脇役な僕と先生と予測不能な彼女と姫君達   作:ぽけぽっぽ共和国

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お待たせしました。頑張って描いてるけど色々遅れそう_(:3 」∠)_

追記:2024/7/5、日間23位〜…!ありがとうございますのだ!
追記2:同日、日間7位になっていると聞いて目が点。もう一度ありがとうございます


Stories of the Past・Abydos.Ⅶ

 

「全員、正座してください」

 

「"あの"」

 

「先生も正座。今回は奥空さんも正座です」

 

「………………はい……」

 

 

 対策委員会+先生のメンバーは、素直に従って会議室の床に正座してくれている。本気で怒った事など数える事しかない僕だが、今回ばかりは我慢がならなかった。

 

 正座させられている側である先生も、「そりゃ怒るよな」と思っているのだろう、なんとも言えない表情になっている。当たり前だ、怒らない方がどうかしている。

 僕が病院に行って帰ってくるまでのたった二日の間、立て続けに「銀行強盗」と「他学園組織との対立」という片方だけでも気絶物の事をしでかしていたのだから。

 

 病院に行くだけで二日もかかった理由は単純に、アビドスにある病院が遠いのと普通に入院させられたから。感覚が最近麻痺していたが、普通の人間は撃たれりゃ入院くらいする。怪我の浅さのおかげで二日で済んだから「体重不足で検査に引っかかった」と誤魔化せたのは喜ぶべきか喜ばざるべきか。……先生も普通に信じていたのがちょっとショックだ。頑張ってもう少し食べるべきか?

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 

「何やってるんですか。いえ、今までに僕がいない間に色々とやらかしてくれた事は今までにもありましたが……銀行強盗って、とうとうやってくれたな……。覆面水着団って何……トリニティの生徒まで巻き込んで、本当に何!?更にゲヘナとも一戦やったって。この二日、何がどうなったらそんな事態になるんですか……!」

 

「……ん、銀行強盗は私が提案した。理由はあったし、風紀委員については完全に私達のせいじゃない。だから、まずは話を聞いて欲しい」

 

 

 眉間を指で押さえ、多過ぎる情報量に頭痛がしてしまう。自分でも眉間に寄る皺がどんどん深くなっているのが分かってしまう。

 とはいえ砂狼さん達も僕が思うように考え無しにそんな馬鹿な真似をしたわけではなかったのか、おずおずと挙手をして意見を述べようとする砂狼さん。まあ、最低限相手の言い分は聞くべきだろう。金銭目的の強盗なら先生や小鳥遊さんがそれは許さないだろうし、何か別の理由があることだけは確かだ。そのくらいには信用をしている。

 

 そうして彼女達の口から語られたのは、カイザーと銀行が癒着しているのではないか、そして僕たちの稼いだ金がブラックマーケットに流されているのではないかという疑惑について。

 そんな理由があったのでは、僕としては納得するしかない。銀行強盗を許容するわけではないが、しかし他に良い方法が無かったというのはそうかもしれない。

 

 ゲヘナ関連の出来事に関しても、皆は巻き込まれただけだった。加えてアビドス自治区に対して他校の権力を持つ生徒(天雨アコ)達が領域侵害を侵してきたのであれば、出会したのが偶然であっても侵略行為と見做して迎撃するというのはなんらおかしな話ではない。いきなり怒鳴ってしまったのは悪かったと思う。

 

 

「事情は分かりました。……確かに事を考えれば仕方ないかもしれませんし、ゲヘナに関しては皆さんに非はありませんでしたね。事情も先に聞かず、申し訳ない」

 

 

 それはそれとして。

 

 

「でも阿慈谷さん(トリニティ)を巻き込むな!?この件は怒りますからね!?」

 

「それはそう。やった後でなんだけど、反省してる」

 

「そして、どうせやるならフルフェイスとパルスグレネードぐらいは持っていってくださいよ!今時の銀行なんて電子系の警備あって当然ですし、追跡されたらどうするんですか!」

 

「"怒るとこ、そこなんだ!?''」

 

 

 何度も言うが、金目的でそんな真似をする人達じゃないと分かってはいる。しかし同時にやると言ったら本当にやる人達だというのも分かっているのだ。

 止めても無駄ならば徹底的にやっちまえという、やけっぱちとも取れるような思考だ。しかし、この程度の無茶苦茶はキヴォトスでは日常茶飯事なので問題はない。自棄になっているわけではない、極めて僕は冷静だとも。

 

 

「しかし、ゲヘナの風紀委員会の件はある意味では運が良かったと言わざるを得ませんね……」

 

「……?運が悪かった、ではなくて、ですか?」

 

「ええ。向こうに非があるのは明らかで、かつ風紀のトップである空崎さんもそれを認めたんでしょう?ゲヘナとやり取りする時に、間違いなく有利に使えますよ」

 

 

 まあ、気になる言動は幾つかあるものの、僕は直接に風紀委員の行政官である天雨アコと話したわけではない。細部に違いはあるのだろうし、そこまで気に留めることもないか。

 何よりも事実として、委員長である空崎ヒナが非を認めたと言う事実がデカい。話を聞く限りの性格では、あの場限りの口だけの謝罪だと誤魔化すようなタイプでもないだろう。ゲヘナといえばやはり武器が様々揃っている土地だ。上手く取引を仕掛けられれば今までになかった銃火器でアビドスの防衛設備を強化することも――。

 

 

「わあ、チワワ君ったら悪い顔してますね〜……いえ、表情は殆ど変わってないんですけど雰囲気が……」

 

「悪い事してきた人達に言われたくないです」

 

 

 というか十六夜さんはどうにもその呼び方が本気で気に入ったらしい。別に本気で嫌がっているわけではないが、そんなに僕にチワワな要素があるか?なんなら背丈で言えば、先生の次に高いくらいだ。雰囲気的な意味でも、チワワというほど愛らしい性格をしているとは思えない。寧ろ想像するような仔犬とは真逆に、腹黒い部分があるという自覚さえ持っている。

 それならばやはり戦闘能力的な意味だろうか、それなら否定できる部分はないが普通に泣くぞ。

 

 

「呼び方はともかく……やるなら僕にもやると一言言ってください。連絡をちゃんとしろと僕に言っておいて、言った側がそれじゃ説得力ないですよ」

 

「うぅ……どうしよう、何も反論できない……!」

 

 

 黒見さんに視線を向けると、「ぎくり」という効果音でも聞こえてきそうな表情で目を逸らしていた。僕に注意をした手前、自分が同じことをやらかした彼女は気拙いのかもしれない。

 先生も黒見さんと同様に、目を逸らしていた。僕にめちゃくちゃ良いことを説いてくれた後にやらかしたのが銀行強盗だ。もしかして先生のやりたい事というのは、先生の仕事ではなくて銀行強盗だったのだろうか。流石にそれはないだろうが、冷たい視線を向けざるを得ない。

 

 

「大真面目な話してるんですよ。これ、今回はバレてないから良いようなものの……下手したらアビドスの借金に一千万か、それ以上が加算される事になっていたのを忘れないようにしてくださいね」

 

「別に私達はお金目的だったわけじゃ……」

 

「分かってますよ。ですが、結果として一千万は奪ってしまったわけでしょう?万が一やるにしても、突発的な行動は控えて下さい。特に砂狼さん」

 

「…………名指し……」

 

「当たり前でしょう。トラックを無断で持ってきた時のこと、まだ忘れてませんからね」

 

 

さあ、今度は砂狼さんが目を逸らす番だ。なんとこの女、去年にトラックを丸ごと一台強奪してきたのだ。置き引きだとかスリだとかをするよりも余程豪快に、いっそ清々しいくらいの窃盗ぶりに僕も十六夜さんも小鳥遊さんも唖然とせざるを得なかった。

 当たり前だがトラックの持ち主はカンカンに怒っていた。アレで許されたのはキヴォトスという街の治安に慣れているというのと、彼が器の広い人だったからだ。

 しかし相手はそんな砂狼さんだ。他二人と違って堂々と言い返してくる図太さは持ち合わせていた。

 

 

「貴方は細か過ぎる。言いたい事は分かるけれど、そんなんじゃ機を逃す」

 

「今回の件が必要だった事は認めますが、しかし緊急を要するものではありませんよ。カイザーに関わる銀行の位置が分かっている以上、下見をするなり戻って装備を整えるなりの時間はあったはずでは?」

 

「そんなことしてる間に書類が破棄されたり輸送されたりしたら……」

 

「されません。企業絡みの(クレジット)に関わる書類ですよ?間違いなく何重にもチェックが入りますので、別の場所に即輸送というのは考え難い。破棄に至っては論外ですね、そんな事をする銀行はありません」

 

 

 余程の火事か、それこそ強盗でもない限りは向こうも手放したりはしない。そういう意味では砂狼さん達の取った手段は合理的とも言えるが、やはり考えなしにやって良いことではない。結果的に奪ってしまった金から足が付く可能性だってあったのに。

 まあ、その金は破棄した……というより、便利屋とのいざこざで置いてきてしまったらしいので心配ないと思うが。

 

 

「……じゃあ、準備してる間に他の強盗に入られたらどうするの?」

 

「…………………………」

 

 

 どうしよう、無いと言い切れないのがキヴォトスの恐ろしいところだ。しかも銀行はブラックマーケットにあるではないか、いつ何が起こってもおかしく無い。

 聞けば便利屋の在籍している学校――ゲヘナ学園には気に入らないというだけで飲食店を爆破したり、温泉を掘り当てる名目で破壊を繰り返すというとんでもないテロリスト共が居ると聞く。キヴォトスの治安が終わっているのは今に始まったことではないが、戻って支度をしている間に「銀行が爆破されていました」などという話があり得ないかどうかで言えば……、…………あり得る……。

 言葉に詰まった僕を相手に勢いづいたのか、砂狼さんは畳み掛けるように言葉を詰めてくる。

 

 

「そもそも、あの銀行はブラックマーケットにある。私達(アビドス)の借金が法的なものに沿っている以上、違法なブラックマーケット内での出来事はそこに関わらない……というか、関われない。企業というなら尚更のこと」

 

「ぐっ……それは、……確かに……その通りです……」

 

「そんな事したら、企業が違法なことをしていると認めているようなもの。だから足がついたとしても向こうは泣き寝入りするしかない……完璧な作戦だった」

 

「無茶苦茶を言うんじゃない!?正体がバレて銀行と手を組んでいるカイザーに敵視されれば、信用評価を落とされて月々の利子が増える可能性があるだろうが!」

 

「…………べ、便利屋とのパイプが出来た。風紀委員の話をするなら、それもプラス要素の、はず……!」

 

「それ結局アウトロー路線だし、向こうはアビドスだって気づいてなかったんだろ!?じゃあ、駄目じゃん!」

 

 

 この二つがキヴォトスでどれほどの意味があるのかもわからないが、同級生が銀行強盗をしちゃいました、などと言われて流石に全面肯定は出来るものか。

 

 

「だいたい、覆面水着団ってなんだよ……!?水着要素が何処にもない……!ネーミングはどうなってる……!?」

 

「貴方のよく分からない、長ったらしい横文字のネーミングよりはマシ。というか、それなら水着になればオーケーだったの?…………えっち」

 

「なんでそうなる!?」

 

 

絶対に僕のネーミングの方が良いに決まっている。覆面、強盗団と来たらネーミングはもう「覆面黒魔地獄強盗団(ブラックマスク・インフェルノロヴェリーズ)」しかあり得ないだろう。どう考えたってこっちの方が格好いいし、強そうだ。名前が長いのが云々というが、こういうものは長ければ長いほど格好良いと相場が決まっている。

 付け加えるなら僕はえっちじゃない。それだけは、あるかどうかも分からない僕の名誉のために断言させていただこう。

 

 

「あらら……また始まっちゃいましたねえ」

 

「"…………また?よくあることなの、喧嘩(これ)"」

 

「うへ、月イチくらいでやってるよ〜。大胆なシロコちゃんと慎重なあの子じゃ意見が綺麗に割れちゃうんだよねえ。……ま、喧嘩するほど仲がいいってことで」

 

 

 横で何か小鳥遊さん達が話しているのは聞こえるが、聞こえるだけで内容まではまるっきり頭に入ってこない。僕がAと言えば砂狼さんはBというし、砂狼さんが1と言えば僕が2という。なんでこの人は、こんな不法(アウトロー)な方向にだけ頭が回るんだ。その頭を普段の対策会議から発揮してほしい。

 気がつけばお互い肩で息をするほどヒートアップしてしまっていて、引っ込みがつかなくなってしまっていた。それは砂狼さんも同じことだろうが。

 

 

「ちゃんと思考した上で、ヤバい提案をしてくるのはなんなんだ……!一応、筋が通ってなくはない話もあるのが腹立たしい……!」

  

「ん、アビドスに拾われてよかった。私がゲヘナに拾われていたら、大変なことになっていた」

 

「冗談に聞こえない……。そうじゃなくて、リスクとリターンを考えろって言ってるんだよ、僕は!」

 

「考えた上でやった。リスクがあるのは承知してるけど、でもそれを上回るリターンがあると思った」

 

「そのやり方じゃ、失敗したらリスクだけを丸ごと背負わされるだろ!?」

 

「でも、そんなこと言い出したら何もできなくなる……!今回に関してはこれが必須で、最適解だった……!」

 

「そもそも違法行為に全面肯定できるか!?どうせやるなら、やり方を考えろって言ってるんだ。失敗した時の事も考えて動け……!()()()()()()()()()()()()()()……!」

 

「………………いつにも増して、分からずや……!」

 

「こっちの台詞だ……!」

 

 

 またいつものパターンだ。お互いの主張がお互いに平行線になって、交わらない。今まではなんだかんだ最後には収まるところに収まっていたのだが、今回ばかりはどう収拾を付けたものか。

 どうするにせよ、僕も砂狼さんも頭に血が昇ってしまっている。気がつけば言葉遣いも崩れてしまっていたし、砂狼さんも威嚇しているたの状態は会議どころではないだろう。先生達には申し訳ないが、少し頭を冷やす時間をもらおう。深く息を吐いて対策委員会の教室の扉に手をかけた。

 

 

「…………もういいです。僕はまた砂漠に行きますので、何か用があったら連絡してください。明日、また顔を出しますよ」

 

「あ、ちょっと、先輩!?」

 

 

 黒見さんが引き留めようとしてくれたものの、頭に熱が残っている今は勘弁してほしい。教室から身体を半分ほど廊下に出したところで、一秒でも早く外に出たいと思っているはずの僕の足を止める言葉が聞こえてきた。

 

 嗚呼、今ほど耳がなければ良かったと思ったことはないだろう。

 

 

「…………行ったところで、直ぐに何か変わるわけでもないのに」

 

 

 空気の凍る音というのを、初めて聞いた。振り返れば先生も、十六夜さんも、黒見さんも、奥空さんも、全員が固まっていた。砂狼さんも少し遅れてのリアクション。自分で自分の口を抑えて顔を青ざめさせている。

 

 唯一、小鳥遊さんだけがこの場に置いて冷静に言葉を発していた。それは間違いなく砂狼さんを嗜めるためのもので、こんなに低い小鳥遊さんの声を随分と久しぶりに聞いた気がする。

 

 

「――――――――シロコちゃん」

 

「…………うん……わかってる。あの、…………ごめん、今のは……どう考えたって、言い過ぎた。貴方は私達のためにずっと頑張ってくれてるのに、その」

 

 

 頭に血が昇っていた先の表情とは真逆に、冷水でも浴びせられたかのような表情をしている砂狼さん。……そんな顔をするくらいならば、最初から口にしないで欲しかった。だが、彼女の言葉よりも表情よりも何よりも、その言葉を否定できないという事実の方が心臓を締め付けてくる。せめて僕が言い返すことができれば、彼女はもっと楽だったのだろうに。

 

 

「……そんな顔しなくても、別に僕は気にしていませんから。…………では、行ってきます。いつも通り、下校時刻までには帰りますので」

 

 

 その日はただ意味もなく、砂にスコップを突き立て続けていた。

 

――――――――――――――――

 

 翌日。物音を響かせていた教室の扉を開けば、呆然と立ち尽くしている砂狼さんと十六夜さん、そして先生の姿があった。それは「棒立ち」という表現が正しく、特に砂狼さんは僕の顔を見るや悩んでいるものから気まずそうな表情に切り替わる。床には机やら椅子やらが幾つか散乱していたが、何かあったのだろうか。

 

 

「…………何やってるんですか、皆さん」

 

「"ちょっとね。私が足を引っ掛けて、机や椅子を倒してしまったんだよ"」

 

 

嘘だ。それなら先程、廊下ですれ違った小鳥遊さんも手伝っているはずだ、面倒くさがるような言動こそ多いもののあの人は基本的に面倒見がいい。もしや小鳥遊さんと何かあったのかもしれないが、そうだとしても三人の様子を見る限り話してくれる気はないのだろう。

 まあ、隠し事の一つや二つあって当然か。僕も隠し事など散々してきたのだから人のことは言えまい。先生には「そうですか」とだけ返して、近くに倒れていた椅子を拾い上げる。

 

 

「では、さっさと片付けてしまいましょう。もうすぐ会議も始まりますからね、遅れたら奥空さんにどやされますよ」

 

「………………うん」

 

 

 相変わらず歯切れの悪い砂狼さんの返事。どう考えても昨日のことを引きずっているのは明らかだ。銀行強盗を実行したところで何ともなかったくせに、たった一つの失言は気にし続けるんだな。相変わらずよく分からない所で繊細な人だ。

 椅子と机を並べながら、大仰に溜息をついて砂狼さんに向き直る。

 

 

「昨日の事なら、気にしないでください。お互い、売り言葉に買い言葉だったんですからね。砂狼さんがそんなつもりじゃなかった事くらい分かってます」

 

「…………でも、……あれは、言っちゃいけないことだったから……」

 

 

 顔を伏せる砂狼さん。別に、一夜明けて冷静になった今ならどうとも思わない――というのは流石に嘘になってしまうが、彼女に思うところは無いのは本当だ。件の発言にしたって、僕が結果を出すことさえ出来ていれば言い返せた言葉なのだから、間違ったことは言っていない。

 しかし、妙に自罰的になっている彼女はそれを言ったところで納得しないだろう。というか、していない。

 朝から二度目のため息をつきながら、鞄からカロリーバーの空箱を取り出して振ってみせる。それは僕のお気に入りのものだが、アビドスで取り扱っている店が少ないのだけが残念だ。

 

 

「…………いつも食べているこれを丁度切らしているので。後で一箱、奢っていただけますか?」

 

「え」

 

「勿論、僕も砂狼さんの好きなゼリー飲料を二つほど奢ります。…………それで、お互い昨日のことはなかったことにしませんか。僕も、熱くなって言い過ぎてしまったのは確かなので」

 

「…………それで、貴方はいいの?」

 

「いいも何も、砂狼さんとの喧嘩なんて今に始まったことじゃ無いじゃないですか。納得してくれたなら、早く行きましょう。本当に遅れてしまいますよ」

 

 

 捨てるゴミ箱も近くになかったので空き箱を雑に鞄に押し込みながら、ちらりと視線を先生と十六夜さんに向ける。すると、先生は大きく頷いているし十六夜さんは両手でサムズアップをしてくれている。なんだそのポーズ。多分、「オッケーです」みたいな意味なんだろうが、十六夜さんも大概リアクションが独特な人だ。

 言葉に詰まっていた砂狼さんは、数秒迷う素振りを見せてからようやくその首を縦に振った。

 

 

「…………分かった。…………ありがとう」

 

 

 そして漸く、僕たちの一日がまた始まる。

 但し――この日はいつにも増して、問題だらけの一日となる事を今の僕たちは誰も知らなかった。

 




ぽろっと口を滑らせるのはセリカかシロコだなって。
ノノミやアヤネは性格的にないし、ホシノは周りのことをめちゃくちゃ見てるので。勿論、我々の先生はそんなこと言わない。アビドスの置かれている実情が銀行の一件から見え始めてしまったからこそ、シロコも余裕が無くなってきたのかもしれません。

ところでこれ書いてて思ったんですけども、この流れでホシノの退学届見つけるの、シロコ'sメンタルもヤバくないか。
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