脇役な僕と先生と予測不能な彼女と姫君達 作:ぽけぽっぽ共和国
X(旧Twitter)開設するかもしれないっぴ。そうなったらお伝えします。
追記: 原作に於けるクレジットと意味合いが異なりますが、今作は作中での通貨単位をクレジットとして有ります。これはもしかしたら後々変えるかもしれません。
翌日。
その日の仕事を終えた放課後、校門にバイクを止めて待っていたらダンボール怪人が運ばれてきた。もう一度言おう、ダンボール怪人が運ばれてきたのだ。
頭の先から足の先まで「みかん」と書かれたダンボールに詰まっている何かはガタガタと揺らされながらモモイさん、ミドリさん、天童さんに引き摺られてやってきた。しかもダンボール怪人を置くだけ置いて二秒後、脱兎の如く逃げていった。去り際にモモミド姉妹が「あとはお二人でごゆっくり〜!」などと抜かしていたあたり、絶対に勘違いされている。
まあ、それはそれとして。
「…………何やってるんですか、花岡さん」
ダンボール怪人の頭をかぽりと外してやれば、中から現れたのは髪を乱した花岡さんの小さな顔。
人と顔を合わせるのが苦手だとは分かっているものの、まさか外に出掛けるのにダンボールで顔を隠すほどだとは思わなかった。部長だからと代表に指名したが、ちょっと可哀想なことをしたかも知れない。……かと言って今日の真面目な話をモモイさんが最後まで寝ずに聞いてくれるかと聞かれたら不安しかない。天童さんも似たような理由で却下。ミドリさんなら大丈夫だとは思うが、あの場での僕の選択が花岡さんだったのだから今更言っても仕方ない。
怪人の身体を解体したら、中から出てきたのは見慣れた制服姿の花岡さん――ではなく、白のブラウスに黒のスカート。ブラウスの上にはオーバーサイズの上着にブレスレットまで付けていて。
……なんだかやけにめかし込んでいるが、多分、あの調子ではモモミド姉妹の仕業だろう。というか、学校が終わってから良く自宅まで着替えに戻る時間があったな。それとも、わざわざ放課後着るためだけに自宅から持ってきたのか。
いや、女性ならそのくらいの洒落っ気があってもおかしくはないのか?だとしたらなんでダンボール怪人になっていたのか。もう僕にはとても分からない。
「だ、だって……」
「だっても何もありません。……大方あの二人に唆されたんでしょうが、御洒落したなら隠すだけ色々と損です。特にそれが似合っているのなら尚更。素敵な私服ですね」
あと普通に考えてダンボール怪人をバイクの後ろに乗せるのは無理だ、普通に交通法違反で捕まるし事故る予感しかしない。
いい加減観念してくれたと思ったが、いざバイクに乗せたらここからが大変だった。恥ずかしがって腰に手を回してくれない。捕まってくれなければ、いかにヘイロー持ちであろうと普通に振り落とされる。僕は花岡さんがアスファルトに叩きつけられて転がる姿など見たくないが。
「恥ずかしいのはわかりますが、もう少し強く掴んでいてもらわないとバイクは出せませんよ……」
「…………こ、このくらいでしょうか……」
「何も変わってませんが」
このやり取りを二度繰り返して、これは埒が明かないと悟った僕は無言で花岡さんの手を掴んで腰に深く回させた。ただでさえ貴女は小柄なんだから、慣性で吹き飛ばされないようにしてもらわないと困る。
勿論、安全運転は心がけているが此処はキヴォトスなのだから、無茶な運転をせざるを得ない時がある。具体的には美食研や美食研や美食研が絡んだ時とか。
その後、目的地まで花岡さんは無言の石像と化してしまったが、静かで運転に集中出来て非常に助かったことを此処に記しておく。
――――――――――――
無事、事故を起こすこともなく春葉原についたわけだがバイクで来るにはちょっと遠かった。素直に電車を使えば良いかと思ったが、バイクで春葉原に来るのは初めてだったのでその辺りの時間感覚がよく分からなかったのだ。次から急ぎの時は電車で来れば良いと分かっただけでも良いだろう。
花岡さんは花岡さんでバイクに乗るのが初めてだったからか、降りる時に脚がぷるぷる震えていたのは小動物チックだった。
「や、やっと着いた……結構揺れるんだ……バイク……」
「…………そうですね」
そこについては貴女が恥ずかしがって結局はあまり強く掴まってくれなかったのも原因だが、黙っておこう。
生まれたての子鹿宜しくふらふらの花岡さんは数分もしたらちゃんと立てるようになってくれたし、スケジュールに支障はない以上、文句など何処にもない。
「それで……何処のお店にいくの?春葉原は偶に来るけど、こっちにはあんまりゲームショップは無かったと思う……」
不思議そうな顔をする花岡さんだが、そうか。そう言えば行先までは言っていなかった気がする。
……ゲームの話をするのなら普通はゲームショップかもしれないが、残念ながら今日は違う。学べる事がないとは言わないが、店頭にポンと並んでいるゲームだけを見てもどうにもならないだろう。これが店をやりくりする側の人間なら兎も角、あくまで彼女達はゲーム開発部。要するに第一次生産者の立場なのだから。
「いえ。僕達が行くのは、映画館です」
「…………え、映画館?」
「はい。因みにですが、もう見るものも決めてあります。チケットも予約済みですのでご心配なく」
ますます不思議そうな顔になる花岡さんだが、僕が財布から出したチケットを見て顔を青ざめさせる。安心して欲しい、僕も出来たら行きたくない。行きたくないが、これを見るのが一番わかりやすく僕の言いたい事を伝えられる作品なのだから仕方がない。
「……………………そ、それって」
「はい。ご存知でしょう?『デビル・クマ・アタック』」
「いや、え……勿論知ってるけど……なんで……?」
『デビル・クマ・アタック』とはどんな映画か。
端的に言うと「絶望的なまでのクソ映画」だ。未だ公開から×日しか経っていないというのに、凡ゆるメディアや口コミで「ここ数年で並ぶもののないクソ映画」「約2時間の時間と幾らかのクレジットを捨てたい人間が居るならカフェに行きなさい」「退屈だと感じた映画はいくつもあるが、画面を見るのが苦痛になるのは初めての体験だった」「0点をつけるのも難しい作品」etc……。もう僕が説明しなくてもお分かりいただけるはずだ。
「一応言っておきますが、僕の趣味じゃありませんからね。どちらかと言えばアクション系や特撮系が好みです」
「………………『決戦!ペロロジラ』のBlu-rayとか『仮面ホッパー』の書籍版、開発部の部室に持ってきてたもんね……」
花岡さんの言う通り、子供っぽいと思われるかもしれないがその通りだ。もし『決戦!ペロロジラ』を見たことがない人が居るのなら、是非レンタルでもサブスクでも探してみて欲しい。因みに僕のお勧めは無印だ、ペロロジラを倒したカイテンロボが親指を立てて海に沈んでいく姿は涙無しには見られなかった。
さて、上映時間まであと十分ほど。中で飲み物などを買う時間を考えれば、いい加減入らなくてはならない。……花岡さん、大丈夫です。倒れる時は一緒ですよ。はは。
――――――――――――――
結論から言う。
冗談でも笑えなくなった。酷い。酷すぎたと言う言葉さえ生温い。なんだあれ。……なんだあれ?
「…………やっと…………終わったね…………」
「…………流石は既に今年の映画ワーストワン決定と言われるだけはありましたね。正直、舐めていました……」
まさか映画一本見るだけでここまで疲弊するとは思わなかった。もうありとあらゆる全ての意味がわからない映画だった。最悪だ。
なんでホラーシーンに笑えない下ネタ絡みのギャグシーンを混ぜようとするんだ、俳優の顔も死んでたぞ。なんで突然死んでたやつが生き返って敵に寝返るんだ?かと思えば敵側のクマが一匹裏切って味方になるし、古い時代の設定なのにスマホが出てくるし、台詞は棒読み以下だし、セットも最低の作りだし、もう何もかもが最悪だ。低予算な以上セットは仕方ないにしても、設定くらいは守れよ。誰も何も言わなかったのか、制作中に……。
「こ、これで終わり?もう私、どっと疲れちゃったんですけども……」
「僕もです……ただ、映画はもう一本見る予定です。残念ながらその映画はもう公開期間が終わってますので、ネットカフェで見る事になりますが」
「……う…………こ、今度は私に何を見せる気なんですか……?」
「言い方。そう警戒しなくても、今度はちゃんと名作ですから」
警戒心剥き出しの花岡さんだが、もう仕方ない。あんなクソとさえ評価出来ないような映画を見せられた後なら、僕だって普通に警戒する。むしろ何も言わずにネットカフェに着いてきてくれただけ花岡さんの心が広いとさえ思う。
店員に勧められたのは男女で居たからかカップルシートだったが、それを否定してわざわざ部屋に変更をする手間さえお互いに面倒でスルーした。
その方が安いし、誰に見られているわけでもなし。普段なら当然変更を申し出ていただろうが、花岡さんが良いなら僕ももうそれで良い。一刻も早く他の映画で脳を消毒したいのだから。
部屋に案内されるや否や、PCを立ち上げて表示させたのは僕のお気に入りのアクション映画。
「……『レッド・スタッグ』?」
「ええ。此方は、きっと気に入ってくれると思いますよ」
再生ボタンをクリックすれば、直ぐにプロローグが始まった。未知の甲虫に選ばれヒーローの力に目覚めた青年と、その力を狙うヴィランとの戦い。王道な物語だが、僕がこれを名作と称したのには勿論それなり以上のクオリティがあるからだ。
靡く閃光のエフェクトや変身のカットイン、俳優の演技、そして緩急のついたストーリー。息を呑む展開とゆったりしたシーンの落差が良い意味で大きく始まりから終わりまで飽きさせない作り。気がつけば時間などとっくに経っており、花岡さんはエンディング・クレジットが流れた途端手を叩いていた。どうやら気に入ってくれたみたいで僕も安心だ。
「…………凄かった……ストーリーはちょっと王道すぎる気もしますけど、CGの作り込みはお金かかってるのぱっと見でも分かりました……なんでこれ知らなかったんだろう」
「だってこれ、全然
「………………えっ、売れてないって……ええっ!?こ、この映画コケちゃったんですか!?これが!?」
「ええ、それはもう見事に大コケです。制作費は確か三百億クレジットは超えていたと思いますが、収入って二百億かそこらだったかと」
あんぐりと口を開けている花岡さんは我に帰ると手持ちのスマホで「レッド・スタッグ」を検索。僕の言っている言葉が嘘でないと分かったのだろう、手元からぽろりとスマホを落として信じられないと言ったようにエンディングの終わりかけたPC画面を凝視している。
「…………な、なんで?どうして、これが売れなかったの……?」
「一言で言えば、宣伝不足です」
「せ、宣伝……?」
どんなに良いものを作っても、他人の目に留まらなければ意味がないのだ。極端な話かもしれないが、埋蔵金が良い例だろう。例え何千何億の価値があろうとも、人目につかないのではその価値は結局ゼロ。
ゲームに限らず商品というのは、「消費する人間」がいて初めてそこに価値が生まれるもの。勿論そこには例外も多分に含まれるが、今回はあくまで「ゲームをどうやって売るのか」即ち「どうやって儲けるのか」という話になる。
この「レッド・スタッグ」もその失敗例。これはCGに金をかけ過ぎて、キヴォトスでの宣伝に使う金がまるっきりなくなってしまったのだ。……制作会社もこれ以上金は出せないというギリギリまで粘っていたとの話だが、結果は前述の通り。
作品の内容どころか、花岡さんのように存在自体を知らない人も沢山いるという結末を迎えてしまった。少しやり方を変えていたら映画史に名前を残していたかもしれない作品だけに、本当に勿体無い。
「恐らくですが、皆さんはゲームを作るだけ作ってネットに公開、あとは放ったらかし。宣伝は殆どしてないんじゃないでしょうか?良い悪いはさておいて、遊んでくれる人だけが遊んでくれればいい、というスタンスで」
「う…………」
「勿論、趣味の創作ならそれも良いでしょうが今回は話が違いますからね。……面白いゲームを作れることと、物を売ることはまた別の話なんですよ」
散々貶してしまった『デビル・クマ・アタック』だが、実はアレでも怖いもの見たさがある客のお陰と低予算が相俟って黒字、『レッド・スタッグ』は赤字。
ここにある差というのは映画そのものにかけた費用の差や、一時的な評判の差だ。
悪「評」とて評価の一種。
どんな名作でも、どんな金をかけたとしても、人の目に留まらなければそもそもその評価自体を得られない。何処にどれだけ力を入れればいいというのか、好きなものを好きなだけ作ればいい趣味の創作とは違う。商いが前提の創作は、本当に難しいと感じるこの頃だ。
「それを踏まえた上で、花岡さんには……いえ、ゲーム開発部には二つの選択肢があります」
一つ、予算をギリギリまで削ってかつ最高に笑えるクソゲーに仕上げる事で話題性を獲得する。
二つ、……ゲームと宣伝のどちらにも向き合うことで、一過性のものではない評価を獲得する。
何方の選択肢を選ぶかは、彼女達の自由意志に委ねられた。だが、はっきり言って今回を凌ぐ
敢えて笑えるクソゲーを作るというのは難しいが、モモイさん達には既にその笑えるクソゲーを作ってきた実績が幾つもある。天童さんが加わったことでそれがどんなバランスになるのかはわからないが、極端に変化はしないだろう。元より話題性には困らない人達だ。
そして後者。これは、正直三重の意味できつい。
「面白そうなゲーム」なんてそれこそ過去作を含めて山程ある。その中で他人に新しく「面白そう」「やってみたい」と思ってもらうのがどれほど大変か。
加えて此方はゲームというものに真面目に取り組むぶん、売れなかった時のダメージがでかい。自分達の実力を真っ向から目の当たりにしなければならないのだから、多少なり気にして当然だ。更には廃部に直結する可能性が極大の超リスキーな選択肢。掛かるプレッシャーも凄まじいものになる。
今回、わざわざ全く毛色の違う映画を二本見てもらったのはこれを伝える為。僕の語彙の問題かもしれないが、少なくとも僕では彼女に言葉だけで今回のことを伝え切れる気がしなかったのだ。
花岡さんは、果たしてどちらを選ぶのか。彼女がなんと答えるのかもう分かっていた上で、それでも僕は問い掛けた。
「何方にしますか、花岡さん。難しい話です、勿論モモイさん達に相談しても――」
「ううん。もう決まってるから、大丈夫。……きっとみんな、選ぶのは後者だと思うから」
嗚呼、やっぱり貴女はそう答えるんだな。
敢えて言わなかったが、前者のやり方には一つ大きな問題がある。それは廃部を免れたとして、ゲーム開発部というブランドに傷を残してしまうということ。
今後どんな良いゲームを作ったとして、前者のやり方を選んでしまえば「でもあのクソゲー作ったところなんだよな」と色眼鏡で見る人間は必ず出てくる。
話題性を呼ぶほどのクソゲーなら、そう簡単に人は忘れない。インターネットにも長く名前が残る可能性だってある。今この瞬間を凌いだとして、仮に今後の活動に影響を残すくらいなら僕は後者を選ぶべきだと僕は思う。
では、後者を選んで酷い評価を受けたなら?
本気で作ったものが評価されなかったならどうなるか。落ち込むだろう。凹むだろう。でも、それは「わざと選んだ低評価」ではなくて「自分達の実力で掴んだ低評価」だ。結果は似たようなものであっても、そこには雲泥の差が出てくる。
ネガティブな話こそしたが、素直に売れる可能性だって充分ある。そうした時のメリットは計り知れないし、何よりモモイさん達なら、自分達ならきっと大丈夫。花岡さんも、そう信じているのだろう。
……嗚呼、わかっているとも。
こんな馬鹿なことを考えた瞬間、心底、自分に
なんて、無責任。
僕はゲーム開発部が廃部にはならないと、
「廃部にはならない」事がわかっている以上、極論すれば彼女達の取る方法なんてどうだっていい。今こうして花岡さんと語り合っていることさえ、僕の自己満足以上の意味は何もないことを忘れてはいけない。運命は、どうしたって変えられないのだから。
こんな感情の何もかもを彼女だけが知らないまま、普段の弱気な瞳ではない強い意志を宿した瞳が僕に向けられる。
「今は、……宣伝役になってくれる相手を探すことを考える。それが私のやらなきゃいけないこと、だと思った……から」
「…………そうですね。他校や他地区との交流があり広めることが出来て、多少なり経済や宣伝のことを齧っていて、そして貴女達のゲームの魅力を理解している――そんな都合の良い人間が、何処かにいると良いんですけれど」
それはそれとして、花岡さんにはちょっと抜けている部分があるのも御愛嬌。剥き出しの額と同じく彼女のチャーム・ポイントだ。
花岡さんは僕の仕事内容をすっかり失念していたのか、「あ」と随分間抜けな声を漏らしていた。
「…………あ、あのっ。…………宣伝のこと……お願いしてもいいですか!?」
「はい、駄目です」
「えっ、……あれっ!?い、今のって引き受けてくれる流れじゃないんですか!?」
「引き受けはしますが、何も無しではやりませんよ。ミレニアム・プライスには他の創作系の部も出ていますし、知り合いだからと無償で引き受けるのはフェアじゃないでしょう?」
さて。
ネガティブな話はもう無しだ、切り替えよう。
今回、僕と花岡さんはビジネス関係という設定にすると宣伝費、広告費というものが発生する。実際に金銭を受け取ろうとは思っていないが、フェア精神の為にもセミナーの人間が特定の部に肩入れしたと噂をされない為にも、何かしら僕に得が無いと引き受けられない。変な噂が立っても誰にもメリットなんて無いのだから。
では、金銭以外で開発者が出せるものは何か。
「…………では、先行体験と、……限定版パッケージをお渡しする、というのはどうでしょう……!」
そう、「特典」だ。宣伝や広告を出す人間にメリットを与える内容ならその内容は何でもいい。
もし僕が企業の人間なら企業の名前をゲーム内の背景に出すとか、社員のNPCを出すと言った形で先に行った宣伝をゲームの中で返すと言う事が出来たのかもしれないが、生憎僕は
「いいでしょう。ただ、それだけだと僕個人との取引になってしまいますので……それに加えてエンディングのスペシャルサンクスにミレニアム・セミナーの名前を出してもらえますか?一応、早瀬さんや調月会長にも確認をとる必要はありますが」
これなら仮に他人から肩入れを突かれたところで、ゲーム開発部は現行活動している立派な部活。あくまでセミナーとして宣伝に手を貸すことに違反は無いし、パッケージや体験権利も金銭の代わりの報酬だと言葉の盾に出来る。
まあ多少なりと良く思わなかったり勘繰る人間は出てくるかもしれないが、これで文句をつけるのならその文句の先に居るのはセミナーの長である調月会長だ。だって僕はあくまで規則の範疇で手を貸しているだけという言葉の盾が出来る。
そしてもう一点。
これは花岡さんも、モモイさんも、ミドリさんも、恐らくは天童さんも、……もしかしたら皆が勘違いしているかもしれないから口にしておこう。これが余計な言葉なら、それはそれでいいと思う。
僕はセミナーの人間、つまり学園に於ける秩序の味方だ。今回の廃部問題はあくまでルールから逸脱したのでそれを正す、と言った措置なのだ。
ゲーム開発部が規則に則って活動する分には何の問題もないし、寧ろ応援する側。秩序の味方と先程言ったが、それと同時にてミレニアムに在籍する生徒全ての味方でもある。勿論、そこには「ルール違反をしない限り」と言う言葉は付くが、それは何処でも同じだろう。
最初に廃部の話を持ち出した早瀬さんだってミレニアムの規律を守る為、規則に従っているだけのこと。ゲーム開発部のことを気にかけてこそ居れど、まさか意地悪で廃部なんて言ったわけがない。本当に意地悪をしてゲーム開発部を潰したいのなら、わざわざ部室に来て対応策を伝えるなんてことするはずもないのだから。
「花岡さん。ちゃんと、僕達は皆さんの味方ですよ。体験版、今から楽しみにしていますので……頑張って下さいね」
これは本心だ。なんだかんだ、僕だって彼女達が作るゲームのファンなのだから。……久しぶりに、上手く表情は作れただろうか。
最後に。帰り道は、花岡さんも慣れたのかしっかり捕まってきてくれたこと。ミレニアムに着いた途端、喧しく揶揄ってきたモモ野郎は花岡さんにラリアットされたのでお仕置きの手間が省けたことをお伝えしておこう。
「レッド・スタッグ」の元ネタは一応ありますが、名前は出さないようにお願いします。分かりやすい比較になるかなって思っただけなので。好きな映画ですけどね。
さて。次回は舞台をトリニティに移しましょうか。
物語の加速に、ご注意を。