしながおじ……おば……お姉さんというわけだ。そのたびに撥ね除けられていたらしいけど。

 

 それにしたって9億もの大金をパッと出せるのはなかなかにおかしい。そう思って聞いてみればそれは親の金だと言う。…………いや、ダメでは?親御さんぶったまげて椅子から転げ落ちるんじゃないか?お小遣いかき集めて9億というわけでもないだろうし、そうだとしても億をポンと出そうとするのはおかしいと思います。そこまでして借金を代わりに払おうとするのも、何か深いわけがあるのだろうか。結局聞きはしなかったけれど。

 

 なので別にアビドスに入学するというわけでもないらしく、ハイランダーとかいうところに入学する予定なんだとか。入学式も近づいた頃、やんわりもう来ない方がいいと言ったホシノもすこし寂しげに見えたが、まあしょうがない。準備も大変だろうし、住む世界が違うんだから。もう会うこともないのかもしれない。……と思っていたのだが、なんと数日前入学書類を持って滑り込み入学手続きをしにきたのだ。ええ?

 聞けば、親の言うことなんぞ聞きたくないと一蹴して家出してきたそうな。……ええ?シロコは言わずもがなだが、ノノミちゃんもなかなかおかしいのかもしれない。言っちゃアレだがこんな限界集落に進んで入学しようとしてるわけだし。まあともかく、これが二つ目だ。

 

 

 三つ目は……思いつかない。強いて言うなら校内を掃除していたら砂嵐が来て台無しになったことくらいか。なぜ窓を開けっぱなしにしていたのかあの時の自分に小一時間程問い詰めたい。

 

 

 

 

 ……回想しているうちに、気づけばもう式の時間が迫っていた。人はいないわけだが、ちゃんと体育館でやるとか。てっきり教室でささっと済ませてしまうものだと思っていたので少し驚きである。ホシノのこだわりか、それとも……体育館の入り口まで行けば、既に二人が着いていた。どことなく緊張した面持ちで、妙に背筋をよくしている。いや君たちがやったことに比べれば大したことないだろうに……

 

 というか、アビドスの新入生、大分濃くないだろうか。だって、悪霊に強盗に家出お嬢様だぞ。混沌とはこういうことをいうんじゃなかろうか。私は訝しんだ。

 

「先輩、ブレザーのボタンが」

 

「ああ、これ……留められないんだ、きつくて……」

 

「ええ……」

 

 ノノミちゃんから言われたこのブレザー。ホシノから渡されたのだが、胸がきつくてボタンが留められないのだ。なのでそのままにしている。そう伝えた時ホシノがあきれたような目でこちら*1を見ていたが、これに関しては私悪くないと思うんだ。文句はユメ先輩に言ってほしい。正直私も言いたい。

 

 体育館に入れば、壁に紅白幕がかかっており、ところどころに花が置いてある。檀上付近にはパイプ椅子が二列ほど置いてあった。……まあ、私とホシノが昨日やったんだけど。自分の入学式の準備を自分でするのって珍しいんじゃなかろうか。ホシノに促され、パイプ椅子の前まで移動する。新入生は前列だろうと一列目に座ろうとすれば、私だけ止められた。

 

「君はそっちじゃないよ」

 

「……!?入学拒否ですか!?」

 

「いやそうじゃなくて……君は編入生ってことにしといたから、私と同じ学年ね。ってことでよろしく〜」

 

「え、聞いてない……」

 

「今言ったからね」

 

 どうやら私の学年はホシノと同じ二年生らしい。初耳なんですけど……あの二人と比べるとサバを読んでるのがバレるからだろうか。ともかく、後列の椅子に座る。するとシロコがくるりと後ろを向いてきた。

 

「……アホ毛先輩?」

 

 何故かたくなに名前で呼んでくれないのだろうか。先輩はいいから名前で呼んでくれないかい……?

 

 

 

 式はつつがなく進んだ。校長なんてものはいないので、ホシノが代わりに祝辞やらなんやらをしていた。おじさんを自称する割にはそこまで長くなかったな、話。言ったらチョップされそうだから言わないけど。校歌斉唱ではラジカセだけが頑張って歌っていた。ここにいる誰も、リズムも歌詞も知らなかったみたい。正直気まずかったな。

 

「……よし、写真撮ろう写真!」

 

 空気を変えるためか、ホシノがそんなことを言い出した。どこからか取り出したカメラを持って、二人を入学式の看板の前に運んでいく。

 

 

「というかシロコちゃん、マフラー暑くない?そろそろ外したら?」

 

「ううん、大丈夫。修行にもなるし」

 

「修行……?」

 

 暑さに対する修行とかだろうか。最近暑くなってきたし。いや最悪死ぬからやめておいた方がいいと思うんだけど……昨日とか最高気温が30度を超えていたし。まだ4月だぞ?これ、夏になったらどうなってしまうのだろうか。灼熱地獄とかになるのでは?

 

「ほらほら、シロコちゃんノノミちゃん!笑って~!」

 

「ん!」

 

「わ、わざわざ撮る必要、ありますか……?」

 

「なに言ってるのさ、当たり前でしょ!お祝いの時は、記念に写真を撮るものだから!はい、チーズ!」

 

 パシャリ、と音がして、写真が撮影される。入学式の看板を真ん中に二人が左右におり、両手で花束を持っている写真だ。ザ、入学式って感じのものが撮れたな。まるで青春の始まりだ。いや、実際にそうなんだけどね。

 

「ほれ、ニヨニヨしてないで君も入る!」

 

「え、私?」

 

 てっきり二人だけ撮るもんだと思っていたが、まあ私も映っていないと不自然だろうか。さて、どっちの隣に立つべきか……

 

「じゃあ、ホシノ先輩も入るべき」

 

「うえ?」

 

「そうですね!せっかくですし、みんなでの写真を撮りましょう!」

 

「わっ、ちょっちょっとぉ~」

 

 すると、シロコがホシノも道連れにしようと袖をつかんでぐいぐい隣に引っ張っていった。口では何かしら言っているが、ホシノもまんざらでもなさそうである。代わりにカメラを三脚に取り付け、タイマーをセットしておく。私はノノミちゃんの隣に立った。何というか、左右でアンバランスな気がする。

 

 パシャリ。再びそう音がして、私たち四人を写したものが撮られる。とてとてとシロコがカメラを持ってきたが、しかし撮ったものを先に見たシロコとホシノは微妙な表情を浮かべている。一体何事かと撮った写真を見てみれば──

 

「……目、閉じてる……」

 

 私だけ目を閉じて写っていた。なんとも恥ずかしい……

 

 

*1
の胸




文字数を増やすコツを知りたい。それを探るべく我々はアマゾンの奥地へと向かった。

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