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かつて、出雲という土地があった。
かつて、高天原という世界があった。
高天原は神の国。出雲は人の国だった。
ある日、記録にも残されていない歴史の最中、高天原から八百万の神が降臨し、人々を害した。神の名を持つ獣は空を傾け、海川を燃やし、大地を崩壊させた。
だが、人々は抗った。
神と人。その力量の差など、泥雲に等しい。それでも、人々は諦めなかった。人類は絶望しなかった。
犠牲なんて承知の上で、出雲は国を挙げて神を狩る事を決意した。その道を歩んで行く事を決めた。
長い征討の旅。無数の犠牲を払って神を殺し、その神の
人々は神々に抗う為に、折れた七万三三本の刀と多くを犠牲にして討った神の屍を用いて、「
一振り、「真」。
二振り、「天」。
三振り、「鳴」。
四振り、「嵐」。
五振り、「霜」。
六振り、「命」。
七振り、「烈」。
八振り、「覚」。
九振り、「礎」。
十振り、「千」。
十一振り、「束」。
十二振り、「喰」。
彼らは戦った。戦って、戦って、戦って、その果てに終わりは訪れた。
幽世は一掃され、戦いは終わり、世界を守った十二振りの刀がすべて折られた。
―――誰もが知っていた。既に世界は終わりに近付いているのだと。
鍛えられた十二振りの刀の全てが、世界を守る為に造られた筈だった刀の全てが、世界を守り抜いていく間にも世界を破滅に近付けていた。酷い皮肉だ。
勝利の代価は、この世の全て。しかし遂には、それら全てすらも底を尽きた。
荒魂だげが騒ぎ、黒き太陽は明るく輝き、最後には世を負う二刀が鍛えられた。
朽ち果てていく出雲は折れた十二振りの刀で、「世負いの刀」二振りを造った。
「始」と「終」。人に始まり、鬼に終わる。
出雲には何も残されてはいない。声は途絶え、花は枯れた。敗者は無に帰し、勝者はついぞ空へ至る。
七万四七振りの中で、出雲を救えるのは一振りだけだった。
けれど―――出雲を救う刀なぞ、ありはしなかった。
勝者は独り。虚無の空を斬り捨てた。
結果の背後に、何も残らなかった出雲にもう一人、剣士が居た事を知らぬまま。
その男は一人で戦っていた。出雲が幽鬼に満ちる前から、ただ一人で一柱の神と死闘を繰り広げていた。
人は神と戦い、勝利し、友となり、鬼と化した。
人が神を討った。神も人を討った。友は共に斬られた。
人は神が朽ちる事を望まなかった。神は人が墜ちる事を忌み嫌った。互いが、友を想っていた。
一人は二人へ。二人が一人へ。神は人に溶け、人は人でなくなった。
一振りの刀を握り、人で在りながら神の力を持つ男は宇宙を往く事を決意する。
すべては、一つの虚無を斬る為に。
十三振り、「生」。