脇役な僕と先生と予測不能な彼女と姫君達   作:ぽけぽっぽ共和国

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よう、五年振りだな……。

共和国です。9月中は死んでましたが、先日ライブに行ってメンタル回復できたので何とか書き上げられました。
随分間が空きましたが、やっとパヴァーヌ、エデン条約編の開始です。久しぶりというのもあって誤字脱字や矛盾も目立つかもしれませんが、修正を都度かけていきますのでご容赦ください。


「時計仕掛けの花のパヴァーヌ/エデン条約編.First」
13th.ゲーム好きな彼女達と僕.Ⅱ


 

「たのもー!」

 

 がしゃんと音を立てて勢いよく開かれる扉。

 同時に聞こえてきた声の主が誰かなど、顔を見なくたって分かる。快活でやや幼さを残しながらも癖がなく、良く通る高い声――モモイさんの声だった。確かに、この相談部屋は何時(いつ)でも基本的には開けているものの、よりにもよってくるのが今なのか。

 

 相談室に人が来る、それ即ち僕の仕事が増えると言うことだ。ただでさえクソ忙しいこの時期、更に仕事が増えたという事実に心の方が耐えられず、『ごん』と鈍い音を立てながら机に額を落とすような形で突っ伏してしまった。

 モモイさんが来るということは確実にゲーム開発部絡みの相談だろう。何度か彼女が来たことはあるが、ことごとく突拍子もない相談内容だったのを覚えているから疲労感の方が先に来てしまった。まともな相談事なら別に構わないのだが、彼女が持ってくる話は内容が酷すぎる。

 

 超がつくほどの低予算で3Dゲームを作る方法を相談してくるのは可愛いほう。一番最悪だったのは、早瀬さんをRPGゲームのラスボスとして登場させる許可をとってくれという物だった。出来るか馬鹿、自分でやってくれ。

 

 そんな経緯や現在の繁忙もあって雑に扱うことを決めた。

 勿論、これはモモイさん相手なら言葉のプロレスをしても許される仲だと思っているから、というのもあるが。ラインを越えない範囲でなら、幾らでもプロレスを仕掛けてやるつもりだった。ラインを越えたら?謝罪するに決まっているだろう。

 

 

「そんなわけで、頼まないでくださいモモ野郎」

 

「いつもより五割増しで塩対応じゃない!?なんか嫌なことあったの!?……ってなにこの資料の数、山出来てんじゃん!」

 

 

「がびーん」というオノマトペを頭にくっつけながら、僕の机の上を見て叫ぶモモイさん。縦に並べたらモモイさんの背丈よりも分厚そうな書類を見ればそんな反応にもなろうものか。……僕は貴女が目視して驚いているその書類の山を片付けなけりゃいけないんだがな。

 

 今日のゲーム開発部は勢揃いだったのか、彼女の後に続いて相談室に入ってきたのは全員だ。レアキャラである部長の花岡さんまでいるどころか、初めて見る少女――床につきそうなほど髪を長く伸ばし、背中に馬鹿でかい銃を背負っている女生徒までもがいた。その少女は何やら物珍しそうに部屋の中を見回したり、忙しなく動き回ってはあちこち指でつついたり首を傾げていたりと奇行に走っている。……おいやめろ、コーヒーメーカーのスイッチを切ろうとしないでくれ。無駄にBluetooth機能だの自爆機能だのがついているせいで、再起に五分かかるんだ。

 

 

「この時期、セミナーが忙しいのは知ってるけど……これはまた凄い量だね……」

 

「お宝が埋まっている予感がします!アリス、探索を開始します!」

 

「やめてください」

 

 

 勝手に人の仕事机を見るんじゃない、モモイさんだけならともかくミドリさんまで。

 普段ストッパー役になっているミドリさんまであっちに回ればもう止める術はない。部長という肩書きで止められそうな花岡さんはおろおろしているが、あの人の性格的に止めさせろというのは酷だろう。しかも今度は二人に混ざって、僕の知らない長髪の少女まで興味津々に机を漁り始めた。やめんか馬鹿ども。

 

 ……本当に見られて違反になるようなミレニアム関係のものは個別に封をしたりデータ化させていたりと紙媒体では残していない。その他の分はPCにデータも残っているし、汚されたり、最悪破れたりしてもコピーし直せば済む話。なので正直に言って机を漁るくらいなら構わないのだがそれはそれ、モラルの問題だ。

 散らかる?ははは、この資料の山を前に散らかるも何も関係ない話。サイドテーブルまでぎっちりの書類だ、ちょっとやそっとじゃ誤差の範疇。

 

 しかし分かり易いことこの上ない。

 先の一人称で長髪の少女が誰なのか一発で理解できた。これであの長髪の少女が「AL-1S(アリス)」じゃなかったら何かの詐欺で訴訟できる気がする。

 

 

「こんなにいっぱい何の仕事があるのかな……そっちは……ミレニアムの部活の書類で。こっちは、レポートの封筒?」

 

「『神秘と因果、運命の定義』……?なに、哲学でもしてるの?ていうかサイド、作りかけのアクセサリーまで置いてあるし」

 

「そっちの書類は今日中にチェックして早瀬さん、生塩さん、調月会長、それぞれに提出する書類です。そのレポートは哲学じゃありませんし、外部の方へ個人的に渡さなければならないもの。アクセサリーは、一之瀬先輩のために作ってる奴です。それ触って壊したら撃ちますからね」

 

「アッ、ハイ」

 

「ミドリさんも。書類、汚しても構いませんが、その場合は早瀬さんに報告します。十中八九、雷が落ちますよ」

 

「アッ、ハイ」

 

 

 流石は双子。表情から仕草、声のトーンまで綺麗に何もかも同じで両手を上げた。成る程、発砲を仄めかして脅すのと早瀬さんの気分天気予報は同じ威力があるらしい。覚えておこう。

 

 

「ていうか、アクセサリーは別の部に頼んで作ってもらえないの?手芸部みたいな。君なら外部の学校とも知り合い多いんだし……」

 

「そう言うわけにもいかない事情があるんです。そのアクセサリー作りが現状、一番の難敵ですね」

 

 

 一之瀬先輩に渡すアクセサリーには、実はちょっとした仕込みをしてある。機械的なものなので下手に知識のない人間が触ると壊されかねないし、じゃあエンジニア部はどうなのかというと……うん。アクセサリーにおかしな機能をつけられそうで怖い。いや、根は真面目な人たちだ、無いと思いたいが暴走する時は暴走するからな……。ヴェリタスも考えたが、「本」で知ったこの後の物語(こと)を考えるとちょっと頼み辛い。エンジニア部に頼まない理由の半分も、同じ理由だったりする。

 

 そしてアクセサリー作りに苦戦している理由については、付ける人間が一之瀬アスナという人間だから。これに尽きる。

 

 

「………………一之瀬先輩が付けるアクセサリーですからね。あの顔面偏差値とスタイルに似合う物を作るのがどれだけ大変か……」

 

「……………………あ〜…………」

 

 

 間延びした声で頷くモモイさん。もう何度も話したかもしれないが、一之瀬先輩は顔が良い。スタイルも含めればモデルも裸足で逃げ出しておかしくないレベルだ。言動は兎も角として、見てくれに関しては顔を赤らめる余裕もない程に美人だと思う。

 そんな一之瀬先輩が付けて恥ずかしくない装飾品に素人が仕立て上げようというのだから苦労のほどを察して欲しい。壊されたら撃つと言ったのも半分は冗談だが、半分は本気だった。未だ途中だが、それに何時間かけてると思ってるんだ。

 

 完全にビビって固まってしまった姉妹を放置して、椅子を回転させて左に向き直る。そうするとどうだ、何をしたいのか棒立ちのままじっとこちらを見てくる長髪の少女とばっちり目が合った。

 ……少女の方は、あまりにも動かなさすぎてちょっと怖いくらいだ。さっき部屋の中を歩き回っていたとは思えない変わりよう。探索をしていた貴女はどこに行った。若干気圧されてしまった。

 

 

「……貴女がアリス……天童アリスさん、ですね。ゲーム開発部の状況は早瀬さんから既に聞いています。セミナー側である僕から言えることは少ないですが、どうか頑張ってください」

 

 

 しかしまあ、何故だろう。上手く言えないが、彼女を見ていると何とも言えない気分になる。良いとか悪いとか、気に入るとか気に入らないとかの言葉ではない。言語化が難しいが、なんというか、そう。郷愁――懐かしさのような何かを胸に感じてしまうのだ。

 だが、こんな感覚もすぐに上書きされる事となる。

 

 次の瞬間。今の今まで口を閉じて人形の様になっていた天童さんが放った言葉に、今度は僕が硬直する番だった。

 

 

「不思議です。貴方とは初対面のはずなのに……貴方を見ていると、なんだか……アリスは、懐かしい気持ちになってしまいます。

 

「――――――――――」

 

 

 感じたのは勿論、「驚き」だ。

 初対面の二人が揃って同じ感情をお互いに持っていた。だが、これは単なる気のせいだと「本」で分かっている。彼女の正体が生体パーツによって構成された超高性能なアンドロイドだと理解しているからこそ、この感情が気のせいだと断言できる。できる、はずだ。

 

 

「…………ミレニアムは広いので……何処かですれ違っていたかもしれませんね」

 

「むむむ…………」

 

 

 勿論、そんな事はあり得ない。

 何故なら「AL-1S(アリス)」が()()()()のはつい近日のこと。このミレニアムで間違ってもすれ違っていた、なんてことはあり得ない。あり得ないと分かっているからこそ、すらすらとこんな出鱈目が口から出て来てくれる。我ながら詐欺師の才能があるのかもしれないな、はは。

 

 さて。下らない考えは横に置いて、いい加減僕も名乗った方がいいだろう。

 苗字は漢字が二文字。名前はカタカナ二文字。このキヴォトスではなんてことない、珍しくもない名前。…………勿論、それはキヴォトスの男女比率を無視すれば、の話だが。案の定、予想通りの感想が天童さんからは返された。

 

 

「女の子みたいな、名前ですね?」

 

「気にしてるのでやめてください。……名前で呼ばれるのはあまり好きではありませんから、他の呼び方にしていただけるならどうぞ御自由に」

 

「――――ではっ、お兄様とお呼びしても良いのですね!」

 

「は?」

 

 

 全員の時間が停止した。当然、僕の脳も停止した。

 オニイサマ。どこの国の呼び方なのだろうか、随分不可思議な呼び方をするものだ。いや、そんなわけあるか馬鹿か僕は。思わず間抜けな声まで出してしまった。

 完全に混乱しているが、それも当たり前の話だろう。なんで僕は初対面の後輩に「お兄様」と呼ばれているんだ?その呼び方をした当の本人が満足そうにしているのも含めて、本当に意味がわからない。なんでノータイムでその呼び方が出てくるんだ。

 

 

「そう呼びたいのです!アリスは、この呼び方が一番納得できるので!」

 

「…………す、好きに呼べとは言いましたが流石にちょっと。聞く限り天童さんはRPGゲームがお好きなようですし、僕のことは……そう、村人とでも呼ぶのが丁度いいんじゃないでしょうか。せめて先輩とか……」

 

「嫌です!」

 

「嫌です!?嫌ですってなんだ!?ちょっ、待っ……その呼び方だと色々誤解されますから……!皆さんも黙ってないで何とか言ってくれませんか!?」

 

 

 思わず椅子から立ち上がってしまった。流石に勘弁してほしい、血の繋がりも何もない後輩に「お兄様」と呼ばせているのが知れたら僕がやばい。主に社会的な面でやばい。つい最近、牛牧さんの件で色々と拙いことになったというのに、これ以上こんなことでメンタルを削られてたまるものか。

 助けを求めるように他のメンバーに視線を向けてみれば、彼女達は僕と天童さんを見比べているではないか。なんで。

 

 

「でもさあ……なんか、めっちゃくちゃ似てるよね、この二人。ミドリもユズもそう思わない?」

 

「う、うん……性格は全然違うけど、見た目だけでいうなら確かに……」

 

「髪の色とか眼の色とか……これは貴方が細いからだとは思うけど、顔立ちも何となく似てる。並んだら本当に兄妹みたいな感じはする、かも……」

 

 

 嘘だろ。

 確かに僕も天童さんも髪色は浅い黒だし、瞳の色は水色に近い。だが共通点なんてその二つだけだ。顔立ちが似てるなんて単なる主観でしかないし、何より「本」に書かれている天童さんの正体を考えれば僕と血が繋がっている訳がない。マジでただ髪と瞳が同じ色というだけだ、そんなので兄妹判定されるのは緩すぎる。……天童さんも「ほら!」みたいな顔をしないで欲しい。貴女の兄になった覚えは、n■ ek■■s■tas 、。

 

 

『――――私の、――――な、――――■■■』

 

 

 …………………………視界に、ノイズが走る。

 

 見えているもの全てがテレビの砂嵐画面の様にバグを起こし、同時に脳内が焦げ付く様な痛みと一瞬だけ激しく揺らされる感覚。吐き気が喉の奥から競り上がり、口を押さえずには立っていられない。たたらを踏んで、倒れることだけは何とか堪えることが出来た。

 

 

「…………え、なに、どしたの?具合悪い?」

 

 

 余程酷い顔色をしていたはずだ。一瞬ふらついたのを見られたか、それとも顔色で察されたのかは分からないがモモイさんが声を掛けてくれた。だが、不思議なことに先程の最悪の体調不良は一瞬だけ。……幻聴も聞こえたし、多分疲れているのだろう。しばらくの間は珈琲を控えて、ミレニアム・プライスの時期が終わったら大人しく一日休みでも貰おうか。

 

 

「…………いえ、何でもありません。……天童さんの呼び方についても、好きに呼べと言ったのは僕の方なので、もう諦めます……」

 

「諦めちゃうんだ……」

 

「どうせ言っても聞かないでしょうから。出来たら外でその呼び方は勘弁して欲しいところですけれどね……それで?結局、何の要件だったんですか」

 

「あ、そうだその話!ゲーム!売らなきゃ廃部になっちゃう!」

 

 

 ああ、そういえば早瀬さんから聞いたのはそんな話だったな。

 

 正確にいえば、ミレニアム・プライスで結果を出さなければ廃部という話だったと思うが、彼女達が査定に出すものがゲームである以上、「売り上げ」という形での評価はある程度必要になるだろう。

 まあこれに関しては、散々口酸っぱく部活としての体裁は保てと言ってきた訳だし、ギリギリになって動く羽目になっているのもゲーム開発部側の不備。ぶっちゃけ自業自得と言えばその通り。

 とはいえ僕の仕事に「他生徒の相談に乗る」事が含まれている以上、放っておくわけにもいかない。それに解決策とまでは言えないが、アドバイスくらいなら出来るのも事実なのだから。

 引いた椅子に軽く座り直し、行儀悪く足を組みながら僕は言い放った。

 

 

「結論から言うと、皆さん、売り方が悪いんですよ」

 

「…………売り方が、悪い?」

 

 

 ゲーム開発部のゲームは確かにクソゲーだらけだ。

 しかし、何もかも全てが本当にクソというわけでも無い。寧ろ三人でゲームを作っていることを考えれば善戦している作品があるのも事実だ。いや、取り繕ってもクソゲーの方が多いのも事実なのだが、その全てが絶望的に売れないということは無いはずなのだ。

 それにクソならクソで売りようはある。だが、この辺の話は口で言っても分からない部分も多いだろう。下手に語彙だけで伝えるより、目にした方が分かり易いか。

 

 

「…………確か、ゲーム開発部の部長は花岡さんでしたね?」

 

「へ?は、はい、そうですけど……?」

 

「明日の放課後、時間はありますか」

 

 

 名指しが不意打ちだったからか、面食らった様な表情をしていた花岡さんは小さく首を縦に振る。ゲーム開発の途中であるなら作業に追われて一秒の余裕だってないと思うが、頷くのであれば、そのゲーム開発自体が行き詰まっていると見るべきか。思ったより深刻そうだが、彼女達はどうにかするのだろう。

 

 だって、「C月 D日 ゲーム開発部はミレニアム・プライスで特別賞を受賞する」と決まっているんだから。僕の出る幕なんか、本来なら何処にもない。

 

 

「……結構。では明日の放課後、春葉原に行く準備をしておいてください」

 

「えっ」

 

「僕のバイクだと全員は乗せられませんので。代表として、一緒に来てもらいます」

 

「えっ」

 

 

 まあ、それはそれ。

 仕事はきっちりやらせてもらう。「本」がどう教えてくれようが、仕事をサボる言い訳にはならないのだから。

ゲーム開発部の面々がぽかんと阿呆鳥みたいに口を開けていたが、次の瞬間――――部屋の中に、三人分の絶叫が響き渡った。

 

 

「「「えええぇええぇぇぇえぇ!?!?」」」

 

 

 …………うるさい。

 静かにしている天童さんには、飴をあげましょうか。




途中の部分、文字化けしてませんよ。お使いの端末は正常です。
何でノイズなんか走ったんでしょうね()

ということで次回、まさかのユズデート回です。そろそろ刺されそう。
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