重いタバコを吸ってる不健康そうな年上美人とドロドロの関係になっていた話 作:かめっくす
本作が書籍化していただけることになりました。
6月30日にファミ通文庫様にて発売となります。
個人的にとても思い入れのある作品なので、
書籍という形で世に出すことができてとても嬉しいです。
これもハーメルンで読んでくださった読者の皆さんのおかげです。
お世辞抜きに執筆における重要な支えになっていました。
いただいた感想は全て、何度も読み返しております。
ここからがお願いというか、宣伝なのですが、
もしよろしければ応援がてら予約&お手にとっていただけますと幸いです。
というのも、本作はタバコという題材を扱っていることもあり、
WEBでの広告を打つことができないそうです。
宣伝手段が制限されてしまうので、不利になってしまいます。
表紙にタバコを出すのを止めれば
WEB広告を打つこともできるらしいのですが、
この作品においてタバコは重要アイテムですし、
タバコを手に持っている瑠衣さんがどうしても見たい、
何が何でもタバコは表紙に出したいと考え、不利になっても表示させる方向に舵を切りました。
また作中に未成年の主人公が酒を飲む描写もあり、
そういった作品は修正させられて、
書籍化したことで却って作品が丸くなって魅力が減ってしまうこともあるのですが、
本作においては編集さんが頑張って通してくれました。
他にも加筆あり&イラストがとても素晴らしく、
一度読んだ方でも楽しんでいただける出来になっていると自負しています。
後悔はさせません……!
この先の二人の話も書いていきたいと考えているので、
どうか、応援いただけますと幸いです…!
https://www.amazon.co.jp/dp/4047383201
以下は、発売記念で書いた短編となっております。
もしよろしければ読んでみてください。
大学の喫煙所は、日の当たらない場所にある。
校舎と校舎の間、人目から隠されるようにパーテーションが立ち並び、薄暗い影の中で喫煙者たちはタバコを燻(くゆ)らせる。
ちょうど授業中ということもあり、人は少ない。というか、いない。
いるのは、瑠衣さんただ一人だけ。
細い指の間にタバコを挟み、物憂げに虚空を眺めながら、煙をたゆたわせている。ぞっとするほどに醒めていて、冷たい灰色の瞳。
「瑠衣さん」
俺が声を掛けると、瑠衣さんの瞳に色が戻る。
「結斗くん、こんにちは。でも、どうしてここに?」
「どうしても何も、あなたに呼び出されたからですよ」と俺はスマホを掲げる。そこには俺と瑠衣さんとのメッセージのやり取りの画面。
『暇なので、お話ししに来ませんか?』
今日、授業が早めに終わる日だった。だから、授業終わりにここにきた。
「そうでした」とわざとらしく舌を覗かせる瑠衣さん。その舌の真ん中には、きらりと光るピアスが鎮座している。
「どこか、カフェにでも行きますか?」
「いえ。俺はここで」
そう言って、瑠衣さんの隣の腰を下ろす。表のカフェは、俺には眩しすぎる。喫煙所の卑屈なほどの薄暗さがちょうどいい。
それに、ここなら二人きりだ。
喫煙所に非喫煙者はやってこない。わざわざ毒を吸いに来たくなんてない。俺のように奇特な人間以外は。
ある種、外界から守られた空間なんだ。ここは。
「火、消した方がいいですか?」
「遠慮せず吸ってください。ここは喫煙所なんですから」
「では、お言葉に甘えて」
そう言って、瑠衣さんは再びタバコを吸い始める。すぐ隣に座りながら、タバコを吸う彼女の横顔を眺める。
やっぱり綺麗だ、と思う。でも、口には出さない。口に出した瞬間、その言葉は陳腐に墜ちてしまう。
陳腐な人間だと、退屈な人間だと、瑠衣さんに思われたくない。他の誰に何を思われても構わないけれど、彼女にだけはそう思われたくない。だから、言わない。
さっき、火を消した方がいいですか、と尋ねながら、瑠衣さんはきっと消すつもりなんてなかった。俺が別に構わないと答えるだろうと、そう確信していた。
その期待に答えられる人間でありたい、と思う。
「知ってましたか? 喫煙者より、喫煙者の傍にいて、タバコの煙を吸っている人の方が病気になりやすいそうですよ」
瑠衣さんはタバコを吸いながら、今まさに自分の隣でその副流煙を吸っている俺の方を見ながらそんなことを言う。
「タバコを吸っている私より、吸ってない結斗くんの方が不利益を被るなんて、理不尽な話だと思いませんか?」
「確かに、実に理不尽ですね」
苦笑しながら、でも、それで構わないとも思う。瑠衣さんが愉しそうにタバコを吸う姿を特等席で見られるのなら、対価としては十分だ。何ならお釣りが来る。
それに人間、いつかは死ぬんだ。それが病気か、事故かは分からないけれど。
もし遠い未来に病気が発覚して、瑠衣さんのタバコが原因だと分かったら、少なくとも他の病気で死ぬよりはマシな気持ちになれる気がする。
それに、今はまだ死なない。瑠衣さんの作った爆弾を見届けるまで、俺の作った爆弾を瑠衣さんに見届けて貰うまで、生きられればそれで十分だ。
でも、これはまさに俺と瑠衣さんの関係のようだ。
瑠衣さんがタバコを吸うことで、傍にいる俺の身体が侵されていくように。瑠衣さんの傍にいることで、俺の人生は徐々に狂わされていく。
瑠衣さんはきっと、毒を振りまいて生きている。愉しそうに生きながら、周りの人間の人生を壊す毒を振りまき続けている。
彼女の傍にいればいるほど、その毒は身体に回る。そしていつか、致命的に取り返しのつかないところに行き着いてしまうのだろう。
だけど、それでいい。きっと、後悔しない。
そんなことを考えながら、俺は瑠衣さんのタバコを吸う姿を見つめていた。
その煙を、毒を、身体の中に取り込みながら。