逃亡人形の日常日記   作:シャオロウェをすこれ

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 注意!今回は前半中盤は日記形式ではありません…お前の拙い物語なんてものは見たくねぇよ!なんて思う方は、後半部分のみご視聴ください。ちなみですが、今回その物語部分にちょっとばかし過去を仄めかす描写が出てきます。元々誰の下にいたのか、分かる人は分かるはず。


その日起こった事、六日誌目

 

「......あなたがアリア?」

 

「そうだよ。私が大切な人からつけてもらった、大切な私だけの名前。そこにいる私の大切な人を早く渡して。」

 

「絶対にそれは飲めない。あなたに渡す義理はない。彼だってそう思ってる。」

 

「本当にそう?あなた達が見捨てた癖に、そんなこと思ってるわけないじゃん。本当だったらその壊れた腕の中にいるのだって嫌々なはずだよ。さぁ、そいつの腕の中なんて抜けだして、私の方に来て?」

 

 暗がりの中で、二人の視線が交差する。片方は俺を力強く腕に抱き牽制しつつ、もう片方は銃を構えつつもこっちの方に来いと手でいざなっている。どちらも一触即発の雰囲気を漂わせており、会話の選択肢次第ではすぐにでも銃撃戦が始まるだろう。それだけは避けないと。クソッ、こんな時がもう来るなんて......想像してなかったぞ。いつかくるとは思っていたけどな......とりあえず二人を落ち着かせないと。

 

「ちょっと待ってくれ、二人とも落ち着いてくれ......」

 

「私は落ち着いてる。ただあなたをいるべき場所に連れ戻してあげようとしているだけ。私の隣という場所に。そんな狂った奴から離れて、私の元へ来て?」

 

「......この人のいる場所はここだけ。彼だけが私達に救いの手を差し伸べてくれた。用済みのレッテルを貼られて捨てられた私たちに希望という光を与えてくれた。だから私たちは彼を守る、貴女のような野蛮で粗悪な人から。」

 

 刺々しい言葉がアリアに向けて放たれると同時に、腕に込められた力がより一層強くなる。このままじゃ争いは激化するばかりだ。本当に、どちらかを選ばなくてはならないのか?......そうじゃないだろう。何か選択肢があるはずだ。でも、それは今思い浮かばない。何か、何かないのか?今にも互いを血で血を洗い合うような戦いが始まりそうな現状を打破する方法は......!

 

誰かを呼ぶ?それは無理だ。第一ここに来ているのはおそらくアリアだけだ、呼んだところでパラデウスの誰かが来るのがオチだろう。そうなればパワーバランスが崩れてメチャクチャになる、これはダメだ。全てを諦めて扉から逃げる?馬鹿言うな、やったからといってどうしようもないだろう。逃げ出したところで結末は同じだ。なら、なら一体どうすればいいんだ......こういう時には、一体......!?

 

「なんだ......!?」

 

「爆発?いや、私たちはまだ発砲する予定はなかったはず。」

 

「敵襲......?」

 

 静寂が響き渡っていた空間に、突如としてそれには似つかわしくない爆発音があたりへと響き渡る。二人とも想定外のような反応をしているし、どうやらパラデウスとグリフィンが交戦したわけではないと思う。ということは、それらにも発砲してくる存在、第三者が攻撃を仕掛けてきたと見るべきか。

 

こうしてはいられない、それなら今すぐに迎撃に出ないと。俺だけならともかく皆まで巻き込むのはゴメンだ。一旦この諍いは調停して、対処に行こう。運が良ければ、そのままどこかへ行けちゃったりして?

 

「アデリン、アリア、とりあえずこの場は一旦両者とも矛を収めよう。今はこの状況を把握しないと。」

 

「......分かった。今すぐ指揮官に連絡を取ってみる。」

 

「あなたがそういうなら。」

 

 そういうと、アリアはおそらくグリフィンの陣地がある方向へと戻っていった。......めっちゃ跳躍してたけど、どっからそんな身体能力を手に入れたんだ?前々からそんなパワーがあったとは思えないが......いや、それでも俺よりは強いけどさ。何か改造をしたのだろうか?

 

しかしこれでとりあえず窮地は脱したか。まぁ、延命処置みたいなもんだけど......全然ないよりも遥かにいいだろう。さて、なんとかなったことだし、俺も出撃準備を整えるか。まずは例のユニットを受け取りに行って、それから俺自身も前線に出よう。どういう状況になっているか知るためには、現地に赴くのが一番だ。後は......ないとは思うが、あの人がいないか確認してみるとか。いたら世にも恐ろしい事態が待ち受けているのは間違いないが。

 

「よしっ、行く」「どこに行く気なの?」

 

 

「......あ~、アデリン。」

 

 いざ扉を開けて出陣!とはいかないようだ。外へ出ようとする俺を、アデリンが肩を掴んで引き留めてきた。うん、まぁ、俺前科あるしな。逃げ出した前科があるし、この混乱に乗じて逃げると思われてもおかしくはないか。でもちょっとその力を緩めてくれないかな......?ちょっと肩が捥げそうだからいてててて!!!!

 

「す、ストップアデリン......肩壊れる......!」

 

「......あなたが逃げないって約束してくれるなら。」

 

「するする!第一俺が装着するユニットには追跡装置がついてるし人目もあるんだから逃げられないって!マジで離してくれ!」

 

「分かった。約束だよ。」

 

 安堵の声と一緒に、肩にかかっていた力が抜ける。よかった、もし離してくれなかったら別の意味で介護必要者になるところだった。イテテ、なんかジンジンする......俺の身体はネイトボディだからと言ってそこまで耐久性がある訳じゃあないから普通に痛いんだって......

 

「それじゃあ行こうか。アデリンも来るのか?」

 

「うん。今あなたが装備するユニットをこっちに持ってくるように言っておいたよ。」

 

「早いね仕事が?」

 

 そんなことを言っていると、本当に扉の前に俺のユニットが置かれた。......いや、待ってくれ。

 

「何か......大きくない?」

 

 前までは携行できる大きさだったレールガンが、いつの間にやらとんでもないくらいゴツく巨大になって装着されている。偏向障壁発生装置も、前の......多分3、いや4倍は大きくなっているし、出力も相当上がっているだろう。そして護衛用なのか、簡易的な擲弾投射機と......これは......

 

「ホバーブレード......いや違うな、ビット......」

 

 ユニットの背部につけられたビットを見て、ふと思い出したくないことが頭をよぎってしまう。従属せざるを得なかった日々、本気で命を失いかけても脱走したあの日。あの黄色と赤のオッドアイの目が、今でも俺の脳裏には恐怖の象徴としてこびりついている。もうここには来ないはずなのに、いないはずなのに......想起してしまうことはあるんだな。

 

今でもあの人が恐ろしい。少しでも意に触れれば、尋常ではないくらい苦痛を感じる傷を刻まれて、離れようとすれば、地獄へと引き摺り込もうとする手のように深い執着で連れ戻された。あの時、もしも協力者がいなかったら......俺はあそこで、一生縛り付けられた奴隷として生きた死体のような生活を送ることになっていたんだろうな。

 

「......大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫。ありがとう。」

 

「決して、無理はしないで。」

 

 ......どうやら見透かされてしまっていたみたいだ。そんなに顔に出るほど、俺は恐怖していたのかね?笑えないな......はぁ、もう、俺が生きているまでの間は一生会わない事を願うよ。もしもう一度会ってしまったならば……俺がどうなってしまうのか、想像もつかないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 v月!日

 

 色々あったが、無事に今日を乗り越えることに成功した。アリアが警備を破って部屋に侵入してきたこと、そしてその途中で鉄血による襲撃が来たことには非常に肝を冷やされたが、ひとまずは事態を延命できた事を喜ぼう。

 

さて、俺が鉄血を迎撃しに行った時、周りの戦況はかなり膠着していたようだった。その原因としては、一体どこから運んできたのだか、ジュピターと呼ばれる高射砲兼要塞砲がかなり攻勢の邪魔をしており、ウーランやドッペルドルゾナーといった主力兵器がかなり損傷させられていた。

 

そんな機甲戦力が阻害されているのだから、当然歩兵のようなものであるグリフィンの人形たちも進めるわけもなく。ジュピターに関してはこちらで無力化することになった。そこで俺たちパラデウスがロケット砲台の支援のもと、敵部隊へと攻撃をかけることにして出血を強い、こちらへの対処で手一杯になっているところをグリフィンの部隊で刺す、そんな作戦を取ることにした。

 

で、俺も初めて改修後のユニットを使用して戦闘してみたのだが、これがまぁ強いこと強いこと。火力は鉄血の重兵器、マンティコアやニーマムなどを一撃で吹っ飛ばせるほどの火力になり、ダイナーゲートなどの小型目標には擲弾発射機とビットで一網打尽で、それに加えて機動性も圧倒的な程の速度を手に入れた。鉄血兵の照準速度が追いつかないくらい高機動力だった。

 

しかもここまでてんこ盛りなんだかと言って装甲を犠牲にしているわけでもなく、むしろガチムチと言っていいほど堅牢な装甲を手に入れた。取り付けられた改良型の偏向障壁発生装置は、鉄血兵の攻撃を全然通さなかった。それどころか強大すぎる出力を活かして、障壁を押し付けて溶断するという面白い使い方もすることができた。これなら、あの人の強大な力と戦うことが、あっても抵抗できるかもな?

 

 とりあえず今日はグリフィン側の陣地で一日を終えることにする。明日は本格的に反攻作戦を実施して鉄血勢力を撃滅するらしいから、それまでに十分な休息を取っておこう。まぁ、俺がグリフィン側で今日は休むと言った途端のアリーナの冷え切った視線を目にして少しビクッとしてしまって休めそうにないが。まぁ、代わりにアリアが目を輝かせてこっちにくっついてきたからそれでよしとしよう。

 

でも俺はアリアと寝るつもりはない......と言おうと思ったんだが、その言葉を発した瞬間あれだけ喜んでいたアリアが奈落の底のような暗い目をして『嘘だよね?』と聞いて体を引っ掴んできたんで一緒に寝ることになってしまった。う〜ん、アリアも俺がいないのが日常になるんだから、あんまり日常の中に俺を関わらせない方がいいと思うんだけどな。

 

 

 そんなことはありえない、あってはならない。あなたがいない日々なんて考えられない。どうして私はあなたを求めているのに、あなたは私から離れようとするの?私はあなたがいない間、ずっと探していたのに。またあのどうしようもない孤独を味わいながら必死に探してやっと見つけたのに、そんな事を言わないで。あんなに一緒だったのに、あれだけお互いを求め合っていたのに、今更もういらないなんて絶対に言わせないよ。私とあなたは一心同体、いや、運命共同体。永遠に一緒に生きていくの。

 

 

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