魔術師の名を継ぐ者   作:ローズライン

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英語で会話してる想定だから、こいつの口調がおかしくてもセーフ




入学編
入学編の前日譚 ー integrated story ー


科学と魔術と魔法、交わる事の無かった三つが交差するとき、物語は加速する。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

大英帝国、聖ジョージ大聖堂

最大主教執務室

 

 

 

時刻は12時を過ぎて寝るのにもいい頃合いだ。こんな時間に呼び出されるとは相手方もいい迷惑だろう。

それを表すかのように、モニターに写っているベージュのシスター服を纏った女が先程から欠伸をしているが、アレイスターにその行動を咎めるつもりはない。こんな時間に呼び出している手前、それ位のことは目を瞑ってやらねばならないだろう。

 

 

「私がいない間の最大主教代理の選定に時間がかかったと聞いてはいたが、やはりお前になったか”ローラ=スチュアート”」

 

『何を言っているのかしら、あのアレイスター・クロウリーが推薦した者よ? 私の経歴が多少曰く付きとはいえ王室派や騎士派が拒否出来るはずが無いでしょうに。ただ……私を代理に据えるためだけに騎士派の自信過剰のエリート共を力で黙らせるなんて、少しやりすぎたんじゃ無いかしら』

 

 

“アレ”らしからぬ発言に疑問を持ち聞き返してみる。

 

「なんだ? 悪魔のくせに平和主義にでも目覚めたか?」

 

 

そういうとローラはまさかと肩をすくめて言う。

 

 

『そんなことをして、騎士派に本格的に嫌われでもしたら貴方の進めている”筋書き”だって影響を被るのよ? そこの所を分かっているのかしらね。()()()()()は』

 

 

どうやらヤツが気にしていたのはそんなことだったらしい………いやアレにしてみれば自分の根幹となる性質に結びつくことだ、”そんなこと”呼ばわりされたくはないのだろう。

 

 

 

 

「……………一応忠告しておくぞ、お前が再び何か企んでいると知れれば、たとえ地球の裏にいたとしても切り刻みに行くからな?」

 

 

 

 

 

 

そのセリフからどんな光景を想像したのかは知らないが、一瞬だけベージュのシスター服を纏った女の顔が酷く青ざめたような気がした。

『あ、あんな経験は…………もう懲り懲りよ』

 

 

「フッ…私だって仮にも、”あの”アレイスターを標榜しているんだ。先代が出来なかったことを出来ずにどうする」

 

 

『オリジナルのアレイスターは、確かに私の制御には失敗したけれど…………それは元々が無理な話だったからよ。全ての 時代(アイオーン)の先にいる存在を搦め手無しの純粋な強さだけでぶちのめした貴方は、本当に人間の域にいるか怪しいわよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり実体験を伴う言葉は重みが違うな? このクソ野郎が」

 

 

 

『いや、あのホントにごめんなさい』

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「私はこれでお暇させていただくよ。夜更かしは肌に悪いのだし、早めに寝ることだ」

 

『はいはい分かってますよ。と言うかこんな時間に呼び出したのだっt』

 

大悪魔なんぞの反論を聞く気はないので物理的に通信をシャットアウトすると、アレイスターは執務室に備え付けられているクローゼットを開けて、最大主教としての正装から着替え始める。途中、見た目相応の身体の曲線を何の恥じらいもなく月光の下に曝け出したが、この部屋は魔術的な防壁を幾重にも張り巡らせてあるこの部屋においては心配などするだけ無駄だろう。

 

 

 

着替えとして選んだものは、原作のアレイスターが少女化した際に着用していたものと同じように誂えさせた特注のセーラー服だ。

この年(2095年)にもなってセーラー服かと思われるかもしれないが、これこそが今のイギリスのムーブメント(流行)だ。決して原作のようなセーラー服を着たいがために流行を操作した訳ではない。

第3次世界大戦やその後のゴタゴタを通じて、各国とも軍隊や軍人に対する人気や尊敬が集まったのは言うまでもないが、そう言った中でも海軍やその将兵の人気が特に高いイギリスでは、彼らが身につける水兵服(セーラー服)のファッションアイテムとしての人気が他国と比べて高くなっていった。というだけの簡単な話だ。

 

 

 

そういう訳でセーラー服に着替えるだけでイギリス清教最大主教たる彼女も、こうすることで気軽にJKになりきることができる。

 

………どれだけサバを読んでいるとかは考えてはならない。

 

 

この服には術式など施されていないため襲撃対策に”人払い”かそれに準じた魔術を使うことにはなるが、堅苦しい正装に身を包み続けるよりは気が楽だ。

まぁイギリス清教の最大主教相手に襲撃を仕掛ける勢力など相当に限られるだろうが。

 

 

着替え終わったアレイスターは自身の執務室がある聖ジョージ大聖堂を後にし、夜のロンドンへと繰り出して行った。

 

「………いつ見てもこの街は綺麗だな」

 

 

 

 

真夜中だろうが何だろうが欧州随一の経済的影響力をもつロンドンに休息は許されない。第三次世界大戦からの再建途中にあったイギリスに侵食した科学サイドは多くの恩恵をイギリスにもたらし、霧と魔術の都は霧と魔術とカネの都へと変革しその後の爆発的な経済成長を実現した。

 

 

アレイスターはそんな眠らずの街に繰り出すわけでもなく、ロンドン郊外へと向かう電車へと乗り込んだ。もちろん貸切だ。

 

なぜそんなことをと思うかもしれないがローラ(inコロンゾン)を代理に擁立したことによって一時的とはいえ魔術サイドのしがらみから解放された今だからこそ、一つの”区切り”として赴いておきたい場所があったからだ。

 

その道すがら電車に揺られながらもアレイスターは、とあることを考えていた。

 

 

「(ローラ=スチュアート、原作ではイギリス清教のトップである最大主教の地位にありながら、その正体は隠されしセフィラにして知識を冠するダアトに潜む大悪魔そのもの)」

 

 

「(本当は生かしておくつもりは無かったが…………まぁ、筋書き(シナリオ)との折り合いも付ける必要もあるだろう。奴の魔力の象徴でもある髪も切り落としているのだし、これが最良の判断だ。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

ロンドン郊外のある一角には『墓地街』と呼ばれ、周辺住民からも忌み嫌われる土地がある。

 

元を辿れば小さな霊園だったのだが、第三次世界大戦やそれに付随して発生した食糧不足などにより発生した大量の死者を埋葬するために、政府が周辺の土地を含めた広範囲を買収し、それらの死者を一括で埋葬する集団墓地として運営が始まったのがきっかけとして、忌み地として扱われる様になった。

 

そんな忌み嫌われた地を聖ジョージ大聖堂を後にしたアレイスターが歩いていた。最大主教であるというのに一人も護衛を付けづに重い足取りのままに。

 

その墓地街を進んでいくと、周囲と違って綺麗に手入れされた墓石が立ち並んでいるのが見えた。

 

 

 

 

 

「ははは………ここにこうやって来るもの、丁度一年振りかな」

彼女は自虐的な雰囲気を纏わせながらそう言うと、ある墓石の前で座り込んだ。キチンと手入れされたその様子から、この墓がアレイスターにとってどれだけ大切なものであるかを暗に示していた。

 

 

 

 

 

「今世も親に恵まれたと思ったら結局『こんな道』に身を堕として…………全く私は最悪の親不孝者になるしか道はないのかもしれないな」

返答はないというのに、アレイスターは呟き続ける。

 

 

「あの時の決意は……………………今も揺るいでなどいない。今思えばあの時がきっかけだったと思っている」

 

「自分が為すべきことを見つけた。もちろん科学サイドの長としてではなく、最大主教としてでもなく」

 

 

「だから、私のことを見ていてほしい。成さなければならない自らの意志(テレマ)を見つけた人間の強さを………」

 

自信を覗かせる眼を墓石に向けながらアレイスターは立ち上がり、その場をあとにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に向かう先は、日本(物語の中心地)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

日本国 新小田原空港

第三次世界大戦後、成田や羽田といった日本と世界をつなぐ空港を戦災や学園路市の開発によって失った関東圏に建てられた新たな玄関口、そんな空港にあVIP専用の秘密通路の出口にアレイスターはいた。仮にも科学サイドのトップを出迎えているというのに、日本側の護衛の人員が最小限に留められているあたり、彼女を歓待する側がどれだけ彼女の来日に関する情報管理に苦心したか良く分かる。

 

少数の護衛を伴ったアレイスターが入国ゲートを越えると、その先に日本側の政府一団と思しき集団が待っていた。彼らもゲートから出てきたアレイスターに気付いたようで、一団から一人の女性がアレイスターの方へ歩み出てきた。

 

 

「まさかこんな形でいきなり来日されるとは……貴方はいつも我々の予想を上回るのですね、プレジデント・アレイスター」

そう言って、アレイスターに握手を求めてきたのは、茅葺陽子

 

第三女世界大戦後初の女性総理であり、わざわざこうして空港まで足を運んでいることからも、科学サイドにも比較的寛容な人物であることがよく分かるだろう。

 

 

「変に学園都市に立ち寄って勘繰らせるよりは、これくらい単純な方が陰険な陰謀屋どもには効きやすいと思ってね。そんなことよりも其方の方から直々にお迎えに来ていただけるとは、思っていませんでしたよ茅葺総理」

求められた握手に素直に応じ、恐らく自分の来日について最も過敏な反応を示すであろう集団(十師族)を皮肉る言葉を口にする。

 

 

「我が国にもそれなりの事情があるのです、ご賢察していただけるなら此方としても嬉しい限りです」

皮肉に対して一切の触れずに理解だけを求めるあたりは、彼女の政治的に複雑な立ち位置(科学と魔法に中立)の裏返しだろう。

 

そんなことを話している内にアレイスターが連れていた護衛達が事前の取り決めの基づいて日本側の人員にアレイスターの荷物などを引き渡していく。その中には勿論のこと、こうして最大限の便宜を図ってくれた日本に対して返礼となるものが含まれている。

 

 

 

 

「貴女の立場も考えると、こんな所で立ち話という訳にもいかないでしょう。車まで案内させていただきます」

 

「それなら、お気遣いに感謝するよ茅葺総理」

 

 

 

茅葺の案内で通路を外に出ると、そこには黒塗りのリムジンとその前後に2両ずつ護衛の車両が並んでいた。この様子なら付近にも護衛車両が何両か巡回していることだろう。

 

 

車両の付近で守りを固めていた人間の中なら、一人の大男が歩み寄ってくると、総理とアレイスターの目前で敬礼してみせた。

「お初にお目にかかります閣下。自分が本日の警護を総括する澤村一希と申します」

澤村の言葉に続くように、後方にいる兵士たちが敬礼する。

 

 

「茅葺から話は聞いている。非魔法師の中でも精鋭中の精鋭だそうだな?よろしく頼むよ」

 

 

 

 

 

「閣下のご期待に添えるよう最善を尽くさせていただきます」

そう言い終わると同時に澤村は振り向き、後ろで待機していた兵士に声をかける。

 

 

「各員!担当車両に搭乗、移動準備!」

 

 

 

 

「それでは、お乗り下さい」

茅葺に案内され、黒塗りのリムジンに乗り込む。

アレイスターがドアから遠い方の座席に座ると、茅葺は手前の座席に座った。

 

リムジン車内は思ったよりも手狭になっているが、中に持ち込まれている銃火器の数々のせいだろう。護衛部隊のものだろうが、護衛対象の乗る車両にまでこういった代物を積むのはどういう神経をしているのやら。

 

 

 

 

 

そんなことを考えていると、それを察した茅葺が声をかけてきた。

 

 

「申し訳ありません。彼らは少々張り切っているようでしたので」

 

「護衛対象の車両にまで銃火器を積み込むことがか? 日本の国防軍の歩兵分隊よりもよっぽど品揃えがいいぞ」

 

 

「彼らのような非魔法師からすれば、自分たちが今こうして仕事を続けられていられるのはあなた方科学サイドと私の父が手を組んでいたおかげな訳ですから、手の抜ける仕事ではないんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、ちょうど3年振りでしょうか?前回直接お会いした時から色々とご助力していただき、ありがとうございます」

 

 

形式的とは言えない、それなりに心のこもった感謝の言葉が発せられたことがアレイスターにとっては驚きだった。

 

「総裁選の一件なら苦労はしたが感謝されることではない。私たち科学サイドにも利益をもたらしてくれることを確約してくれた君と元老院の手足となるしか能のない奴、私がどちらに付くかなど聞くまでもない。それに君の父君には良くしてもらったのでね、恩返しのつもりだよ」

 

 

 

 

「ただ…………もう少し手を焼かされるかと思っていただけに拍子抜けだったな。元老院ともあろう者がああも容易く折れるとは」

 

 

「そうでしょうね。正直私も()()()()()()を恫喝だけで丸め込むなんて予想外でしたが……………あなたに何をされたか知りませんが、直前まで話していた人間が目の前でいきなり身悶えし始めるなんて普通はトラウマになりますよ」

 

 

「まぁ私からすれば彼女は付け入る隙に塗れていたからな、老化を恐れていると言っても科学サイドの技術を使ってまでアンチエイジングに拘るとは………………我々なら当然その逆の効果(老化の促進)をもたらすことも出来たというのに」

 

 

「………今の話は聞かなかったことにします」

 

簡単なタネ明かしのつもりが、話の中から暗部由来の悍ましい気配か何かを感じ取ったのか茅葺にはこれ以上詮索するつもりはないようだ。

………別に暗部由来の技術でもないのだが、まぁ目の前にいた人間が玉手箱を開けたかのようにいきなり老けていく光景を見れば関わりたくないと思うのも当然か。

 

 

 

「これで君の父上の仇討ちになればいいのだが」

 

そういうとアレイスターは目を閉じ天に向かって黙祷するかのように口をつぐんだ。

 

 

 

「…………父とどういった関係なのは存じております。学園都市設立以前から協力関係にあったとか」

 

 

 

「…………彼は為政者としてこれ以上ないくらいには相応しい人間だった。人は歳を取れば取るほど臆病になるが彼の先見性と大胆さが取り柄は最後までで我々科学サイドと最も早く手を組み、学園都市の設立に大きく手を貸してもらった。まぁそれが原因になって後の政争に敗北したのだがね」

 

「妖怪なんて呼び名も、元老院がプロパガンダとして用いられた名称だ。まぁ彼らの敵がどういう存在なのが考えれば、その敵対者となった彼には妥当な呼び名と言えるかもしれんな」

 

声のトーンを変えなかったのと口調も相まって冷淡さを読み取ったのか茅葺が指弾するように尋ねてきた。

 

「随分と他人行儀なことですね、一時とは言え父に協力して元老院と政争を繰り広げたのでしょう」

 

本人としてはそんなつもりもなかったのだろうが、相手が悪かった。

 

「それは今の君もだろう? 自分の父親を謀殺した奴らに顎で使われてきた気分はどうかな」

思っていた以上のキラーパスに一瞬遅れをとった茅葺だが、すぐに返してきた。

 

「…………彼らはすでに日本の財政界の奥深くにまで根を張っています。それでいて付け入る隙を一つも見せない警戒心の高さ、少なくとも奴らが国益を損なっていない内はは私の復讐心一つでどうにかできる存在ではありません。そんなことくらい貴方とて理解しているでしょう?」

 

 

「聞くだけ無駄だったようだな。それにしても彼とは似ても似つかない慎重さだ」

 

この国を背負う者として、例え売国奴や妖怪などと言う誹りを受けようと自分が正しいと思ったことを貫き続けたあの男よりも、さらに慎重にさらに利口なったのを感じ取ったアレイスターが一人満足げにしていると向こうから気になっていたであろう疑問をぶつけてきた。

 

 

 

「ちなみにこれはあくまで確認ですが………………貴女のことはなんと呼べばいいでしょう? アレイスターと呼ぶ訳にもいかないでしょう?」

 

 

「個人情報はアリス=T(テア)=クローリィで偽装している。アリスと呼んでくれて構わんよ?」

 

 

「英語圏でのアリスなんて、かなり御伽話チックな名前では?」

 

「それはAliceの方だろう? 私の場合はAleisだから綴りが違うぞ」

 

 

 

 

茅葺はまさか本気で考えた名前ではあるまいと冗談のつもりで言ったのだが、言葉に出てこない強烈な『圧』に晒され、一瞬だが狼狽えてしまった。

 

「分かりましたよアリス……………貴方相手にこんな呼び方をするとは思いませんでしたが違和感がすごいですね」

 

茅葺は明らかに自分よりも異質な少女を相手にそんな名前で呼び合わなければならないという違和感を抑えられるか今から心配せざるを得なかった。この少女?は名実ともに科学サイドのトップに君臨しているのだ。いくら人前に姿を現したことがないとは言っても情報はどこから漏れるかわかったものではない。特に十師族は付け狙うだろう。

 

「大丈夫、すぐに慣れるさ」

 

 

 

「……………念の為、護衛に関しては私の信頼できる部隊を動員してあります。そこ経由で魔法サイドに貴方の入国が漏れることはないでしょう。七草だとか四葉だとかに独力で嗅ぎつけられていたら、どうしようもありませんが」

 

「何から何まで気を遣ってくれて嬉しいよ。まぁ私の方からもいくつか科学サイド系の警備会社に警備を依頼している。それに十師族とて馬鹿でも無能でもない。茅葺が心配しているような事は起きないだろうさ」

 

 

 

 

 

ここまではあくまで主題に入る前の軽いジャブ(戯れ)のようなもの、本題はここからだ。

 

 

車内に漂っている穏健な雰囲気はそのままだが、本題に入るための問いが茅葺の方から投げかけられた。

 

「そう言えば、”インテグレート計画”への参入に関しては科学サイドの力を貸していただきました………遅ばせながら感謝します」

 

 

「気にするな。あの大統領がいかに善良な人間であろうとUSNAの影響力は可能な限り小さく抑えておくに越したことは無い。その点において貴国と科学サイドの利害が一致していた、それだけだ」

 

 

「自国の影響力を増進するために国際魔法協会に国家間の魔法師交流プロジェクトを主導させるとは……彼の国(USNA)には驚かされました」

 

茅葺の感心した様子の言葉を科学サイドの長として肯定する。

 

「どこの国も軍事力に直結する魔法技術の流出を恐れて我々(科学サイド)のような国際交流を怠っている。故に魔法サイドは内側での技術格差が激しい状態だ。それを自国の影響拡大の足がかりにしてしまおうと考えついたのは賞賛に値する」

 

「そうですね……かく言う我が国も十師族とそれ以外の間では技術力や知見に天と地ほどの格差がある訳ですし」

 

遠い目をした茅葺を見ると、おそらく魔法サイドの技術格差や知識格差というのは予想していた通り隔絶したものがあるのだろう。

 

「そんな中で国際魔法協会が、積極的な技術の開示と交流とを中立の立場から推進する計画を打ち出し、魔法工学や魔法研究で最先端にいるUSNAが参加する。そうなると現代魔法開発に出遅れている国にとってはまたとない好機だ。」

 

「優れた技術を輸出することは、条件次第ではマクシミリアンのような魔法産業の規模をこれまで以上に拡大する起爆剤にもなり得る…………だからそれを独占するために国際魔法協会は日本とドイツ(魔法先進国)の参入を頑なに拒み続けたわけですか」

 

「国際魔法協会の幹部には、USNAに関係する企業からの出向もそれなりにいる。USNAに友好的な魔法後進国からの支持も含めれば日本の参入を認めないの方が多数派だ…………そんな状態で『条件付きでも構わないから日本の参入を彼らに認めさせてくれないか』だなんてとんだ難題だったな」

 

ククク、と喉を鳴らて微かに笑っていると茅葺の方から明らかに雰囲気の異なる質問が飛んできた。

 

 

 

「無理を言って貴方と英国政府に力を貸して頂いたのは理解していますが、その対価として科学サイドからの使者などという回りくどい偽装までして魔法科高校への入学を希望するとは………一体何を企んで?」

 

 

「劇作家に今次の展開を聞く事ほど愚か極まりないことはない。そうは思わないか?」

暗にこれ以上は聞かせられない或いは聞くな、とでも言うような異質な調子で放たれたその言葉を聞いた茅葺は、その瞬間に表情を厳しいものに一変させた。

 

 

 

その言葉を聞ければ十分だったのかあるいは単に藪から蛇を呼び寄せるを躊躇ったのか、それから茅葺は少しの間口をつぐんだ。

 

「まぁ、どんな理由があろうと構いませんよ。いつかは分かる日が来る、そう考えて気長に待つとしましょう。どんな結末になろうが私のやることに変わりはないですが」

 

これで茅葺にとっては一番確認しておきたいことは済んだことだろう。

 

 

 

ここ(新小田原)から名古屋までだと、どれくらいかかるんだ?」

 

「1時間半と言ったところです。しばしお待ちください」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

茅葺の言った通り1時間半ほどして名古屋市に到着した。襲撃の一つでもあるだろうと考えていた私にとっては肩透かしだったが、逆に十師族が私の存在に気づいていないのかもしれないという新たな疑問を生じさせることになり、別の悩みを抱えることになったがそれはまた別の話。

 

 




私生活のほうが少し忙しくなるので、プロットのある分も入れて更新ぺ-スがさらに落ちるかもしれません。
申し訳ない

用語解説
茅葺陽子(はるこ)
第三次世界大戦後初の女性総理
父親も政治家でありアレイスターと手を組み学園都市の設立など日本に科学サイドが進出する土台を作った。
その基盤を引き継ぎ政界入りしたことで科学サイドに融和的な人物と評されるものの、実際は魔法サイドと科学サイドに対して中立的であることから統括理事会からは八方美人、師族会議からは風見鶏など散々な評価をされる。
しかし政治家としての腕は必要なだけ備えており、深い確執を抱えた魔法サイドと科学サイドの両者の間に立つなどして対立する両者を妥協点に誘導する能力に秀でている。
沖縄戦後に行われた与党総裁選で科学サイドからの支援を受けた際にアレイスター・クロウリーと初めて出会った。
ちなみにその時の第一印象は「(こんな女の子が?)」(その後たっぷり分からされたが)


茅葺陽子の父(一応名前の設定もありますがここでは省略します)
戦後政治の妖怪と呼ばれ、その政治手腕は今に至るまでの語り種となっている。
アレイスターとは学園都市設立以前から協力関係にあり、学園都市の設立に協力する対価として科学サイドから日本企業への技術供与など日本の戦後復興に必要な施策を打ち出してきたが、科学サイドの支援を受け(政治的保身のためか今となっては分からないが)元老院の排除に踏み切り彼らと政争を繰り広げていたものの、素性不明の魔法師によって殺害された。
アレイスターとしては原作への影響を考えて元老院は力を削げればいい程度に思っていたため、協力者の彼が死亡した時点で日本の政界から手を引いた(彼が協力者として替えの効かない存在だったということもある)
(ちなみモチーフになった人物は岸信介。妖怪とかの呼び名はモロそこから)

アリス=T(テア)=クローリィ
身分情報を捏造したアレイスターの偽名。容姿も相まって、まさかこの少女が科学サイドのトップだと判断できる人物は少ない。
(Aleister(アリステア)(アレイスターの表記ずれ)をAleis(アリス)ter(テア)に分解しただけで超絶者の方のアリスとは特に関係ないです。まじで)

ローラ=スチュアート
アレイスターに倒された後、何らかの契約を経て自分に機会が回ってくるまではアレイスターとの協力関係にある

筋書き
アレイスターのテレマと結びついた何某かの計画
原作の『計画(プラン)』とは別物
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