脇役な僕と先生と予測不能な彼女と姫君達 作:ぽけぽっぽ共和国
そして推敲とかまだ終わってないよぉ!!!でもこの話は設定に影響ないので出しちゃうもんね!!!
そしてリクエスト期間ちょっとだけ伸ばします_(:3 」∠)_
よければ活動報告の方覗いてくださいませ。
8th.直情的な姫君と僕.
場所をトリニティ総合学園正門前。とある人物と待ち合わせをしているものの、現在時刻はX時Y分。既に半刻ほどの遅刻をされている。まあ、あの人が時間にルーズなのは今に始まった事ではないし、これくらいは覚悟の上だ。
しかし周りからの視線がかなり痛い。キヴォトスで男子生徒というだけで珍しいのは承知の上だが、トリニティでは出入りする機会が多かったからか、最近は好奇の目が和らいでいた。だというのに、今日は例の「
とはいえ悪いことばかりではなく、待っている間に正義実現委員会の方とも話すことが出来た。シスターフッドには以前世話になった事があるものの、トリニティの組織の中で唯一親交のなかった正実と縁が出来たのは素直に嬉しいことだ。何となく正実のイメージカラーは黒だと今までは思っていたが、その子はどちらかというとピンクが似合うような子だった。多分、髪色のせいもあるのだろうが。
ちょうどピンクのことを考えていたからだろうか、正門を抜けてきた似た色の髪の生徒が小走りで駆けてくるのが視界に映った。少し左右を見回しているのに気がつくと、僕は手を挙げながら声をかけた。
「こっちです、聖園さん」
「あ、ごめんねぇ!今日デートだってナギちゃんとセイアちゃんには言ったのに中々離してくれなくて……って」
おい馬鹿、頼むからその単語を使わないでくれ。自分がティーパーティーのホストである自覚があるのかないのかは知らないが少なくとも今の一言で周りの視線は増えたし、なんならヒソヒソと内緒話をしている声まで聞こえてきた。ああ、漸くこの視線から解放されるとばかり思っていたのに、容赦なく地雷を踏んでいけるのはいっそ才能かもしれない。
此方の苦悩など彼女には伝わるはずもない。聖園さんはその愛らしい眼を丸くさせながら、その視線を僕のバイクに向けていた。
「……………………それ、バイク……?」
「何驚いてるんですか。白馬で来いって言ったのは貴女でしょう」
流石にこのキヴォトスで本物の白馬を用意するのは無理だった。百鬼夜行にも一応出向いて探してみたが、やはりどうにもならないものはどうにもならない。確かに馬とバイクではとても似つかない代物ではあるが、これで何とか許してもらえないだろうか。
「いや言ったけど……まさか本気にするとは思わないじゃん……?しかもちゃんと
「ええ。このバイク、元は黒ですよ」
「えっ、でもこれ」
「ちょっと特殊な塗料を使ってリペイントしました。明日には黒に戻ってますよ。……もう一度言いますが、白馬で来いと言ったのは貴女ですからね」
これに関してはミレニアムの科学力ならではと言ったところか。折角お気に入りの色をした格好いいバイクを完全にリペイントしてしまうのは心情的には勿論のこと、用意してくれた調月会長やエンジニア部の皆さんの事も考えるとやはり気が引けた。とは言え黒のバイクで迎えに行ったところで聖園さんの指定していた「白馬」とはならないだろう。
そういうわけで、「24時間立つと成分が揮発して色が抜ける塗料」を使わせてもらった。光沢は少し残るかもしれないが、それも洗車してしまえば問題ない。便利なものだ。
「………………つまり……今日一回、私とのデートのためだけに、バイク丸ごとリペイントしたの!?そんな塗料使ってまで!?」
「そうですが。それなりに大変でしたよ」
まあ便利なだけあって、塗料の値は相応のものだった。金銭的にダメージは受けたのは勿論のこと、一人で大型バイクを丸ごとリペイントするのは肉体的にもキツいものがあった。特に僕はヘイロー持ちに比べて圧倒的に体力がないのだから。
…………手伝って貰えばよかったのに、そう思ったかもしれないが誰にどう説明して手伝いを頼めというのか。「他の女とデートするためにリペイントを手伝え」と言うのは、聖園さんとも頼む側とも、そう言う関係では無いにしろ嫌過ぎる。ギリギリ頼めそうな友人に関してはミレニアム外。ミレニアムの生徒で頼めそうだったモモイさん達は何やら忙しそうだったが、恐らく査定に出すゲームでも作っているのだろう。
では先生は?答えはノー。ただでさえ忙しい先生に、たかがリペイント作業に付き合わせられるか。あの人なら嬉々として手伝ってくれると思うが、それはそれで頼む側としてあまりに気が引ける。
さて。いい加減、人目を引いている事も含めていつまでも正門前で話をしているのも他の生徒の迷惑になってしまう。予備のヘルメットを聖園さんに投げ渡しながら、「
「今日のデート先は決めてありますが、聖園さんに何処か行きたいところがあるなら優先しますよ」
「…………ううんっ、じゃあ今日はエスコートお願いしちゃおうかなッ。安全運転でお願いね?」
そそくさと後ろに乗った聖園さんが、ヘルメットを付ける音がした。前々から感じているが、果たしてヘイロー持ちにヘルメットが必要なのかどうか疑わしい。だが、(一応)交通法的に譲れない。どうあれルールはルール、ごく僅かな例外を除いて可能なのであれば守るべきだ。
しかしこのキヴォトスで安全運転とは、聖園さんも中々に冗談が上手い人だ。僕にプロレーサー並みの運転技術でも求めているのだろうか?
「…………出来るだけ気をつけますが、キヴォトスなので。事故らなくても事故られる可能性はありますよ」
「……と、トリニティなら比較的安全じゃないかなあ」
「いえ。デート先はトリニティ区内ではありませんから」
首を傾げる聖園さん。僕がクラッチに足を掛け、エンジンの音を鳴らせば腰に聖園さんの腕が回る。……何故だろう、一之瀬先輩の時は背中に当たる感触が気になって仕方なかったのに、聖園さんの時は僕の腰が締められた時に千切れないかどうかの方が不安になってしまうのは。いや、流石に失礼か。
軽く首を振り、バイクを発進させると目的地を口にする。僕が示せるデート先なんて限りがあるし、その中で彼女に喜んでもらえそうな場所はこのくらい。
「――――アビドス地区に、行きましょう」
――――――――――――――
「おぉ……!これがクラゲってやつ?」
「いえ、これはクリオネというそうです。……何が違うんでしょう?」
「さあ?ま、可愛いからなんでもいっか!」
縦に伸びた水槽の中を上下にふわふわと揺れている小さな生き物を二人で眺めながら歩く。紅い核みたいなものがなければ、水に透けて見えないのでは無いだろうか。そう思うほどにクリオネなる生き物は小さく、見え辛いものだった。
しかし深海魚エリアに何故こんな生き物が……。この見た目で魚なのか?それとも深海に住んでいるから一緒くたに展示されているだけなのだろうか。このエリアでの僕のお気に入りは、やたら呑気にしている巨大な鮫だったが聖園さんはお気に召さなかったようで「ちょっと怖い」と言って水槽から離れていた。銃弾が怖く無いのに水槽の中の生き物は怖いのか……。
「それはそれっ、これはこれだよ。君だって蜘蛛が顔の前に降りてきたら怖いでしょ?」
「それは、確かに。生き物相手に使う怖いという言葉は、殆ど恐怖感というより不安感に基づきますからね……」
「や、そんなに難しい話じゃなくって……あ、ここからペンギン館だって!私、ペンギンは見たことないかも」
「僕もです」
ペンギン館に入るとすっかり聖園さんはガラス前に張り付いてしまった。随分とはしゃいでいるように見えるが、楽しんでくれているのなら連れてきてよかった。
いい加減に何処にデート先を決めたのか白状すると、此処は「アビドス・アクアリウム」だ。
実を言うとアビドスにはひとつだけ、アクアリウムが存在する。しかも熱帯魚館、深海魚館、その他クラゲ館、ウミガメ館etc……様々なエリアがあり、かなりの規模となっている。尤も開館したのは最近の事で、オーナーが何を思って砂漠地帯であるアビドスでわざわざアクアリウムを出そうと思ったのかは知らないが、好評なのか潰れる気配はまるでない。かく言う僕も初めて此処に訪れたが、館内は綺麗だし展示されている生き物の種類も多いし、成る程、他の地区から遊びに来る人もいるわけだ。
一応、無料チケットも存在しているようだが入手方法は図鑑を買っての抽選方式。わざわざ図鑑を買って運に任せるよりも、多少高くても素直にチケットを買った方が良いと思う。まあ、図鑑は手元に残るものだし、一発で当てる自信があるならやってみても良いんじゃ無いだろうか。
「でも、なんでアクアリウムだったの?楽しんでるけど、他にも君なら良い場所知ってるんじゃない?それこそミレニアムとかで」
「博物館や美術館ならありますが、前者は聖園さんの興味を惹ける気がしなかったんですよ。後者はトリニティにもありますし貴女は飽きているんじゃないかな、と。他には植物館も考えましたが……花の匂いは思った以上に強いので、聖園さんの服に匂いを付けたりしたくなかったのと、単純に匂いのせいで体調不良になる可能性がありますから」
あとは百鬼夜行だが、此方も聖園さんはあまり興味もないだろう。しかし忍者体験出来る施設だったり、からくり屋敷だったりが存在すると聞くし、個人的にはいつか行ってみたいものだ。そういうのは先生が好きそうだし、もし先生が休みを取れるようならばリフレッシュを兼ねて誘ってみても良いかもしれない。一応それ以外では温泉街もあるらしいが、恋人でもない女性を誘うのは不適切な気がしたので今回はスルーさせてもらった。
…………ゲヘナ?論外だ。聖園さんは大のゲヘナ嫌いなので、最初からデート先には外してある。
「それに貴女はD.U.のモールでゲームして遊ぶよりも、アクアリウムくらいロマンがある場所を歩く方が好きでしょう……って。なんですか、その顔」
なんと形容したものか難しい表情を浮かべていた聖園さん。聖園さんの視線はいつの間にかペンギンの方ではなく此方を向いており、先程まで彼女と目があっていたペンギンはガラス越しに首を傾げて手(羽)を上下させている。可愛いなこいつ。
「…………ねえ、バイクのことと言い、私のこと好き過ぎない?」
「嫌いな相手にここまでしませんが。というかデートの件は貴女が言い出したことでしょうに」
「いや、そうなんだけどそうじゃなくって……」
聖園さんが何が言いたいのかよく分からないが、こういうのはいつもの事だ。直情的で感情的、良い意味でも悪い意味でも感情を下手に言語化したりしようとせず、感情のまま表に出す事ができるのが聖園さんだから。
ただ今回はちょっとその感情が読めない。デートと言っても、少しやりすぎだっただろうか。恋人関係でない男女でアクアリウムというのも世間一般では、若しくはトリニティではあまりよく思われないのかもしれない。今後は気をつけよう。
「トリニティに美術館多いのも、よく知ってたね?」
「ああ。その辺は
少し前の話になるが、実を言うとデート先の相談をしたのも、アビドスの菓子の件で相談したのもカズサだ。世の中、「本」に無い部分は奇特なもので、甘いものが苦手な僕が放課後スイーツ部と関わりを持つとはよもや思わなかった。あの悪友は今頃も、仲間と甘いものを探してふらふら歩いているのだろうか。
「……………………………………カズサ?」
「カズサは杏山カズサの事ですよ。トリニティの放課後スイーツ部に所属している方で、友人なんです。気難しい面もありますが、良いやつです」
「…………ふぅん……その子の事、呼び捨てにしてるんだ。君にしては珍しいね」
「まあ、そうですね」
大体のヒトは苗字に「さん」を付けて呼んでいる自覚はある。聖園さんもその例に漏れず、だ。僕が呼び捨てにしている人間はミレニアムに一人、ゲヘナに一人、トリニティに一人、百鬼夜行に一人、あとはハイランダーに二人の計六人くらいか。おっと、モモ野郎の事は巫山戯て呼んでいるだけなのでこれにはノーカウントだ。
ゲヘナとハイランダーの人物に関しては単に「さん」付けで呼びたくないから呼んでいないだけ、ミレニアムの彼女に関しては「さん」付けで呼ぶと拗ねるから呼んでいないだけ。また他にも例外は数人いるが、親しみを込めると言う意味で呼び捨てにしているのはトリニティのカズサと百鬼夜行のイズナ、この二人くらいのものだろう。
しかし何故、さっきから悪寒がするのか。アクアリウムの冷房が効き過ぎているのか、若しくは風邪でも引いたかな。そんなことを考えながら意識から悪寒を締め出して、ガラス越しに先程のペンギンと手を合わせていれば不意に横腹を聖園さんに突つかれた。
「私のことも呼び捨てで良いんだよ?」
出来るか。
「……ティーパーティー所属、歳上、貴女に世話になった回数を考えるとそんな無礼はとても無理です。諦めてください」
「むう」
「そんなふくれっ面をしても駄目です。ほら、行きますよ」
これではどっちが歳上か分からない。未だ納得していないような聖園さんを宥めながら館内を歩いていれば、館内の時計で時間を知ることになる。残念だが、門限やトリニティに帰るまでの時間を考えると遊ぶのはここまでだろう。アビドスからトリニティまでの距離は結構ある、バイクで行き来するとなると信号などの時間も考慮しなくてはならないのだ。
「えー、せめてイルカショーは見て帰ろうよ。門限は……ちょっとくらいなら、多分?」
「桐藤さんに怒られますよ。あと、イルカショーは結構水も飛びますから濡れる可能性が高いです」
「え、ちょっと濡れるくらい良くない?」
「聖園さんの制服だと白いので透けます。やめた方がいいと思いますが」
「………………えっち」
「理不尽では?」
胸元を両手で庇いながらジト目を向けてくる聖園さんに抗議する。えっちにならないように辞めておけと理由をつけて提案したのに、それでえっちと言われて仕舞えば僕は果たしてどうしろというのか。あとその格好はやめて欲しい、胸を強調させるな馬鹿。
小さく溜息をつきながら、その桃色の頭にぺしんと手刀を叩き込む。「あう」と声を上げる聖園さんだが、貴女がこんな程度で痛みを感じるものか。
「…………別にまた来ればいいでしょう。イルカショーにしたって今回しか無いというわけでも無いんですからね」
「それって、また今日みたいに此処でデートしてくれるってこと?」
「なんでですか。それこそアクアリウムなんて桐藤さんや百合園さんを誘えばいいでしょうに…………」
膨れっ面に戻ってしまった聖園さん。前々から気にはなっていたが、もしかして聖園さんってティーパーティーの二人以外に友人が居ないのか?それはそれでなんだか心配だ。狭く深くの交友関係が悪いとは決して言わないが、二人だけというのはどうなのだろう。いや、流石に余計なお世話だな。彼女は彼女なりの生き方がある。
…………僕を含めろと言われそうだが、果たして友人と名乗っていいものか。休日に遊びに出かけるくらいの仲なのだから友人と思われている、と信じたい。これで友人ではないと言われたら泣く自信がある。
どうでも良いことを散々考えてしまったが、聖園さんはこうなると「Yes」と言うまで駄々を捏ねるだろう。もう一度小さく溜息を吐きながら、僕は折れる事にした。
「………………機会があればね」
「やった。言質、取ったからね」
「だから、機会があればの話です」
そんな機会がなければこの口約束は無意味なもの。仮にその機会があったとしても、聖園さんと遊びに行く事について僕にデメリットは一切ないノーリスクな約束。
耳元で砂狼さんが「そういうところ」と囁いたような気がするが、間違いなく幻聴だ。
帰り道、バイクに乗る聖園さんがやけにご機嫌だったが、楽しんでくれたようで何よりだ。…………最後の最後、聖園さんのお強請りに負けてグッズショップだけには寄ったせいで帰りがトリニティの門限ギリギリにはなってしまった。速度違反になりかけたのは此処だけの話。
そしてトリニティからミレニアムへの帰り道。
川から人が流れてきた。嘘だろ。
ミカがどんな顔してたのか、ご想像にお任せします。