逃亡人形の日常日記   作:シャオロウェをすこれ

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 遅くなってすみません!!!!!



11日誌目-Ⅱ

 {10:33:40}

 

 クソッ!!やられた......というよりやらかした。鉄血の要塞の守りは堅固の一言に尽きたのだが、それを攻略するための戦術を間違えた。本来であれば、正規軍と連携して左右から挟み込み、その隙にグリフィンの部隊が要塞を奪取、橋頭保を確保する予定だったのだが......正規軍との連携がうまくいかず結果的に手薄になった中央部を一時的とはいえ食い破られてしまった。

 

小規模な一点突破攻撃であるから、正規軍との衝突で消耗した鉄血戦力自体を撃破することは易しいことであるが......それでも戦力を割かなければならなくなってしまったのは中々面倒だ。それにあそこは鉄血要塞に構えられているジュピターの射程圏内に収まっているから、下手に交戦すれば支援砲撃によって壊滅しかねない。

 

こうなることが分かっていれば、俺も正規軍が守備していた中央部にこっちから戦力を配備していたというのに......まぁいい、過ぎてしまったことだ。こうなってしまったからには、こうやってグチグチと考えているよりは行動を起こすことが先決だろう。機械系の戦力はそこまで見えないようだし、こちらも同じく歩兵のガンナーを主力とした部隊を送り込んで、敵を撃滅させておこう。

 

にしても、この戦線を突破されたことはかなり響くな.......今、正規軍・パラデウス両者ともに後方から次々と支援砲撃を行う砲兵隊やらさらなる増援部隊を送り込んでいる最中だったというのに、これのせいで大分遅延が生じてしまった。この遅れが、今後の戦況に大きな影響を与えることがないように祈りたいところだな......とりあえずは配置を急ごう。

 

 こうして時間を稼がれている間にも損耗は増えていっている。軍のキュクロープス部隊は尋常じゃない量がいるとはいえ損耗率が5%を超えたというし、こっちの機械化歩兵師団もグラディエーターやらドッペルドルゾナーが盾となり前進してくれているとはいえ損傷が激しい。このまま進めば、いつか攻勢限界を迎えてしまう。かといってアデリンとアリーナが指揮している部隊も手一杯だし、クソッ......早く占領してくれ!

 

 {11:45:14}

 

 ふぅ......なんとかあれ以上の被害が出る前に要塞を攻略することが出来た。やはり遥か昔から伝わる通り、砲兵隊は戦場の女神というべきなのだろう。先ほどのトラブルによって多少到着が遅れたものの、後方から到着したロケット砲を筆頭とした砲兵隊が進行を阻害する敵を次々と吹っ飛ばしてくれた。別方向からこちらへと向かってきていたアデリン・アリーナとも合流できたし、ひとまずはこれで安泰といった感じかな。

 

だが合流できたからと言って、この戦いに終止符が打たれるわけでは残念ながらない。この戦いの目標は、今まで散々戦火の禍をもたらしてきた鉄血勢力の撃滅、そしてその根幹をなしていた鉄血中枢部の確保の二つになっている。その二つの主目標を達成しない限り、この戦いは終わらない、というより終われないのだ。

 

 そんなわけでまだまだ進軍する必要があるのだが、なんという事をしてくれたのでしょう、鉄血はとんでもない置き土産を俺たちに残していきやがりました。それズバリ、侵入した時点で致命傷は逃れられないくらいの傘ウィルスを散布していったのです。本当のマジに余計なことしてくれやがって......

 

なんで致命傷かというと、まずこの傘ウィルス、正規軍の人間兵士や俺たちネイトなら特段そのエリアに侵入したとしても問題はない。しかし、これがグリフィンの人形部隊となるとどうでしょう。なんとあっという間に、毒ガスと同等の劇物兵器となってこちらに牙を剥きます。具体的に言うと、これが散布されたエリアに少しでも立ち入ろうもんなら、たちまちにメンタルモジュールをぶっ壊されて使い物になってしまうレベルで。

 

そういうわけで、その対策のために傘ウィルスの影響を受けない正規軍の人達がアンチジャミング装置を仕掛けるまでは進行不可能になっている。しかし設置作業にはかなりの時間を要するので、その間の防衛が必要になる。そこで、俺たちとグリフィンに白羽の矢が立ったという訳だ。

 

 だがしかし、ここで先ほど言った俺たちネイトは傘による影響を受けないというのがちょっと事態をややこしくさせている。グリフィンとは違い、俺たちは傘の散布下でも行動可能だ。そこで、軍の指揮官......エゴール大尉と話し合い、一部の部隊はこれから前進する軍の部隊と共に前進、それ以外はここで橋頭堡の維持に従事する運びとなった。

 

 そしてさらに話し合った結果、俺が正規軍と行動を共にし、アデリン・アリーナはここで待機してもらうということで最終決定が行われた。というわけで、俺は補給を済ませたらまた正規軍と再出撃だ。再びアデリンとアリーナと別れてしまうことになり、二人は寂しそうにしていたが......まぁ、死なない限りまたいつか再会できる。流石に戦場を楽観視しているわけではないが、それでもまぁ......なんとでもなるはずだろう。

 

 {12:51:27}

 

 出発してから大体1時間が経っただろうか。あれから進行計画に特に支障も出ることもなく、順調に俺たちは進軍を続けている。そう、あまりにも『順調すぎる』ほどに。

 

別に順調であることは悪くないんだが......その、こうも敵襲もなにもないと何かおかしさというか違和感を持ってしまう。だって、もうすぐで敵の中枢部に辿り着くというのに、ハイエンドモデルはおろかマンティコアやジュピターといった強大な兵器すら出てこないのはおかしいだろう。

 

先ほどまでの要塞戦では、こちらもかなりの出血を強いられたほどの敵が出てきたというのに......一体どういうことだ?誘い込まれているとでもいうのか。だが俺たちと正規軍はかなり広範囲を支配している、そう簡単に包囲されるような配備状況にはなっていない。これだけの戦力を囲い込むには、おそらく今の鉄血では戦力が分散し過ぎて精々どこかを食い破られてお終いになるはず。

 

じゃあ一体何が目的で?誘い込むにしても、その目的が明瞭じゃないから読めないし......待てよ。そういえば、俺たちの後詰はグリフィンの部隊が担当することになってるよな。で、今......正直甘く見ていたが、俺たちは考え直してみれば突出し過ぎていて後方のグリフィン部隊と大分離されているよな。

 

......そういうことか!しまった、敵の目的は俺たちなんかじゃない!最初から、俺たちの後方に控えているグリフィンの部隊......AR小隊を俺たちから引き剥がして、撃破することが目的だったんだ!そうすれば、俺たちはがら空きになった後方に奇襲攻撃されてお陀仏......クソッ!こんな簡単なことを思いつかなかったなんて......俺の失態だ。

 

 ともかくこれは不味い......というより、もう手遅れになってしまったか。通信機からは俺が先ほど考えていたことがそっくりそのまま起きていることが読み取れる音声が次々と入っている。エゴール大尉はそれでもなお進撃するつもりのようだし、ここはもうしょうがないから率いている部隊の戦力をかなり抽出してあっちに行かせよう。正面戦力を大分削ぐことになるが、背に腹は代えられない。必要経費と割り切って、前に進まないと。

 

 {13:23:23}

 

 先ほどはどうなるかとも思ったが、今はどうにか戦況を持ち直している。以前油断を許さない状況であることには変わりないが、それでもさっきのあの窮地に陥っている状態よりは確実にマシであると断言できるだろう。やはりテュポーンやウーランSWAPといった機甲戦力の投入は目に見えて分かるほどに戦局を左右する。

 

鉄血の一般歩兵......ヴェスピドやリッパ―などでは到底貫くことなど不可能な頑丈な装甲に、歩兵を凌駕する展開力と機動性。そして強大な砲身から放たれる、全てを粉砕していく一撃。これらの要素が重なり、鉄血の歩兵たちは何も抵抗できずにただその身を散らしていくだけになった。唯一対抗できるジュピターも、グラディエーターなどが盾になっている間に俺が撃破することでその機能を失わせることが出来た。

 

 しかしいくら機甲戦力で圧倒的な優位を得たとはいえ、鉄血の爆撃は依然激しいものには変わりない。これ以上の損耗が出ると正規軍はともかくとして物量が限られている俺たちはいよいよ進行に支障が出てきてしまう。それを避けるためにも、迅速な制圧が必要になってくるな。

 

 とりあえず一度記録を終了、指揮にもど......

 

 

 

 

 

「......はっ?」

 

 カチリ。安全装置が外される音とともに、俺の後ろからするはずのない冷たい金属の擦れる音が鳴り響いた。そしてそれに気づいた次の瞬間には、俺の後頭部にはおそらく拳銃の銃口であろうモノが突き付けられていた。......おいおい、これは一体何の冗談だ?

 

「冗談にしては、随分時期もタチも悪いな......」

 

「黙れ。そのまま両手を頭につけて、地面に膝をつけろ。」

 

 少し喋ろうとしたが、そんな口を開く余裕もなく後ろにいる正規軍の軍人は容赦なく俺の頭に銃口を押し当て続けてくる。こりゃ......冗談って訳でもないし、俺が少しでも動いたら確実に脳天を貫かれてズドン、そのまま上の方へとお陀仏コースだな......下手な行動はしないようにして、まず様子を伺わないと。

 

とりあえずまずは相手を刺激しないために、指示に従おう。両手を頭部に付けて、膝を地面に......いったぁ!?クソッ、腰を蹴飛ばして来やがたがった......おかげで姿勢が崩れてもろに衝撃食らっちゃったよ......痛い......

 

「うっ......」

 

「早くしろ!」

 

「お゛っ!?て、手荒いな......」

 

 自身の腰部を蹴飛ばされたかと思うと、今度は目的もなしに俺を痛みつけるかのように腹部にも打撃が飛んでくる。軍用の重厚な装備から放たれる一撃はとても重く、思わず耐えられず体がよろめいてしまう。......なんだよ、揃いもそろって俺に暴行しやがって......今は内輪もめしてる状況じゃないだろ......

 

「これ......は.......お前らの、独断か......?」

 

「大尉の指令だ。おい、拘束具持ってこい。」

 

「......エゴール大尉も......グルかよ......」

 

 クソッ......やべぇな、さっきの一撃が変なところに入りやがった......これくらいなら全然動けるはずなのに、当たり所が最悪すぎる......回復するまで、どうにかして時間を稼がないと......策はある、逃げれるくらいまで体力を回復させれば......ここを打破する案を実行できるんだ......!

 

「ちょっと待てよ......なんでこんなことをするんだ?」

 

「知るか。俺たちは命令に従うだけだ。」

 

「ハッ......見下げた負け犬根性だな......おい。」

 

「あ?なんだ?」

 

 ......今からする賭けは、大分分の悪い賭けになるが......だが、四分の可能性があれば、もはやそれに賭けるしかないだろう。というより、もはやそうせざるを得ないくらいに追い詰められているといった方が正しいか。こっからは、いかに俺がそれっぽいハッタリを付けるかにかかってるな......本当に、いけるか?騙しきれるか?

 

......いや、ビビってる場合じゃない。俺ならいける......大丈夫だ。きっとそうに違いない。あの時を思い出せ、あれに比べればよっぽどマシだ......!希望があるだけ、まだ......!

 

「この通信機が見えるか?」

 

「俺に少しでも危害を加えてみろ......お前らが心酔してやまないエゴール大尉がすぐに吹っ飛ぶぞ。」

 

 胸ポケットから通信機を取り出して、正規軍の奴らに高々と見せる。一見すれば何をトチ狂ったことをしているかのようにも思えるが、これには訳がある。俺がおそらくとれる、この場を脱すことのできる唯一の手段......それはズバり、人質作戦だ。正規軍の部隊は随分エゴール大尉を敬愛しているみたいだし......そんな人物に危害が及ぶ可能性があるとなれば、少しは躊躇せざるを得ないだろう。

 

「......馬鹿なことを言うな。そんなハッタリが通じるものか。」

 

「本当にハッタリだと思うか?なら今この場で吹っ飛ばしてやってもいいんだぜ......?」

 

「そもそも、なんでこれがハッタリだと思うんだ?お前らも見ただろう、俺たちの力を......俺たちがその気になれば、そんなこと造作もない。実行していないのは、まだその時じゃないと思っているからだ。お前らの行動次第で決まるがな......」

 

 全然笑えるような状況じゃないが、口元にはおそらく不敵であろう笑みを浮かべて虚勢を張る。こんないかにもなセリフを吐いてるはいいものの、内心は正直に言って心臓バクバクだ。正規軍の兵士が、どれだけエゴール大尉を重要視してるかで俺の生死は変わる......だが、上手くいっているようだな......?

 

それにこのような状況になっても俺を即刻銃殺しないということは、何か俺を生かさないといけない理由があるはず。その二つの要素がある限り、俺は......この盤面、確実に勝てる!

 

「さぁ、どうする?敬愛する上官を見捨てるのか?それとも俺を殺すか?やれるもんならやってみろよ、やれるものならな!」

 

「......本性を表しやがったな、このクソ野郎......!」

 

「なんとでもいうがいいさ!さぁさぁどうするんだ?!え!?生死はお前らが握ってるんだぜ!」

 

 そこらの小悪党も真っ青なプライドの欠片もないセリフを吐き続ける。ハハッ、なんかもう一周回って調子づいてきたな。だけどそれでいい。調子づいて演技の勢いも乗ってきてより確実性を上げられてるし......そして何より......こいつらが迷っている間に、俺の本来の目的......時間稼ぎに成功した。よっしゃ......今から盤面をひっくり返してやるよ......!

 

「......来い。」

 

「は?いきなりなにを______なんだ!?」

 

 緊張が走っていたこの空間に、突如としてその状況を一変させる砲火の轟音が鳴り響く。そしてその砲弾が着弾したことによる衝撃で、辺りに砂塵と破片が次々と舞い上がる。......どうやら、間に合ったみたいだな......俺が念のためと仕込んでおいた、自律行動プログラム。俺に万が一のことがあったときの為に、用意しておいたんだ。

 

備えあれば患いなしともいうが......まさにそれだな。なんてったって、そのおかげで、グラディエーター様やらドッペルドルゾナーやらが、偏向障壁の発する輝かしい光を携えてやってきてくれたんだからな!これほどまでに希望を感じることがあるだろうか!いや、ない!

 

「全部隊、優先攻撃目標は正規軍の人間および装甲ユニットだ!重点的に狙え!」

 

 正規軍が突然の奇襲に混乱しているうちに、俺自身は同じく自律行動で戻ってきたユニットに再び搭乗して戦闘行動を行う。とりあえず命令と同じように、高脅威度の装甲ユニットを撃破するためにゴリアテを降ろそう。障壁を展開して、こちらも防備の態勢を整えておいて......それから後方で控えているアデリンとアリーナに連絡を取らないと。

 

「アデリン、アリーナ、聞こえる?正規軍はこれより敵対勢力として認識して。見つけたら発砲して構わないから。」

 

『分かった。』

 

『うん。グリフィンの指揮官にも、そう伝えておく。』

 

「頼む。でも、正規軍は強大だ。無理と判断したら、俺を置いてすぐに撤退して。」

 

『......あなたを置いていくことなんてできない。何があっても助ける。』

 

『アリーナ、でも命令......』『あなたは黙ってて、黒。とにかく指揮官が一番大事、それ以外はすべてどうでもいい存在なの。』

 

『とにかく、あなたを置いて逃げ帰るなんてことは出来ない。私たちが生きて帰るためにも、絶対に帰ってきて。』

 

「......分かった。それじゃあ通信を切るぞ。幸運を。」

 

 通信をしている間にも、辺りには砲火やら弾丸やらが次々とひっきりなしに飛び交っている。さて、俺も生きて帰って、再びみんなに会うため......生き残る努力をしないとな。正規軍がなんぼのもんじゃい!

 

 

 

 

 




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