脇役な僕と先生と予測不能な彼女と姫君達   作:ぽけぽっぽ共和国

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お久しぶりです、共和国です。
随分と遅くなってしまいました。久しぶりなので上手く書けているかは分かりませんが、ひとまずは無事に更新できました。
相変わらず、というか下手したら十二月もやばい繁忙ですが物語は投げ出さずに書いていく予定です。

というか、なんなら次話はある程度固まって描き始めています_(:3 」∠)_
次の更新も頑張ります。待っていてくださった方々は本当にありがとうございます……!では27話、どうぞ。


side of our teacher with Gamers

先生サイド

 場所はミレニアム郊外に位置する廃墟工場――X日前、アリスが「目覚めた」場所へ、再びゲーム開発部御一行はやって来ていた。

 

 実を言えば、天童アリスは純粋な人間ではない。この廃墟で何故か裸のまま放置されていた「AL-1S」と名乗る「アンドロイド」らしきもの。実際には生体パーツを使っている以上、完全なアンドロイドかと言われると微妙なところではあるものの、やはりどちらかと言われると機械側なのは間違いない。そんなAL-1Sがアリスと名乗り、ゲーム開発部に所属することになったのか――その理由は、此処では語るまい。

 

 さて。

 では、何故またこんな場所にゲーム開発部が、と言われれば、それは「G.Bible」なるものを手に入れるため。モモイ曰く「昔、キヴォトスにいた伝説のゲームクリエイターが作ったとされる神ゲーマニュアル」らしい。眉唾ではあるものの、それを見れば必ず素晴らしいゲームを作り出すことができると息巻いて先生に協力を頼んで今に至る。……ミレニアムプライスで結果を出さなくては廃部になるというのも、尻に火がついた理由の一つなのだが。

 

 

 工場内で廃棄された過去の暴走ロボットや自律ドローンを退けて進みながら、先生は「サポーターが一人でもいればなあ」と苦笑する。ゲーム開発部どころかキヴォトス全体で見ても火力だけならば最大値を誇るアリスを前衛にモモイ、ミドリを左右に配置。やや後方にユズという配置だが、全員が攻撃役(ストライカー)、しかもスナイパーのような役割が居ないという微妙なアンバランスさ。

 

 当のモモイは「私たち、意外と強い!?C&Cとも戦えるんじゃ無いかな!」などと余裕をぶっこいているが、実のところは結構ギリギリだったりする。仮に先生の戦闘指揮がなければ、入り口で引き返す羽目になっていただろう。

 

 ふと、……サポーターという言葉で、一人の生徒を思い出した。無表情で奉仕的、自己評価の低い、キヴォトスで唯一の男子生徒のことを。

 

 

「"そういえば……モモイ達は、彼と知り合いなんだよね。凄く今更な気がするけれど"」

 

「え?うん、そうだね……知り合ったのも、かな。前からだよね?それこそミレニアムに彼が来て、そんな時間経ってなかったんじゃないかな」

 

 

 振り返るモモイに、無言で頷くミドリ。今でも勿論、初めて会った日のことは覚えているし思い出せる。

 

 無気力な彼の手を強引に引く姉が、「デバッガー連れてきたよ!」と部室に飛び込んできたことを。

「は?」と困惑する声を出しながらも無表情で、コントローラーを一時間持たずにぶん投げたときのことを。

 イラストを褒められて喜んでいたミドリが、ものの数分でそのイラストを綺麗に模写されて軽く凹んでいたときのことを。

 ロッカーに綺麗に収まって、もはや掃除用具と一体化していたユズが事故って酷い格好で出てきたときのパニックを。

 

 先生とアリスの知らない「ゲーム開発部」と彼の姿が、モモイ達3人の記憶の中にはちゃんと残っている。

 

 

「あの時……お姉ちゃんがいきなり強引に、部室にあの人を連れてきた時は何事かと思ったよ。しかもヘイローの無い男子生徒。当時は色々目立ってた転入生なんて連れてきて、また何かやらかしたのかと」

 

「またってなにさ!?そんなにはやらかさないよ!」

 

「"……やらかしはするんだね"」

 

 

 うぇ、と変な声を出して目を逸らすモモイ。やらかしたことがないとは口が裂けても言えない、というか工場に来る前もセミナーからのお達しを聞き忘れるという大やらかしが発覚したくらいだ。誤魔化すように態とらしく咳払いを入れるモモイに、助け舟を出すように先生が口を挟む。

 

 

「"どうして、彼を選んだのかな"」

 

「え?別に……特別な理由なんかなかったよ?ただ暇そうにしてたから捕まえてきただけで……、あわよくばゲームの道に引き摺り込んでやる!とは思ってたけど」

 

「その後、彼がセミナーだって知って泡吹いてたの誰だっけ」

 

「…………でもセミナーに選ばれただけあって、事務能力は高かった……。ゲーム開発部(うち)の面倒な書類、一日で全部片付けてくれたくらいだし。正直、セミナーに入ってなかったら事務役に欲しいって部活は多いと思う、な……」

 

「むうう…………アリスの知らないお兄様の話ばっかりです…………」

 

 

 やや膨れっ面をしているアリスを宥めるように慌てて「ごめんね」と声をかけるミドリ。アリスがゲーム開発部に所属する前の話だ、興味がないといえば勿論、嘘。興味津々ではあるものの、言語化し難い感情が渦巻いている。

 実際のところアリスが何故、彼の話でこんな感情を抱くのかは自分でもよく分からない。しかし彼を視界(カメラアイ)に捉えると、どうしようもないほどの郷愁が胸に押し寄せてくるのだ。強いて言語化するのなら「構って欲しい」という曖昧過ぎる感情だ。

 

 その他にも実は彼がセミナーの会長――調月リオのお気に入りであることや、未だにトレーニング部の乙花スミレやヴェリタスから声をかけられていること。反対にこの中ではアリスだけがエンジニア部の白石ウタハから教えられた、エンジニア部と彼の思い出(メモリアル)。こうして四人が話している中だけでも、彼はもうミレニアム生徒として新しく歩み始めたのだと実感ができてしまう。

 

 

「"…………そっか。じゃあ、……彼は、ミレニアムでちゃんと馴染めてるんだ。ゲーム開発部だけじゃなくて、他とも仲良くしてるみたいだし……ちょっと安心したよ"」

 

「はい!アリスとお兄様達は仲良しです!」

 

「"うん、良かった。じゃあ、あの辺の悪い噂は、やっぱり所詮噂なんだね''」

 

「悪い噂、ですか?」

 

 

 曰く、彼がミレニアムでバニー姿の女生徒を侍らせているという噂を筆頭に色々と。ずぶ濡れの女を家に連れ込んでいたという話やミレニアムの生徒を連れた上で、ゲヘナでナンパを複数回繰り返していたという話。明らかに年上の、スーツ姿の女性からお金を受け取っていたという噂。年下と思わしき少女を連れて誑かしていたと言う話やお兄様と呼ばせている話etc……。

 

 最後に関してはもう目の前のアリスから話は聞いた後だからいいとして、キヴォトスに於ける男女比の都合上、仕方がないと言えば仕方がないのだが、兎に角、女関係の噂が酷い。

 

 ただでさえ貞操観念の固い彼がそんな真似をするとは先生には思えなかったが、しかし火のない所に煙は立たないとも言う。もしもミレニアムで馴染めていないのなら、男子生徒というだけで色眼鏡で見られているのではないかと噂を聞いた時からずっと心配はしていたが、どうやらそんなことも無さそうだ。

 もしも彼自身が気にしているのなら悪い噂を取り除くために先生として手を貸してあげたいと思っているが、果たして彼自身がどう反応するだろうか――そんな思考を回していたところで、アリスを除く三人が先生から目を逸らして黙りこくっていることに気がついた。

 

 

「「「……………………」」」

 

「"あれ?……え、……あくまで噂、……だよね?"」

 

 

 いや、そんなまさかと汗をたらりと流す先生。どう答えたものか、散々迷ったが口を開いたのはモモイが最初だった。

 

 

「…………いや、その……、……流石に噂そのまんまってことは無いと思うけど……あの人、素でそういうところあるから……」

 

「偶にギャルゲーの主人公みたいなことするよね……しかも別に狙ってるとかじゃなくて、なんて言えばいいのかな……そもそも攻略してる自覚無しっていうか……」

 

「…………多分だけど、……悪い意味で、自分が恋愛対象になり得るって考えて無いのかも……」

 

 

 というか最後の噂は、もしかしなくてもユズのことではなかろうか。ごく最近、バイクに乗せられてデートをした後だ。ユズは年齢の割に小柄だし、デートに行った先も人目につきやすい場所な上に彼だけが制服で自分は私服だった。何か周りから色々と誤解されていてもおかしくはない。

 そんな話を色々と聞かされた先生は、それはそれで頭を抱えそうになる。どうにもあの自己肯定感の低さはアビドスの頃から何も変わっていないらしい。

 

 

「"えぇ……。先生である私が言うのもなんだか違う気がするけども、思春期の男子生徒がそれでいいのかなぁ……"」

 

 

 不純異性交友をしろというつもりは無いけれど、しかし自分を恋愛対象の枠から外すと言うのもどうなんだろう。花の女子高生、なんて言葉があるけれど、それを言うなら彼だって男子高校生。アリス似と言うだけあって彼のルックスは決して悪くない。ルックスが全てではないけれど、性格にしたって彼は真面目なぶん浮気も絶対にしないだろうし、最低限のデリカシーだってちゃんとある。そんな彼が誰からもそんな目で見られていないと思うのは、今更ながら少々自己評価が低過ぎるのではないか……。

 何度でも言うがキヴォトスに於ける男女比はかなりバグっている。女性側から言い寄られる機会は一度もなかったのだろうか?

 

 

「……まあ、なくはないと思うけどさあ。んんっ、『気持ちはとても嬉しいです。しかし、貴女には僕より素敵な運命の人が居るはずですよ。……応えられるような男ではなくて、申し訳ありません』ぐらいは言いそう」

 

 

 言いそう。

 なんなら多分、一回か二回くらいは言ってる気がする。先生でさえ「"彼なら言いかねない"」と思ったくらいの解像度だ。実際にどうなのかはさておいて、他に好きな女がいるとでも言っておけばお互いに当たり障りはないはずなのに、それでも真っ向から振りにいくのが彼らしい。恋愛くらいもうちょっと学生らしく楽しめばいいものを……。

 それはそれとして。

 

 

「似てなさすぎでしょお姉ちゃん」

 

「二度とやらないで……」

 

「はい!全くお兄様に似ていません!もう一度やったらアリス、モモイを殴ります!」

 

「あれ!?なんか皆からの当たり強くない!?ていうかそんなに似てないかなあ!?」

 

 

 自信があったのか、モモイは「がびーん」という効果音をつけていつものコミカルな表情で驚愕している。まあ性別から違うんだから仕方ないと言いたいところではあるものの、正直、先生の目線でもちょっと擁護できないくらいには声真似はまるっきり似ていない。台詞の解像度が下手に高いことが違和感に拍車をかけていた。

 

 しかしミレニアムでも、あの性格は変わっていないらしい。もうちょっと不真面目になればいいものを、それを許さないのは美点かそれとも欠点か。先生は、姦しく言い合うゲーム開発部に苦笑することしか出来なかった。

 

 

「――――つまり話を総合すると、お兄様は『スケコマシ』というやつなのですね!」

 

「何処でそんな言葉覚えてきたのアリス!?」

 

「モモイが置いてあった漫画に書いてありました!」

 

「何やってんのお姉ちゃん!?」

 

「えっ!?これも私のせいなの!?」

 

「"あの。皆、もうちょっと声を抑えた方が……あっ"」

 

 

 そろそろ止めに入ろうと思っていた矢先、騒いでいたせいか工場内を徘徊するドローンに綺麗に見つかった。後悔先に立たず、仕方なく「シッテムの箱」を再び起動させ、ゲーム開発部は銃を構える。

 

 この後、先生はめちゃくちゃ指揮をした。

 この後、モモイ達は弾代でめちゃくちゃ泣いた。

 

 ――――――――――――――――

 

「くしゅっ」

 

 

 唐突に痒くなった鼻からくしゃみが出た。あまりにも唐突だったので、何事かと自分でもびっくりしたほどだ。今いる場所は随分と埃っぽいし、くしゃみの一つくらい出てもおかしくはないかもしれないが……。

 前を歩く戒野さんが僕のくしゃみで振り返ると、「なに、風邪でも引いた?」と声をかけてくれた。気にしてくれるのは有り難いが、風邪なら直近で引いたばかりだ。……自分で言ってから風邪の原因に思い当たったのか、戒野さんがバツの悪い顔をしたのがマスク越しでも理解できた。

 

 

「………………あの時の、あたしのせいだったら、ごめん」

 

「いえ、そっちの方はもう治ってます。なので新しく引き直したか、まあ……埃のせいでしょう。或いは、オカルトですが誰かに噂でもされたとか」

 

「ふうん。もしそうなら、きっとすけこましだとか言われてるかもね?」

 

「酷い言われようですね……」

 

 

 ふん、と鼻を鳴らしてまた道を進んでいく戒野さん。……正直、彼女には文句の一つや二つ言われても何も言い返せない。初めて会ったあの日の夜、他人の体温を求める彼女に一度突き放すような言葉を投げかけたのだから。後悔をしているわけではないし、あの選択は正しかったと思っているが、なんと言うか気拙い……。

 

 何故わざわざ、数いる()()()()()()()、その中から戒野さんを案内役に出したんだ。まさか黒服が何かベアトリーチェに余計なことを言ったのかとも考えたが、あの夜の出来事は完全に偶然だった。誰にも話していないし、知りようがないだろう。……そうなると本当に偶々、戒野さんが選ばれただけなのか。だとしたらなんていう確率なのだろうか。

 

 狭い石造りの複雑な回廊を、戒野さんの案内に従ってただその後ろをついていく先にあるのは一際巨大な扉。がこん、と音を立ててその扉が緩やかに開かれると――部屋の中央、この廃墟じみた『地下墓地』の中には似つかわしくない豪奢な格好をして横たわる女の姿が、そこにある。

 

 何も言わずに戒野さんが一歩下がり、控える様子を見せる。ただし、その手は微かに強く握られているのも僕には見えていた。女は態とらしく、ゆっくりと身体を起こすと悪趣味な扇子をぱしんと開いて口元に当てて見せる。

 化け物風情が、……雅を気取るつもりだろうか。全く似合わない振る舞いに、笑いを堪えるのに此方はかなり必死だった。

 

 

「ようこそ、私の根城へ。黒服から話は聞いていますよ。――初めまして、予知能力者」

 

「…………ええ。同じく黒服から話は聞いています。お初にお眼にかかりますね……ご機嫌よう、()()()()()()()

 

 

 さあ。

 僕の戦いを、始めよう。




「くしゅっ」
「?会長、風邪ですか」
「……そうかしら。不摂生していたつもりはないのだけれど。ところでトキ、あの子に渡しておくセミナーとしての費用の確認は?」
「…………その額を本気で渡す気なら、今度こそひっくり返りますよ、彼」
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