サオリ「転生したら先生だった」 作:バニタスパスタのダム
水着のミサキも早く実装しろ♡
それはそれとてコクマーくんは大人しくサオリ姉さんのサンドバックになって、どうぞ。
「_______ですが、ユウカちゃん。気をつけてください、きっと、あの人は……」
「…………キヴォトスの禁忌にして、特異点、か。それにしても、また来ることになるとは思わなかったけど」
連邦生徒会特異捜査部:通称シャーレ。
どの学校の生徒も超法的に募集……引き抜きができ、どの自治区に対しても自由に働きかけができる、トンデモ組織。
私……早瀬ユウカは、今日から一週間、場合によっては一ヶ月ほどだが、シャーレへ“出向”という形で、一時的に籍を移すことになった。
……紛れもなく、自分の意思だ。
軽く調べた結果、有志で募集していた、仮入部部員……つまるところ、昨日の4人以外は、シャーレに居ない。それも、全員あくまで、仮であるから、強制力は働かない。
(……怪しすぎる。だから、これはミレニアムのため……)
部室の扉を叩く。返事はなくとも、誰かの声が聞こえるので、機関としては機能しているらしい。その声も、独り言のようだったので、そのままノブを捻って入った。
「失礼しま______」
「……ああ、早瀬か。ちょうどいい、助けてくれ」
「え」
「…………」
部室の中にいたのは、サオリ先生だけではなかった。
私と同じくらいの歳の、灰色の髪をした女の子。それが______
先生に制圧されていた。
「……???」
もう一度、詳しく言おう。
高校生くらいの歳の女の子を、先生が、馬乗りになって手首を押さえつけて制圧していた。
なぜ?
なぜ?
なぜ??????
「……アビドス高等学校、対策委員会2年、砂狼シロコさん。……で、あってる?」
「ん……先生に助けを求めにきた」
私がシャーレについてから、およそ2時間が経った。
先生曰く「加減ができなかった」とのことで、思いっきり気絶させられていた生徒が、ようやく目を覚ましたのだった。
「……少し、パソコンを借りてもいい?」
先生に許可をとり、何かを打ち込み始める。エンターキーを押し込むと同時に、画面には、粗い画質で何かが表示された。
「……これ、ライブ映像……?」
「ふむ、つまり、どこかで起きていることを中継している……と言うことだな……?」
「ええ。この辺で砂漠というと……」
次の瞬間、大きな音と共に、クルセイダーの砲撃が建物を襲った。見覚えがある……というより、心当たりがある、と言った方が正しいだろうか。先日ワカモ率いるヘルメット団が所持していたものと同じだ。
砂埃が舞い上がり、薄汚れた校舎に襲いかかる。
黒いシミのような点。
立ち込めている砂の霧が晴れ、画像の負荷が減ると、だんだん像をなしてくる。
…………それは、人だった。
「______先生、見て、ここ!画面左奥ッ……!!!」
ヘルメットを被った生徒が、倒れている女の子に向かって、容赦なく発砲する。
すぐに何者かの攻撃が入って、中断こそされたが、女の子が起き上がる気配はない。ヘイローが点滅している。見るからに砂漠地帯の戦場に、意識を失ったまま放置される……つまりは、限りなく危険である、と言うこと。
シロコは画面から目を逸らしている。
手は、爪が食い込むほど強く握られていた。
「相手はヘルメット団……か」
「う……そ……ッ、こんなのって……!!!」
そこは、間違いなく戦場だった。
単なる小競り合いなんかとは、訳が違う。
闘争と略奪の最前線。それでも、少女達は必死に食い下がる。
「これが、私の学校……私たちの、居場所。
必死に自分たちで守ってきたけど、…………もう、これが限界。
本当は自分の手でどうにかしたかった…………」
「大人の手なんて、借りたくなかった…………ッ!」
「…………そ、れは…………」
心からの叫び。
声こそ、泣きじゃくったせいか、はたまた疲労のせいか掠れていた。
しかし、単純だからこそ、回避しようのない本音だった。
大人に対する、彼らの卑怯さに対する、底知れない【軽蔑】……。
「先生…………」
シロコは、目元を拭う。
「でも、今の私たちにはそんなことを言っている余裕もない。これは、紛れもない事実」
「……先生、就任したばっかりで、無理を承知でお願いしたい」
「おねがい……っ、アビドスを……対策委員会を助けて……っ!」
きっかり90度に曲げられた上体。
顔は見えない。
「せ、先生……」
まさか、こんなことになるなんて。でも、いくらなんでも、こんな………
「…………わかった。その要請、確かに受け取った」
「え、…………?先生……、今、なんて……」
タブレットをとり、電源を起動する。青い画面がついたかと思えば、スタスタとどこかへ歩いて行ってしまった。
あれ、そういえば、玄関の近くにかけてあった帽子がない。いつの間に取って行ってしまったのだろうか。
「ちょっ、先生!?どこ行くんですか、というか、なにするんですか〜っ!?!?」
慌てて後を追う。シロコもそれについてきた。
階段を登る。
エレベーターを使いたかったが、それだとどこが目的地がわからないから、必死についていく。
シロコは、すでに消耗し切っていたらしく、手を貸しながら、階段を登っていく。そのせいで、いつもよりかなり時間がかかったような気がした。
何か、話し声が聞こえる。
それでも、何か…………機械のようなもの…………?何かが動く雑音で、内容は聞き取れない。
「はぁっ、ハぁっ………ッ、ここ……?着いた…………?」
雑に閉じられ、半開きになったドアから光が漏れている。
ここからもう、上には階段は続いていない。
「______、______、____、…………______!」
ガタガタと忙しなく動く音。
近くなって、ようやくわかる。
何か、箱に入れてある。物品輸送の時の音に似ている。
「これは……とても入れそうにないわね」
「火薬、グレネード……だ、弾薬もたくさん……」
その中心にいるのは………………
「一先ずはコレに乗る分で十分だ。残りについての段取りは、追って連絡する!」
「は、はいぃっ!」
「あ、あの……操縦は…………」
「基本的なものはわかると思う。あとは私だけでも大丈夫だ、それより会長代理へ言伝を頼みたいんだが…………」
タブレットを手に、先生は生徒たちに的確に指示を飛ばす。
音が止む。どうやら、もう一つある方の入り口から、作業員は出て行ったらしい。
そっとノブに手をかける。
…………いやいや、何をコソコソする必要があるの、私!?
べ、別にやましいことなんて、一つもしてないじゃない!
「し、失礼しま______あ、あれ?ドアが、重………ッ、い………!」
錆びているドアをガンガンと叩く。
「うぅう……こうなったら…………」
押しても引いても、ついでにスライドしてみても開かない。踊り場のスペースの、少し開いたところギリギリまで下がる。流石に体当たりして開かないってことはないだろう。
「えいっ!!!!」
ガンっ、という音と共に、私の体は青空の下に投げ出された。
まず目に入るのは、ブルーシートに覆われた大きなもの。トラックくらいはあるだろうか。そして、慌ててサオリ先生がリストを片手に、私に目をやった。
「…………なんの音……って、早瀬!?」
しばらく唖然としていた先生だったが、すぐに我に帰る。
「突然で悪いが、10分で支度を済ませてくれ。恐らく戦闘もあるだろうが、本アビドス高等学校への支給任務をもって、シャーレの初日の活動とさせてもらう」
「え、つまり……?」
「決まっているだろう?」
先生が、ブルーシートを取り去る。
軽くシステムをチェックして、問題なく作動することがわかったのか、操縦席に乗り込んだ。
「今からアビドスに行く……
恐らく新品だろう。
傷ひとつない白いボディに、後部座席には大量の段ボール。
「へ、ヘリ…………確かにこれなら、多少はショートカットできる……!」
「備品リストにあったから、早速動かしてみたんだが。流石にヘルメット団に対空装備があるとは考えづらいしな」
なんて破天荒な。とはいうまいか。これだけヤバい組織の実質トップである《先生》。対外的には連邦生徒会長が任命したともあって、リン行政官代行の後見人のような立ち位置でもあるはずだ。
本人も、これだけの能力を持っていないと、かえって各マンモス校の牽制になるどころか、駒取り合戦が始まりかねないということなのかしら……
「ん、私はいつでも行ける」
「あ、ちょっと、私も戦闘準備ぐらい整ってますから!補給物資の確保が済んでるんだったら、もう出発して大丈夫ですから!」
慌てて後部座席に乗り込む。防弾ベストも着ているし、自分の得物である2丁拳銃の調子もバッチリだ。
「砂狼、案内を頼めるか」
「ん、任せて」
ドアを全部閉めて、ゆっくりとヘリは上昇していく。
一体どうなってしまうのだろう、というやや他人事な感想を思い浮かべて、私は座っていた。
「みんな、下がって!」
回避は最小限に、かといって、本丸にいきそうなグレネードは全部処理。
敵に背後を見せるなんてもってのほか。特に、背負っている大事な人を考えれば。
盾をぶん投げて、強引に退路を作り、そこに飛び込んだ。その死角を補うように、マシンガンが弾幕を張る。
ようやく仮拠点であるバリケードに戻り、背負っていた後輩を、できるだけそっと下ろした。
「ノノミちゃん、アヤネちゃん。セリカちゃんをよろしくね〜」
牽制射撃を中止して、こちらへ向かってくる2人。
「はい、校舎の中も、念のため……?」
「うんー、ちょっと、今日という今日は入り込まれちゃうかも。校内にもバリケード張っといて。
______時間は私が稼ぐから」
渋い顔をしたが、最終的に首を縦に振らざるを得ない状況なのだ。それに、時間をおけばまたヘルメット団は攻めてくる。返事を待たずに、なけなしの余った弾薬を手に取って、再び飛び出す。
「…………分かりました、アヤネちゃん、手伝ってもらえますか?」
「は、はいっ!」
自分より一回り大きい後輩に背負われた、かわいいかわいい1年生。
呼吸こそしているが、ヘイローは未だに見えない。気を失ったままなのだろう。
(…………もう、無理なんじゃないかな?)
弱気になる度、ちらつく。
もう二度と目覚めない姿。
(だめだ、そんなの許されない……諦めるなんて……!)
弱い、けど数が多い。
攻めてくる数も、守らなきゃいけない数も、私1人には多過ぎる。
「どいてよ、そこ邪魔ッ…………!」
頭がこんなにこんがらがっているのに、それでも体は染み付いたように、1人、また1人と制圧していく。
撃てど吹っ飛ばせど、まるで無限に湧くゾンビを思わせる。
私がボコボコにしたヤツが起きてきているか、増援がいっぱいいるかどうかは、謎だけど。
確実に、闘争が私を……小鳥遊ホシノを駆り立てている。
ただの1人も守れなかったのに……?
ただ、“あの人”のマネをして、結果がこのザマだ。
「……アヤネちゃん、ノノミちゃん、もう居ないかな」
対策委員会の“ホシノ先輩”として戦っている時。確かに手加減しているわけでは無いのだ。
……ただ、憎くてたまらない。
自分が、“あの人”を失ってしまった自分自身が……。
けれど、どこまで突き詰めようと、お人好しの皮を被ろうと、結局“私”は、人を傷つけるナイフにしかなり得ないのだ。
上空に、何かが横切る。
「…………?ヘリ…………?ヘルメット団が、なんであんな物を……」
まあ、でも、もう良いか。
凶器でしかない私が、これで誰かを……後輩たちの居場所を守れるなら……。
「空にいたって、関係ない。……とっとと落ちてよ」
ショットガンを構える。思い切り力を込めて、がむしゃらに引き金を引けば、プスプスと黒い煙を上げて、不安定になっていく。
……流石に一発じゃ、撃墜には足らなかったか。なら、もう一発______!
「______……小鳥遊ホシノ!!!」
照準が、ブレる。
暑い砂漠の太陽を覆い隠すように、ヘリは逆光で暗く染まっていた。かろうじて、ヘリのドアが開いているだろうことがわかる。人だろうか。誰か、こちらに身を乗り出している。
「受け取れ!」
「!」
投擲物……、グレネードの類を疑ったが、それはすぐに自分の目が否定した。寸分の狂いもなく、私の手元に落ちてきたそれは、愛銃に良く馴染む、一弾倉分の弾薬。
なんで……?
ヘリが旋回する。影が落ちていて、色が見えなかったそれは、純白に青いロゴ……連邦生徒会の所有物である証だ。
なんで、なんで……?
どうして、なんで、どうして…………ッ
「遅い……遅すぎるよ……ッ!」
突然のヘリの登場に、呆気に取られていたヘルメット団員を、銃底で殴り飛ばす。半分以上が八つ当たりだ。けど、罪悪感なんかは微塵も湧かない。
私の異常に戦慄してるんだろうね。固まったまま、相手はピクリとも動かない。
揺れ掛けのヘリから、華麗にロープを伝って登場してみせた、一人の女性。
荒れ果てた砂漠で、彼女だけが、まるで別の世界だ。静かで、冷たくて、それでいて、胸糞悪いほどに凪いでいる。
「……どういうつもり?」
「連邦捜査部所属、錠前サオリという者だ」
その名は、聞いたことがある。アヤネちゃんが各地のニュースをまとめている時に、大騒ぎしていたっけ。
サオリと名乗ったその人物は、懐から一つの証書を取り出した。
私たちが、喉から手が出るほど欲しかった、そのたった一枚の紙切れが、今。そこに。ある。
乾いた笑みが、私の表面から居なくなってくれない。
「な、に…………それ」
あと一時間早かったら、セリカちゃんはあんな怪我をしなくて済んだ。
「……なんなのさ、ふざけてるの?嘘だよね、冗談だって言ってよ?」
あと1日早かったら、シロコちゃんを一人でD.U.に向かわせることもなかった。ヘルメット団だって、いつもみたいに撃退できた。
「あはは、なんだ。みんなでおじさんたちを、からかってるんだよ、きっとそうに違いない」
あと3年早かったら______
「今更……もう、遅すぎるんだってッ!!!」
自分でも、わからなかった。
感情のままに誰かに銃を向けると言うのが久しぶりだった。から……加減ができなかった。
照準が、あの人の頭に合って。ああ、遅かったなって、やってしまったなぁ、なんてぼんやり思いつつ、引き金を引く指は止まらなくて。
「______たとえ、全てが終わった後だとしても、だ」
「ぇ………………」
一歩遅れて、散弾銃の音が私の耳に入る。低い声が、私の耳元で鳴っている。ああ、これが錠前サオリという人の声なんだ、と漠然と刷り込まれた気分だ。
もはや手の感覚がなくなるほど、ショットガンを強く握っていたことに、今更気がついた。彼女に添えられた手が、そっとそれを離させた。つまり、錠前サオリを狙って放った散弾は、全て外れたということ。
「ぁっ、…………ぁ…………」
彼女が、そっと私の背に手を回す。
「私は、“先生”だ。逆境に抗っているというのなら、支援をしない理由など、どこにも無い」
「______だからこそ、これを託しにやってきた」
力の抜けた私に、改めて、一枚の証書を渡す。
「……なにそれ。…………ズルすぎるよ、そんなの」
「ああ。大人なんて、往々にしてズルい生き物だからな」
“先生”は、私の耳元で、笑いをこらえながら囁いた。少し掠れたその声で、肩口で話されると、少しむず痒いけれど……
(……けど、不思議と落ち着くな)
ふとそう意識した瞬間、私の意識はまどろみに消えていった。
今回の話は、サオリ先生がアビドス入りしましたが、原作より数日遅めの到着となっております。
Q.なんで到着遅れたの?
A.サオリ先生は機械音痴すぎてアビドスからの救援メールには気が付かなかったからです。