脇役な僕と先生と予測不能な彼女と姫君達   作:ぽけぽっぽ共和国

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ブックマーク1600ありがとうございます……!

今回なんですが、実は一度書き直しました。先生の表現に納得がいかなかったんですよ。俺たちの先生はもっと透き通ってるだろ!っていう。かなり難産だったので、修正をかける際に台詞等変わるかもしれませんがご容赦を。

そしてじわじわと歯車が狂いだすのをお楽しみください。


Stories of the Past・Abydos.Ⅵ

 

 被弾による怪我は、想定よりも遥かに軽症だった。特に左腕は命中したのが跳弾だったと言うこともあって、大幅に威力が落ちていたのかギリギリ体内に弾が残るような怪我ではなかった。左足の方に関しては、これも骨で弾が止まってくれていたので抜くのは(痛みを除けば)楽に終わる。弾丸が直撃しておきながら、僅かな亀裂骨折で済んだのは運が良かったと言う他無い。

 

 ()()()()()()()()()

 

 医務室で最低限の治療を行って包帯を巻き終えれば、アビドスに残されていた弾と手榴弾を鞄に可能な限り詰め、入らない分は右腕に巻く。戦闘用ドローンが入ったケースを掴み、折り畳み式の小型固定砲も一台背に背負う。これが僕単騎で外に持ち出せる限界の火力装備だ。

 

 制服は孔が開いてしまったが、予備があって助かった。失血と疲労で瞼が上手く開かないが、眠気には強い自覚がある。学校に誰もいなかった事を考えると、恐らく先生達も黒見さんの救出に向かっているはずだ。もっと、何か少しでも僕も彼女達の力になりたいと――アビドスの校門を出た途端、僕の足は止まった。

 

 交差点の反対側から、アビドスに向かって歩いてくる先生と、小鳥遊さん達――その中に、黒見さんを見つけたから。

 

 向こうも校門で固まっている僕を見つけたのだろう、皆して駆け寄ってはくるが、僕の格好に驚いたのか小鳥遊さん以外は全員口をあんぐりと開けていた。先生までもが驚いた顔をしているではないか。

 いや、帰ってきたと思ったら全身武装を決めている僕を見たらそりゃあそうなるかもしれないが。

 

 

「………………せ、先輩!?なにその格好!?」

 

「何って、そりゃあセリカちゃんを助けに行こうとしてたんでしょ〜。……いや、こんな格好してるのはおじさんも初めて見たけど」

 

 

 黒見さんを見る限り、怪我らしい怪我は見当たらない。小鳥遊さん達を見てもそれは同様で、砂に塗れたりちょっとした擦り傷は付いているが、全員が無事だった。勿論、先生にも怪我一つない。

 黒見さんが無事なのが分かると、身体から一気に力が抜けていく。雑に武装を落としかけて体勢を直そうとするものの、武装の重さに引っ張られてつい膝をついてしまった。砂狼さんが支えようとはしてくれたものの手が届かなかったのだろう、その手は空を切る。間に合わなかった砂狼さんの表情は、少しだけ罰が悪そうだった。

 

 

「…………ご、ごめん」

 

「いえ、僕は平気です。それより…………黒見さんに、何事もなくて良かった……」

 

 

 安心感というべきか、なんというべきか。それのせいで張り詰めていた弓の弦が弾けるように、力という力が全身から抜けていく。思い返せば昨日の夜は寝ていない上、アビドスに帰ってくるのにこの怪我で歩きっぱなしだった。出血も決して軽くはなかったし、自分でも思った以上に身体は疲弊していたらしい。

 まだ鏡こそ見てはいないが、今の自分はなかなか酷い顔をしているに違いない。

 

 

「………………まさか、あれからずっとセリカちゃんを探してたの?」

 

「いえ、それは」

 

「というか一人で行くつもりだったのかな〜?おじさん、一人で戦っちゃダメだよって散々言ってたよね。一年の時の話なんか忘れちゃったのかなぁ」

 

「…………………………………………」

 

 

 申し訳ないがもう既に一戦やらかした後だ。なんならそれも無様に返り討ちに合っている。……が、割と本気で目が笑っていない小鳥遊さんを相手に言えるものか。

 どう言い訳してくれようかと思考を回していれば――ふと、先生の格好に気がついた。

 

 小鳥遊さん達が砂だらけなのは理解できる、砂漠地帯で戦闘するなら仕方ないことだ。しかし先生の衣服まで砂だらけなのはどういうわけか。自分のやらかしたことを思い出して(というか棚に上げるような事だが)まさか、という想像が脳裏をよぎった。

 銃と手榴弾が有ってもこの様を晒している僕なのに、武装の一つも見当たらない先生がまさか前線に出ればタダで済むはずがない。よく考えれば流石に小鳥遊さん達がいるのにあり得ないと分かるはずだが、今の僕は頭が回っていなかった。

 

 

「せ、…………先生。まさか、先生も戦闘に参加したんですか!?」

 

「"いや、指揮を取っただけだよ。戦えたとしても、私は生徒に銃は向けられないからね。これは帰り道転んじゃっただけ"」

 

 

 なんだそれ紛らわしい。なんとも言えない表情で頭を掻く先生に、さっきとは別の意味で力が抜けてしまう。いや、何もないならそれでいいのだが、釈然としない自分が何処かに居た。流れ弾にも当たっていないようだし、本当にただ転んでしまっただけなのだろう。

 

 だから、()()()()()()()()()()()()()()

 少しだけ。そう、魔が差しただとか、そんな言葉で表せてしまうような仄暗い感情に僕は言葉を預けてしまった。

 

 

「…………け、…………怪我は、……したり、しなかったんですか」

 

 

 今の質問の意図は誰にも悟られなかったが、僕だけはつい口から出たその質問に、何を()()していたのか。

 

 

「"うん。皆が守ってくれたから、私は平気だよ"」

 

「…………そ、……う、ですか。いえ、……何もないならそれでいいんです」

 

 

 自分と同じ、ヘイローのない大人。なんで先生は傷ひとつもなく綺麗に黒見さんを助けることが出来て、僕は手足を撃たれて尚彼女を助けられなかったのか。銃の前ではヘイローが無い以上大人も子供も関係ない、そんな差が致命的な部分ではないと理解しているとも。

 勿論、そこにアビドスの皆々が居なければ無傷で黒見さんを救うなんて出来るはずがない。僕と条件が異なる以上比較しても意味はないし、そもそもこんな事に勝ち負けだの優劣だの考える方がナンセンス。

 何より彼は黒見さんを救ってくれた恩人、そのはずなのに――「貴方も怪我をしていて欲しい」と、自分のプライドの為に思ってしまった。

 

 最低だ。嗚呼、本当に最悪だ。自分がこんな人間だったのかと自己嫌悪が止まらない。誰もいないのなら舌打ちくらいはしていただろう。

 ますます酷くなる僕の顔色に何を勘違いしたのか、先生が肩を叩いてくる。

 

 

「"疲れてるでしょう?皆も寝ずに強行しちゃったから、一緒に休んでおいで"」

 

 

 先生のその言葉には何も返せずに、ふらふらと立ち上がる。今は、先生と出来るだけ顔を合わせていたくない。頷く事さえも出来ないまま踵を返し、校舎に向かう途中で黒見さんが後ろから追いついてきた。その表情は、僕とは真逆に、空のように晴れ渡っていて。

 

 

「…………心配してくれててありがと、先輩っ。……でも!連絡手段くらいはちゃんとしておいてよね!私だって、先輩が帰ってこないまま探してくれてたって聞いた時は心配してたんだから」

 

「…………………………そう、ですね。……ええ、次からは、もっと上手くやろうと思います」

 

 

 乾いた笑いしか喉から出てこない。嗚呼、でも、そうだ。失敗して終わりじゃない。今までと同じように次がある。次を頑張ればいいだけの話。

 だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、……()の時は…………必ず………………」

 

――――――――――――――――

 

 市街地が見えるのに、夜の灯りが少ないのはアビドスだけの景色だろう。屋上の鉄柵に背を預けながら、ライトアプリを起動させた携帯を片手に広げた文庫本の活字を眼でなぞる。

 本の内容が変わるわけではないけれど、屋外で本を読む、というのは何となく特別感があって一層ページを捲るのが楽しくなる。……尤も、懐中電灯で無傷の右手が塞がる以上、左手で捲らざるを得ないのでかなりやり辛いが。

 

 半分ほど読み進めたところで、屋上の扉が開く。此処に来るのは決まって小鳥遊さんだ。また彼女かと思っていたものの僕の予想は、大きく外れた。

 白い白衣に首から下げた「シャーレ」のネックストラップが特徴的な男性――先生だ。

 

 

「"こんなところにいたんだね。お見舞いに来たら医務室に居なかったから、探したよ"」

 

「…………わざわざありがとうございます。眠れないだけなので、(コレ)を読み終わったら戻りますよ」

 

「"そっか。……怪我は、大丈夫なの?"」

 

 

 眼を、見開く。かまを掛けられている可能性もあったが、今此処で反応してしまったのではもう遅い。思わず顔をはっと上げてしまった途端、先生と目が合った。

 腕も脚も制服に隠れ、包帯なんか見えていないはずなのにどうしてバレたのか。歩き方は多少不自然だったかもしれないが、それだけで簡単に見抜けるものか。

 

 

「…………気付いていたんですか」

 

「"先生だからね、分かるよ……って、言いたいけど。アロ……これが教えてくれるんだ''」

 

 

 白衣の懐から取り出したのは、見た目には何の変哲もないタブレット。響くような起動音と共に「S」の文字が中央に表示された白と青、薄紫が入り混じったかのような独特なディスプレイが表示された。この画面の何がどうなって僕の状態が分かるのか知らないが、先生が嘘をついているようには思えない。

 

 

「…………タブレット……そういえば、戦術指揮でも先生はこれを使っていたそうですが」

 

「"うん。私の指揮をサポートしてくれる有能なAIがインストールされてるタブレットだ。ちょっとしたバリア……みたいなのも貼ってくれる"」

 

「えっバリアってなんだそれずるい」

 

 

 しまった。口を抑えるものの、これこそ後の祭り。思わず口を滑らせて普段とは違う口調になってしまったことに先生は目を丸くしており、かと思えば悪戯な笑みを浮かべていた。そういえば先生と二人で話すのはこれが初めてだし、今の口調も彼の前で使った覚えはなかった、……と、思う。あまり好きな口調ではないから、聞かれたくなかった。

 

 

「"もしかして、今の方が素?"」

 

「…………忘れてください。すみません」

 

「"年相応でいいと思うけどなあ"」

 

 

 そんなわけにいくか。目上の人間相手に敬語くらいは使うのが普通なのだ。幾ら先生と生徒という間柄だと言っても、所詮僕はこのキヴォトスの生徒の中の一人に過ぎない事を忘れてはならない。先生は別に僕にだけ親しいわけでも何でもないし、まして友人というわけでも無いのだから線引きはお互いのためにしっかりとするべきだ。

 年相応と言われて「真面目すぎる」「難すぎる」と言われていた事を思い出し、もう少しフランクになるべきかとも考えたが不真面目なよりはいいだろう。

 

 

「教えて良かったんですか、タブレットのこと」

 

「"別に隠してるわけじゃないからね"」

 

「そうではなく。それ、先生を襲ったら手に入りますよね。高性能AIの搭載されたバリア付きタブレット……幾らで売れますか?返済に充てたらもしかして……」

 

「"嘘でしょそういう意味!?これ私にしか使えないから駄目だよ!?"」

 

「ええ、冗談です」

 

 

 黒見さんを助けてくれた恩人にそんな事が出来るはずもない。それ以外にも、ヘルメット団がアビドス校に襲撃に来た際に補給物資を持ってきてくれていたり、有能な戦術指揮でヘルメット団の基地を潰したり。彼がアビドスに貢献してくれている事を考えれば寧ろ僕たちの方が礼として何かしら渡すべきなのだろうし、アビドスを建て直せた時には必ずお返ししよう。

 …………朝方は、少し、どうかしていただけだ。寝不足と疲労で心にも無い事を思ってしまっただけ。こんな人に、黒い感情を抱く方が間違っている。

 

 もう意識が完全に外れてしまった読みかけの文庫本を閉じて携帯を閉じる。屋上に残されていた灯りが消え失せ、先の言葉が冗談と知って安堵の表情を浮かべていた先生の顔は見えなくなった。先生も、僕の顔はもう見えないはず。

 

 

「怪我の事、どうして黙っていてくれたんですか」

 

「"……君が、言いたくなさそうにしていたから、かな。勘違いにしても合ってたにしても、君が話さなかった理由があるなら聞きたいけれど"」

 

「……………………小鳥遊さんにどやされるのが怖かったので。あと、折角黒見さんが無事だったのに水を差すこともないでしょう」

 

 

 嘘だ。

 

 いいや、全てが嘘というわけでも無いけれども、理由はそれ以外にもあるはずで。もっと単純に、――自分の失敗を知られたくなかっただけだ。かたや襤褸雑巾も同然の無様を晒して黒見さんを助けられず、かたや颯爽と彼女を救って全員で戻ってきた。

 僕以外の誰が悪いわけでも無い。自分の惨めさを認めたくなくて、結局小鳥遊さんも誤魔化した上に先生に対して悪感情まで抱いた僕だけが悪い。

 

 黒見さんには「次」などと言ってしまったが、「次」なんて無い方が良いに決まっている。それに今回の事で感じたが、やはり人間というもの、分不相応な領域に手を出してはならないのだ。

 黒見さんを助けに行った挙句撃たれて帰ってきて、有限な包帯や薬を使ってしまって。それなら素直に砂でも掘っていた方がよほどアビドスに貢献できたのではないか。

 

 鉄柵に背を預けて空を仰ぎ、いつにも増してネガティヴな感情に支配されてしまっているのは自分でも分かる。早めに、無理にでも寝た方がいいか。小さく頭を振り、医務室に帰ろうと立ち上がったところで先生に呼び止められる。

 

 

「"君は、やりたい事はないの?"」

 

 

 それは、唐突な質問で。しかし此方を向く先生の瞳は真剣で、言葉遊びをしたりだとか、何か他の意味を含んだものというわけでもないらしい。

 

 

「………………やりたいこと、ですか?」

 

「"そう。やらなければならないこと、じゃなくて。やりたいこと、だよ。難しかったら将来の夢なんかでもいいから、教えて欲しいんだ"」

 

「そう言われても……」

 

 

 やりたいことと言われても何をどうしろと言うのだろう。黒見さんの一件が落ち着いたとはいえ、アビドスの根本的な砂漠問題を始めとして借金問題、ヘルメット団が襲ってこなくなったわけではないこと、そもそも生徒数が少ないことなど考えだせば問題などキリがない。それ以外の事なら怪我をしている間のバイトのシフトをどうしようだとか、ヘルメット団による拉致が起こった以上対策をどう取るべきかなど、その前にある「やらなければならない事」が多すぎてとても考えられない。

 

 

「…………………………、やりたいことなんて……今は、アビドスの事で手一杯です。何も出来てない内から、無理ですよ。ただでさえ、僕は周りに頼りっぱなしなのに」

 

「"もっと頼っていい、頼るのは何も悪いことなんかじゃないんだ。君に限らず、人が一人で何かをやるには限界があるんだよ。頑張ることは決して悪い事じゃないけども、出来なかった時に自分を責めるのは違うんじゃないかって、私は思うな"」

 

 

 正論だ。この上なく正論で、かつ僕を否定することのないように可能な限り気遣いながら話してくれているのが伝わってくる。

 しかしだからと言って、「はい責めません」「はい程々に頑張ります」が出来るのなら人間苦労しない。何と答えていいのかまた分からなくなって、思わず話を逸らしてしまった。

 

 

「…………それは、経験からの言葉ですか」

 

「"どうかなあ。でも、君は完璧主義なきらいがあるのは分かるからね。これからの長い人生、上手くいかない事の方が多いかもしれない。本当に躓いてしまった時、また無理するんじゃないかって心配なんだ"」

 

 

 本心なのだろう、演技ではない先生の気持ちは伝わっている。だがこれ以上何に頼れと言うのだろう。思いつくのはアビドスの面々と先生ぐらいのもので、それらには充分以上頼ってしまっているというのに。

 

 今以上に皆に頼れと言うのなら、戦闘以外の事でもそうしろということなのだろうか。その場合、頼った結果として僕には何が残る?頼った後、僕に残されているのは「失敗」だけじゃないのか。

 出来なかったから後はよろしくお願いします、なんて、あまりに無責任が過ぎる。頼ることと人任せというのは似ているようで別物だ。それが自分でも出来る事であるのなら尚のこと。

 

 確かに分不相応な領域に手は出さないと誓った。だが、己で届かせられるはずの腕を他者に任せるのは怠慢ではなかろうか。そして分相応な領域というのは自分一人で他者に迷惑をかけずにこなせるものの事ではないのか。この先生に限って「お前に出来ることなんかないからとっとと他人に任せればいい」などと言いたいわけでも無いだろう。

 

 自問自答を繰り返す僕に何を思ったのか、それとも何を考えていると感じたのかはわからないが先生は手を叩き僕の意識を引き戻してきた。

 …………もう何を考えるべきなのかも、こんがらがって分からなくなってしまった。先生には申し訳ないが、先生の言う「頼る」を実行するには時間がかかりそうだ。

 

 

「"お説教みたいなことをしてごめんね。私は寧ろ君を褒めてあげたかったのに、上手く言えなかった"」

 

「………………褒められる要素、何かありましたか……?今のところ、自分では悪いところしか思いつかないんですが」

 

「"勿論、あるよ。言い切れないくらいたくさん"」

 

「砂漠での取り組みを言いたいのなら、全部失敗してますよ。黒見さんの事だって」

 

「"そうだね。でも、失敗しても過程は無くならない。失敗した事で、君の頑張りの全てが無意味になるわけじゃないのは忘れないで欲しいんだ"」

 

「……それは綺麗事や理想論です、先生」

 

 

 結果の伴わない過程に意味はない。ギャンブルで一千万勝っていたとしても、最後に負けて零になったら何も残らない。負けて得られる教訓がある事は否定しないが、しかし勝って得られる教訓があるのもまた事実。先生のそれは誰もが理想論だと切って捨てられるような考え方。

 それでも、先生は譲らなかった。

 

 

「"私は先生だからね。……前を歩く先生(おとな)が理想を語らなきゃ、生徒(こども)達に理想なんて誰も見せられなくなってしまう"」

 

「……強情ですね。お互いに」

 

 

 先程まで本を読むのに使っていた携帯を取り出せば、そのバッテリーランプは赤く点滅している。

 そういえば、まだ帰ってから充分に充電していないまま持ち出したんだったな。携帯を仕舞い直すと、上手く言葉や文字にして表せない感情のまま立ち上がり、何を意味するわけでもなく、何も見えない夜景に眼を向けた。

 

 

「………………では、先生。もし、一人ではどうしようもなくなってから……僕が先生に助けてと言ったら。その時は助けてくれますか?死ぬほど大変だと思いますが」

 

 

 僕の言葉を聞いた先生は、寧ろ嬉しそうに微笑んでいる。変な人だ。変な人だけれども、良い人だ。

 僕が将来何になれるのかは分からないが、先生のような大人になれたらいいと漠然と考えていた。

 

 

「"勿論、何度だって助けてみせるよ。私は、君達の先生なんだから"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後日。

 (小鳥遊さん達には)風邪と偽り、病院に行っていた僕は皆が銀行強盗をして来たと聞かされ待合室で気絶した。

 

 嘘だろ。

 




高校生の自分なら見栄も含めて言えねぇなって思ったのが今回のシナリオの起点です。……後輩助けに行ったのに返り討ちにあって、自分はボロボロなのに後輩は平気で。その上で「いやー俺も助けようと頑張ったんだけどなー」ってアピールすんの無理だと思う、この子なら尚更。

さて、便利屋編と風紀委員編はカットの予定です。何でって、……あの場面……彼の出番あるようなシーンないので……_(:3 」∠)_

追記:次回更新ちょっと遅れます。ストーリーの読み返しが必要なのと上司のせいです。
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